株式会社クラレ
(注)1.第139期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当 期純損失であるため記載していません。
2.第139期の株価収益率は、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため、記載していません。
3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第142期の期首から適用しており、第142期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
(注)1.最高株価・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。
2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第142期の期首から適用しており、第142期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
当社及び当社の関係会社においては、「ビニルアセテート」、「イソプレン」、「機能材料」、「繊維」、「トレーディング」、「その他」の6部門に関係する事業を行っており、その製品は多岐にわたっています。関係会社のうち、連結子会社は77社、持分法を適用している関連会社は2社です。各事業における当社及び関係会社の位置付け及びセグメントとの関連は次のとおりです。
なお、当連結会計年度から報告セグメントの区分を変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。
事業の系統図は以下のとおりです。

(注)1.図中の会社名で、{ }は「持分法適用会社」を表しています。
2.丸角四角で囲った会社は複数のセグメントにまたがっています。
3.Kuraray Holdings U.S.A., Inc.はKuraray America, Inc.、MonoSol, LLC及びCalgon Carbon Corporationの持株会社です。
(注)1.「議決権の所有割合」欄の(内書)は間接所有割合です。
2.クラレトレーディング㈱、Kuraray Holdings U.S.A.,Inc.、Plantic Technologies Limited、Kuraray Specialities (Thailand) Co., Ltd.、Kuraray Advanced Chemicals (Thailand) Co., Ltd.、Kuraray SC (Thailand) Co., Ltd.及び Kuraray GC Advanced Materials Co., Ltd.は特定子会社です。
3.Kuraray America,Inc.及びKuraray Europe GmbHは、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が100分の10を超えています。
2022年12月31日現在
(注) 1.従業員数は、就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時従業員数は[ ]内に年間の平均人員を外数で記載しています。
2.全社は、基礎研究及び管理部門の従業員です。
3.臨時従業員には、契約社員、パートタイマー及び非常勤嘱託を含み、派遣社員を除いています。
2022年12月31日現在
(注) 1.従業員数は、就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時従業員数は[ ]内に年間の平均人員を外数で記載しています。
2.全社は、基礎研究及び管理部門の従業員です。
3.臨時従業員には、契約社員、パートタイマー及び非常勤嘱託を含み、派遣社員を除いています。
4.平均年間給与(税込)は基準外賃金及び臨時給与(賞与)を含んでいます。
労使関係について特に記載すべき事項はありません。
2022年12月31日現在
(注) 1.従業員数は、就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)です。
2.以下の前提に基づき算定しています。
対象期間:2022年度(2022年1月~12月)
賃金:基準外賃金及び臨時給与(賞与)を含んでいます。
パート・有期雇用従業員:契約社員、パートタイマー及び非常勤嘱託を含み、派遣社員を除いています。
クラレグループは、企業ステートメントの使命「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」のもと、創立100周年となる2026年度に向けた長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』で掲げる「独自の技術に新たな要素を取り込み、顧客、社会、地球に貢献し、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」を目指しています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年12月31日)現在において当社が判断したものです。
当社グループは、この長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』の実現に向けて、2022年度から始まった5か年の中期経営計画「PASSION 2026」で以下3つの挑戦を設定しています。
① 機会としてのサステナビリティ
