住友化学株式会社
(注) 1 国際会計基準(以下「IFRS」という。)に基づいて連結財務諸表を作成しております。
2 第139期、第140期および第141期の希薄化後1株当たり当期利益については、潜在株式は存在するものの逆希薄化効果を有するため記載しておりません。
3 第140期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、第139期については、暫定的な会計処理の確定による連結財務諸表の遡及修正を行っております。
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
2 最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものであります。
3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第141期の期首から適用しており、第141期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
当社は1913年9月、住友総本店が現在の愛媛県新居浜市に肥料製造所を開設したのを事業の始めとし、1925年6月、株式会社住友肥料製造所として独立しました。
創業以来の主な推移を、年次別に示せば次のとおりであります。
住友化学グループは、当社および関係会社286社から構成され、その主な事業内容と当社および主な関係会社の当該事業における位置付けおよびセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、セグメントと同一の区分であります。
[主な関係会社]
日本シンガポール石油化学㈱、ペトロケミカル コーポレーション オブ シンガポール(プライベート)リミテッド、ザ ポリオレフィン カンパニー(シンガポール)プライベート リミテッド、ラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー、スミトモ ケミカル アメリカ インコーポレーテッド、スミカ ポリマーズ アメリカ コーポレーション、シェブロン フィリップス シンガポール ケミカルズ(プライベート)リミテッド、スミトモ ケミカル アジア プライベート リミテッド
[主な関係会社]
㈱田中化学研究所、広栄化学㈱、田岡化学工業㈱、SSLM㈱
[主な関係会社]
東友ファインケム㈱、スミカ セミコンダクター マテリアルズ テキサス インコーポレーテッド、住化電子材料科技(無錫)有限公司、住華科技股份有限公司、旭友電子材料科技(無錫)有限公司
[主な関係会社]
ベーラント ノースアメリカ LLC、ベーラント バイオサイエンス LLC、スミトモ ケミカル ブラジル インダストリア キミカ S.A.、スミトモ ケミカル チリ S.A.、スミトモ ケミカル インディア リミテッド
[主な関係会社]
住友ファーマ㈱、スミトモ ファーマ アメリカ ホールディングス インコーポレーテッド、サノビオン ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド、スミトモ ファーマ オンコロジー インコーポレーテッド、スミトバント バイオファーマ リミテッド、スミトバント バイオファーマ インコーポレーテッド、マイオバント サイエンシズ リミテッド、マイオバント ホールディングス リミテッド、マイオバント サイエンシズ インコーポレーテッド、マイオバント サイエンシズ GmbH、マイオバント サイエンシズ LLC、ユーロバント サイエンシズ GmbH、ユーロバント サイエンシズ LLC、エンジバント セラピューティクス GmbH、アルタバント サイエンシズ GmbH、スピロバント サイエンシズ インコーポレーテッド
[主な関係会社]
住友ベークライト㈱、住友精化㈱、稲畑産業㈱、神東塗料㈱

(注)1 「議決権の所有割合」欄の(内数)は間接所有を示しております。
2 上記会社のうち、スミトモ ケミカル ブラジル インダストリア キミカ S.A.、スミトモ ケミカル アメリカ インコーポレーテッド、ベーラント ノースアメリカ LLC、ベーラント バイオサイエンス LLC、スミカ ポリマーズ アメリカ コーポレーション、CDT ホールディングス リミテッド、ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド、東友ファインケム㈱、スミカ セミコンダクター マテリアルズ テキサス インコーポレーテッド、SSLM㈱、日本シンガポール石油化学㈱、住友ファーマ㈱、スミトモ ファーマ アメリカ ホールディングス インコーポレーテッド、サノビオン ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド、スミトモ ファーマ オンコロジー インコーポレーテッド、スミトバント バイオファーマ リミテッド、スミトバント バイオファーマ インコーポレーテッド、マイオバント サイエンシズ リミテッド、マイオバント ホールディングス リミテッド、マイオバント サイエンシズ インコーポレーテッド、マイオバント サイエンシズ GmbH、マイオバント サイエンシズ LLC、ユーロバント サイエンシズ GmbH、ユーロバント サイエンシズ LLC、エンジバント セラピューティクス GmbH、アルタバント サイエンシズ GmbH、スピロバント サイエンシズ インコーポレーテッド、旭友電子材料科技(無錫)有限公司、住化電子材料科技(無錫)有限公司、住華科技股份有限公司、スミトモ ケミカル アジア プライベート リミテッド、ザ ポリオレフィン カンパニー(シンガポール)プライベート リミテッド、スミトモ ケミカル チリ S.A.および㈱田中化学研究所が特定子会社に該当しております。
3 上記会社のうち、住友ファーマ㈱、㈱田中化学研究所、広栄化学㈱および田岡化学工業㈱は有価証券報告書提出会社であります。
4 スミトモ ケミカル アメリカ インコーポレーテッド、ベーラント ノースアメリカ LLC、ベーラント バイオサイエンス LLC、CDT ホールディングス リミテッド、ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド、スミカ セミコンダクター マテリアルズ テキサス インコーポレーテッド、スミトモ ファーマ アメリカ ホールディングス インコーポレーテッド、サノビオン ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド、スミトモ ファーマ オンコロジー インコーポレーテッド、スミトバント バイオファーマ リミテッド、スミトバント バイオファーマ インコーポレーテッド、マイオバント サイエンシズ リミテッド、マイオバント ホールディングス リミテッド、マイオバント サイエンシズ インコーポレーテッド、マイオバント サイエンシズ GmbH、マイオバント サイエンシズ LLC、ユーロバント サイエンシズ GmbH、ユーロバント サイエンシズ LLC、エンジバント セラピューティクス GmbH、アルタバント サイエンシズ GmbHおよびスピロバント サイエンシズ インコーポレーテッドの資本金については、払込資本を記載しております。
5 スミカ ポリマーズ アメリカ コーポレーションは、解散したフィリップス スミカ ポリプロピレン カンパニーに対する投資を行っておりました。
