三井住友建設株式会社
(注) 1 第16期、第17期及び第18期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載していません。また、第19期及び第20期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、1株当たり当期純損失であり、また、潜在株式が存在しないため記載していません。
2 第19期及び第20期の株価収益率については、親会社株主に帰属する当期純損失であるため記載していません。
3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第19期の期首から適用しており、第19期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
(注) 1 第16期、第17期及び第18期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載していません。また、第19期及び第20期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、1株当たり当期純損失であり、また、潜在株式が存在しないため記載していません。
2 第19期及び第20期の株価収益率及び配当性向については、当期純損失であるため記載していません。
3 最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。
4 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第19期の期首から適用しており、第19期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
三井建設株式会社の起源は、1887年、西本健次郎氏が、江戸時代中期より紀州徳川家へ出入りを許されていた西本家の家業を継いで、和歌山において土建業西本組を創設したことに始まります。1934年、資本金100万円をもって前身である合資会社西本組を設立、1941年10月株式会社西本組に改組し、本社を東京におきました。これにより当社の設立は、1941年10月となっています。その後、三井不動産株式会社が施工部門の充実を図る目的で1945年5月資本参加し、社名を三井建設工業株式会社と改称しました。
住友建設株式会社の起源は1691年に開坑された住友別子銅山において坑場等の各種設備工事や運搬道路工事に従事していたことに始まります。
別子銅山は久しく住友家の直営でありましたが、1927年に株式会社となり住友別子鉱山株式会社と称し、1937年、住友鉱業株式会社と改称しました。1950年3月、終戦後の財閥解体の過程で、同社改め井華鉱業株式会社より、別子建設株式会社として独立しました。
その後の主な変遷は次のとおりです。
当社グループは、当社、子会社23社及び関連会社7社で構成され、土木工事及び建築工事を主な事業の内容としています。
当社グループの事業に係る位置付け及びセグメント情報との関連は、次のとおりです。
[土木工事]
当社、子会社の三井住建道路㈱他が国内及び海外で、土木工事の設計、施工並びにこれらに関係する事業を行っています。
[建築工事]
当社、子会社の㈱SMCR他が国内及び海外で、建築工事の設計、施工並びにこれらに関係する事業を行っています。
事業の系統図は次のとおりです。(2023年3月31日現在)

※ 関係会社の一部は複数の事業を行っており、上記区分は代表的な事業内容により掲載しています。
(注) 1 主要な事業の内容欄には、セグメント情報に記載された名称を記載しています。
2 特定子会社です。
3 有価証券報告書を提出しています。
4 2022年4月1日付けで三井住友建設鉄構エンジニアリング㈱(以下、「SMCSE」)の株式を追加取得するとともに、SMCSEが保有するドーピー建設工業㈱の全株式を当社が現物配当により取得し、両社を完全子会社化しました。
5 議決権所有割合の( )内は間接所有割合で内数であり、[ ]内は緊密な者又は同意している者の所有割合で外数であります。
6 ㈱SMCRは2022年5月2日付けで東京都台東区から上記住所に移転しました。
7 SMCプレコンクリート㈱は2022年5月30日付けで東京都台東区から上記住所に移転しました。
8 債務超過会社、債務超過の額は下記のとおりです。
(2023年3月31日現在)
(注) 従業員数は就業人員であり、臨時従業員数は〔 〕内に年間の平均人員を外数で記載しています。
(2023年3月31日現在)
(注) 1 従業員数は就業人員であり、臨時従業員数は〔 〕内に年間の平均人員を外数で記載しています。
2 平均年齢及び平均勤続年数は、それぞれ小数点第1位未満を切り捨てて表示しています。
3 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
労使関係について特に記載すべき事項はありません。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
2.管理職は、2023年3月31日現在における「部下を持つ職務以上の者及び部下を持たなくてもそれと同等の地位にある者」の数より算出しています。
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