サステナビリティを機会としてとらえ、グループ一丸となって推進します。
② ネットワーキングから始めるイノベーション
社外・社内を問わず、人と人、技術と技術をつなげることで、新たな成長のドライバーを生み出します。
③ 人と組織のトランスフォーメーション
デジタルでプロセスを変え、多様性で発想の幅を広げ、人と組織に変革をもたらします。
中期経営計画「PASSION 2026」の2年目となる2023年度は、イソプレン タイ拠点、水溶性ポバールフィルム ポーランド新工場、米国での活性炭製造設備などを確実に立ち上げるとともに、成長事業への重点的な資源配分により事業ポートフォリオの高度化を図ります。当社グループは創立100周年となる2026年度に向け、持続的に成長するスペシャリティ化学企業として今後も挑戦し続けます。
また、当社グループは創業当時から、事業活動を通じ自然環境・生活環境の向上を目指すことで社会のサステナブルな発展に貢献する経営を行ってきました。サステナビリティを重要な経営戦略の一つと捉え、当社と社会が持続的に発展するための優先すべき重要課題(マテリアリティ)を経営レベルで選定し、課題の解決に全社的に取り組んでいます。
中期経営計画「PASSION 2026」においては、当社グループが取り組むサステナビリティに関連する施策を「サステナビリティ中期計画」としてまとめています。
(1) 気候変動への対応
気候変動については、当社の取り組むべき重要課題の一つとして捉え、2020年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同しました。また2022年度を起点とするサステナビリティ中期計画では、気候変動の緩和策として、温室効果ガス(GHG)の排出量削減と省エネルギーの促進、自然環境の向上に貢献する製品の拡大、サーキュラーエコノミーへの対応などを掲げました。これらの施策を着実に実行すると共に、TCFDが推奨するガバナンス、シナリオ分析に基づく戦略、リスク管理、指標と目標に基づく開示も段階的に充実していきます。
ガバナンス
クラレグループでは、社長を委員長とするサステナビリティ委員会がサステナビリティ活動を推進します。この委員会の傘下には、サステナビリティ中期計画で掲げたグローバル施策を実行するプロジェクトチームを配置し、各プロジェクトを推進します。また、気候変動に関わる諸施策の進捗状況を確認した上で、TCFDに基づく開示を進める「TCFD推進プロジェクトチーム」も傘下に設置し、開示の充実を図ります。
サステナビリティ委員会での討議事項は取締役会に報告し、取締役会の意見をサステナビリティ活動の推進に反映します。
戦略
クラレグループは2021年度に、低炭素社会への移行において生じる事象、及び気候変動により発生する物理的な事象に対するリスクと機会を下表1. のとおり選定しました。
表1. クラレグループの気候変動によるリスクと機会

2022年度には、国際エネルギー機関(International Energy Agency; IEA)が発行しているWorld Energy Outlook等から、低炭素社会への移行が進む2℃以下シナリオ(含.1.5℃シナリオ)及び気候変動が進む4℃シナリオに基づくシナリオ分析を実施し、気候変動によるリスクと機会のインパクトを評価しました。
2℃以下シナリオにおけるGHG排出及びエネルギー調達に対する炭素価格※の影響は大きく、2030年のGHG排出削減対策実施後にクラレグループで約320億円の炭素税賦課額が見込まれ、操業コストが増加する可能性が示されました。この対策として、2050年カーボンネットゼロに向けたGHG排出削減計画を着実に進めると同時に、環境貢献の高い製品が創出する市場価値を製品・サービス価格に反映していきます。
※World Energy Outlook 2022より先進国140ドル/t-CO2、新興国25ドル/t-CO2[2030年、1.5℃シナリオ]にて計算
さらに気候変動の影響が大きいビニルアセテート関連事業、及び環境ソリューション事業の各シナリオにおけるリスク及び機会の事業インパクトを算定しました。結果は、下表2. のとおりです。算定した各インパクトへの適切な対応を進めていきます。また、引き続き他の事業の分析を進めていきます。
表2. ビニルアセテート関連事業及び環境ソリューション事業の各シナリオにおける気候変動リスクと機会の
事業インパクト

リスク管理
クラレグループでは表2のリスクに対して、「緩和」と「適応」の両側面についてリスク管理を実施しています。
低炭素社会への移行リスクを「緩和」するため、GHG排出量削減や自然環境貢献製品の売上高拡大を進めています。これらの進捗はサステナビリティ委員会(委員長 : 社長)で確認を行なっています。
一方、気候変動に伴う物理リスクへの「適応」策については、災害対策・事業継続性の観点で各組織が毎年リスク自己評価を実施した結果を、リスク・コンプライアンス委員会(委員長 : サステナビリティ推進本部担当取締役)で討議し、対策が必要な場合は社長が経営リスクとして特定し責任者を指名して対策を進めています。
指標と目標
気候変動緩和の長期目標として、2030年に自社でのGHG排出量(Scope1と2)を2019年度比30%削減、2050年にカーボンネットゼロを掲げました。また、サステナビリティ中期計画では気候変動に関わるGHG排出量削減及び自然環境貢献製品の売上高比率向上目標を下表3. のとおり設定しています。
表3. サステナビリティ中期計画の気候変動に関わる施策と目標

(2) 人的資本、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に向けた取り組み
