日清オイリオグループ株式会社
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式がないため、記載しておりません。
2 従業員数は就業人員であります。なお、従業員数欄の(外書)は、臨時従業員数の年間平均雇用人数であります。
3 第147期より、取締役等に対し、信託を用いた株式報酬制度「株式交付信託」を導入しております。「1株当たり当期純利益」の算定上の基礎となる期中平均株式数には、その計算において控除する自己株式に当該信託口が保有する当社株式を含めております。また、「1株当たり純資産額」の算定上、期末発行済株式総数から控除する自己株式に含めております。
4 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第150期の期首から適用しており、第150期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式がないため、記載しておりません。
2 従業員数は就業人員であります。なお、従業員数欄の(外書)は、臨時従業員数の年間平均雇用人数であります。
3 最高株価及び最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものであります。
4 第147期より、取締役等に対し、信託を用いた株式報酬制度「株式交付信託」を導入しております。「1株当たり当期純利益」の算定上の基礎となる期中平均株式数には、その計算において控除する自己株式に当該信託口が保有する当社株式を含めております。また、「1株当たり純資産額」の算定上、期末発行済株式総数から控除する自己株式に含めております。
5 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第150期の期首から適用しており、第150期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
当社グループは、当社、子会社23社、関連会社13社およびその他の関係会社1社で構成され、油脂事業、加工食品・素材事業、ファインケミカル事業を主な事業とし、さらに食品の販売促進および人材の派遣、情報システムの開発保守、スポーツ施設の経営、損害保険代理、不動産賃貸等の事業活動を展開しております。
当社グループの事業に係る位置付けおよびセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、その他の関係会社1社とは、下記のセグメントの内、主に油脂事業、加工食品・素材事業、ファインケミカル事業で原料、食品、油脂、油粕等の売買を行っております。
(油脂・油糧)
当社が食品、油脂製品および油粕製品の製造販売を行っております。販売においては、食品、油脂製品および油粕製品の販売の一部を連結子会社である日清商事㈱、㈱日清商会、セッツ㈱および上海日清油脂有限投資公司、関連会社である幸商事㈱を通じて、それぞれ行っております。また、物流においては、輸入原材料の入出庫に係る港湾荷役および製品物流を日清物流㈱が行っております。関連会社である中糧日清(大連)有限公司が油脂製品・油粕製品の製造販売を行っております。
上記以外の会社で、油脂・油糧事業を営んでいる関連会社は1社であります。
(加工油脂)
当社および連結子会社であるIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.が加工油脂製品の製造販売を、Intercontinental Specialty Fats (Italy) S.r.l.が加工油脂製品の製造販売および精製受託を、Intercontinental Specialty Fats (Shanghai)Co., Ltdが加工油脂製品の販売を、関連会社である統清股フン有限公司および張家港統清食品有限公司が加工油脂製品の製造販売を行っております。
また、当社の製造において、Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.より加工油脂製品の一部を輸入しております。
上記以外の会社で、加工油脂事業を営んでいる子会社は1社であります。
当社がMCT(中鎖脂肪酸)関連食品、醸造用ミール、高齢者・介護関連食品およびドレッシング・マヨネーズ類等の製造販売を行っております。
連結子会社である大東カカオ㈱およびT. & C. Manufacturing Co., Pte. Ltd.がチョコレート関連製品の製造販売を、PT Indoagri Daitocacaoが業務用チョコレートの製造販売を、㈱日清商会が食品大豆および醸造用ミールの販売を行っております。また、関連会社である㈱ピエトロはドレッシング等の食品製造販売および飲食店経営を、和弘食品㈱が麺類用スープ・天然エキス等の製造販売を行っております。
上記以外の会社で、加工食品・素材事業を営んでいる子会社は3社、関連会社は5社であります。
当社が化粧品原料、化学品等の製造販売を、連結子会社であるIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.が化粧品原料等の製造販売を、日清奥利友(上海)国際貿易有限公司が化粧品原料等の販売を行っております。また、セッツ㈱が化成品の製造販売を行っております。
当社が不動産賃貸業を、連結子会社である㈱NSPが情報システムの開発保守を、㈱マーケティングフォースジャパンが食品の販売促進等を、㈱ゴルフジョイがゴルフ練習場の経営を、日清ファイナンス㈱が損害保険代理業を行っております。
上記以外の会社でその他事業を営んでいる子会社は2社、関連会社は1社であります。

2023年3月31日現在
(注) 1 主要な事業の内容欄には、主としてセグメントの名称を記載しております。
2 当社の連結子会社であったヤマキウ運輸株式会社は2023年3月に清算結了したため、連結の範囲から除外しております。
3 日清商事㈱、日清奥利友(中国)投資有限公司、Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.、PT Indoagri Daitocacaoは特定子会社に該当しております。
4 日清商事㈱の持分は100分の50未満でありますが、実質的な影響力をもっているため連結子会社としております。