4.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号に規定される算出方法は以下のとおりです。
5.男女の賃金格差について、男性社員の平均勤続年数22.0年に対し、女性の平均勤続年数は13.4年と開きがあり、管理職候補となる層および給与水準の高い全国転勤有の区分の社員が男性に比べ女性は少ない状況です。当社の総合職において、女性不在の職群および等級を除いた賃金の平均は以下のとおりです。
② 連結子会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
2.管理職は、2023年3月31日現在における「部下を持つ職務以上の者及び部下を持たなくてもそれと同等の地位にあるもの」の数より算出しています。
なお、当事業年度における管理職に占める女性労働者はいません。
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
4.労働者の男女の賃金の差異については、賃金制度・体系において性別による差異はなく、主に等級別人数構成の差異によるものです。
5.三井住建道路株式会社におけるダイバーシティ推進は、持続的に成長するための経営戦略の一つであり、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる会社を目指しています。なかでも女性活躍推進を最大の課題と認識しており、「女性活躍推進法」に基づいて、積極的な女性採用及び管理職登用を行い、女性が働きやすい職場づくりに取り組んでいます。また、採用においては中途採用に門戸を開き、当社が目指す「選ばれる企業へ」に向けた人材基盤の強化を図り、中核人材に育成していきます。
当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針、経営環境
当社は、経営理念として「顧客満足の追求」「株主価値の増大」「社員活力の尊重」「社会性の重視」「地球環境への貢献」を掲げ、安全で快適な社会の実現に取り組んでいます。
<理念と経営計画の体系>

(2) 中期的な経営戦略と目標とする経営指標
当社グループは、2022年3月に策定した「中期経営計画2022-2024」では、テーマを「新たな成長へ~サステナブル社会の実現に向けて~」と設定し、計画に掲げた具体施策を展開しています。
しかしながら、国内大型建築工事の度重なる損失発生や建設資材価格の上昇などの影響を受け、建築工事の利益水準の大幅な改善が困難であることにより、計画最終年度である2024年度の利益水準は当初計画には届かない見通しとなりました。
このことから、2023年5月に今般の国内建築事業の大幅な業績悪化を受けた各種の追加施策を策定し、これらを反映させた経営数値目標の見直しを行うとともに、当該施策の効果が発現すると見込まれる2027年度までの向こう5か年の経営数値目標を新たに示すこととしました。

①受注力の強化
・デジタル技術の積極活用や協力会社組織との連携強化などにより競争優位性を創出し、優位技術、得意分野を軸に需要拡大が見込まれる分野に注力。
②現場力の強化
・現場管理体制の強化
現場が「コア業務(安全・品質・工程・原価管理)」に集中できる体制を構築し、工事リスクへの対応力を向上すべく、現場業務のバックアップ体制を強化。
受注前の検討体制の強化を目的としたフロントローディング体制を構築し、早期に工事リスクを把握することで、対策を施工計画に反映。
・技術者教育の強化
リスク検知能力や課題解決力の向上、若手技術者の早期育成。
・デジタル化の推進
③国内建築事業の業績改善
・施工体制逼迫の改善と現場支援体制の再構築
施工体制逼迫の改善に向けた受注量の管理、事前検討・支援体制の強化。
・受注プロセスにおけるガバナンス強化と最適な受注ポートフォリオの構築
取組みの初期段階における取組判断の厳格化と受注プロセスにおけるガバナンス強化。顧客、工事規模、用途、地域特性等を鑑みた受注方針の再設定と運用の徹底。
・利益を重視した目標管理の徹底
受注時における利益の確保を最重要指標と位置づけ、これ以降の各段階において利益を最優先とした目標管理を徹底。
①サステナブル社会に向けた取り組みの強化
・新たに生まれる社会ニーズに対し、技術とサービスで応え続けることで成長を実現。
②海外事業の拡大~拠点の自立とネットワーク強化~
・事業を通じて持続可能な地域社会の発展に貢献し、地域とともに成長を実現。
③建設生産システムの深化
・デジタル化の推進を中心とした取り組みにより、建設現場の工業化や自動化を推進し、当社グループの競争力を強化。
①ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実現
・D&Iの実現を通じて、社員の幸福度の向上を企業の成長につなげる。
②エンゲージメントの向上
・「社員の幸福」「企業の成長」と社員のエンゲージメントがお互い高め合う関係性を構築。
③人材の育成
・「新たな成長」の実現を牽引するデジタル人材、グローバル人材など多様な人材育成、確保に注力。
(経営数値計画)
経営数値目標の見直し(2024年度目標)及び2027年度目標の設定
・業績目標
・財務目標
・非財務目標
※「組織診断サーベイ」におけるワークエンゲージメントに関する指標
(事業戦略)
1.国内土木事業戦略
(1)収益力強化 (2)新たな価値の創出
2.国内建築事業戦略
(1)受注力の向上 (2)現場力の向上 (3)社員教育・人材活用の強化