当社グループは、様々な国籍・背景を持つ人材でなりたち、長期的・持続的な企業価値の向上のためには、それら多様な人材が活躍することが重要です。これを実現するため、グループ共通の人事方針として「クラレグループグローバル人事ポリシー」を制定し、さらに人材の多様性にフォーカスした「クラレグループダイバーシティとインクルージョンに関する基本原則」を定めています。これらの方針に基づき、多様性推進のための人材育成や職場環境の整備に取り組んでいます。
当社グループの中核人材の登用等における多様性の確保に関する目標及び進捗状況については、以下のとおりです。
<中核人材の登用等における多様性の確保に関する目標>
1.前提
・「中核人材=管理職」と定義します。管理職の対象は、当社原籍者(生産事業所を除く。)に、海外関連会社原籍者で当社日本拠点に勤務する者を加えることにより、外国人管理職のインクルージョンの推進状況を反映させます。
・多様性の要素として「女性・外国人・中途採用者」を一つのカテゴリーとして捉え、管理職における同カテゴリーの合計人数が占める割合を目標として設定します。
2.目標
・女性・外国人・中途採用者の管理職に占める割合は、2030年度までに25%に到達することを目標とします。
(ベンチマークとした2021年9月末時点で12%。
女性比率5.1%、外国人比率1.2%、中途採用者比率7.7%:各比率間で重複あり)
3.進捗状況
・女性・外国人・中途採用者の管理職に占める割合は、2022年12月末時点で13%。
(女性比率5.6%、外国人比率1.3%、中途採用者比率7.6%:各比率間で重複あり)
安全対策の見直し・強化
2018年5月に米国子会社で外部委託業者の作業員に負傷を伴う火災事故が発生し、損害賠償を求める民事訴訟が提起されていますが、現在は一部の原告についてのみ係属中です。このような事故を起こさないために、2019年度から開始した海外主要化学プラントの安全監査を継続し、安全対策の見直し・強化を図っています。また、定期的にリスクアセスメントを実施し、抽出されたリスクについては想定される被害の大きさや現状の安全対策のレベルに応じて追加対策を講じリスクの低減に努めています。加えて、2022年度に化学プラントと活性炭プラントを対象とするグローバルPSM(プロセス・セーフティ・マネジメント)監査チームを新たに設置し、活動を開始しました。保安防災に精通した同チームによる組織横断的な活動を通じて多面的に課題を抽出・把握するとともに、改善に向けた知見の情報共有・水平展開を強化します。
当社グループは、重大な経営リスクの適切な管理、法令遵守・企業倫理の徹底、公正な企業活動の実践を目的に、社長直轄のリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。グループリスク管理規定に基づき、国内外の各組織においてリスクの自己評価を実施し、リスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、社長が重大な経営リスクを特定、リスク毎に統括責任者を選定し、リスクの回避・軽減のための対策を進め、取締役会は対策の進捗を確認しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、以下のような項目があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年12月31日)現在において当社が判断したものです。
① 事業環境の変化に関わるリスク
当社グループは、多様な事業ポートフォリオを有しており、グローバルかつ様々な用途分野に展開しています。さらに、当社の製品は特殊化学品が多く、商品市況の影響を受けにくい構成になっていますが、近年、自動車(ガソリンタンク用<エバール>、フロントガラス用PVBフィルム、ブレーキホース補強用ビニロン等)、電気・電子(液晶パネル用ポバールフィルム、コネクタ用<ジェネスタ>等)、環境(水処理・空気浄化用活性炭等)などの成長分野へシフトさせつつあり、業績の依存度も高まっています。これらの分野は、最終製品における業界標準の転換、製品の短寿命化、グローバルな開発競争の激化等、環境変化が激しいため、当社においても重要な事業が縮小・撤退を余儀なくされる可能性があります。
② 原材料に関わるリスク
当社グループの製品である化成品、合成樹脂、合成繊維の主原料は、原油、天然ガスの市況に影響を受けるエチレン等の石油化学製品です。このため、予想を超える市況変動が生じた場合、製品価格への転嫁が遅れること等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
また、長期購買契約の締結や購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めていますが、重要な原材料の提供を担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生、物流の混乱、日本や諸外国における経済制裁や各種規制等により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
③ 製造物責任に関わるリスク
当社グループは、自動車、電気・電子材料、医療(歯科材料等)、食品包装(<エバール>、<PLANTIC>等)など、最終製品の品質に対して重要な役割を担う製品を数多く供給しています。当社グループでは主に製造拠点単位で品質マネジメントシステムを導入し品質の向上に努めていますが、品質の欠陥に起因する大規模な製品回収が発生すると、PL保険でカバーできない損害賠償等の損失の発生、顧客からの信頼や社会的信用の失墜等の可能性があります。
