日本製鉄株式会社
(注) 1 国際会計基準(以下「IFRS」という。)に基づいて連結財務諸表を作成している。
2 従業員数は各期とも3月31日現在の就業人員数(連結会社から連結会社以外への出向者を除き、連結会社以外から連結会社への出向者を含む。)であり、嘱託・臨時従業員を含まない。
3 △はマイナスを示す。
4 事業利益とは、持続的な事業活動の成果を表し、当社グループの業績を継続的に比較・評価することに資する連結経営業績の代表的指標であり、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費、並びにその他費用を控除し、持分法による投資利益及びその他収益を加えたものである。その他収益及びその他費用は、受取配当金、為替差損益、固定資産除却損等から構成されている。
5 第95期、第96期の株価収益率については、当期損失が計上されているため記載していない。
(注) 1 従業員数は各期とも3月31日現在の就業人員数(他社への出向者を除き、他社からの出向者を含む。)であり、嘱託・臨時従業員を含まない。
2 △はマイナスを示す。
3 第94期から第96期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載していない。
4 第95期、第96期の株価収益率及び配当性向については、当期純損失が計上されているため記載していない。
5 株主総利回りは、株式投資により得られた収益(配当とキャピタルゲイン)を投資額(株価)で除した比率で、次の計算式で算出した。
(各事業年度末日の株価+当事業年度の4事業年度前から各事業年度までの1株当たり配当額の累計額)÷当事業年度末の5事業年度前の末日の株価
6 2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場の株価を採用した。
当社は、1950年4月1日に設立され、1970年3月31日に八幡製鐵株式会社と富士製鐵株式会社が合併し商号を新日本製鐵株式會社に変更。2012年10月1日に住友金属工業株式会社と合併し商号を新日鐵住金株式会社に変更。さらに、2019年4月1日に商号を日本製鉄株式会社に変更。現在に至っています。
当社グループ(当社及び当社の関係会社)の事業体制は、製鉄事業、エンジニアリング事業、ケミカル&マテリアル事業及びシステムソリューション事業です。
なお、これら4事業は本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 事業セグメント」に掲げるセグメント情報の区分と同一です。
2023年3月31日現在、当社グループは、当社及び360社の連結子会社並びに97社の持分法適用関連会社等により構成されます。
各事業を構成している当社及び当社連結子会社において営まれている主な事業の内容及び位置づけは次のとおりです。なお、主要な関係会社につきましては、本報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載しています。
[製鉄事業]
条鋼(鋼片、軌条、鋼矢板、H形鋼、その他形鋼、棒鋼、バーインコイル、普通線材、特殊線材)、鋼板(厚板、中板、熱延薄板類、冷延薄板類、ブリキ、ティンフリースチール、亜鉛めっき鋼板、その他金属めっき鋼板、塗装鋼板、冷延電気鋼帯)、鋼管(継目無鋼管、鍛接鋼管、電縫鋼管、電弧溶接鋼管、冷けん鋼管、めっき鋼管、被覆鋼管)、交通産機品(鉄道車両部品、型鍛造品、鍛造アルミホイール、リターダ、環状圧延品、鍛鋼品)、特殊鋼(ステンレス鋼、機械構造用炭素鋼、構造用合金鋼、ばね鋼、軸受鋼、耐熱鋼、快削鋼、ピアノ線材、高抗張力鋼)、鋼材二次製品(スチール・合成セグメント、NS-BOX、メトロデッキ、パンザーマスト、制振鋼板、建築用薄板部材、コラム、溶接材料、ドラム缶、ボルト・ナット・ワッシャー、線材加工製品、油井管付属品、建築・土木建材製品)、銑鉄・鋼塊他(製鋼用銑、鋳物用銑、鋼塊、鉄鋼スラグ製品、セメント、鋳物用コークス)、製鉄事業に付帯する事業(機械・電気・計装関係機器の設計・整備・工事施工、海上運送、港湾運送、陸上運送、荷役、倉庫業、梱包作業、材料試験・分析、作業環境測定、技術情報の調査、施設運営管理、警備保障業、原料決済関連サービス、製鉄所建設エンジニアリング、操業指導、製鉄技術供与、ロール)、その他(チタン展伸材、電力、不動産、サービスその他)
[エンジニアリング事業]
製鉄プラント、産業機械・装置、工業炉、資源循環・環境修復ソリューション、環境プラント、水道工事、エネルギー設備プラント、化学プラント、タンク、陸上・海底配管工事、エネルギー関連ソリューション、海洋構造物加工・工事、土木工事、鋼管杭打工事、建築総合工事、鉄骨工事、トラス、システム建築製品、免震・制振デバイス
[ケミカル&マテリアル事業]
ピッチコークス、ピッチ、ナフタリン、無水フタル酸、カーボンブラック、スチレンモノマー、ビスフェノールA、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、無接着剤FPC用銅張積層板、液晶ディスプレイ材料、有機EL材料、UV・熱硬化性樹脂材料、圧延金属箔、半導体用ボンディングワイヤ・マイクロボール、半導体封止材用フィラー、炭素繊維複合材、排気ガス浄化用触媒担体、多孔質炭素材料
[システムソリューション事業]
コンピュータシステムに関するエンジニアリング・コンサルティング、ITを用いたアウトソーシングサービスその他の各種サービス
[事業系統図]
以上述べた事項を事業系統図によって示すと、次のとおりです。(2023年3月31日現在)

主要な連結子会社及び持分法適用会社(2023年3月31日現在)
[製鉄事業/主要な連結子会社]