5 ㈱ピエトロおよび和弘食品㈱の持分は100分の20未満でありますが、実質的な影響力を持っているため関連会社としております。
6 有価証券報告書を提出している会社は、㈱ピエトロ、和弘食品㈱および丸紅㈱であります。
7 ( )内は間接所有割合(内書)であります。
8 Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.については売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。
2023年3月31日現在
(注) 従業員数は就業人員であります。なお、(外書)は臨時従業員数の年間平均雇用人数であります。
2023年3月31日現在
(注) 1 従業員数は就業人員であります。なお、(外書)は臨時従業員数の年間平均雇用人数であります。
2 平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
当社グループの労働組合は、日清オイリオグループ労働組合、セッツ労働組合が組織されております。
組合との交渉はすべて円満に推移しており、特記すべき事項はありません。
① 提出会社
2023年3月31日現在
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、2023年4月1日時点で算出したものであり、出向者は出向元の労働者として集計しております。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出(「2022年度において雇用する男性労働者のうち育児休業等を取得した者の数」÷「2022年度において雇用する男性労働者のうち配偶者が出産した者の数」)したものであり、出向者は出向元の労働者として集計しております。
3.男女の賃金差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しております。なお、「正規雇用労働者」について、同一労働の賃金に差はなく、等級別人数構成の差によるものであります。また、「パート・有期雇用労働者」について、同一労働の賃金に差はなく、定年退職再雇用者やパートタイマーといった雇用形態別人数構成の差によるものであります。
② 連結子会社
2023年3月31日現在
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、2023年4月1日時点で算出したものであり、出向者は出向元の労働者として集計しております。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合(「2022年度において雇用する男性労働者のうち育児休業等を取得した者の数」÷「2022年度において雇用する男性労働者のうち配偶者が出産した者の数」)を算出したものであり、出向者は出向元の労働者として集計しております。なお、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づく雇用管理区分ごとの算出・公表は行っておりません。
3.男女の賃金差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しております。なお、セッツ㈱及び㈱NSPについては、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づく公表を行っておりません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社の経営理念は、次のとおりです。
ステークホルダーの皆様へお約束するコンセプトとして、「コアプロミス」を次のとおり定めています。
また、今般作成した「日清オイリオグループビジョン2030」において「2030年に目指す姿」を次のとおり
定めております。
当社グループは、従来以上に事業活動による価値創造を通じて社会の持続可能性に貢献してまいります。
「ビジョン2030」策定時に、当社グループが2030年に目指す姿に至るために、行動の基本とするValues
(「真摯な姿勢」「つながる」「究める」「切り拓く」「しなやかに強く」)を定めました。また、理念を
実践していくための行動指針である「日清オイリオグループ行動規範」を2022年4月1日付で改訂しています。
日清オイリオグループ理念体系は次のとおりです。

日清オイリオグループビジョン2030
近年、当社グループを取り巻く環境は、地球規模での環境課題の累積、新型コロナウイルス感染症の発生と蔓延、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻など地政学的なリスクの顕在化、国内における少子高齢化の急速な進展など大きな変化の渦中にあります。そしてこれらも反映した世界的な消費・生活行動の変容や一層の多様化の進展など、従来のビジネスのやり方やモノの考え方が大きく変化しています。さらに、企業市民として、今まで以上に持続可能な社会「サステナビリティ」に貢献していくことが求められています。
このようななか、2021年3月に策定した「ビジョン2030」で示した「2030年に目指す姿」と「戦略の指針」に沿って、当社グループは、社会課題の解決を通じた、多様な共有価値の創造(CSV)を成長のドライバーとすることで、将来にわたって持続的に成長し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
日清オイリオグループビジョン2030の概要

“植物のチカラ®”を価値創造の原点として私たちが生み出す商品・サービスを「生きるエネルギー」と定義し、
2030年に向けて当社は、「生きるエネルギー」をすべての人にお届けする企業グループになることを目指します。
〇生きるエネルギー
生きるために必要な根源的なエネルギー
おいしい食事で人を元気にするエネルギー
栄養機能で人を健康にするエネルギー
美を演出し活力を与えるエネルギー
油脂と相乗効果を発揮する素材・技術・事業から生み出されるエネルギー
