荒川化学工業株式会社
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
2 第93期の株価収益率については、親会社株主に帰属する当期純損失であるため記載しておりません。
3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第92期の期首から適用しており、第92期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
2 第93期の株価収益率および配当性向については、当期純損失であるため記載しておりません。
3 最高株価および最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものであります。
4 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第92期の期首から適用しており、第92期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
当社は1876年11月個人経営の生薬商「荒川政七商店」として現大阪市中央区で創業し、1914年7月現大阪市城東区に工業用薬品製造業へ進出するため鴫野工場(1967年6月に大阪工場と統合)を開設、1931年1月合資会社に、さらに1956年9月には株式会社に組織変更いたしました。
その後、1971年12月額面株式1株の金額を500円から50円に変更するため、休業状態にあった千代田住宅株式会社と合併いたしました。そのため当社の設立登記日は1936年5月となっております。
(注)荒川ヨーロッパ社は、水素化石油樹脂の製造を2023年4月初旬に終了しましたが、販売拠点として事業活動を継続しております。
当社グループは、荒川化学工業株式会社(当社)および連結子会社15社で構成されており、機能性コーティング事業、製紙・環境事業、粘接着・バイオマス事業、ファイン・エレクトロニクス事業およびその他事業をおこなっております。当社および当社の関係会社の事業における当社および関係会社の位置付けおよびセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、セグメントと同一の区分であります。
機能性コーティング事業については、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、印刷インキ用樹脂(顔料分散性を良好にし、印刷適性と印刷効果などインキの性能を向上させる樹脂)、塗料用樹脂(塗料の耐熱性、速乾性、光沢など、用途に応じた特性を向上させる樹脂)等が主力製品であります。
製紙・環境事業については、紙力増強剤(紙の強度を向上させる薬品)、サイズ剤(紙に耐水性や印刷適性を与え、インキがにじむのを防ぐ薬品)、新規水系ポリマー等が主力製品であります。
粘接着・バイオマス事業については、水素化石油樹脂、粘着・接着剤用樹脂(粘着・接着剤の粘着力や接着強度並びに耐熱性を向上させる樹脂)、超淡色ロジン、合成ゴム重合用乳化剤等が主力製品であります。
ファイン・エレクトロニクス事業については、精密部品洗浄剤および洗浄装置、低誘電ポリイミド樹脂、ファインケミカル製品、電子材料用配合製品、精密研磨剤等が主力製品であります。
その他事業は、連結子会社のカクタマサービス㈱がおこなっている損害保険、不動産管理等であります。
事業の系統図は次のとおりであります。

(注) 1 「主要な事業の内容」欄には、セグメント情報に記載された名称を記載しております。
2 特定子会社は、広西梧州荒川化学工業有限公司、南通荒川化学工業有限公司、荒川ケミカル(タイランド)社、高圧化学工業株式会社、台湾荒川化学工業股份有限公司、荒川ケミカルベトナム社、千葉アルコン製造株式会社であります。
3 有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。
4 役員の兼任に関しては、提出日現在の人数であります。
2023年3月31日現在
(注) 従業員数は就業人員であります。臨時従業員の総数は従業員数の100分の10未満でありますので、記載を省略しております。
2023年3月31日現在
(注) 1 従業員数は就業人員であります。臨時従業員の総数は従業員数の100分の10未満でありますので、記載を省略しております。
2 平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
当社グループには荒川化学工業労働組合(所属する上部団体なし)が組織され、当社および高圧化学工業㈱の従業員330名が加入しております。
なお、労使関係は円満に推移しており、特記すべき事項はありません。
①提出会社
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3 「労働者の男女の賃金の差異」について、女性管理職比率が低いことや勤続年数の差異(若手が多い)等が主な要因でありますが、給与規定・評価制度において性別による差異を設けておりません。なお、当社は男女問わずすべての社員がいきいき活躍できる組織風土づくりを推進していますが、中でも全体数の少ない女性社員に対しては特にキャリア形成支援や環境整備等に注力しております。具体的には「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 指標及び目標」に記載しております。