[製鉄事業/主要な持分法適用会社]
[エンジニアリング事業/主要な連結子会社]
[ケミカル&マテリアル事業/主要な連結子会社]
[システムソリューション事業/主要な連結子会社]
(注) 1 山陽特殊製鋼㈱、大阪製鐵㈱、黒崎播磨㈱、ジオスター㈱、合同製鐵㈱、トピー工業㈱、共英製鋼㈱、日鉄物産㈱、新日本電工㈱、日亜鋼業㈱、NSユナイテッド海運㈱、日本コークス工業㈱、三晃金属工業㈱、㈱サンユウ及び日鉄ソリューションズ㈱は、有価証券報告書を提出している。
2 山陽特殊製鋼㈱、G Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limitedは、特定子会社である。
3 黒崎播磨㈱、ジオスター㈱及びPT PELAT TIMAH NUSANTARA TBK.(当社は同社株主である三井物産㈱、㈱メタルワン及び日鉄物産㈱との間でコンソーシアム契約を締結しており、4社合計で同社株式55%を保有している。当社はそのコンソーシアム内で過半数となる35%を保有している。)は、持分は100分の50以下であるが、実質的に支配しているものと判断し、子会社として連結している。
4 合同製鐵㈱は、持分は100分の20未満であるが、実質的に重要な影響力を有しているものと判断し、関連会社として持分法を適用している。
5 議決権の所有割合の( )内は、間接所有割合で内数である。
6 上記関係内容に記載の「②営業上の取引」には、商社経由の取引が含まれている。
7 日鉄物産㈱は、当社が実施した金融商品取引法に基づく公開買付けにより、2023年4月14日付で持分法適用関連会社から子会社となっている。
(2023年3月31日現在)
(注) 1 従業員数は就業人員数(連結会社から連結会社以外への出向者を除き、連結会社以外から連結会社への出向者を含む。)であり、嘱託・臨時従業員を含まない。
2 臨時従業員数は、[ ]内に当連結会計年度の平均人員を外数で記載している。
(2023年3月31日現在)
(注) 1 従業員数は就業人員数(他社への出向者を除き、他社からの出向者を含む。)であり、嘱託・臨時従業員を含まない。
2 臨時従業員数は、[ ]内に当事業年度の平均人員を外数で記載している。
3 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含む。なお、当期より役職者を含めて算出している。
4 臨時従業員数が当事業年度末までの1年間において857人減少しているが、その主な理由は再雇用者の減少によるものである。
提出会社の労働組合である日本製鉄労働組合連合会のほか、複数の連結子会社で労働組合が組織されています。2023年3月31日現在の組合員数は70,028名です。
なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
①提出会社
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
なお、雇用管理区分ごとの実績は次のとおりである。
マネジメントグループ 74%、アシスタントマネジメントグループ 77%、グローバルグループ 80%、ワイドエキスパートグループ 42%、エリアグループ 48%
3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号に定める育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。
4 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
正規雇用労働者においては、それぞれの社員の役割とそれに伴う配置のあり方に応じて、注2に記載の5つの区分を設定し、区分別の給与制度としている。
各区分の給与制度及び評価・運用は、男女の別なく全社員同一としているが、同一区分内でも男女における平均勤続年数が異なること、男女それぞれの社員数に占める各区分の構成比が異なることから、賃金差異が発生している。
②連結子会社
[製鉄事業]
[エンジニアリング事業]
[ケミカル&マテリアル事業]
[システムソリューション事業]
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したもの、又は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号に定める育児休業等の取得割合を算出したものである。
なお、次の会社においては雇用管理区分ごとの実績を公表している。
山陽特殊製鋼㈱:総合職 57%、一般職 該当者なし、技術職 84%(いずれも正社員)
日鉄精鋼㈱:総合職 0%、基幹職 30%(いずれも正社員)
日鉄工材㈱:正社員 83%
日鉄ビジネスサービス東日本㈱:正社員 40%、嘱託・パート社員 該当者なし
日鉄エンジニアリング㈱:チーフ以上 65%、グローバルスタッフ(事務系) 30%、グローバルスタッフ(技術系) 80%、エキスパートスタッフ 該当者なし、非正規社員 0%
日鉄環境エネルギーソリューション㈱:正社員 32%、非正規社員 0%
3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号に定める育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。
4 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
各社においては、社員の役割等によって複数の区分を設定しているが、各区分の給与体系及び評価・運用は、男女の別なく全社員同一としている。男女の賃金差異は、主に各区分の構成比、平均勤続年数、勤務形態(三交替勤務等)、管理職比率、勤務時間等の差異により生じている。