また、「生きるエネルギー」をすべての人にお届けするためには、油脂を素材として提供するだけでなく、当社グループが持つ強みを活かして他の食品メーカーや素材メーカーなどと一緒に価値を共創することが非常に重要であると考えています。生活を支えるあらゆるチャネルでお客さまとの接点を持っている強みにより、社会課題解決のためのプラットフォームの役割を担うことで可能になると考えています。
2021年度~2024年度 中期経営計画「Value Up+」
「ビジョン2030」で目指す姿に向けた最初の4年間(2021年度から2024年度まで)を対象とした中期経営計画「Value Up+」の基本方針を「もっとお客さまの近くで、多様な価値を創造し続ける企業グループに変革する」とし、マーケティング、テクノロジー、グローバリゼーションを基調とし、CSVを成長ドライバーに据え、これまで以上に成長路線を加速してまいります。
中期経営計画「Value Up+」の位置づけ

目標とする経営指標
「Value Up+」最終年度である2024年度の経営目標について、営業利益は、非常に厳しいコスト環境のなかでもさらなる価格改定の実現と新たな価値創造を通じて170億円を目指します。また、ROEも当初計画どおり8.0%とします。
また、「Value Up+」においては資本効率性の改善を重要な目標にしており、ROICを経営目標に加え、2024年度の計画を4.6%とし、今まで以上に資本コストを意識したマネジメントを行ってまいります。なお、営業キャッシュフローについては急激な原料コスト上昇に伴う運転資金の増加により、4年間の累計額を修正計画の500億円から400億円に下方修正いたします。2023年度の経営目標については、営業利益160億円、ROE7%、ROIC4.4%としています。
※中期経営計画「Value Up+」の経営目標は、現時点で入手可能な情報や、合理的と判断した一定の前提に基づいて策定した計画・目標であり、潜在的なリスクや不確実性などを含んでいることから、その達成や将来の業績を保証するものではありません。また実際の業績等も当中期経営計画とは大きく異なる結果となる可能性がありますので、当中期経営計画のみに依拠して投資判断を下すことはお控え下さい。
「Value Up+」経営目標実現に向けたKPI管理のフレームワーク(達成チャート)
3年目となる中期経営計画「Value Up+」では、成長性、積極投資、持続性、効率性の観点から、経営目標実現に向けた戦略を推進するフレームワークである「達成チャート」のもと、戦略におけるKPIの進捗状況を把握し、計画達成に向け着実に進めてまいります。このなかには「ビジョン2030」のCSV目標も包含しています。

※成長性における売上高の目標は、原材料価格の高騰を受けた販売価格の改定の影響を含まない、価値創造による売上拡大の金額
「達成チャート」の成長性においては、売上拡大を目指す領域別に、BtoC、BtoB、BtoBtoCの3つの目標を掲げております。これらの目標は価値創造と密接に関連し、CSVを成長ドライバーとする「Value Up+」の収益拡大における中心的なKPIと取組みを示しています。
BtoCにおいては、「油脂の価値向上」や「付加価値商品の拡販」に取り組んでまいります。研究面では、脂肪燃焼体質やフレイル・プレフレイルなどの領域での健康エビデンスの確立や、油脂による食品への乳感・塩味・うまみの付与など、おいしさの意図的創発の取組みを推進することで、その成果を独創的な商品開発につなげていきます。また、食用油における新しいカテゴリーとして味つけオイルの市場の育成を図ります。クッキングオイルについても、当社の技術をベースに、「吸油が少ない」「少量使い」といった新たな価値を提供する商品を販売し、収益性を高めてまいります。
BtoBにおいては、国内外で販売を拡大してまいります。国内の業務用や加工用を中心とするフードサービス分野では、お客さまとの多様な接点のなかでの当社グループの提案力、開拓力、物流力、サポート力の強みを活かします。海外では、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn.Bhd.(ISF社)を中心に、グローバルに事業を行っているチョコレートメーカーなどへのチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティオイル&ファッツの販売を積極的に拡大してまいります。また、化粧品油剤では、テクニカルサポート機能の拡充などを通じて、グローバル市場でシェアを一層高めてまいります。
BtoBtoCにおいては、加工食品メーカー、流通と商品の共同開発を行うとともに、積極的にメディアを活用して油脂の栄養機能についての認知度を高めるなど、共創の取組みを拡げていきます。現在、取組みを進めているMCTの脂肪燃焼機能を訴求した機能性マーケティングにおいては、多様なユーザーにMCTの価値を知っていただくことで、加工食品など多様な売り場でMCT採用商品を増やしてきました。今後は、フレイル・プレフレイル対策など、他の機能へ訴求の対象を広げていきたいと考えています。
そして、「Value Up+」の経営目標を実現するために、積極的な投資を行ってまいります。現在、当社横浜磯子事業場で建設が進行中の「インキュベーション機能の強化・実装」に関する投資は、お客さまとの価値共創を通じて当社のコアコンピタンスである油脂を磨きあげ、油脂加工技術を究めることを目的としています。2024年度の設備の完成とともに、お客さまとの共創が開始できるよう準備を進めています。また、ISF社におけるチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティオイル&ファッツの生産能力拡充投資や、当社名古屋工場をはじめとした生産拠点のスマートファクトリー化、堺工場のサステナビリティセンター化構想についても着実に進めてまいります。さらに、設備や情報システムなどの投資に加え、人材、研究開発、知的財産などの無形資産への投資も重要と考えており、特に組織能力の強化・開発を進めていく観点から人材への投資を積極的に実施してまいります。
また、従業員の心身の健康、働きがい、生産性の向上を目的として、経営トップが最高責任者となり健康経営を強力に進めており、「健康経営優良法人2023~ホワイト500~」に認定されております。引き続き従業員の健康保持・増進に積極的に取組んでまいります。