3.海外事業戦略
(1)海外建設事業の成長 (2)成長を支える事業基盤の強化 (3)社会変化に対応した取り組み推進
4.周辺領域事業戦略
(1)既存周辺領域事業(再エネ発電、エンジニアリングサービス等)の拡大による収益貢献
(2)新規周辺領域事業創出への取り組み
(3)周辺領域事業の裾野拡大のための「新規事業創出プロセス」の構築
(4)M&A・アライアンスを活用した戦略的なポートフォリオ変革の実現
(基盤戦略)
1.安全・品質
2.人材(=人財)戦略
3.技術開発戦略
4.グループ経営戦略
5.ガバナンス及び内部統制
(環境、社会面における取り組むべき事項)
1.環境面
(1)気候変動、カーボンニュートラル (2)資源循環 (3)生物多様性
2.社会面
(1)人権 (2)ダイバーシティ&インクルージョン
(3) 対処すべき課題
① 当社が現在施工中の国内大型建築工事において、当期に多額の工事損失を追加計上しました。全てのステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。要因といたしましては、鋼材を中心とした資材価格等の上昇、工事進捗に伴う施工計画の見直し、及び工場製作部材の製品不具合等を受け、追加費用等の発生が見込まれたことによるものであります。当該工事の度重なる損失発生を受け、特別対応チームを組成して施工全般に対する支援や技術的な指導を行うとともに、調査委員会により原因究明及び再発防止策を策定しています。なお、調査委員会においては外部有識者から客観的な立場での助言を得る予定です。当社といたしましては、当該工事の施工管理体制を更に強化し、品質の確保、工程の回復に向けて全力で対応してまいります。
これに加え、一部の国内建築工事において工事採算が大きく低下したことなどを受け、以下の国内建築事業の業績改善に向けた施策を強力に推し進めてまいります。
(1) 施工体制逼迫の改善と現場支援体制の再構築
施工体制逼迫の改善を図るため、短期では新規着工工事の受注量を抑制し、また中長期では施工体制確保を前提とした受注方針を堅持します。これにより手持ち工事を着実に消化し、施工体制逼迫を解消することで事前検討・支援体制の強化を図ります。
(2) 受注プロセスにおけるガバナンス強化と最適な受注ポートフォリオの構築
取組みの初期段階における取組判断の厳格化と受注プロセスにおけるガバナンス強化により、低採算の回避・損益悪化リスクの排除を徹底します。また顧客、工事規模、用途、地域特性等を鑑みた受注方針を再設定し、運用を徹底することでリスク分散と受注機会の拡大を図ります。
(3) 利益を重視した目標管理の徹底
案件毎の利益の最大化を図るため、受注時における利益の確保を最重要指標と位置づけ、これ以降の各段階において利益を最優先とした目標管理を徹底します。
② 当社施工の横浜市所在マンションの事案につきましては、2017年11月28日付にて、本件マンションの発注者の1社である三井不動産レジデンシャル株式会社(以下、「レジデンシャル社」といいます。)が、本件マンション全棟の建替え費用等の合計約459億円(その後2018年7月11日付にて約510億円に増額、2022年9月30日付けにて約510億円から約506億円に減額)を当社並びに杭施工会社2社に対し求償する訴訟を提起していますが、レジデンシャル社の請求は、根拠、理由を欠くものであると考えており、引き続き裁判において、当社の主張を適切に展開してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものですが、ここに掲げられている項目に限定されるものではありません。
(1) 当社グループのリスク管理体制と管理プロセス
当社グループは、リスクを最終的に損益悪化によって組織目標の達成を阻害する要因と捉え、「リスク管理規則」に基づくリスク管理体制の構築・運用とその改善を継続することによりリスク管理の実効性を高め、当社グループの事業運営に影響を及ぼす恐れのあるリスクの低減を徹底しています。また、全社的な視点でリスク管理を統括・推進し、各部門各部署において主体的なリスク対応を促進するための体制及び仕組みづくりに努めています。リスク管理の基本体制として「3ラインモデル」を採用し、内部統制を実行しています。リスクに直接対応する部門(第1ライン)において、部門リスク管理責任者がリスク管理の運用・有効性の評価を実施し、リスク評価報告書をリスク管理統括責任者に提出し、全社におけるリスク管理状況を把握します。リスク管理統括責任者は、部門リスク管理責任者によるリスク管理体制の有効性評価及び全社における統制環境に関するリスクアセスメント結果に基づき、当社におけるリスク管理体制の問題点を把握し、今後の対応策を策定しています。
(2) リスクの選定方法
個別リスクの所管部署(第2ライン)は所管するリスク項目に関してリスクに直接対応する部門(第1ライン)に対し、発生頻度、経営への影響度、脆弱度の3つの基準で点数化し、評価しています。この評価に基づき、リスクに直接対応する部門(第1ライン)の各部門において重点的に対応すべきリスクが選定され、個別リスクの所管部署(第2ライン)は選定されたリスクに対して具体的なリスクシナリオを想定し、基本対策案を立案します。また、独立した客観的な立場から、監査部(第3ライン)がこれらのリスクシナリオをチェックし、必要に応じて、修正・追加を実施しています。