なお、次の会社においては、パート・有期労働者について、正規雇用労働者の所定労働時間で換算した人員数を元に平均年間賃金を算出している。
日鉄ステンレス㈱、王子製鉄㈱、日鉄ステンレス鋼管㈱、日鉄テクノロジー㈱、松菱金属工業㈱、テックスエンジソリューションズ㈱、山特工業㈱
5 女性社員は在籍していない。
6 「-」は、当該指標を開示していないことを示している。
(経営方針)
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献することを企業理念に掲げて事業を行っています。
<日本製鉄グループ企業理念>
基本理念
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します。
経営理念
1.信用・信頼を大切にするグループであり続けます。
2.社会に役立つ製品・サービスを提供し、お客様とともに発展します。
3.常に世界最高の技術とものづくりの力を追求します。
4.変化を先取りし、自らの変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。
5.人を育て活かし、活力溢れるグループを築きます。
(経営環境)
中長期的な環境変化については、次のとおり想定しています。
世界の鉄鋼需要については、インドも含めたアジア地域を中心に確実な成長が見込まれます。また、カーボンニュートラルに向けた新規ニーズを含め高級鋼の需要は拡大が見込まれます。一方で、国内の鉄鋼需要については、人口減少・高齢化や需要家の海外現地生産拡大等に伴い引き続き減少していくことが想定されます。また、製造業における地産地消・自国産化の傾向が、グローバルに繋がっていた市場の分断を進展させると考えられます。さらに、世界の鉄鋼生産量の5割強を占める中国における需要の頭打ち等により、海外市場における競争が一層激化することが想定されます。
世界的に気候変動に関する問題意識が高まるなか、カーボンニュートラルの実現は官民を挙げた総力戦となり、他国に先駆けたカーボンニュートラルスチールの製造技術の確立が、今後の鉄鋼業界における競争力、収益力、ブランド力を決める鍵となると考えています。
2023年度においては、世界の鉄鋼需要に好転が見込めない状況です。中国は不動産市況の低迷が継続し、内需の回復も見通せておらず、欧米においても先行きの不透明感が払拭できていません。また、製品価格が低迷するなか、原料価格は依然として高水準で推移すると想定され、海外一般市況分野におけるスプレッド(原料と鋼材の市況価格差)の改善も見込めない状況です。
(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
当社グループは、製鉄事業を中核として、鉄づくりを通じて培った技術をもとに、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しています。製鉄セグメントは、当社グループの連結売上収益の約9割を占めています。
当社は、2020年度に断行した抜本的コスト改善による損益分岐点の大幅な引下げに加え、紐付き価格の是正、一貫能力絞込みによる注文選択の効果、海外グループ会社の収益力の向上等により、外部環境に関わらず高水準の事業利益を確保し得る収益構造の構築に取り組んできました。2023年度においては、前述の事業環境のもと、従来の収益構造対策等に加え、将来ビジョンである1兆円の利益水準に向けて、さらに厚みを持った新たな事業構造への進化を図り、外部環境に関わらず、さらなる高収益を計上できる基盤の構築を目指していきます。
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」の概要と進捗は次のとおりです。
<日本製鉄グループ中長期経営計画(2021年3月5日公表)の概要と進捗>
当社は、「総合力世界No.1 の鉄鋼メーカー」を目指し、日本製鉄グループ中長期経営計画を定め、その4つの柱である「国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化」、「海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進」、「カーボンニュートラルへの挑戦」及び「デジタルトランスフォーメーション戦略の推進」の実現に向け、諸施策に着実に取り組んでいます。
1.国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化
「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針として、国内製鉄事業の最適生産体制を構築するとともに、競合他社を凌駕するコスト競争力の再構築と適正マージンの確保による収益基盤の強化を推進しています。
短期的な環境好転如何によらず、生産設備構造対策を着実に推進し、さらに強固な収益基盤を確立することを目指し、当期においては、関西製鉄所和歌山地区の第3鋳造機の一部設備、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)の第1溶融亜鉛・アルミめっきライン、東日本製鉄所鹿島地区の第1酸洗ライン等を休止するなど、競争力のあるラインへ生産を集約しました。また、2012年の経営統合後のピークに比べ、単独粗鋼生産量が3割減少するなかで、限界利益の単価改善と固定費の大幅削減により損益分岐点を抜本的に改善することで、数量に頼らない収益構造の構築に取り組んできました。具体的には、生産能力削減に伴い商品を取捨選択することで「注文構成の高度化」を行うとともに、電磁鋼板・超ハイテン等高付加価値商品の需要拡大に対応した能力増強対策も実施してきました。また、紐付き価格交渉方式を見直し、適正化を図ることにより「紐付きマージンの改善」も実現しています。さらに、持分法適用関連会社であった日鉄物産㈱の子会社化・非公開会社化により、鉄鋼製造サプライチェーンの下流にあたる流通分野へ事業領域を拡大することを決定しました。今後は、商社機能のグループでの効率化・強化、営業ノウハウ・インフラを一体活用した直接営業力強化、サプライチェーンのさらなる高度化等、新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいく方針です。