持続性の観点では、環境とサプライチェーンが大きなテーマです。「日清オイリオグループビジョン2030」の「地球環境」や「信頼でつながるサプライチェーン」などで掲げたCSV目標の達成に向け、しっかり取り組んでまいります。2022年度は、大豆とカカオの調達方針を策定し、自社ホームページにて公開しました。また、人権尊重への取組みとして、人権デュー・ディリジェンスを開始しました。2022年度は、グループ会社代表者を対象に、外部講師を招いての講演会の開催や、セルフモニタリング調査(SAQ(Self-Assesment Questionnaire))を実施しました。今後も引き続き、取引先の皆様などと協力して、サプライチェーン全体を対象として人権尊重の取組みを進めてまいります。
効率性の観点については、資本収益性の向上は最優先で取り組むべき課題であるとの認識から、ROICを経営目標として設定し、営業利益と投下資本の両面から改善を進めています。新たな価格の均衡点の形成にチャレンジするとともに、付加価値商品の構成比の向上やチョコレート用油脂を中心としたスペシャリティオイル&ファッツ、チョコレート、化粧品油剤など、付加価値型事業の構成比の向上に取組みます。また、非効率または不稼働の固定資産圧縮や政策保有株式の売却、キャッシュコンバージョンサイクルの改善に努め、資本の効率性を高めてまいります。
世界経済については、新型コロナウイルス感染症の影響が終息に向かい、消費者心理が改善、国境を越えた人の移動が進むなど、緩やかながら回復が期待されています。一方で、下振れの懸念材料として、物価上昇に応じた中央銀行による金融引き締め、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化などの地政学リスク、人手不足、資源・エネルギー価格の高騰、継続するサプライチェーン(供給網)の混乱などが、今後の世界経済に重要な影響を与えると考えられます。
国内においては、2023年5月に新型コロナウイルスが感染法上の第5類に移行し、特例的な措置や制限が撤廃され、水際対策が終了することによるインバウンド需要の増加や外食・観光需要の喚起による景気の緩やかな回復が期待されています。一方で、資源価格や原材料価格の高騰による物価上昇が個人消費を抑制し、景気の下振れを引き起こす可能性があります。
当社グループへの影響が大きい大豆、菜種、パーム油などの原材料については、生産量の回復が見込まれているものの、世界的なコロナ禍による需要減退からの回復やバイオ燃料消費の拡大、サプライチェーン混乱の長期化、またオリーブ油においては産地での天候不順もあり、購買価格は高値圏で推移するものと想定しております。
このような事業環境下、当社グループは、長期的な視点で目指すべき姿と戦略の指針を示す「日清オイリオグループビジョン2030」を策定し、その実現に向け、2021年度から2024年度の当初4か年の中期経営計画「Value Up+」に取り組んでおります。この中期経営計画では、これまでよりもっとお客さまの近くで、多様な価値を創造し続ける企業グループに変革していくための戦略、施策を実行しております。
2023年度は、国内油脂市場の付加価値化・ソリューションの強化、原料コストに見合った適正な販売価格の形成・維持、スペシャリティオイル&ファッツのグローバル市場での販売拡大、アフターコロナの中での油脂需要の回復や消費者動向の変化への対応などの課題にしっかりと取り組んでまいります。
各事業の状況については、次のとおりです。
[油脂事業]
(油脂・油糧)
国内の油脂事業においては、主要原料相場、為替相場、物流費、資材費、エネルギーコスト、将来コスト・社会的コスト等を踏まえたうえで適正な販売価格を設定し、人々の暮らしや食品産業を支えるための安定供給が求められています。
ホームユースにおいて、当社はキャノーラ油のみならず、オリーブオイル、アマニ油などにおいても高い市場シェアを有しており、「かけるオイル」などの油脂の新しい使い方や油脂の栄養・健康機能を積極的に提案・紹介するなどして需要を喚起し、市場の拡大を牽引しています。国内市場は過去最大規模を更新しており、2022年度は年間で1,800億円(当社推計)を超える水準となっています。
業務用および加工用では、レストランなどの外食、コンビニエンスストア・量販店などの中食、製菓・製パンや加工食品業界などに向けた販売を行っております。競争の激しい市場環境ではありますが、ユーザーとのニーズ協働発掘型営業によるソリューション提案で需要を創造し、収益の獲得、拡大につなげております。
大豆、菜種を主原料とする商品については、バイオ燃料向けの需要の増加や、世界的に旺盛な油脂需要の拡大、主要産地の天候悪化による生産量の減少等による原料価格高騰の影響を受け、2021年度の4回の価格改定に続き、2022年度2回の価格改定を行いました。加えて、オリーブオイル、ごま油、こめ油等についても、需給逼迫や物流費、ユーティリティコストの高止まり等により、2回の価格改定を行いました。
ミールについては、国内の需給などの影響もありますが、国内の販売価格が国際価格と連動した販売を行っています。
中長期的には、国内の人口減少による油脂消費量の減少が見込まれることもあり、一層の合理化、効率化が必要と考えております。こうした環境が見通される中、2021年度より株式会社J-オイルミルズ社と国内搾油機能の全国統合を見据えた搾油合弁会社設立に関する検討を続け、2022年度に搾油機能の全国統合および西日本エリアにおける搾油合弁会社設立に関する基本合意に至りました。
また、脂質栄養の知見を活かした幅広い商品の開発や情報発信により、油脂を通じた価値創造を推進してまいります。
(加工油脂)
パーム油を活用したチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティオイル&ファッツをグローバルに販売するマレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.(以下、ISF社)と日本国内での製菓・製パン向けにショートニングやマーガリンなどを製造販売する事業から構成されます。ISF社はパーム油の分別・精製における高度な技術を有しており、欧州などの高い品質基準を要求する顧客を中心に付加価値品の拡販に努めています。
チョコレート用油脂については、ロシア・ウクライナ情勢悪化の長期化による原料相場の高騰や将来的なチョコレート用油脂原料の調達への懸念はありますが、複数の手段を組み合わせて、必要な数量を適正価格で調達できるよう努めてまいります。