リスク管理統括責任者は、各部門の業務プロセスに関するリスクアセスメント結果・各部門のリスクマップ、リスクシナリオ、リスク顕在化事案を参考に、全社ベースのリスクマップを作成し、全社における重要リスクと対策案の把握、リスクへの対応状況をモニタリングするという仕組みを構築・運用しています。
(3) 対応が必要となるリスク
当期におけるリスクアセスメント結果を踏まえ、当社グループが「2030年の将来像」を目指すにあたり設定している事業戦略と基盤戦略を実行する上で、対応が必要となるリスクとして17項目を挙げています。
以下の表では、それらのリスク項目を事業環境と事業基盤のカテゴリーに分け、かつ、各リスク項目に、最重要リスク、重要リスクを記し、各リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与えるリスク内容、リスクへの対応策、戦略との関係性を記載しています。
(4) 継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは当連結会計年度において2期連続して多額の当期純損失を計上したことにより純資産が減少した結果、当連結会計年度末において、複数の金融機関と締結している一部のシンジケートローン契約等に付されている財務制限条項に抵触しています。しかしながら、財務制限条項に抵触している当該契約につきましては、2023年5月19日付で、取引先金融機関より期限の利益喪失の権利行使を行わないことについて承諾を得ています。また、今後の必要資金の調達についても、主要行をはじめとする取引先金融機関より継続的な支援を表明いただいていることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しています。
①事業全体の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直しの動きが見られました。一方で、急速な円安の進行やウクライナ情勢等により資源価格や原材料価格が上昇し、また海外景気の下振れも懸念されるなど、不透明な状況にありました。
先行きにつきましては、各種政策の効果や新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで、景気は持ち直していくことが期待されますが、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響については、十分注意する必要があります。
国内建設市場におきましては、引き続き建設投資は底堅く推移するものと見込まれていますが、建設資材の価格高騰や労務需給の逼迫等の影響が懸念され、引き続き厳しい経営環境が続くものと考えています。
このような状況の下、当社グループにおきましては、当期を初年度とする「中期経営計画2022-2024」のテーマを「新たな成長へ~サステナブル社会の実現に向けて~」と設定しており、その基本方針である「収益力の向上」「成長分野への挑戦」「人材(=人財)基盤の強化」に取組んでまいりました。
しかしながら、当期に現在施工中の国内大型建築工事において多額の工事損失を追加計上しました。これに加え、一部の国内建築工事において建設資材の価格高騰等の影響を受け、工事採算が大きく低下したこと及び繰延税金資産の一部を取り崩し、法人税等調整額に計上したことなどにより、当期の業績は大幅に悪化しました。
当連結会計年度における当社グループの連結業績につきましては、売上高は、前期比で553億円増加し、4,586億円となりました。損益につきましては、営業損失188億円(前期は営業損失75億円)、経常損失185億円(前期は経常損失83億円)、親会社株主に帰属する当期純損失257億円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失70億円)となりました。
(連結業績) (単位:億円)
②セグメント業績
土木部門・建築部門それぞれのセグメント業績は以下のとおりです。なお、部門ごとのデータは、内部売上高、又は振替高を含めて記載しています。
(土木部門) (単位:億円)
土木部門では、業界屈指の設計・施工実績を有するプレストレストコンクリート(PC)橋梁分野の他、トンネル、シールド、エネルギー関連施設等の幅広い分野で社会基盤の整備に取り組んでいます。高速道路大規模更新事業においては、競争力の向上によりストック市場での業界トップクラスの地位の確立に取り組んでいます。
当連結会計年度における売上高は、手持ち工事の進捗及び前期に株式取得した連結子会社の増加などにより2,219億円(前期比15.5%増加)となりました。セグメント利益は、売上高の増加に加え、工事採算の改善により290億円(前期比18.0%増加)となりました。
(建築部門) (単位:億円)
建築部門では、安定した利益の創出に向けて競争優位性の高い分野を軸とした事業展開を図っています。また、三井・住友両グループをはじめとした顧客との信頼関係の一層の強化により事業基盤の強化に取り組んでいます。
当連結会計年度における売上高は、手持ち工事の進捗などにより2,377億円(前期比12.6%増加)となりました。セグメント損失は、国内大型建築工事における採算が大幅に悪化したことなどにより201億円(前期はセグメント損失65億円)となりました。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