6 前連結会計年度記載のスミトモ ケミカル ド ブラジル Representações Ltdaはスミトモ ケミカル ブラジル インダストリア キミカ S.A.との合併により、消滅いたしました。また、ユーロバント サイエンシズ リミテッド、エンジバント セラピューティクス リミテッドおよびアルタバント サイエンシズ リミテッドは、スミトバント バイオファーマ リミテッドとの合併により消滅いたしました。ベーラント U.S.A. LLC、ユーロバント ホールディングス リミテッド、エンジバント セラピューティクス ホールディングス リミテッドおよびアルタバント サイエンシズ ホールディングス リミテッドは、重要性が低下したため、重要な子会社から除外いたしました。
7 「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」はIFRSの開示要請に基づくものが含まれております。また、IFRSにより要求されている、関連するその他開示項目は「第5 経理の状況 連結注記 37.重要な子会社」に記載のとおりであります。
(注) 1 「議決権の所有割合」欄の(内数)は間接所有を示しております。
2 上記会社のうち、住友ベークライト㈱、住友精化㈱、稲畑産業㈱および神東塗料㈱は有価証券報告書提出会社であります。
3 関連会社等には、ジョイント・ベンチャー(共同支配企業)およびジョイント・オペレーション(共同支配事業)を含んでおります。
2023年3月31日現在
(注) 1 従業員には、嘱託、パートタイマー、派遣社員、連結会社外への出向者は含んでおりません。
2 従業員数欄の(外数)には、臨時従業員(嘱託、パートタイマー)の年間平均雇用人員を記載しております。
2023年3月31日現在
(注) 1 従業員数には、嘱託、パートタイマー、派遣社員、他の法人等への出向者は含んでおりません。
2 従業員数欄の(外数)には、臨時従業員(嘱託、パートタイマー)の年間平均雇用人員を記載しております。
3 平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
当社には、住友化学労働組合があり、その結成以来、終始よくその統制を保ちつつ今日まで健全に発展し、組合員の経済的地位の向上と企業の発展に寄与してきました。
2023年3月31日現在の上記従業員数に含まれる組合加入人員は4,511人であります。
当連結会計年度の多様性に関する指標は、以下のとおりであります。
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)(以下「女性活躍推進法」という。)および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)(以下「育児・介護休業法」という。)に基づく情報公表を行っていない指標については「-」と記載しております。
2 女性活躍推進法の規定に基づき算出したものであります。
3 育児・介護休業法の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
4 育児・介護休業法の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等および育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。
5 男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しております。
2023年3月31日現在
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社は、別子銅山の煙害という環境問題の克服と農産物の増産を、ともに図ることから誕生した起源を持ちます。創業以来100年以上にわたり、絶えざる技術革新と事業の変革を遂げながら、事業を通じて人々の豊かな生活を支えてまいりました。
住友には「自利利他公私一如」(住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない)という言葉がありますが、当社はその事業精神を体現し、経済価値と社会価値を一体的に創出してまいりました。
近年、気候変動のみならず、生態系保全、健康促進といったサステナビリティの意識が世界中で高まっています。当社はこれを広い意味でのグリーントランスフォーメーション(GX)と定義し、自らの変革と社会への貢献の機会と捉えております。今後、GXの視点で事業ポートフォリオを長期的に変革することで、事業を通じて社会課題の解決に貢献することを目指します。
(2) 2022-24年度中期経営計画
このような考えのもと、当社グループは、2022年度を初年度とする中期経営計画「Change & Innovation with the Power of Chemistry」に取り組んでおり下記の7つの基本方針を掲げております。
ROI志向経営の徹底と全社横断プロジェクトの遂行により、個々の事業の強化や、GXを背景としたポートフォリオの変革、事業の新陳代謝の促進を行い、競争優位性の確立を目指します。

グリーントランスフォーメーション(GX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)
当社グループは、最大の強みである事業・技術・地域・人材の多様性と、GXやDXといった環境変化がもたらす成長機会とをかけあわせることで、総合化学の「Power」を最大限に発揮したいと考えております。
GXの大きな流れの一つが、カーボンニュートラルに向けた動きの加速であります。当社は、当社グループのGHG排出量をゼロに近づける「責務」と、炭素資源循環技術・製品を通じて世界の温室効果ガス(GHG)を削減する「貢献」の両面から取り組みを推進しております。まずは2030年までに、LNGへの燃料転換や製造プロセスの徹底的な省エネ・合理化等により当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量を2013年度比で50%削減するとともに、新しい技術の開発を進めます。そして2030年以降、その新技術を次々に社会実装していくことで、2050年のカーボンニュートラルを実現したいと考えております。
また、DXの流れは、IoT、5G、AIなど新たな技術により年々その勢いを増しています。当社は、DX戦略1.0で実施してきた研究開発、プラント、サプライチェーンマネジメント、オフィスの4領域における生産性向上の取り組みと並行して、事業特性に応じたDX課題に取り組み、各事業での競争力強化につながるDX戦略2.0、そして新たなビジネスモデルの創出を目指すDX戦略3.0に注力します。

各事業部門の戦略と取り組み
各事業部門における、事業内容と本中期経営計画での主な取り組みは、以下のとおりであります。
(エッセンシャルケミカルズ部門)
エッセンシャルケミカルズ部門は、日本・シンガポール・サウジアラビアに製造拠点を有し、それぞれの拠点の強みを活かして、ポリエチレン・ポリプロピレン・メタアクリル等を製造し、自動車・家電・食品など幅広い産業に供給しております。
日本およびシンガポールの拠点では、顧客の要望を先取りした高付加価値製品を開発するとともに、高品質な製品を安定供給しております。また、これまでアジア市場の優良顧客と長年かけて培ってきた信頼関係も当社グループの大きな強みとなっております。サウジアラビアの拠点では、安価な原燃料を活用し、コスト競争力のある製品を製造しております。
本中期経営計画においては、GXを意識した事業ポートフォリオの変革を図り、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルをはじめとした、カーボンニュートラルの技術の開発を行い、社会実装を加速させます。また、既存事業を高付加価値品へシフトするとともに、日本・シンガポールの生産最適化を行い、カーボンニュートラルを見据えた社外連携にも取り組みます。サウジアラビアでの事業については、いわゆるキャッシュ・カウとして、引き続き安定稼働に努めてまいります。