2.海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進
世界の鋼材消費は、2025年さらに2030年に向けて引き続き緩やかな成長が見込まれています。当社は、規模及び成長率が世界的に見ても大きいアジアを中心に事業を展開しており、マーケットの規模や成長を当社の利益成長につなげ得るポジションにあります。
このような環境のもと、需要の伸びが確実に期待できる地域において、当社の技術力・商品力を活かせる分野で、需要地での一貫生産体制を拡大し、現地需要を確実に捕捉することで、日本製鉄グループとして、「グローバル粗鋼1億トン体制」を目指しています。
不採算事業からの撤退を完了し、付加価値の高い一貫製鉄事業に注力するなど、「選択と集中」を図ることにより、収益力向上・拡大を目指してきました。当期は、インドのArcelorMittal Nippon Steel India Limitedにおいて、高炉2基新設をはじめとする一貫能力増強投資及び港湾・電力等のインフラ会社・重要資産買収の決定や、下工程拠点の買収、新たな一貫製鉄所建設に向けた検討開始等、積極的な施策を展開してきました。在庫評価差等の一過性の影響等により当期は対前年度減益となったものの、今後も主要な海外市場における一貫生産体制拡大による収益力の向上を目指していきます。
3.カーボンニュートラルへの挑戦
脱炭素社会に向けた取組みにおいて欧米・中国・韓国との開発競争に打ち勝ち、引き続き世界の鉄鋼業をリードするべく、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、経営の最重要課題として諸対策を検討・実行しています。
カーボンニュートラル化を通じて当社が提供する2つの価値として「社会におけるCO2排出量削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術~『NSCarbolex® Solution』」と「鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を削減したと認定される鉄鋼製品~『NSCarbolex® Neutral』」をブランド化し、カーボンニュートラル社会実現とお客様の競争力向上に貢献することを発表しました。また、エコカー駆動モーター等の効率化に貢献する無方向性電磁鋼板の能力・品質向上のための投資等に向け、グリーンボンドによる資金調達を行うことを決定し、2023年3月に発行しました。電気エネルギーのロスを削減する高効率の電磁鋼板の供給拡大を通じて、当社はお客様の最終商品でのCO2削減に貢献していきます。当社は、鉄鋼プロセスの脱炭素化に向けて「高炉水素還元」、「大型電炉での高級鋼製造」及び「水素による還元鉄製造」という3つの超革新技術を開発し、一部残るCO2についてはCCUS(※)でオフセットするという複線的なアプローチで、2030年までにCO2総排出量を30%削減し、2050年にカーボンニュートラルを目指しています。このうち「高炉水素還元」について、当社は、世界初となる4,500㎥の大型高炉実機での高炉水素還元実証試験を開始することを決定し、2023年2月に公表しました。今後、本格的吹き込み試験(グリーンイノベーション基金事業)に向け、東日本製鉄所君津地区における水素系ガス吹込実証設備の導入を進めていきます。
(※)Carbon Capture, Utilization and Storage:CO2を分離・回収し、直接ないし他の物質に変換して利活用する、あるいはCO2を地中に埋めて貯留する技術。
4.デジタルトランスフォーメーション戦略の推進
デジタルトランスフォーメーション戦略に5年間で1,000億円以上を投入し、鉄鋼業におけるデジタル先進企業を目指しています。
データとデジタル技術を駆使した業務・生産プロセス改革を進めてきました。具体的な取組みとしては、無線IoTセンサ活用プラットフォームである「NS-IoT」の適用を拡大することで、多拠点のデータを集約し、さらなる高度な分析・監視の実現を目指しています。東日本製鉄所君津地区及び鹿島地区においては、設備の早期異常検知を目的とした実運用を2022年4月より開始しており、今後も一層の適用拡大に向け、北日本製鉄所室蘭地区・名古屋製鉄所・関西製鉄所和歌山地区・九州製鉄所八幡地区及び大分地区での2023年度稼働開始を目指し、計画を前倒しする投資を決定しました。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
「日本製鉄グループ中長期経営計画」の収益・財務体質目標等については、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しています。