短期的にはチョコレート市場の成長鈍化などの影響を受けると考えていますが、中長期的にはチョコレートおよびチョコレート用油脂の需要は堅調に増加すると考えております。
[加工食品・素材事業]
チョコレート関連事業、ドレッシングなどの調味料、MCTを中心とした機能素材・食品、大豆素材・食品から構成されます。
チョコレートについては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けるものの、土産物需要は徐々に回復しつつあり、中長期的にはアジアの中間所得層の増加による、市場の拡大を見込んでいます。
調味料においては、おいしさの追求やアマニ油、MCTオイルなどの健康訴求油脂への関心の高まりなどを背景に油脂の機能を活かした商品開発および販売を展開してまいります。
機能素材・食品においてはMCTの脂肪燃焼やフレイル対策など、健康機能の高さを引き続き啓発し、機能性素材マーケティングによる売上拡大を目指してまいります。
大豆素材・食品においてはプラントベースドフードの市場拡大も見据え、大豆たんぱくの供給にとどまらず、油脂の活用による食感、おいしさなどのソリューションの提供を強化してまいります。
[ファインケミカル事業]
化粧品用の原料である油剤を主力商品としており、多くの国内化粧品メーカーや、欧米の大手化粧品メーカーと長期にわたり取引を行っております。国内ではコロナ禍からの需要回復が遅れておりますが、2022年度は、欧州子会社での化粧品油剤の販売が大きく増加しました。また、原材価格の高騰を踏まえた価格改定にも積極的に取組みました。
世界の化粧品市場は、中長期的にはアジアを中心に中間所得層の増加が見込まれるエリアでの成長により拡大しています。国内でも、アフターコロナを見据えた国内需要の高まりやインバウンド需要に対応した拡販に取り組んでまいります。
環境・衛生においては食の環境を中心とする衛生管理事業や植物資源を活用して環境に好影響を与える商品・サービスの開発を進めてまいります。
当社グループでは、「ビジョン2030」や中期経営計画「Value Up+」で目指す姿の実現や当社が取り組む事業に対してネガティブな影響を及ぼす不確実性を「リスク」と定義し、リスクコントロールを行っています。リスクマネジメントに対する主体的な取組みを通じて、企業として安定した収益を上げるだけでなく、社会的責任を果たすことを通じて更なる企業価値の向上と発展を目指すことを目的としています。リスクマネジメント体制については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項 (b) リスク管理体制の整備の状況」をご参照ください。
以下は、リスクマップの中から、リスクマネジメント委員会で選定した当社グループの重要リスクを示しています。

なお、重要なリスク認識については、連結財務諸表「連結注記表 追加情報(ロシア・ウクライナ情勢による当社グループへの影響について)」をご参照下さい。
当社グループの重要リスクの内容と対応については次のとおりです。
なお、文中においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
2023年度のリスクマネジメントにおいては、日清オイリオグループビジョン2030で示した6つの重点領域における機会とリスクのガバナンス強化に努めていきます。
※ガバナンス体制については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」もご参照下さい。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュフロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次の通りであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米国や欧州を中心に景気の回復が見られましたが、ロシアのウクライナ侵攻を背景としたサプライチェーン(供給網)の混乱やインフレ抑制のための各国の金融引き締めによる景気後退リスクが懸念されています。
また、日本経済は、新型コロナウイルス感染症による行動規制の緩和等により緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方で、原材料価格やエネルギー価格の高騰等により物価が上昇していることで、企業収益の悪化や消費者マインドの低迷が懸念されています。
このような環境下、当社グループは「もっとお客さまの近くで、多様な価値を創造し続ける企業グループに変革する」という基本方針のもと、中期経営計画「Value Up+」(2021年度-2024年度)に取り組んでいます。6つの重点領域で設定したCSV目標を成長ドライバーとして成長路線を加速させるとともに、“植物のチカラ®”を価値創造の原点に、社会との多様な共有価値の創造を通じた持続的な成長を目指しております。
また、当社グループは、資本効率性の改善を重要な目標にしており、2022年度から新たにROICを経営目標に加え、今まで以上に資本コストを意識したマネジメントを行っております。2024年度の目標であるROE8.0%、ROIC4.6%の達成に向け、「成長性」「積極投資」「持続性」「効率性」の4つの視点でKPIと実行施策をフレームワーク(「達成チャート」)で整理し、経営目標実現に向けた取組みを進めております。
当連結会計年度の業績については、以下のとおりとなりました。
(注)ROIC(投下資本利益率)は、以下の算定式に基づき算出しております(いずれの数値も連結ベース)。
ROIC =(当連結会計年度の税引後営業利益+持分法投資損益)÷
[{(当事業年度の投下資本)+(前事業年度の投下資本)}÷2]
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ299億46百万円増加し、3,744億53百万円となりました。主な要因は、売上債権が113億78百万円、棚卸資産が212億29百万円、無形固定資産が4億49百万円増加したことであります。