主な要因としては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
また、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の当社施工の横浜市所在マンションに係る訴訟の結果次第では、今後連結業績に影響を与える可能性があります。
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では生産実績を定義することが困難であるため、「生産の実績」は記載していません。また、連結子会社においては受注生産形態をとっていない事業もあることから、報告セグメントごとに受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
よって、受注及び販売の実績については、可能な限り「(1) 経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載しています。
なお、参考のため提出会社個別の建設事業の実績は次のとおりです。
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)です。
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比です。
(注)1 海外工事の地域別割合は、次のとおりです。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりです。
前事業年度
当事業年度
3 前事業年度及び当事業年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別はありません。
⑤ 次期繰越工事高(2023年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりです。
(資産)
現金預金は前連結会計年度末比で58億円減少しましたが、受取手形・完成工事未収入金等は前連結会計年度末比で181億円増加、その他流動資産は前連結会計年度末比で83億円増加しました。
投資その他の資産は、繰延税金資産の取崩し等により、前連結会計年度末比で68億円減少しました。
以上の結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比で161億円増加し、4,102億円となりました。
(負債)
短期借入金、長期借入金及び社債を合計した有利子負債残高につきましては、前連結会計年度末比で195億円の増加となりました。
未成工事受入金は前連結会計年度末比で66億円増加、工事損失引当金は前連結会計年度末比で189億円増加しました。
以上の結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末比で446億円増加し、3,390億円となりました。
(純資産)
株主資本は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上257億円及び、剰余金の配当31億円の結果、前連結会計年度末比で281億円の減少となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末比で286億円減少し、711億円となりました。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末の23.2%比7.7ポイント低下の15.5%となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失183億円の計上及び、売上債権の増加172億円、工事損失引当金の増加189億円等により、161億円の資金の減少(前期は100億円の資金の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形並びに無形固定資産の取得による支出及び、定期預金の減少等により35億円の資金の減少(前期は130億円の資金の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、剰余金の配当、長期借入金の返済等による資金の減少があったものの、社債の発行やシンジケートローン契約の借入実行により142億円の資金の増加(前期は21億円の資金の減少)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は608億円(前期末比43億円の資金の減少)となりました。
当社グループの運転資金の調達につきましては、資金需要の増加に対して、主要な取引金融機関と組成した複数のシンジケートローン及び社債の発行により長期安定的な資金を確保しています。
短期の運転資金につきましては、上記の資金をベースに、自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本として資金運営を行っており、より安定的な資金運営を確保すべく、当連結会計年度においては、主要な取引金融機関との間で2020年5月に締結したシンジケーション方式によるコミットメントライン契約(300億円)を同条件にて契約更新し、資金調達を行いました。
また、コミットメントライン契約につきましては、上記の運転資金枠のほかに、2016年3月に締結した借入限度額200億円、2020年6月に締結した借入限度額200億円について、それぞれ同条件にて契約を更新しました。なお、当連結会計年度末において、これらコミットメントライン3契約による借入残高はありません。