②連結子会社
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき、公表項目として「管理職に占める女性労働者の割合」を選択しており、それ以外の項目については非開示としております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、グローバルに事業展開を推進する荒川化学グループ全体で、共有すべきグループ経営理念である「個性を伸ばし 技術とサービスで みんなの夢を実現する」のもと、「つなぐを化学する SPECIALITY CHEMICAL PARTNER」をビジョンとして掲げております。「つなぐを化学する」とは、当社の事業領域を表しており、当社の製品は材料の表面や隙間に存在し、機能を付与しています。私たちは、このような製品を通して、取引先はもとより、グループ社員、社会とのつながりを大切にする「SPECIALITY CHEMICAL PARTNER」を目指すことを基本方針としております。
この基本方針を具体的に実現するため、安全を最優先に、国内外の生産・販売拠点および関係会社の整備と拡充を図り、全社をあげて経営基盤の充実と企業体質の強化に取り組み、同時に法令遵守、環境保護、社会貢献などの社会的責任を果たし、グループの発展に努めてまいります。
なお、当社は、グループ経営理念とビジョンの実現に向け、当社が大切にしている価値観・行動指針を明確化した「ARAKAWA WAY 5つのKIZUNA」を荒川化学グループ全社員で共有することで、根幹の部分は変わることのない経営を貫き、適切な判断と迅速な行動を積み重ねてまいります。
(2) 目標とする経営指標ならびに中長期的な会社の経営戦略
当社は、2021年4月より第5次中期5ヵ年経営実行計画「V-ACTION for sustainability」(2021~2025年度)をスタートしております。第5次中計の基本方針は、KIZUNA経営の推進とKIZUNA指標(※1)の達成です。当社が掲げた「ありたい姿」の実現を目指し、グループの価値観・行動指針(ARAKAWA WAY 5つのKIZUNA)に基づいた経営(=KIZUNA経営)のもと、2030年のビジョン(※2)と目指す未来像(※3)を設定し、コア技術・素材の強化による新事業の創出に努めるとともに、市場環境の変化のスピードにも対応すべく事業ポートフォリオ改革を進めております。第4次中計からの重点施策の早期達成による成果の最大化と新たな付加価値の創造およびすべてのステークホルダーとともに持続可能な地球環境と社会の実現への貢献を目指しております。また、創業150周年、さらにその先を見据え、歴史と伝統をしっかりと受け継ぎながらも、安全文化の醸成、および働きがいと生産性の向上をより一層図ってまいります。
一方、新型コロナウイルス感染症による影響やロシアによるウクライナ侵攻を発端とした需要構造の変化、原燃料価格の高騰など、外部要因が大きく変化するとともに、千葉アルコン製造の稼働遅延や荒川ヨーロッパ社の製造終了、高付加価値製品の拡大遅れなどにより、第5次中計は、計数・施策とも当初計画から大きく遅れております。
このような状況下、基本方針に変更はございませんが、最終年度にあたる2025年度の計数目標(売上高900億円、営業利益65億円、経常利益65億円、親会社株主に帰属する当期純利益45億円、営業利益率7.0%以上、EBITDA 112億円以上、ROE7.0%以上)と施策の見直しを実施しております。
(※1) 5つのKIZUNAとリンクした優先的な重要課題から設定した指標
(※2) ロジンをはじめとする環境に配慮した素材を活かし、「つなぐ」技術の深化と新たな付加価値の創造に挑戦し続けることで、地球環境と社会の持続可能な未来に貢献する
(※3) 地球環境と社会の持続的な未来に貢献するエコシステムにしっかり入り込み、ライフサイエンス関連などの素材をも手掛け、REALとDIGITALを下支えするケミカル・パートナーへの変革を目指す

(3) 会社の経営環境と優先的に対処すべき課題
当社は、2021年4月より持続可能な成長の実現に向け、コーポレートガバナンス機能を強化するため、サスティナビリティ委員会を設置し、事業ポートフォリオ改革とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などサスティナビリティ関連の情報開示に取り組んでおります。
第5次中期5ヵ年経営実行計画では、コア技術・素材の強化に努めるとともに、環境に配慮した持続可能な開発にも注力しております。さらに、経営環境の急速な変化に対応するため、事業評価機能を強化することによる事業ポートフォリオ改革を推し進めております。事業戦略部主導のもと、各ビジネスユニットの事業評価を実施し、事業ミッションのSHIFTによる選択と集中を迅速に決定することで経営資源の効率的な活用を図り、収益性の向上と新規事業の創出につなげてまいります。
また、2021年度には、日本の化学業界では初となるサステナビリティ・リンク・ボンド(社債)を発行し、当社グループのサスティナビリティ経営のリスクと機会の重要な指標として、CO2排出量の削減率とサスティナビリティ製品の連結売上高指数を設定しています。それぞれの進捗状況については第三者による検証を実施しました。引き続き、両目標達成に向けて、施策を進めてまいります。