(注) 上記(経営環境)と(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)の記載には、2023年5月10日決算発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれている。これらはその発表又は公表の時点において当社が適切と考える情報や分析、一定の前提等に基づき策定したものであり、かかる見積りに固有の限界があることに加え、実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性がある。かかる要因については、後記「3 事業等のリスク」を参照されたい。
本報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、下記各項のものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況」の他の項目、本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況」の各注記、その他においても個々に記載していますので、あわせて御参照ください。
なお、当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、本報告書「第一部 企業情報 第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりの企業統治体制を整え、内部統制システムを整備・運用し、各社・各部門が自部門における事業上のリスクの把握・評価を行ったうえで、組織規程・業務規程において定められた権限・責任に基づき業務を遂行しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
<経営環境(鉄鋼市場)に関するリスク>
(1)日本及び海外の経済状況の変動等
製鉄事業を中核とする当社グループにおいては、連結売上収益の約9割を製鉄事業が占めています。自動車、建設、エネルギー、産業機械等、鋼材の主要な需要家が属する業界と同様に、製鉄事業は国内及び海外のマクロ経済情勢と相関性が高く、日本や世界経済の景気に大きく影響されます。
当社は、資産の多くを日本に保有しており、日本の政治的、経済的又は法的環境が大きく変わると、その資産価値が大きく変動するリスクがあります。また、日本は、当社グループの最も重要な地理的市場の一つであり、国内売上収益が当期末の連結売上収益の約6割を占めます。先行きを見通すことは困難ですが、日本の経済が悪化すれば、当社グループの事業活動、業績、財政状態や将来の成長に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループは、グローバル戦略の深化・拡充を事業戦略の一つに掲げており、当社グループの海外売上収益は、連結売上収益の約4割を占めます。海外では政情不安(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む。)、日本との外交関係の悪化、経済情勢の悪化、商習慣、労使関係や文化の相違から生じる不測のリスクが生じる可能性があります。これに加えて、鋼材需要の減退、価格競争の激化、大幅な為替レート変動、自然災害の発生、感染症の拡大、保護主義の台頭、投資規制、輸出入規制、為替規制、現地産業の国有化、税制や税率の大幅な変更等、海外各国における事業環境が大きく変化する場合は、当社グループの事業活動、業績、財政状態や将来の成長に悪影響が生じる可能性があります。2023年度については、世界の鉄鋼需要は現状からの好転が見込めない状況下にあります。中国は不動産市況の低迷が継続し、内需の回復も見通せておらず、欧米においても先行きの不透明感が払拭できていません。また、製品価格が低迷するなか、原料価格は依然として高水準で推移すると想定され、海外一般市況分野におけるスプレッド(原料と鋼材の市況価格差)の改善も見込めない状況にあります。こうした状況に対して、当社は従来の収益構造対策等に加え、将来ビジョンである1兆円の利益水準に向けて、さらに厚みを持った新たな事業構造への進化を図り、外部環境に関わらず、さらなる高収益を計上できる基盤の構築を目指していきますが、今後の様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。
(2)鋼材需給の変動等
鋼材の国際的な需給の変動が当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。特に、中国における鉄鋼の過剰生産能力問題は、十分な解決には至っておらず、過剰供給に起因する世界市場での厳しい競争は、世界の鋼材価格の引下げ要因となり、当社グループの事業活動、業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、原油・天然ガス等の価格変動も、販売先のひとつであるエネルギー分野の鋼材需要の変化につながることから、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
また、当社グループの製鉄事業における需要家の多くは、鋼材を大量にかつ長期にわたり購入しており、主要な需要家が事業戦略や購買方針を大幅に変更した場合や、鋼材等の販売先である商社・需要家等において与信リスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(3)原燃料価格の変動等
当社グループは、鋼材の生産に必要な鉄鉱石、石炭等の主原料の大半をオーストラリア、ブラジル、カナダ、米国等の海外から輸入しています。また、当社グループは、主原料をはじめ、合金、スクラップ、天然ガス等の原燃料の調達に際し、調達ソースの分散等を通じて安定調達に努めていますが、その価格や海上輸送にかかる運賃は国際的な需給状況により大きく変動しており、市況が高騰した際に、当社グループがこれを鋼材の販売価格に転嫁できなければ、当社グループの事業活動、業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、原燃料生産国における大きな自然災害、ストライキやトラブルの発生、政治情勢の悪化や戦争・テロ、感染症の拡大等により、原燃料の生産量や出荷量が減少すると、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)為替相場の変動