④ 事故・災害に関わるリスク
当社グループは、日本及び欧州、北米、アジア、豪州に生産拠点を設けており、これらの多くは大規模な化学工場です。当社グループは、安全に関する行動原則「安全は全ての礎」に従い、安全のマネジメントシステムを構築・運用し、爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故・災害の未然防止、及び災害発生時の被害の極小化に努めるとともに、重要な生産設備については拠点分散や損害保険によるリスク対応を行っている他、気候変動に起因する激甚災害に対するリスク評価を実施し、その対策を進めています。しかしながら、重大な保安事故、環境汚染、自然災害、大規模な伝染病の流行等が発生すれば、従業員や第三者への人的・物的な損害、事業資産の毀損、長期の生産停止が生じる可能性があります。
また、原燃料、設備・メンテナンス部品やサービスの提供などを担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
⑤ 法規制・コンプライアンスに関わるリスク
当社グループは、多様な社会との接点において遵守すべき事項を「私たちの誓約」として、またこれを企業活動の中で具体的に実践するためのガイドラインを「行動規範」として定めています。そして、法令及び「私たちの誓約」を厳守することを経営トップが宣言しています。この宣言を明記し「行動規範」をわかりやすく解説したコンプライアンス・ハンドブックを、世界中の当社グループ社員全員に配布し周知徹底を図っています。また、当社各地域拠点及びグループ各社において、コンプライアンス統括者を選任するとともに地域別にコンプライアンス委員会を設け、全社的なテーマの他、地域特有のテーマについても取り組んでいます。
独占禁止法遵守に向けた取り組みとしては、グローバルなコンプライアンスプログラムを構築しています。具体的には、独占禁止法遵守指針の定期的見直し、競合他社との接触に関するガイドラインの制定、競合他社との取引・会合の事前審査、役員・従業員向けセミナーの開催、遵守状況に関する社内聴取、入札情報の管理及び入札部署を対象とした法務部監査等の様々な施策を行っています。
以上のとおり、コンプライアンスの徹底を図っていますが、重大な法令違反を起こした場合、顧客からの信頼や社会的信用の失墜に加え、損害賠償責任や罰金が課されることなどにより、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、各国の様々な法規制の適用を受けています。将来的に法規制の大幅な変更や規制強化がなされた場合には、新たな対策コストの発生や事業活動の制約につながり、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑥ 知的財産に関わるリスク
当社グループは、独自技術による事業・製品を数多く有しています。当社グループの知的財産権への重大な侵害や当社の権利に対する係争が発生した場合、また当社グループが他社の知的財産権を侵害した場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑦ 訴訟に関わるリスク
当社グループは、国内及び海外事業に関連して、取引先や第三者との間で、訴訟その他法的手続きが発生するリスクがあります。重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
2018年5月に米国子会社で外部委託業者の作業員に負傷を伴う火災事故が発生し、損害賠償を求める民事訴訟が提起されています。本訴訟は一部の原告についてのみ現在も係属中で、弁護士の協力を得ながら対応を進めています。
⑧ 為替の変動に関わるリスク
当社グループは、日本国内及び欧州、北米、アジア、豪州などの海外諸地域で生産、販売を行っています。当社グループが国内で生産し、海外へ輸出する事業では製品の輸出価格が為替変動の影響を受けます。一方、海外の事業拠点で生産、販売する事業では、異なる通貨圏との間の調達・販売価格及び外貨建て資産・負債の価額が為替変動の影響を受けます。為替予約等によるリスク軽減措置を講じていますが、想定を超える為替変動により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑨ 海外事業展開に関わるリスク
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、海外売上高比率が7割を超えています。当社グループは、米国、ドイツ、中国、香港、シンガポール、タイ、インド、ブラジルに地域会社を設置し、各国・各地域のリスク情報収集並びにビジネス動向の分析を常時行い、当該地域を越えて対応が必要となる場合は地域会社、カンパニー所管会社、本社の該当部署が連携する体制を構築しています。しかしながら、各国・各地域での大規模な伝染病の流行、戦争・暴動・テロ等、偶発的な要因や、国家や地域の対立による貿易戦争、予期せぬ現地法規制の変更等によって、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
ロシア・ウクライナ情勢について、当社グループは2022年度に天然ガスの高騰等の影響を受けましたが、今後の動向次第では、需要の低迷やサプライチェーンの混乱、天然ガスの再高騰や原材料の調達難などにより、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑩ 固定資産の減損に関わるリスク