当連結会計年度の取り組み実績として、使用済み自動車から得られる廃プラスチックを用いたマテリアルリサイクルの事業化に向け、パイロット設備の導入を決定したほか、愛媛工場においてアクリル樹脂のケミカルリサイクル実証設備を稼働させ、循環型社会の実現に向けた取り組みを推進しました。また、MMA事業部を新たに発足させ、日本・シンガポールを一元管理することで、機動的な製造販売体制を確立しました。一方、カプロラクタム事業から撤退する等、事業構造の改善にも取り組んでおります。
(エネルギー・機能材料部門)
エネルギー・機能材料部門は、電池部材やスーパーエンジニアリングプラスチックス等の高機能材料の販売により、エコカー等の環境調和製品の性能向上に貢献するソリューションを提供しております。
世界最高水準の高耐熱性を持つリチウムイオン二次電池用セパレータや、電子部品をはじめ様々な用途に使用されるスーパーエンジニアリングプラスチックス、また高純度アルミナやレゾルシンのように世界トップシェアを維持する製品等、多様化する顧客ニーズを捉えた製品ラインナップと、これらの製品群を生み出す研究開発力や評価・製造・プロセス技術が当社の強みであると考えております。
本中期経営計画においては、電池部材およびスーパーエンジニアリングプラスチックスを成長事業と位置づけ、集中的に資源を投下します。リチウムイオン二次電池用セパレータでは、高安全性、長寿命化等の強みを活かし、多様化する顧客ニーズに対応してまいります。正極材では、生産性が高い焼成プロセスの事業化を目指します。一方、低採算事業については、縮小・撤退も視野に方向性を見極めてまいります。また、次世代事業として、固体型電池や分離膜等の新規技術の開発促進に取り組みます。
当連結会計年度の取り組み実績として、愛媛工場において、高純度アルミナの新規高性能グレード品の新設備の建設に着手しました。また、5GやEVの普及等を背景に需要が拡大しているLCPについて、愛媛工場での生産能力増強を進めております。いずれも2023年度中に稼働を開始する予定であります。また、京都大学との産学共同講座において「柔固体」型電池の共同開発に成功し、安全性の高い固体型電池の早期実用化に向けて大きく前進しました。
一方、今後の安定的な収益確保が難しいことから、大阪工場にある染料の製造設備を停止し、当事業から撤退しました。さらに、シンガポールのS-SBR事業からの撤退を決定したほか、千葉工場のEPDM事業も生産を終了し、2023年度に撤退予定であります。競争力のある分野に経営資源を振り向け、事業のポートフォリオ高度化を図ります。
(情報電子化学部門)
情報電子化学部門では、高機能なディスプレイ関連材料や高品質な半導体材料を提供することで、ディスプレイや半導体の性能および生産性の向上に貢献しております。
当社グループはこれまで、マーケットインのグローバルサプライチェーン構築に努め、製品の開発・供給に活かしてまいりました。こうした開発供給体制に加え、総合化学メーカーならではの複数の素材や技術の組み合わせによる、高付加価値製品を提供することが可能です。また、ディスプレイ・半導体双方の領域における技術や品質対応により蓄積してきたノウハウを駆使し、境界領域の製品を開発できることも当社の強みとなっています。
本中期経営計画においては、ディスプレイ関連材料事業では、当社核心技術を活かした有機ELディスプレイ向け材料等の高付加価値品比率をさらに高めつつ、次世代ディスプレイ向け材料の開発・上市に取り組みます。
半導体関連材料事業では、シリコン半導体向けに、拡大する需要を確実に取り込みつつ、顧客プロセスの革新に応える先端材料の開発・拡販を進めます。また、化合物半導体向けに、省エネ等社会課題解決に貢献する次世代パワーデバイス材料の事業化を目指します。
また、新規事業開拓のため、社外とも積極的に連携しながら、次世代高速通信や高感度イメージセンサーに対応した材料等の開発に注力します。
当連結会計年度の取り組み実績として、米国に半導体用プロセスケミカルの新工場を建設することを決定しました。同事業の米国市場における戦略的な拠点として、旺盛な需要を確実に取り込み、事業拡大を目指します。新工場の稼働開始は、2024年度を予定しております。半導体用プロセスケミカルの生産体制をグローバルに拡充し、高品質な製品を安定供給することにより、スマート社会やスマートモビリティの実現に貢献してまいります。
(健康・農業関連事業部門)
健康・農業関連事業部門では、特長ある農薬・農業資材やメチオニン(飼料添加物)、医薬品原薬等をグローバルに提供することで、食糧の生産性向上や人々の健康促進等に寄与しております。
当社グループは、自社開発の優れた化学農薬に加え、バイオラショナルやポストハーベストなど高いシェアを持つユニークな農薬や農業資材を品揃えし、グローバルに販売しております。当社グループの農薬事業の強みは、特長ある農薬の品揃えとそれを生み出す研究開発力、グローバルな販売網であります。また、メチオニン事業では、高い生産技術を活かし、製品を原料から一貫生産し安定供給しております。
本中期経営計画においては、当社グループが強みを持つバイオラショナル・ボタニカル事業においては、引き続き、各地域での更なる事業拡大およびグローバルな製販研の機能強化に取り組みます。化学農薬の製品群については、インディフリン等の大型新規剤の販売最大化に注力するとともに、より環境負荷低減効果を重視した製品の開発・上市に取り組んでまいります。また、南米での事業買収等により拡大したサプライチェーンを強化するとともに、投資成果を着実に回収し資本効率の向上を目指します。研究開発では、強みのある事業領域に重点的に資源を投入し、オープンイノベーション等も積極的に活用してまいります。
当連結会計年度の取り組み実績として、世界最大の大豆生産国であるブラジルにおいて、新規有効成分インディフリンを含む大豆用殺菌剤エクスカリア マックスの農薬登録を取得し、本格的に販売を開始しました。世界最大の農薬市場である南米地域にて、今後さらに本剤の販売を拡大してまいります。また、バイオラショナル事業においては、研究所の拡張や米国工場の増強に加えて、米国に新組織を設立して一部の顧客に対して直接販売を行うなど、製販研の各機能を強化しました。さらに、天然物由来の農業資材であるバイオスティミュラントを手掛ける米国のFBサイエンス ホールディングス インコーポレーテッド(以下「FBサイエンス社」という。)の買収をきっかけに、この分野にも本格的に参入しており、今後も事業拡大を進めてまいります。
(医薬品部門)
医薬品部門では、医療用医薬品や診断用医薬品等の開発・販売を行うことで、人々の健康で豊かな暮らしを支えております。現在、医療用医薬品は住友ファーマ株式会社(以下「住友ファーマ」という。)、診断用医薬品は日本メジフィジックス株式会社(いずれも当社の連結子会社)で事業を展開しております。
住友ファーマでは、ラツーダの米国での独占販売期間終了後の再成長および「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」の地位確立に向けた足場を築く期間として、持続的な成長を支える収益基盤の確立ならびに自社起源のイノベーションを事業として結実させるための研究開発に取り組み、事業構造の転換を図っております。同時に、米国グループ会社の再編を契機にグループ経営体制を再編し、しなやかで効率的な経営基盤への変革に取り組んでまいります。日本メジフィジックス株式会社は、核医学という極めて専門性の高い医療分野における日本のリーディングカンパニーとして、新たな診断薬の開発に取り組んでおります。