2017年12月1日に発生しました富士工場での爆発・火災事故を風化させないため、2021年度には、専任の安全担当取締役を置き、安全に対する体制を強化しました。安全文化醸成に向けて富士工場に設置した荒川安全伝承館ならびに小名浜工場の保安道場にて、全社員対象に安全教育を実施しております。引き続き、工場の保安力向上に向けた取り組みも進めております。
詳細については、当社ウェブサイトに掲載しておりますのでご参照ください。
・第5次中期5ヵ年経営実行計画 https://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/strategy.html
・サスティナビリティ https://www.arakawachem.co.jp/jp/csr/
・KIZUNA指標 https://www.arakawachem.co.jp/jp/csr/sdgs.html#KIZUNAindex
・サステナビリティ・リンク・ボンド https://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/slb.html
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経済状況および需要の動向について
当社グループは、日本、アジア、南北アメリカおよびヨーロッパ等の各地域において事業活動を展開しております。したがいまして、当社グループにおける生産・販売等の事業活動は、これらの国や地域における経済状況の影響を受けます。また、当社グループ製品の主な販売先である製紙、印刷インキ、塗料、粘着・接着剤および電子工業等の各業界が受ける景気後退等による需要減少は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、需要動向などの影響を受け難い収益構造とするため、事業の新陳代謝を促し、いかなる環境変化にも迅速かつ柔軟に対応し、集中的、効率的に経営資源を投入していくことでリスクの最小化を図っております。
当社グループは、事業活動を展開している国内外の地域において各種許認可や規制等の様々な法令の適用を受けております。したがいまして、炭素税の導入など法規制の大幅な変更や強化、ならびに海外の進出地域における予期せぬ法令の変更等により事業活動が制限される場合や、規制遵守のための費用の増大、また、環境問題や製造物責任、知的財産侵害等による訴訟や紛争による費用の増大で経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、取締役会の下部組織であるリスク・コンプライアンス委員会が、事業目的を阻害するさまざまなリスクの発生を未然に防止するとともに、リスクが顕在化した場合、損害の拡大防止や当社グループの社会的信用の維持を図るため、適切な対応をおこなう体制を整備・構築しております。
当社グループは、国内外の拠点において生産活動を行っております。したがいまして、万一、気候変動などによる大規模な自然災害や火災事故、感染症の大流行等が発生した場合には、当社グループを含めたサプライチェーンにおける生産活動の停止等により当社グループの経営成績等に悪影響を与えることがあります。当社グループではこうした状況に対して、災害・事故等による事業活動への悪影響を最小限に留めるために、リスク発生の可能性や結果の重大性に応じた製造設備の定期点検や従業員の教育・訓練等の保安活動、災害防止策の強化に努めるとともに、BCP(事業継続計画)を策定し、定期的な訓練をおこなうことによりリスクの最小化を図っております。また、感染症による事業活動全体への悪影響を最小限に留めるべく、感染防止策を徹底するとともに、テレワークや時差出勤、Web会議の積極活用や生産拠点での入場前チェックなどの対策を実施しております。
当社グループの主要原材料は、石油化学製品およびガムロジンであります。ガムロジンは、松の木に溝を切りつけて滲み出てくる生松脂を蒸留して製造したもので、当社グループは、ガムロジンの調達の多くを最大の生産国である中国に依存しておりますが、中国におけるガムロジンの生産量は年々減少しております。したがいまして、ガムロジンの需給バランスの変動により購入価格が高騰した場合は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、石油化学製品におきましても、グローバルな環境規制や安全規制による需給バランスの変動により購入価格が高騰した場合は、同様に当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、購入価格の変動に見合った販売価格の見直しをおこなうとともに、主要原材料の調達地域の多様化を進めることによりリスクの最小化を図っております。