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しています。経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、保有する固定資産について減損損失が発生し、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑪ 環境に関わるリスク
当社グループは、「クラレグループ環境基本方針」を定め、環境に関する各種法規制を遵守するとともに、GHG排出量削減等の地球温暖化対策の推進、化学物質の排出抑制、資源の有効利用等の環境改善に継続して取り組んでいます。また、気候変動がもたらす異常気象や激甚災害へのリスク評価及び対策を強化しています。これらに加え、当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しており、情報開示の拡充に努めています。しかしながら、予期せぬ事故や自然災害等により環境汚染が生じた場合や、環境に関する規制が強化された場合は、事業活動の制限や対策費用の増加等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑫ 情報セキュリティに関わるリスク
当社グループは、事業活動の基盤である情報システム・ネットワークに様々なセキュリティ対策を実施するとともに、情報管理体制のさらなる強化を図っていますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセス等により情報システム等に障害が生じた場合や、企業情報及び個人情報等が社外に流出した場合は、事業活動の停滞や信用の低下等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年12月31日)現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の概況及び分析
当連結会計年度における世界経済は、各国での経済活動の制限緩和に伴い、緩やかな回復が続きました。一方で、急速なインフレ進行を背景とした各国での政策金利の上昇、ロシアのウクライナ侵攻の長期化といった地政学リスクの影響などもあり、年後半には景気減速の動きがみられ、先行きが不透明で予断の許さない状況が続きました。
かかる状況下、当社グループは、当期からスタートした中期経営計画「PASSION 2026」に掲げる3つの挑戦、①機会としてのサステナビリティ、②ネットワーキングから始めるイノベーション、③人と組織のトランスフォーメーション、を推進しました。また、これまでに構築してきたグローバルネットワークを活かし、付加価値の高い製品の安定供給に注力するとともに、原燃料価格高騰の影響を受けた製品の価格改定を進めました。
その結果、当社グループの業績においては、売上高は756,376百万円(前年同期は629,370百万円)、営業利益は87,139百万円(同72,256百万円)、経常利益は84,060百万円(同68,765百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は54,307百万円(同37,262百万円)となりました。なお、当連結会計年度において、米国子会社の一部生産設備の停止などに伴う操業休止関連費用として5,785百万円を特別損失に計上しました。
また、2022年1月1日に組織改定を行い、アクア事業のセグメント区分を「その他」から「機能材料」に変更しました。加えて、一部の内部取引利益の消去について、各セグメント及び全社への配分方法を変更しました。当連結会計年度の比較及び分析は、これらの変更を反映した数字に基づいています。さらに、2022年1月1日から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用していますが、収益認識会計基準第84項ただし書きに定める経過的な取扱いに従い、前連結会計年度においては、新たな会計方針を遡及適用していません。トレーディングセグメント及び調整額の当連結会計年度の売上高が前期に比べ大きく変動していますが、これは主に、トレーディングセグメントにおける代理人取引の売上高の計上額について、収益認識会計基準等の適用により、取引総額から純額へと変更したことによるものです。なお、当該変更により、従来の方法に比べてトレーディングセグメントの売上高が84,985百万円減少しています。
(単位:百万円)
[ビニルアセテート]
当セグメントの売上高は385,345百万円(前年同期は304,690百万円)、営業利益は77,547百万円(同58,255百万円)となりました。

① ポバール樹脂は、米国子会社の一部生産設備の不具合による停止や、年後半の需要減退により販売量が減少しました。一方、原燃料価格高騰を受け、製品価格の改定を進めると同時に高付加価値品へのシフトを進めました。光学用ポバールフィルムは、年央以降液晶パネルの在庫調整の影響を受け、出荷が大幅に減少しました。なお、テレビ用パネル大型化のニーズに対応するため、倉敷事業所での設備投資(2024年央稼働予定、2022年5月9日公表)を決定しました。高機能中間膜は、PVBフィルムが北米の建築向けを中心に堅調に推移しました。水溶性ポバールフィルムは、洗濯用個包装洗剤向けの販売が堅調でした。
② EVOH樹脂〈エバール〉は、食品用途が好調で販売量が増加したことに加え、製品価格の改定を進めました。旺盛な需要に対応するため、生産性向上に努めるとともに欧米での能力増強投資を決定しました。
[イソプレン]