負債は、前連結会計年度末に比べ228億42百万円増加し、2,030億34百万円となりました。主な要因は、仕入債務が62億17百万円、未払費用19億1百万円、未払法人税等が27億円、長期借入金が141億18百万円増加したことであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ71億4百万円増加し、1,714億18百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が75億20百万円、為替換算調整勘定が25億70百万円増加したことであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ30億23百万円増加し、108億99百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、3億98百万円の収入となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益153億23百万円、減価償却費93億88百万円、仕入債務の増加41億87百万円によるキャッシュの増加および売上債権の増加94億16百万円、棚卸資産の増加197億10百万円によるキャッシュの減少であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、61億43百万円の支出となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出72億32百万円によるキャッシュの減少であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、63億42百万円の収入となりました。主な内訳は、短期借入金の純増10億91百万円、長期借入れによる収入150億12百万円によるキャッシュの増加および長期借入金の返済による支出68億12百万円、配当金の支払29億19百万円によるキャッシュの減少であります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、原価計算に利用した価格等により算定しております。
② 受注実績
当社グループでは、主として計画に基づく生産を行っているため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績および財政状態の分析
当連結会計年度における経営成績および財政状態の分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
② セグメントごとの財政状態及び経営成績の分析
セグメント別の資産では、前連結会計年度末に比べ油脂事業において273億26百万円増加、加工食品・素材事業において28億70百万円増加、ファインケミカル事業において2億46百万円増加しました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
・売上高
・〔参考〕売上高(単体)
・営業利益
セグメント別の概況
≪油脂事業≫
油脂事業セグメントでは、コロナ禍からの世界経済の回復に伴う油脂需要の増加に加え、ロシアのウクライナ侵攻による原材料の供給懸念、日米の金融政策の乖離等を背景とした円安ドル高の進行等により原材料価格が一段と高騰するなか、生産性向上とコスト削減に最大限努めるとともに、適正な販売価格の形成に取組みました。また、付加価値品の拡販に加え、新たな市場創造やソリューション提案の強化に注力したことで、増収増益となりました。
[原料の調達環境]
原料の調達面では、主要原料相場が前期に対して上昇し、またドル円相場も前期に対して円安ドル高で推移したことから、大豆価格、菜種価格ともに前期を大きく上回りました。
<主要原料相場>
大豆相場は、ロシアのウクライナ侵攻による穀物・油脂の供給不安や、乾燥による南米産大豆減産などにより、6月には1ブッシェルあたり16~17米ドル台の歴史的な高値圏まで上昇しました。9~10月には米国産大豆の収穫により値を下げる局面もありましたが、世界的な脱炭素の動きを背景とした油脂需要の増加が下支えしたことや、アルゼンチンの減産見通しによって、高値圏での推移が続き、前期比で大幅な高値推移となりました。
菜種相場は、世界的な需給逼迫による歴史的な高値圏での推移が続くなか、ロシアのウクライナ侵攻による穀物・油脂の供給不安や、天候不順によるカナダ産新穀の作付遅れ等から上昇し、4月には1トンあたり1,200カナダドルと史上最高値を更新する等、高値圏で推移しました。7月以降は、カナダ産や豪州産の豊作期待により800カナダドル台まで値を下げましたが、脱炭素の動きを背景とした油脂需要の増加が菜種価格を下支えし、前期比で大幅な高値推移となりました。
<為替相場>
ドル円相場は、3月以降、日米の金融政策の乖離等により、急激に円安ドル高が進行しました。その後も米国の金融引き締めが継続したことや、資源価格高騰を背景とした日本の貿易赤字拡大等により、10月には150円台まで円安ドル高が進行しました。11月以降は米国の金融政策転換への期待や日銀の金融政策修正等から円高ドル安となりましたが、前期比で大幅な円安ドル高推移となりました。
[油脂の販売]
業務用については、原材料価格が高騰するなかで販売価格の改定に取組みました。また、生活者の行動変容、人手不足やコスト上昇など「変化への対応」と「ニーズ協働発掘型営業」によるソリューション提案の質の向上に継続的に取組みました。商品面では長持ち機能等を付加した「機能フライ油」や「日清炊飯油」等の機能性油脂を含む「付加価値型商品群」を重点カテゴリーとし、積極的な提案による拡販に努めました。新型コロナウイルス感染症の影響により外食需要や観光需要の本格的な回復には至らず、販売数量は減少しましたが、販売単価が上昇したことで売上高は増収となりました。
加工用についても、原材料価格が高騰するなか、コストに見合った適正価格での販売に取り組んだことにより、売上高は増収となりました。
ホームユースについても、販売価格改定に取り組むとともに、「かけるオイルの定着」や「味つけオイルの市場創造」など付加価値品の継続的な拡販を進めました。この結果、サプリ的オイルの販売数量は前期を上回り、ごま油、オリーブオイルの販売数量は前期と比較して減少したものの、市場全体の落ち込みに対しては減少幅を小幅にとどめました。また、揚げ物の吸油を抑えた「日清ヘルシーオフ」などの戦略商品の拡販に努めました。これらの結果、主要カテゴリーの販売数量増と販売単価上昇により売上高は増収となりました。