当社グループは、アジア、南北アメリカおよびヨーロッパ等の各地域において事業活動を展開しております。したがいまして、外貨建ての取引におきましては、為替レートの変動は当社グループの経営成績等に影響を与えることがあります。当社グループではこうした状況に対して、収入と費用の通貨を一致させる施策を進めること等によりリスクの最小化を図っております。また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの資産の時価が著しく下落した場合や事業資産の収益性が著しく悪化し、回復の可能性が見込めない場合には、減損会計の適用により固定資産の減損処理をおこないます。これらの減損損失の発生は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、各事業の事業採算を的確に把握し、採算悪化の兆候がみられる場合には、速やかに対策を講じて事業採算を改善させることによりリスクの最小化を図っております。
当社グループは、アジア、南北アメリカおよびヨーロッパ等の各地域において事業活動を展開しております。当社グループにおける事業活動のグローバル化には、進出地域における政治・経済情勢の悪化、治安の悪化、予期せぬ法律または規制、戦争・テロ・感染症等のリスクが潜在しておりますが、当社グループが進出している地域でこれら事象が顕在化した場合には、当該地域での事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこうした状況に対して、現地における優秀な人材の確保と育成を進め、いち早く正確な情報を入手し、的確に対応することによりリスクの最小化を図っております。
当社グループは、事業活動において顧客情報、個人情報、技術情報などの秘密情報を保有・管理しております。当社グループ内においては、規定や情報インフラ(基盤)などを整備し、加えて情報漏洩防止に関する研修や訓練などの対策を講じ、情報セキュリティ強化に努めております。しかしながら、第三者による不正アクセスやコンピューターウィルスの感染などにより、情報の漏洩や改ざんなどが発生した場合は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の世界経済は、一部の地域を除き緩やかに持ち直しているものの、依然としてウクライナ情勢の長期化、原油・エネルギー価格の高止まり、世界的な金融引き締めに伴う影響等、景気の下振れ懸念が続いております。また、国内経済においても、経済活動の正常化を進めるなか、景気は緩やかに持ち直していますが、生産活動が弱含んでいるなど一部に弱さがみられ、供給面での制約、物価上昇、為替変動などのリスクに留意することが必要な情勢が続いています。
このような環境のもと、当社グループにおきましては、2021年度よりスタートしました第5次中期5ヵ年経営実行計画の方針(KIZUNA経営の推進とKIZUNA指標の達成)に沿った重点施策を進め、コア技術・素材を中核とした事業ポートフォリオ改革や新事業の創出などによる持続可能な地球環境と社会を実現するための取り組みに注力しております。業績面では、高付加価値製品の拡販、収益改善策に取り組んでおりますが、ロジンや石化原料などの原材料価格やエネルギーコストの大幅な上昇に加え、半導体の需給変動による電子部品の需要環境変化が収益性に大きく影響しました。また、2022年9月27日にお知らせしましたとおり、荒川ヨーロッパ社の水素化石油樹脂は、2023年4月初旬をもって製造を終了しました。
その結果、当連結会計年度の売上高は794億31百万円(前年同期比1.3%減)、営業損失は29億7百万円(前年同期は営業利益33億4百万円)、経常損失は26億87百万円(前年同期は経常利益35億66百万円)となりました。また、前述の製造終了決定にともなう特別損失を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は49億41百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益15億2百万円)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。なお、セグメント区分の売上高はセグメント間の内部売上高を含んでおりません。また、報告セグメントに含まれないその他事業は、売上高は1億91百万円(前年同期比31.4%減)、セグメント利益は42百万円(同7.3%減)となりました。
電機・精密機器関連業界は、世界的な半導体不足や中国におけるロックダウンなどを背景とした自動車、スマートフォン、PC、家電の生産調整により、電子部品などの需要が低調に推移しました。このような環境のもと、当事業におきましては、機能性コーティング材料用の光硬化型樹脂はスマートフォンや自動車関連分野、ディスプレイ関連分野での急激な在庫調整により売上高は減少しました。また、印刷インキ用樹脂や塗料用樹脂などの売上高は増加したものの、原材料価格やエネルギーコストの上昇等により収益性は低水準に留まりました。
その結果、売上高は157億円(前年同期比3.2%減)、セグメント利益は3億35百万円(同69.0%減)となりました。
製紙・環境事業
製紙業界は、eコマース(電子商取引)市場の世界的な成長にともない堅調に推移していた段ボール原紙など板紙の需要が下期より低調に推移しました。このような環境のもと、当事業におきましては、板紙向け紙力増強剤の売上高は荒川ケミカルベトナム社の稼働開始などにより増加したものの、原材料価格やエネルギーコストの上昇等により収益性が悪化しました。
その結果、売上高は209億91百万円(前年同期比12.5%増)、セグメント利益は3億10百万円(同67.9%減)となりました。