当セグメントの売上高は65,635百万円(前年同期は61,940百万円)、営業利益は4,270百万円(同6,080百万円)となりました。

① イソプレンケミカル、エラストマーは、原燃料価格高騰を受け製品価格の改定を進めました。一方で、一時的な原料調達難や、年後半の需要減退により販売量が減少しました。
② 耐熱性ポリアミド樹脂〈ジェネスタ〉は、自動車部材や電気・電子デバイスの在庫調整などの影響を受け販売量が減少しました。
[機能材料]
当セグメントの売上高は174,059百万円(前年同期は142,366百万円)、営業利益は8,574百万円(同8,673百万円)となりました。

① メタアクリルは、電気・電子デバイスの在庫調整などの影響を受け販売量が減少したことに加え、原料高と市況悪化の影響を受けました。
② メディカルは、国内外で審美治療用歯科材料の販売が拡大しました。
③ 環境ソリューションは、欧米を中心に飲料水や工業用途の需要が増え、活性炭の販売が拡大しました。また、原燃料価格高騰を受け、製品価格の改定を進めました。
④ アクアは、中空糸水処理膜の需要が堅調に推移しました。
[繊維]
当セグメントの売上高は66,859百万円(前年同期は61,082百万円)、営業利益は6,736百万円(同5,608百万円)となりました。

① 人工皮革〈クラリーノ〉は、車両用途及びラグジュアリー用途で販売が拡大しました。
② 繊維資材は、ビニロンが自動車生産回復の遅れや、年後半には景気減速の影響を受けました。一方、〈ベクトラン〉は輸出を中心に販売が順調に推移しました。
③ 生活資材は、〈クラフレックス〉の衛生用途で出荷が増えたものの、外食産業の需要が低調でした。
[トレーディング]
当セグメントの売上高は58,844百万円(前年同期は144,027百万円)、営業利益は5,121百万円(同4,842百万円)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は84,985百万円減少しています。

① 繊維関連事業は、ウェアラブル等のスポーツ衣料を中心に販売が拡大しました。
② 樹脂・化成品関連事業は、年前半はアジア市場で順調に推移したものの、年後半は景気減速の影響を受けました。
[その他]
その他事業は、国内関連会社の販売が回復し、売上高は52,051百万円(前年同期は44,327百万円)、営業利益は2,679百万円(同1,206百万円)となりました。

(2) 当期の財政状態の概況
総資産は、棚卸資産の増加67,728百万円、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末は受取手形及び売掛金)の増加21,247百万円、建設仮勘定の増加20,105百万円及び機械装置及び運搬具(純額)の増加18,700百万円等の一方、現金及び預金の減少28,218百万円等により前連結会計年度末比130,518百万円増の1,221,533百万円となりました。負債は、その他固定負債の増加12,488百万円、コマーシャル・ペーパーの増加10,000百万円及び社債の発行10,000百万円等により前連結会計年度末比41,586百万円増の552,998百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末比88,932百万円増加し、668,534百万円となりました。自己資本は646,750百万円となり、自己資本比率は52.9%となりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益77,997百万円に対して、減価償却費65,456百万円、売上債権の増加12,500百万円、棚卸資産の増加54,716百万円及び法人税等の支払額19,453百万円等により、営業活動によるキャッシュ・フローは51,727百万円の収入となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
有形及び無形固定資産の取得による支出71,635百万円等により、投資活動によるキャッシュ・フローは68,624百万円の支出となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
長期借入れ49,375百万円、コマーシャル・ペーパーの純増額10,000百万円及び社債の発行10,000百万円等の収入に対して、長期借入金の返済55,013百万円、自己株式の取得10,002百万円及び配当金の支払額13,908百万円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは12,053百万円の支出となりました。
以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額等により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より23,870百万円減少して、127,616百万円となりました。
(単位:百万円)
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標は以下のとおりです。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により計算しています。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
4.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、長期借入金及び社債の合計額を使用しています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