以上の結果、油脂全体の売上高は増収、営業利益は増益となりました。
[ミールの販売]
大豆ミールについては、大豆・菜種の採算格差を背景とした大豆搾油の増加に合わせ、拡販に努めたことで販売数量は大幅に増加しました。また、主要原料相場が上昇したことやドル円相場が円安ドル高で推移したことにより販売単価が上昇し、売上高は増収となりました。
菜種ミールについては、大豆搾油優位の環境が続き、前期に対して搾油量を減少させたことで、販売数量は減少しました。販売価格は、大豆ミール価格上昇の影響等から上昇し、売上高は増収となりました。
海外加工油脂については、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.において、欧州を中心に高付加価値品であるチョコレート用油脂の販売にシフトし、汎用品の販売数量を減少させたことにより、全体として販売数量は減少しました。しかし、パーム油相場の高騰に伴う販売価格の上昇、高付加価値品の販売数量増、円安リンギット高による為替換算の影響等により、増収増益となりました。
また、イタリアのIntercontinental Specialty Fats(Italy)S.r.l.においては、新たな生産設備の本格稼働を背景に販売数量が増加したこと等により、増収増益となりました。
国内加工油脂については、需要が低迷する厳しい状況が続くなか、新規ユーザーの獲得および既存顧客での新規商品採用により販売数量は前期を上回り、販売価格についても段階的な価格改定を実現したことで、売上高は増収となりました。営業利益は価格改定の遅れに加え、主要原料であるパーム油の高騰やユーティリティ、包装資材等のコスト上昇の影響が大きく、営業損失となりました。
なお、当期末において「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき回収可能性を検討し、減損損失13億32百万円を特別損失に計上しております。
≪加工食品・素材事業≫
加工食品・素材事業セグメントでは、販売価格の改定と海外子会社の為替換算の影響等はあるものの、原価率上昇等の影響が大きく、増収減益となりました。
チョコレートについては、大東カカオ㈱において、菓子需要の回復が遅れるなか、新規顧客開拓等に努めたことで販売数量は前期を上回りました。シンガポールのT.&C. Manufacturing Co., Pte.Ltd.においては、日本国内における調製品の需要減により、販売数量は前期を下回りました。インドネシアのPT Indoagri Daitocacaoにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響により遅れていた新規顧客との取引が進展したことにより、販売数量が増加しました。一方で、原価率上昇の影響が大きく、チョコレート全体で増収減益となりました。
調味料は、価格改定に伴い販売価格は上昇したものの、販売数量の減少および原価率上昇や販管費増加の影響が大きく増収減益となりました。
機能素材・食品は、加工食品メーカーとのMCT(中鎖脂肪酸)のコラボレーション商品の上市を進め、市場規模拡大に努めました。また、原材料価格の上昇に対する適正価格での販売に努めたものの、原価率上昇の影響と販管費の増加により、増収減益となりました。
大豆素材・食品は、原材料価格の上昇に対する適正価格での販売に努めたものの、原材料価格の上昇や前期の連結子会社売却の影響により、増収減益となりました。
≪ファインケミカル事業≫
ファインケミカル事業セグメントでは、国内外の需要回復の遅れに伴い汎用品を中心に販売数量は減少しましたが、欧州子会社の好調な販売および原材料価格の上昇に対する適正価格での販売に努めた結果、増収増益となりました。
ファインケミカル製品については、国内および中国向け輸出需要が新型コロナウイルス感染症の影響により本格回復に至らず、販売数量は前年同期を下回りました。一方、スペインのIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.で、欧州域内において化粧品油剤の販売が大きく増加したことにより、セグメント全体として増収増益となりました。
環境・衛生については、堅調なアルコール製剤の需要により販売数量が増加しましたが、売上高は前期並みとなり、原材料およびエネルギーコスト高騰の影響が大きく、営業利益は減益となりました。
≪その他≫
情報システムをはじめその他の事業セグメントは、増収増益となりました。
≪地域別売上高≫
原材料価格の高騰を背景とした販売価格の上昇や為替換算の影響等から、マレーシア、中国等のアジア向けおよび欧州、米国等のその他地域への売上高は増収となりました。
当社グループの当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度に比べ30億23百万円増加して108億99百万円となりました。当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費や仕入債務の増加によるキャッシュの増加および売上債権の増加や棚卸資産の増加によるキャッシュの減少により3億98百万円の収入(前連結会計年度は266億31百万円の支出)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などによるキャッシュの減少により61億43百万円の支出(前連結会計年度は93億27百万円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入などによるキャッシュの増加および長期借入金の返済による支出などによるキャッシュの減少により63億42百万円の収入(前連結会計年度は344億73百万円の収入)となりました。
当社グループの資金運営は、事業活動にかかる運転資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としております。また、資金調達方法として、当社取引銀行5行との間でシンジケーション方式により総額100億円のコミットメントライン契約を締結している等により、資金の流動性は確保しております。