また、2022年6月にサステナビリティボンドとして第2回無担保社債(5年債)50億円を新たに発行し、調達手段の多様化を図り、環境・社会の持続可能性への貢献に寄与しています。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末における資産・負債並びに連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える見積り及び判断が行われています。これらの見積り及び判断については、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
①繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
②退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。将来、取引先の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
④完成工事補償引当金
完成工事高に対して将来予想される瑕疵担保費用を一定の比率で算定し、完成工事補償引当金として計上しています。
引当金の見積りにおいて想定していなかった完成工事の不具合による補償義務の発生や、引当の額を超えて補償費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。一方、実際の補償費用が引当金の額を下回った場合は引当金戻入益を計上することになります。
⑤工事損失引当金
受注時における戦略的低採算案件や工事契約における未引渡工事のうち損失の発生する可能性が高く、工事損失額を期末において合理的に見積ることが出来る工事等については、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しています。
技術的難易度の高い長期請負工事や海外でのカントリー・リスク等のある工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
⑥偶発損失引当金
連結財務諸表「注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載した内容と同一です。
⑦株式報酬引当金
当社連結子会社において、株式交付規程に基づく役員等への株式の給付等に備えて当連結会計年度末における株式給付債務の見込額に基づき計上しています。
⑧工事契約等における収益認識
連結財務諸表「注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載した内容と同一です。
⑨固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
「第2 事業の状況」における本文中の億円単位の表示は単位未満四捨五入とし、それ以外の金額の表示は表示単位未満切捨てにより表示しています。
特記事項はありません。
(注) 1 帳簿価額には建設仮勘定を含んでいません。
2 提出会社は土木工事、建築工事を営んでいますが、大半の設備は共通的に使用されているので、報告セグメントごとに分類せず、主要な事業所ごとに一括して記載しています。
3 土地及び建物の一部を連結会社以外から賃借しています。賃借料は1,904百万円であり、土地の面積については、( )内に外書きで示しています。
4 提出会社の技術研究所は土木工事、建築工事における施工技術の研究開発施設です。他の施設は、提出会社は事務所ビル、工場、国内子会社は事務所ビル、工場、寮・社宅等です。
5 土地建物のうち主要な賃貸設備はありません。
6 リース契約による主要な賃借設備のうち主なもの
7 関係会社の一部は複数の事業を行っており、上記区分は代表的な事業内容により記載しています。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注) 2017年10月1日をもって5株を1株に併合し、これに伴い発行済株式総数が650,693千株減少し、162,673千株となっています。
2023年3月31日現在
(注) 1 自己株式6,180,595株は、「個人その他」に61,805単元及び「単元未満株式の状況」に95株を含めて記載しています。なお、自己株式6,180,595株は株主名簿上の株式数であり、2023年3月31日現在の実保有株式数は6,180,515株です。
2 「その他の法人」の欄には9単元、「単元未満株式の状況」の欄には56株、証券保管振替機構名義の株式がそれぞれ含まれています。
2023年3月31日現在
(注)1 上記のほか当社所有の自己株式6,180千株があります。
1 報告セグメントの概要
当社の報告セグメントは、当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものです。
当社は本社に土木本部、建築本部を置き、それぞれ「土木工事」「建築工事」について戦略を立案し事業活動を行っています。
したがって、当社は、当該本部を基礎としたセグメントから構成されており、「土木工事」「建築工事」の2つを報告セグメントとしています。
「土木工事」はPC橋梁等の主に官公庁発注の工事を施工しています。「建築工事」は超高層住宅等の主に民間企業発注の工事を施工しています。