当社グループの資金需要は、営業活動に必要となる運転資金や設備投資、M&A等に係る投資資金が主なものです。これらの資金需要に対しては、自己資金のほか、必要に応じ、金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により資金調達を行っています。
また、資金需要に応じて柔軟に資金調達ができるよう、信用格付けの維持向上や金融機関、資本市場との良好な関係維持に努めるとともに、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、金融機関とコミットメントライン契約を締結しています。
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の概況及び分析」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
該当事項はありません。
(注)1.帳簿価額のうち「その他」は、工具器具備品、リース資産及び建設仮勘定です。
2.当社は倉敷事業所におけるポリエステル生産設備をクラレ玉島㈱に貸与しています。
3.当社は西条事業所におけるポリエステル生産設備をクラレ西条㈱に貸与しています。
(注)1.帳簿価額のうち「その他」は、工具器具備品、使用権資産及び建設仮勘定等です。
2.「土地」の< >内は、連結会社以外の者からの借地の面積<外書>を示しています。
ストックオプション制度の内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(ストック・オプ ション等関係)に記載しています。
該当事項はありません。
(注) 自己株式の消却による減少です。
2022年12月31日現在
(注) 1.自己株式20,171,061株は「個人その他」の欄に201,710単元及び「単元未満株式の状況」の欄に61株をそれぞれ含めて記載しています。
2.「その他の法人」の欄には、証券保管振替機構名義の株式が5単元含まれています。
2022年12月31日現在
(注) 1. 日本マスタートラスト信託銀行㈱(信託口)、㈱日本カストディ銀行(信託口)の所有株式は、信託業務に係る株式です。
2. 当社は自己株式20,171,061株を所有しています。
3.2022年10月19日付で野村アセットマネジメント㈱及びその共同保有者であるグループ会社から大量保有報告書(変更報告書)の提出があり、2022年10月14日現在で以下の株式を保有している旨が記載されていますが、当社として2022年12月31日時点における実質所有株式数の確認ができないので、上記「大株主の状況」は株主名簿に基づいて記載しています。なお、2022年10月19日付の大量保有報告書(変更報告書)の内容は次のとおりです。
4.2022年10月31日付で㈱三菱UFJフィナンシャル・グループ及びその共同保有者であるグループ会社から大量保有報告書(変更報告書)の提出があり、2022年10月24日現在で以下の株式を保有している旨が記載されていますが、当社として2022年12月31日時点における実質所有株式数の確認ができないので、上記「大株主の状況」は株主名簿に基づいて記載しています。なお、2022年10月31日付の大量保有報告書(変更報告書)の内容は次のとおりです。
5.2023年1月10日付で三井住友信託銀行㈱及びその共同保有者であるグループ会社から大量保有報告書(変更報告書)の提出があり、2022年12月30日現在で以下の株式を保有している旨が記載されていますが、当社として2022年12月31日時点における実質所有株式数の確認ができないので、上記「大株主の状況」は株主名簿に基づいて記載しています。なお、2023年1月10日付の大量保有報告書(変更報告書)の内容は次のとおりです。
1.報告セグメントの概要
当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものです。
当社は、カンパニー制を導入しており、各カンパニーは取り扱う製品等について国内及び海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しています。また、子会社のうち、クラレトレーディング株式会社は、当社グループ製品の加工販売や他社製品の取り扱いを含め、独自に企画・販売する事業を主体的に行っています。
したがって、当社グループは、カンパニーを基礎とした製品別のセグメントと、トレーディングセグメントで構成されており、「ビニルアセテート」、「イソプレン」、「機能材料」、「繊維」及び「トレーディング」の5つを報告セグメントとしています。
「ビニルアセテート」は、ポバール、PVB、<エバール>等の機能樹脂、フィルムを生産・販売しています。「イソプレン」は、熱可塑性エラストマー<セプトン>、イソプレン関連製品、<ジェネスタ>を生産・販売しています。「機能材料」は、メタクリル樹脂、メディカル関連製品、炭素材料等を生産・販売しています。「繊維」は、合成繊維、人工皮革<クラリーノ>、不織布等を生産・販売しています。「トレーディング」は、合成繊維、人工皮革等を加工・販売している他、その他の当社グループ製品及び他社製品の企画・販売を行っています。
(報告セグメントの変更に関する事項)
組織改定に伴い、当連結会計年度から、アクア事業のセグメント区分を、「その他」から「機能材料」に変更しました。なお、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しています。