当社と国内子会社10社の間で「キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)」を構築しており、当該システムを利用し効率的な資金配分を行っております。
設備資金、投融資資金等の長期的な資金需要については、金融市場動向、既存の社債の償還時期および借入金の返済時期等も総合的に勘案し、社債および借入金等による資金調達を行っております。
今後の重要な資金の支出予定としては、横浜磯子事業場におけるインキュベーションセンター設立とマレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.における生産設備増強と品質・生産効率向上を予定しております。
当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。
当連結会計年度(2023年3月31日)
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
なお、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等およびその達成状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 <目標とする経営指標>」に記載しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表等の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得見込額等に基づいて回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。
なお、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得等の見積りによるものであるため、その見積りの前提に変更が生じた場合は、繰延税金資産の計上に影響を及ぼす可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループは、退職給付債務および費用について、昇給率、退職率等の基礎率及び割引率を用いて計算しております。
なお、これらの前提に変動があった場合には、退職給付債務および費用に影響を及ぼす可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価について、事業部等を基礎としてグルーピングされた資産グループごとの収益性の評価及び回収可能価額の算定を行い、収益性が著しく低下している資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額することとしております。
市場環境等の変化により収益性が著しく低下した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
なお、当連結会計年度については、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係) ※7 減損損失の内容に記載のとおりであります。
当連結会計年度の連結財務諸表を作成するにあたって行った会計上の見積りのうち、当該会計上の見積りが当連結会計年度の翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあると判断したものはありません。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。
(注) 1 設備の帳簿価額は減価償却累計額控除後のものであり、建設仮勘定15億76百万円を含んでおりません。
2 横浜磯子事業場、名古屋工場および水島工場においては、主に油脂および油粕を生産し、堺工場においては主に油脂を生産しております。
3 各支店および営業所の内訳は、北海道・東北・関東信越・中部・大阪・中国・九州の各支店、盛岡・郡山・新潟・長野・埼玉・静岡・北陸・四国・岡山・鹿児島の各営業所となります。
(注) 1 設備の帳簿価額は減価償却累計額控除後のものであり、建設仮勘定4億30百万円を含んでおりません。
2 日清物流㈱の土地2千㎡については、賃借しております。
(注) 1 設備の帳簿価額は減価償却累計額控除後のものであり、建設仮勘定7億79百万円を含んでおりません。
2 Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.の本社・工場の土地73千㎡については、賃借しております。
3 PT Indoagri Daitocacaoの工場の土地19千㎡については、インドネシア共和国の法律に基づく建設権により利用している土地の面積です。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注)1 2021年2月9日開催の取締役会決議により、2021年4月30日付で自己株式を消却し、発行済株式総数が951,600株減少しております。
2023年3月31日現在
(注) 自己株式1,138,491株は、「個人その他」に11,384単元及び「単元未満株式の状況」に91株含まれております。
2023年3月31日現在
(注) 1 株式会社日本カストディ銀行(信託口)の所有株式数2,490千株には、取締役等への株式報酬制度のために設定した株式交付信託に係る信託口が所有する株式142千株が含まれております。
2 上記のほか当社所有の自己株式1,138千株(3.47%)があります。
当社の報告セグメントは、当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定および業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっております。
当社は、製品別の事業部を置き、各事業部は取り扱う製品について国内および海外の包括的な戦略を立案し事業活動を展開しております。したがって、当社は事業部を基礎とした製品別セグメントから構成されており、「油脂事業」、「加工食品・素材事業」、「ファインケミカル事業」の3つを報告セグメントとしております。
各報告セグメントの主な製品は、以下のとおりであります。