粘着・接着剤業界は、世界的に紙おむつ向け接着剤の需要が堅調に推移しましたが、自動車関連分野では生産調整により需要が低調に推移しました。このような環境のもと、当事業におきましては、ロジンや石化原料の価格の高騰に加えて、欧州における天然ガスおよび水素価格の歴史的高騰により、収益性の悪化が継続しました。また、千葉アルコン製造株式会社につきましては、本格生産に向けた試生産を11月に開始し、減価償却費の計上を開始しました。
その結果、売上高は299億77百万円(前年同期比7.8%減)、セグメント損失は38億71百万円(前年同期はセグメント利益2億6百万円)となりました。
なお、荒川ヨーロッパ社における水素化石油樹脂は2023年4月初旬をもって製造を終了しましたが、欧州を中心とした販売拠点としての事業活動は継続いたします。
電子工業業界は、半導体の需給変動による電子部品の需給環境変化に加え、中国での需要低迷による稼働低下や在庫調整が長期化しました。このような環境のもと、当事業におきましては、精密部品洗浄剤は堅調でしたが、精密研磨剤の販売が下期に入り減速し、電子材料用配合製品も低調に推移しました。
その結果、売上高は125億70百万円(前年同期比2.0%減)、セグメント利益は3億49百万円(同36.7%減)となりました。
なお、半導体・先端材料分野でのさらなる拡販を目指し、水島工場(岡山県倉敷市)におけるファインケミカル製品の新たな生産設備投資(約20億円)や、精密研磨剤の将来的な需要増加へ対応するため、100%出資の連結子会社である山口精研工業株式会社(愛知県名古屋市緑区)における精密研磨剤の生産能力増強投資(約11億円)を決定し、計画通りに進めております。詳細につきましては、2022年11月17日に公表しました「ファインケミカル生産設備の新設に関するお知らせ」および「連結子会社における精密研磨剤の生産能力増強に関するお知らせ」をご参照ください。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ12億95百万円増加し、1,190億35百万円となりました。主な要因は、受取手形及び売掛金が22億52百万円減少しましたが、現金及び預金が7億65百万円、棚卸資産が20億53百万円増加したことによります。
負債は、短期借入金が66億79百万円、長期借入金が16億92百万円、事業整理損失引当金が11億79百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ73億65百万円増加し、625億26百万円となりました。
純資産は、利益剰余金やその他有価証券評価差額金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ60億69百万円減少し、565億9百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ36百万円増加し、92億86百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、5億75百万円の減少となりました。これは、減価償却費(44億77百万円)、減損損失(18億38百万円)、事業整理損失引当金の増加(11億55百万円)、売上債権の減少(28億63百万円)などにより資金が増加した一方、税金等調整前当期純損失(46億52百万円)、棚卸資産の増加(18億98百万円)、仕入債務の減少(16億3百万円)などにより資金が減少した結果であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、60億46百万円の減少となりました。これは、有形固定資産の売却による収入(12億31百万円)などにより資金が増加した一方、固定資産の取得による支出(61億16百万円)などにより資金が減少した結果であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、66億66百万円の増加となりました。これは、配当金の支払額(9億52百万円)などにより資金が減少した一方、借入金の純増加(81億78百万円)などにより資金が増加した結果であります。
a 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) その他事業においては、生産をおこなっておりません。
b 受注実績
当社グループは過去の販売実績と将来の予測に基づいて見込生産方式をとっております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の売上高は794億31百万円、営業損失は29億7百万円、経常損失は26億87百万円となりました。また、荒川ヨーロッパ社の製造終了決定にともなう特別損失を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は49億41百万円となりました。業績につきましては、高付加価値製品の拡販、収益改善策に取り組んでおりますが、ロジンや石化原料などの原材料価格やエネルギーコストの大幅な上昇に加え、半導体の需給変動による電子部品の需要環境変化が大きく影響し、収益性が悪化しました。