本中期経営計画においては、ラツーダの北米における独占販売期間終了後の収益基盤確立が最優先課題であります。オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)を基幹3製品と位置づけラツーダを上回る販売を目指すとともに、他社との提携や適応症の拡大など剤のポテンシャルの最大化を図ります。また、中長期的な成長を見据え、精神神経領域の新製品の創出や再生・細胞医薬品等にも注力し、成長が見込まれるCDMO事業(製法開発・製造等の受託事業)も一層強化してまいります。
当連結会計年度の取り組み実績として、住友ファーマの連結子会社であるマイオバント サイエンシズ リミテッド(以下「マイオバント社」という。)がファイザー社と提携して取り組む子宮筋腫治療剤マイフェンブリーについて、子宮内膜症への適応追加承認を米国で取得しました。また、そのマイオバント社を完全子会社化することで、収益基盤の強化と経営スピードの加速を図りました。同社が扱うオルゴビクス、マイフェンブリーを今後の成長エンジンの一つとして、米国でのさらなる販売拡大に取り組んでまいります。
事業環境及び今後の業績の見通しについて
(2022年度実績)
中期経営計画の初年度である2022年度は、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻を背景とする経済の低迷、それらに端を発した世界的な需要減退、原燃料価格の上昇等、当社の事業環境に想定を超える多くの逆風が吹いた結果、コア営業利益は928億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は70億円という厳しい水準に留まりました。
(2023年度以降の見通し)
2023年度の業績は、エッセンシャルケミカルズ部門での石油化学品市況が最悪期を脱することや、健康・農業関連事業部門での農薬の販売拡大等の効果による増益要因はあるものの、医薬品部門におけるラツーダの独占販売期間終了の影響が大きく、コア営業利益は400億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は100億円と、引き続き低水準に留まる見込みです。しかしながら、2024年度に向けては、医薬品の基幹3製品(オルゴビクス、マイフェンブリー、ジェムテサ)を含む複数の成長ドライバーの販売伸長や、低収益事業の再編・撤退等により事業ポートフォリオ高度化を進めることで、コア営業利益2,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,000億円を目指します。
中長期的には、ROE10%以上、ROI7%以上、D/Eレシオ(有利子負債/純資産)0.7倍程度等の財務指標を安定的に達成することを目指します。当社の財務KPIであるROE10%は、事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するという考えのもと、社会課題の解決に重要な貢献ができると判断した事業を一定の収益性が見込める限り実施していくという方針に基づき設定したものであります。またROIについては、WACC(加重平均資本コスト)を上回るレベルを求め、7%をハードルとしております。D/Eレシオについては、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、0.7倍程度を目安としております。

■2022-24年度業績予想及び計画

事業等のリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると当社グループが認識している主要なリスクを以下に記載しております。ただし投資家の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限定されるものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループではこのようなリスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすためのリスク管理体制の整備・充実に努めております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 (ハ)リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。
当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様であります。事業に係る市場リスクについては、主に以下のようなものがあります。
(価格競争)
当社グループの事業は価格競争に晒されております。海外企業の国内市場参入、関税引き下げ等による輸入品の流入、ジェネリック品の台頭等、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想されます。当社グループはコストの低減に努めておりますが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、当社グループの保有する有形固定資産等について減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による将来の課税所得に関する予測・仮定の変更や税制改正による税率変更等により繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(海外マーケット)
当社グループの海外売上収益は売上収益の6割以上を占め、特にアジア市場での販売が多く、近年では南米等でも事業を拡大しております。そのため、特定の地域での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化等による値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(エッセンシャルケミカルズ)
エッセンシャルケミカルズ部門の主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがあります。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れること等により、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存しております。購入先を複数にする等、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めておりますが、時に主要原料の不足が生じないという保証はありません。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(エネルギー・機能材料)
エネルギー・機能材料部門では、電気自動車(EV)用途を中心に、リチウムイオン二次電池部材を供給しておりますが、各国におけるEV優遇政策の転換により市場が減退した場合、また技術革新により次世代の電池が主流となり、かつ当社グループがこれに対応できなかった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(情報電子化学)
情報電子化学部門の製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要があります。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(健康・農業関連事業)