当社グループは、製品等の輸出及び原燃料等の輸入において外貨建取引を行っており、また外貨建ての債権債務を保有しています。製品等の輸出による受取外貨を原燃料等の輸入の際の支払外貨に充当することにより為替変動影響の大部分を排除したうえで、実需原則に基づいて先物為替予約を実施していますが、為替相場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。円高が進んだ場合、鋼材を中心とする当社国内製品の輸出競争力が損なわれることや、自動車、家電、エネルギー、産業機械等、製鉄事業の主要な需要産業の輸出競争力も損なわれて国内鋼材需要が減退することにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。一方、円安が進んだ場合、輸出市場においては相対的に価格競争力が増しますが、原燃料等の価格が高騰している状況においては、急速な円安によるコスト影響が従来以上に大きくなる可能性があります。
(5)他素材との競合
鉄鋼製品は、アルミニウム、炭素繊維、ガラス、樹脂・プラスチック、複合材、コンクリート及び木材のような他の素材と常に競合しています。近年、特に電気自動車(EV)の普及等により素材へのニーズが多様化している自動車向け用途においては、当社グループも独自に鋼材のさらなる軽量化や高機能鋼材の研究・開発・製造等を進めていますが、需要家がアルミニウム、樹脂、炭素繊維複合材等の他素材への転換を選択し鋼材の需要が減少すると、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<事業戦略・計画の遂行に関するリスク>
(1)中長期経営計画の遂行
当社グループは、2021年3月に「日本製鉄グループ中長期経営計画」(本項において、以下「中長期経営計画」といいます。)を策定し、その計画に掲げた具体的諸施策を推進しています。これらの計画は、策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定されていますが、こうした情報や分析等には不確定要素が含まれています。今後、事業環境の悪化や本「事業等のリスク」として記載したすべての事項を含めたその他の要因により、期待される成果の実現に至らず、「中長期経営計画」で掲げた投入計画、財務目標も達成できない可能性があります。
(2)カーボンニュートラル実現に向けた取組み
当社は、2021年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を策定し、2050年に向けて電炉による高級鋼の量産製造、Super-COURSE50等の高炉水素還元法の開発を通じたCO2抜本的削減、水素による直接還元鉄製造等の超革新的技術にチャレンジし、CCUS等によるカーボンオフセット対策等も含めた複線的なアプローチでカーボンニュートラルを目指すこととしました。こうした極めてハードルの高いイノベーションに対し、当社は約5,000億円の研究開発費、設備実装に約4~5兆円の投資が必要であることに加え、2050年段階での外部条件を含むベストケース想定でも大幅なコストアップになると想定しています。これに対し、非連続的イノベーション等の研究開発や設備実装に対する長期かつ継続的な政府の支援、莫大なコストを社会全体で負担する仕組みの構築等、政府をはじめとする関係部門に対して要望していますが、十分な支援を受けられない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、産業界に不利となる制度変更、研究開発の成果が得られない等の要因により、期待される成果の実現に至らない可能性があります。
(3)コスト改善の取組み
当社グループは、「中長期経営計画」に掲げたとおり、「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針として最適生産体制の構築を進めることとしています。そのうち生産体制のスリム化・効率化については、2020年2月に決定した生産設備構造対策による効果とあわせ、2025年までに2019年度対比で1,500億円/年の構造対策効果を見込んでいます。しかしながら、様々な外部要因や内部要因等により、国内製鉄事業において計画している鉄源工程や製品製造工程のスリム化・効率化の進捗が遅れるなど、コストを計画通り改善することができない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)設備投資
製鉄事業は資本集約的産業であり、継続的に多額の設備投資及び設備修繕支出を必要とします。当社グループは、高炉・コークス炉改修を含む設備の新鋭化・健全性維持並びに成長分野の需要捕捉に向けた瀬戸内製鉄所及び九州製鉄所におけるハイグレード無方向性電磁鋼板能力対策や名古屋製鉄所における次世代熱延ライン新設を含む生産対応等を推進するために必要な設備投資を計画的に実施していますが、減価償却費が増加するほか、当初想定した効果が十分に得られないこと等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは「中長期経営計画」に掲げたとおり、「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針に、2021年度から2025年度までの5年間で約2兆4,000億円の設備投資を実施し、その投資効果の最大化に取り組んでいます。