2023年度以降も国内外の経済の先行きは見通しがたい状況にありますが、ロジンや石化原料などの原材料価格の高止まり、電力をはじめとするエネルギー価格高騰による収益性の低下に対応した価格転嫁や、さらなるコストダウンなどを進めてまいります。それに加えて、下記第5次中期5ヵ年経営実行計画の重点施策を早期達成させることにより、成果の最大化を進めてまいります。
千葉アルコン製造㈱における水素化石油樹脂の製造設備につきましては、当初の計画より約1年半遅れとなる2022年11月に試生産を開始、定期修理を経て、2023年5月下旬に連続運転を開始しました。本格稼働後の減価償却費は多額となるため、当面の収益性を押し下げる要因となりますが、中長期的な成長市場の需要に応えるべく、水島工場と合わせた2拠点供給体制によるグローバル販売戦略の再構築を進め、水素化石油樹脂の安定供給と収益性の向上を図ってまいります。
また、荒川ケミカルベトナム社における紙力増強剤製造設備につきましては、2022年3月に稼働を開始しており、ASEAN向け紙力増強剤のさらなる拡販による成果の最大化を目指してまいります。
一方、新型コロナウイルス感染症による影響やロシアによるウクライナ侵攻を発端とした需要構造の変化、原燃料価格の高騰など、外部要因が大きく変化するとともに、千葉アルコン製造㈱の稼働遅延や荒川ヨーロッパ社の製造終了、高付加価値製品の拡大遅れなどにより、第5次中計は、計数・施策とも当初計画から大きく遅れております。
このような状況下、基本方針に変更はございませんが、最終年度にあたる2025年度の計数目標(売上高900億円、営業利益65億円、経常利益65億円、親会社株主に帰属する当期純利益45億円、営業利益率7.0%以上、EBITDA112億円以上、ROE7.0%以上)と施策の見直しを実施しております。
なお、第5次中計期間におけるセグメント別の実績および経営目標は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
(参考)千葉アルコン製造㈱の減価償却費(実績および予想)
資本の財源および資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資等の長期的な資金需要に関しては、金融機関からの長期借入や社債の発行により調達しております。
また、グループ会社の資金調達につきましては、当社において一元管理しております。
なお、当社は格付を取得しており、本報告書提出日時点において、日本格付研究所「A-」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持・拡大、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因および対応策につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループ(当社および連結子会社)における主要な設備は、以下のとおりであります。
(注) 1 上記の金額は帳簿価額で表示しております。
2 ( )内は連結会社以外から賃借中のものを、外数で表示しております。
(注) 1 上記の金額は帳簿価額で表示しております。
2 ( )内は連結会社以外から賃借中のものを、外数で表示しております。
3 千葉アルコン製造㈱における水素化石油樹脂の製造設備につきましては、2022年11月に試生産を開始、定期修理を経て、2023年5月下旬に連続運転を開始しました。
(注) 1 上記の金額は帳簿価額で表示しております。
2 ( )内は連結会社以外から賃借中のものを、外数で表示しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注) 新株予約権の権利行使による増加であります。
2023年3月31日現在
(注) 1 自己株式813,491株は「個人その他」に8,134単元、「単元未満株式の状況」に91株含まれております。
2 「その他の法人」欄には、証券保管振替機構名義の株式が4単元含まれております。
2023年3月31日現在
(注) 1 日本マスタートラスト信託銀行株式会社と株式会社日本カストディ銀行が所有する株式は、信託業務に係るものであります。
2 上記のほか当社所有の自己株式813千株があります。
1 報告セグメントの概要
(1) 報告セグメントの決定方法
当社グループの報告セグメントは、当社および子会社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定および業績を評価するために、定期的に検討をおこなう対象となっているものであります。
(2) 各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類
当社グループは、天産品のロジンと石油化学製品を主要原材料とした独自の技術を通して、デジタルデバイス関連用途、印刷インキ・塗料用途、製紙用途、環境関連用途、粘着・接着剤用途、バイオマス材料用途、半導体・電子部品関連用途等への製造販売を、機能性コーティング事業部門、製紙・環境事業部門、粘接着・バイオマス事業部門、ファイン・エレクトロニクス事業部門にておこなっております。
したがって、当社グループの構成単位は「機能性コーティング事業」「製紙・環境事業」「粘接着・バイオマス事業」および「ファイン・エレクトロニクス事業」の4つを報告セグメントとしております。