健康・農業関連事業部門の農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の生育状況や病害虫の発生状況に左右されます。また、飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがあります。作物の生育状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、あるいは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(医薬品)
医薬品部門では、新薬開発の難度が高まる中、開発が今後計画どおりに進み承認・発売に至るとは限らず、また、有効性や安全性の観点から開発が遅延し、または開発を中止しなければならない事態も起こり得ます。そのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
国内においては、急速に進展する少子高齢化等により国家財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進等の医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の議論が続けられております。また、米国においても薬価抑制を企図した制度改革が決定・導入される可能性があり、中国においても国民医療費抑制を企図する医療制度変更が推進される可能性があります。これら医療制度改革は、その方向性によっては、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(為替レート変動)
当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しておりますが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っております。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになります。さらに、近年では南米やインドなど海外での事業活動の拡大とともに、それぞれの地域の通貨で米ドルやその他通貨に対する為替レートの変動影響も大きくなっています。このようなリスクに対し、為替予約等の通貨ヘッジ取引や、円建輸出取引を行うこと等により、為替レートの短期的な変動によるリスクを最小限にするように努めておりますが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外の関係会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されております。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
為替レート変動がコア営業利益に与える影響は、米ドルに対して円が1円の円高となった場合、年間15億円程度の減益と試算しております。
(金利変動)
当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状態および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断しております。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っておりますが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(株式相場変動)
当社グループが保有する有価証券の多くは、市場性のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、世界各国に生産・販売の拠点を持ち、海外売上比率は6割を超えております。そのため、貿易摩擦による関税の引き上げ、地域紛争によるサプライチェーン分断等、地政学的問題が発生した場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社とサウジアラビアン オイル カンパニーが共同で設立したラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(以下「ペトロ・ラービグ社」という。)は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」および「ラービグ第2期計画」)を運営しております。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入しております。また、ペトロ・ラービグ社の行っている銀行借入の一部に対して、当社は債務保証を行っております。当該保証の履行により、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しておりますが、当社グループおよび出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー等の買収効果を得られない可能性があります。事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られないと判断された場合、あるいは適用される割引率が高くなった場合にはのれん等の減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っております。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、研究開発現場へのAI/MIの実装とその徹底活用、アカデミアやスタートアップとの連携(オープンイノベーション)強化により研究開発を推進してまいります。
当社グループは、気候変動問題を社会が直面する重要課題の一つと捉えており、その解決に向け、総合化学企業として培ってきた技術力を活かし、気候変動問題に対して、製品の製造工程の合理化等によるさらなる環境負荷低減という責務と温室効果ガス(GHG)削減に資する製品の開発による貢献等に積極的に取り組んでおります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、地球規模で私たちの生活に大きな影響を及ぼしている気候変動問題の解決に向け、「責務」と「貢献」の両面から取り組んでまいります。
プラスチックは、自動車や航空機から電子機器、生活用品、各種包装材に至るまで、さまざまな用途に用いられる素材として人々の生活を支えていますが、使用後の適切な処理・再利用が十分に行われていないために環境汚染を引き起こしているという問題があります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、技術開発等を通じて、プラスチック資源循環の実現に取り組むことで、循環社会実現後のプラスチック市場において有利な地位に立つ可能性があります。
当社グループは、製造設備の停止や製造設備に起因する事故等による潜在的なリスクを最小化するため、関係法令への対応は勿論のこと、リスクに基づいて、設備の定期的な点検や安全諸施策を、実施しております。しかしながら、リスクは常に一定ではなく、製造設備で発生する事故、台風や地震等の自然災害等による影響を完全に防止・軽減できる保証はありません。
事故等により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、事業活動に支障をきたすほか多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事故・災害に至る可能性のあるリスクについて、適宜、情報共有を図り、対応事項の改善見直しを実施しております。