(5)組織再編、海外投資等
当社グループは、2017年3月の日新製鋼株式会社の子会社化(2020年4月に吸収合併)、2018年6月のスウェーデン Ovako AB社の買収、2019年3月の山陽特殊製鋼株式会社の子会社化、2019年12月のインド エッサールスチール社のアルセロールミッタル社との共同買収、2020年12月のAM/NS Calvert LLCにおける電気炉の新設の決定、2022年2月のタイ G Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limitedの買収、2023年4月の日鉄物産株式会社の子会社化等の組織再編・投資によって成長をしており、今後も国内及び海外において、合併や買収、合弁会社の設立等の組織再編や投資を継続する可能性があります。当社グループは、慎重な事業評価、契約交渉、社内審議等のプロセスを経たうえで投資等の実行を判断し遂行していますが、当初計画通りにシナジー効果が創出されなかったり、連結財政状態計算書に計上したのれんに減損が生じたりする場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。特に、海外での投資案件は、様々な要因(適切な投資対象を見つけられない可能性や合弁事業におけるパートナーとの関係等も含む)から不確実性が高まります。
(6)事業構造・生産体制の見直し
国内鉄鋼需要の縮小や海外鉄鋼市場における競争激化及び主要生産設備の老朽化に対応すべく、国内製鉄事業においては、商品と設備の取捨選択による集中生産等を基軸とした、体質強化の徹底的な推進を目的に、設備の休止や不採算品種からの撤退等の生産設備構造対策を実施していますが、今後の経営環境の変化や収益動向等を踏まえ、さらなる対策を実施する可能性があります。海外においても、既存の事業についてこれまでに選択と集中を積極的に推進し、当社が継続する合理性のない事業からの撤退を概ね完了しつつありますが、経営環境の悪化等により、将来的に収益回復の見込みがない不採算事業や投資目的が希薄化した事業を中心に、引き続き再編・撤退を行う可能性があります。これらのさらなる再編・撤退等を実施する場合、減産や一時的な損失の発生等により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当期においては、事業再編損として328億円の損失を計上しています。
(7)人材確保・育成、ダイバーシティ&インクルージョンへの取組み、省力化対策
当社グループの将来の成長は、有能な人材の確保及び育成に依拠する部分も大きいことから、仕事と生活の調和の取れた働き方の実現や関連諸制度の浸透・定着等によって就労環境の整備を図りつつ、育成体系の整備等を行いながら、安定的な人材確保と人材競争力の強化に努めています。また、有能な人材の確保及び育成とともに、会社人生で発生し得るライフイベントや健康に起因する労働損失を最小化し、様々な事情を抱える多様な人材が生産性高く、誇りを持って活躍できる働き方を実現するために、ダイバーシティ&インクルージョンへの積極的な取組み等を通じ、多様な従業員が誇りとやりがいを持って活躍できる企業を実現していくべく、具体的な取組みの強化に努めています。加えて、人口減少による人手不足に対応するべく、省力化対策の設備投資を進めています。当社グループは、有能な人材の確保と育成、また省力化対策の設備投資の確実な実行に努めていますが、計画通り達成できない場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<事業運営に関するリスク>
(1)設備事故、労働災害等
当社グループの中核事業である製鉄事業の生産プロセスは、高炉、コークス炉、転炉、連続鋳造機、圧延機、発電設備等の特定の重要設備に依存しています。当社グループは、安定生産の確保を図るため、製鉄所等の強化・再建を基本経営課題に据えて、設備と人材の両面で製造実力の強化策を推進していますが、これらの設備において、電気的又は機械的事故、火災や爆発、労働災害等が生じた場合、一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延すること等により費用や補償の支払いが発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは、これらの事故等に関連し、一定の保険を付しています。
(2)品質問題等
当社グループは、鉄鋼製品をはじめ、様々な製品・サービスを顧客に提供しています。当社は、「品質は生産に優先する」という基本的なものづくりの価値観のもと、一般社団法人日本鉄鋼連盟が定めた「品質保証体制強化に向けたガイドライン」等に沿った様々な取組みを実施していますが、製品やサービスに欠陥が見つかり品質問題が生じた場合は、顧客等から代品の納入や補償を求められるほか、製造・品質管理オペレーションの中止や見直しを行う必要が生じたり、当社グループ又は当社グループの製品やサービスに関する信頼が損なわれて売上が減少すること等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは、これらの事故等に関連し、一定の保険を付しています。
(3)知的財産権の保護