当社グループは、世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って、各種製品を製造しておりますが、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたってリコールが発生しないという保証はありません。大規模な製品事故は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、農薬や医薬品等は各国の厳しい審査を受けて承認されておりますが、科学技術の進歩や市販成績が蓄積された結果から、新たに品質問題や副作用が見つかることもあります。このように上市後予期せぬ品質問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ITの活用を通して、業務の生産性向上や事業の競争力確保、新たなビジネスモデル創出を追求するデジタル革新が加速している一方で情報システムに関するさまざまな影響を及ぼすサイバー攻撃の脅威が高まっており、事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、情報、情報システムおよび情報通信ネットワークを正しく管理し、漏えいや紛失を未然防止する対策、およびセキュリティインシデント発生時の影響を最小限に抑える対策を講じ、サイバーセキュリティを経営課題と捉え、適切に対応してまいります。
当社グループでは、プラント、研究開発、オフィス、サプライチェーンマネジメントのそれぞれの領域において、IoT、AI、MIやRPA等のデジタル技術を積極的に活用し、業務プロセスの飛躍的な生産性向上、既存事業の競争力確保、新たなビジネスモデルの実現に取り組んでおります。しかしながら、デジタル技術の適用が著しく遅延した場合や、他社がデジタル技術を活用して生産性や競争力を向上させる、あるいは新たなビジネスモデルを創造するなど事業環境の急変により、当社グループの競争力が相対的に低下することで経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスを企業経営の根幹と位置づけ、当社コンプライアンス委員会の指導・監督の下、グループ全体でのコンプライアンス推進体制を構築・運用しております。また、当社コンプライアンス委員会傘下の地域法務・コンプライアンス統括(RLCO)からのグループ会社に対する指導・支援を強化する等、グループ全体でのコンプライアンスの徹底に注力しております。しかしながら、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクを完全には排除することはできない可能性があり、国内外の法令等に抵触する等のコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、また損害賠償責任や罰金が課される等、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行しております。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈およびその他の政策変更ならびにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来的に環境および化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。
当社グループは、人権尊重を事業継続のための基盤の一つと位置付けており、「住友化学グループ 人権の尊重に関する基本方針」を制定するとともに、推進体制として「人権尊重推進委員会」を設置し、人権デュー・デリジェンス等の人権尊重の取り組みをグループ一体となって行っております。しかしながら、このような施策を講じても、人権問題に関するリスクを完全には排除することができない可能性があり、当社グループのバリューチェーン上で人権問題が発生した場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきましたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性に加え、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、将来的に知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。
世界的な感染症の流行が発生した場合、当社グループの事業運営や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループはこのようなグループ全体に影響を及ぼすリスクに対し、リスク・クライシスマネジメント委員会を設置し、対処方針を審議しております。また、グループ全体で事業継続計画を策定しており、感染状況の段階に応じた事業運営を行うこととしております。
当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状態に重要な悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り、判断および仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積りおよび仮定に関する不確実性があるために、翌連結会計年度に係る連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態または経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積り、判断および仮定は、以下のとおりであります。
・非金融資産の減損
有形固定資産、のれん及び無形資産の減損テストにおいて、資金生成単位を判別したうえで、当該資金生成単位における使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか高い方を回収可能価額として測定しております。当該処分コスト控除後の公正価値算定上の仮定、あるいは使用価値算定の基礎となる資金生成単位の使用期間中および使用後の処分により見込まれる将来キャッシュ・フロー、割引率等の仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、有形固定資産、のれん及び無形資産に係る減損損失額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産については、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しております。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて決定した将来の各事業年度の課税所得の見積りを前提としております。当該将来の課税所得の見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、繰延税金資産の計上額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・引当金の測定
引当金は、将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローの期末日における最善の見積りに基づいて測定しております。将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローは、将来の起こりうる結果を総合的に勘案して算定しております。これら引当金の測定において使用される仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、引当金の測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・金融商品の公正価値
特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いております。当該観察不能インプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響は緩和されたものの、インフレ抑制に向けた世界的な金融引き締めや中国経済の回復の遅れ等が景気の下押し要因となり、成長率は前年を大きく下回りました。また、国内経済についても、個人消費の回復等により景気は持ち直しの動きが見られたものの、世界経済の減速や原材料価格の上昇等により、総じて厳しい事業環境となりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ1,300億円増加し、2兆8,953億円となりました。損益面では、コア営業利益は928億円、営業損益は当期に多額の減損損失を計上したことにより310億円の損失となった一方、親会社の所有者に帰属する当期損益は為替相場が円安方向に推移したことによる為替差益の影響もあり70億円の利益となりました。各段階損益ではそれぞれ前連結会計年度を下回る結果となっております。
売上収益は、主にエッセンシャルケミカルズやエネルギー・機能材料において市況が上昇しました。また、健康・農業関連事業において南米での農薬の販売が増加し、各セグメントにおいては円安による在外子会社の邦貨換算差の影響がありました。一方で、エッセンシャルケミカルズやエネルギー・機能材料における需要減少、情報電子における巣ごもり需要の一巡や医薬品におけるラツーダ(非定型抗精神病薬)の米国での独占販売期間終了の影響により出荷が減少しました。
この結果、売上収益は、前連結会計年度の2兆7,653億円に比べ1,300億円増加し、2兆8,953億円となりました。

コア営業利益は、農薬の販売が好調であった健康・農業関連事業を除くすべてのセグメントで損益が悪化しました。中でもエッセンシャルケミカルズにおいてはペトロ・ラービグ社の業績の悪化に加え、原料価格上昇に伴う交易条件の悪化の影響がありました。また、医薬品においてはラツーダの販売減少や前期の提携一時金の収益計上に加え、邦貨換算差等による販売費及び一般管理費の増加や国内での薬価改定の影響がありました。この結果、コア営業利益は、前連結会計年度の2,348億円に比べ1,420億円減少し、928億円となりました。

金融収益及び金融費用は、為替相場が円安で推移し為替差益を計上したことにより、312億円の利益となりました。前連結会計年度の361億円の利益に比べ49億円悪化しました。この結果、税引前利益は、前連結会計年度の2,511億円に比べ2,509億円減少し、2億円となりました。
(法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する当期利益及び非支配持分に帰属する当期利益)
法人所得税費用は471億円となり、税引前利益から法人所得税費用を控除した当期利益は、469億円の損失となりました。
非支配持分に帰属する当期損益は、主として住友ファーマ等の連結子会社の非支配持分に帰属する損益からなり、前連結会計年度の243億円の利益に比べ782億円減少し、539億円の損失となりました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度の1,621億円に比べ1,551億円減少し、70億円となりました。
当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出したコア営業利益で表示しております。
(その他)
上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。これらの売上収益は前連結会計年度に比べ、182億円増加し854億円となり、コア営業利益は前連結会計年度に比べ54億円減少し104億円となりました。
生産、受注および販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の状況については、セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記販売実績は、外部顧客への売上収益を示しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(3) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ1,426億円減少し、4兆1,655億円となりました。減損によるのれん及び無形資産の減少や、貸付金の回収がありました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ701億円増加し、2兆6,763億円となりました。有利子負債は、前連結会計年度末に比べ1,109億円増加し、1兆4,614億円となりました。
資本合計(非支配持分を含む)は、住友ファーマがマイオバント社を完全子会社化したことに伴い資本剰余金および非支配持分が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ2,128億円減少し、1兆4,892億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて0.2ポイント減少し、28.1%となりました。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が減少しましたが、減損損失等の非資金損益項目の増加や、運転資金の減少等により、前連結会計年度に比べ601億円減少し、1,116億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、貸付金の回収による収入や、投資の売却及び償還による収入等により、前連結会計年度1,154億円の支出に比べ960億円支出が減少し、194億円の支出となりました。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の563億円の収入に対して、当連結会計年度は922億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,785億円の支出となりました。
また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、売却目的で保有する資産への振替額も加味すると前連結会計年度末に比べ596億円減少し、3,058億円となりました。
当社グループの資金需要および資本の財源ならびに資金の流動性は、次のとおりであります。
当社グループの資金需要には、通常の営業活動に必要となる運転資金や既存設備の定期修理のための資金に加え、中期経営計画(2022-2024年度)の基本方針の一つである「事業ポートフォリオの高度化(事業の強化と変革)」を推進するための投資に必要となる資金があります。成長への目配りもしながら案件を徹底的に厳選するとともに、資産売却やCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)短縮等により財務体質の改善に努めてまいります。
また、当社グループは株主還元についても、経営上の最重要課題の一つと考えております。各期の業績、配当性向ならびに将来の事業展開に必要な内部留保の水準等を総合的に勘案の上、安定的な配当を継続することを基本とし、中長期的に配当性向30%程度を安定して達成することを目指しております。
当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期にわたり安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することです。D/Eレシオ(有利子負債/純資産)については、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、中長期的に0.7倍程度を目安としております。当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパー(当連結会計年度末の当社発行枠1,800億円)の発行等により、必要資金を調達しております。
当社グループは、グループファイナンス等により手元資金の最大活用を図っており、現金及び現金同等物の保有額は事業遂行上必要な水準に維持することを目指しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は3,058億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は137.9%であります。
また、大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび大手外銀のシンジケート団による230億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有しており、事業等のリスクの顕在化等による突発的な資金需要に備え、手元流動性を確保しております。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 2022-24年度中期経営計画」に記載のとおりであります。
(注) 「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」はIFRSの開示要請に基づくものが含まれます。また、IFRSにより要求されている、関連するその他開示項目は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 39.コミットメント」に記載のとおりであります。
(2) マイオバント サイエンシズ リミテッドの完全子会社化に関する契約
当社の連結子会社である住友ファーマ、スミトバント バイオファーマ リミテッド(以下「スミトバント社」という。)、およびマイオバント社の3社は、スミトバント社によるマイオバント社の完全子会社化に関する契約を締結し2023年3月10日に完全子会社化を完了しました。
(3) 住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式譲渡に関する契約
住友ファーマは、2022年11月30日付で、同社の完全子会社である住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を、株式会社メディパルホールディングスに譲渡する契約を締結し、2023年3月31日に株式譲渡を完了しました。
(4) 住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡に関する契約
住友ファーマは、2022年12月26日付で、同社の完全子会社である住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を、三井物産株式会社に譲渡する契約を締結しました。
(5) ブロバナおよびゾペネックスHFAの販売権譲渡に関する契約
住友ファーマの連結子会社であるサノビオン ファーマシューティカルズ インコーポレーテッドは慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤ブロバナおよび喘息治療剤ゾペネックスHFAの米国における販売権をルピン社(本社:インド)に譲渡する契約を締結しました。
(6) 借入契約
住友ファーマは、上記マイオバント社完全子会社化の対価の一部についてブリッジローン契約を締結しました。
(7)当連結会計年度において終了した経営上の重要な契約等
当連結会計年度において契約終了の合意もしくは契約期間満了に伴い終了した、経営上の重要な契約等は以下のとおりであります。
技術導入関係
販売契約等
当社グループ(当社および連結子会社)における主要な設備は、以下のとおりであります。
2023年3月31日現在
(注) 1 土地の面積について、そのうちの借地の面積を[ ]で示しております。
2 帳簿価額のうち「その他」は、工具、器具及び備品および建設仮勘定の合計であります。
3 土地には、主な貸与土地として、愛媛工場に681千㎡および千葉工場に305千㎡が含まれております。また、主な貸与先は当社の連結子会社である住友ファーマ、広栄化学株式会社および新居浜コールセンター株式会社であります。
4 2022年10月1日付で、当社の連結子会社であった株式会社サイオクスを吸収合併し、茨城工場を新設しております。
5 現在休止中の主要な設備はありません。
2023年3月31日現在
(注) 1 土地の面積について、そのうちの借地の面積を[ ]で示しております。
2 帳簿価額のうち「その他」は、工具、器具及び備品および建設仮勘定の合計であります。
3 現在休止中の主要な設備はありません。
2023年3月31日現在
(注) 1 土地の面積について、そのうちの借地の面積を[ ]で示しております。
2 帳簿価額のうち「その他」は、工具、器具及び備品および建設仮勘定の合計であります。
3 スミトモ ケミカル アジア プライベート リミテッドおよびベーラント ノースアメリカ LLCには、同社の連結子会社が含まれております。
4 上記のほか、スミトバント社(医薬品)において310,834百万円の無形資産を計上しております。
5 現在休止中の主要な設備はありません。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注) 譲渡制限付株式報酬としての新株発行によるものであります。
発行価格 536円
資本組入額 268円
割当先 当社の取締役(社外取締役を除く)8名
当社の取締役を兼務しない執行役員(国内非住居者を除く)26名
2023年3月31日現在
(注) 自己株式20,486,616株は「株式の状況」の「個人その他」の欄に204,866単元および「単元未満株式の状況」の欄に16株含めて記載しております。
2023年3月31日現在
(注)1 上記の所有株式数のうち、信託業務に係る株式数は日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)244,390千株、株式会社日本カストディ銀行(信託口)104,771千株、株式会社日本カストディ銀行(信託口4)27,760千株であります。
2 上記の所有株式数のうち、退職給付信託に係る株式数は株式会社日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・住友生命保険相互会社退職給付信託口)29,000千株であります。
3 2022年4月4日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書において、株式会社三菱UFJ銀行およびその共同保有者3社が2022年3月28日現在で次のとおり株式を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日現在における実質所有株式数の確認をしておりません。
なお、大量保有報告書の内容は以下のとおりであります。
4 2023年1月19日付で公衆の縦覧に供されている株券等の大量保有に関する変更報告書において、三井住友信託銀行株式会社およびその共同保有者2社が2023年1月13日現在で次のとおり株式を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日現在における実質所有株式数の確認をしておりません。
なお、大量保有に関する変更報告書の内容は以下のとおりであります。