当社グループは、知的財産を活用した事業活動における競争優位性確保のため、技術開発等により得られた知的財産について、特許権や商標権等の産業財産権による保護を受けるための権利化や、営業秘密としての秘匿化の徹底に努めていますが、当社の知的財産について第三者による権利侵害や無断使用が行われた場合、権利化範囲や営業秘密としての管理が十全性に欠けたために必要な法的保護が受けられない場合、第三者によって権利が無効化された場合等には、当社グループの競争優位性の喪失を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、第三者による権利侵害等の場合は、速やかに法的措置等を検討・実施するものの、訴訟状況等の諸般の事情から損害の回復が十分になされない可能性もあります。
当社グループは、各国・地域における知的財産に関する法令や規制に基づく事業活動を展開していますが、第三者から知的財産の侵害クレームや訴訟提起等を受け、当社グループに不利な判断がなされた場合や知的財産関連法規制に違反したと認定された場合には、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)情報システムの障害、情報漏洩等
当社グループの事業活動は、情報システムの利用に大きく依存しており、また、自社及び顧客・取引先の営業機密や個人情報等の機密情報が情報システムに保管されています。当社においては、技術情報をはじめとする機密情報の漏洩対策については最重要の経営課題として認識し、システムのセキュリティ強化に加えて、業務ルール、社員教育等の対策を推進していますが、当社グループの情報システムにおいて、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃等により、システム停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、知的財産における競争優位性の喪失、訴訟、社会的信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<その他のリスク>
(1)自然災害、戦争・テロ・感染症等
当社グループは、製造、販売、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しています。製鉄所をはじめとするこれらの各拠点においては、台風、地震、津波、洪水等の自然災害、戦争やテロ行為が生じた場合に備え、ハード面(設備対策)、ソフト面(事業継続計画の策定等)において、一定の対策を施していますが、大規模な自然災害等に見舞われた場合は、各拠点の設備、情報システム等が損害を被り、一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延すること等により費用や補償の支払いが発生したり、原料・製品・燃料の輸送手段等のインフラが停止すること等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、当社グループの拠点の有無にかかわらず、大規模な自然災害や戦争・テロ行為が生じた場合や強力な新型インフルエンザ等の感染症が世界的に流行した場合には、当社グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。また、これに伴い、需要家の活動水準の低下やサプライチェーンの混乱等の影響による景気の急速な悪化等を通じて、当社グループの生産活動及び販売活動等に支障をきたす可能性があります。
(2)事業活動にかかる環境規制
当社は、製鉄所毎に異なる環境リスクへのきめ細かな対応や各地域の環境保全活動を通じた環境リスクマネジメントを推進し、グループ全体での環境負荷低減に取り組んでいます。当社グループは、事業活動を行う日本及び海外各国において、大気・水・土壌の汚染、化学物質の利用、廃棄物の処理・リサイクル等に関する広範な環境関連規制の適用を受けており、今後、これらについて、より厳格な規制が導入されたり、法令の運用・解釈が厳しくなったりすることにより、当社グループの事業活動の継続が困難となったり、法令遵守のための費用が増加する可能性があります。
また、当社グループは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の一つのゴールに掲げられた気候変動対策にも貢献すべく、世界最高レベルの資源・エネルギー効率で鋼材を生産し、中長期的なCO2排出量削減の観点から革新的な技術開発と長年培った技術の海外への移転・普及にも積極的に取り組んでいますが、今後、CO2の排出や化石燃料の利用に対する新たな規制等が導入された場合には、製鉄事業を中心に当社グループの事業活動が制約を受けたり、費用が増加したりする可能性があります。
(3)非金融資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、製鉄所設備等の有形固定資産や無形資産等の多額の非金融資産を所有していますが、経営環境の変化等に伴い、その収益性が低下し投資額の回収が見込めなくなった場合には、将来的な回収可能性を踏まえて非金融資産の帳簿価額を減額し減損損失を計上するため、当社グループの業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。当期末における有形固定資産の残高は3兆1,836億円、無形資産の残高は1,574億円となっています。
また、当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づき繰延税金資産を計上していますが、経営環境の変化等に伴い将来課税所得の見積りの変更が必要になった場合や税率等の税制変更があった場合、繰延税金資産の取崩しにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,032億円となっています。
(4)有価証券等の保有資産(制度資産を含む。)価値の変動
当期末において、当社グループは株式等の資本性金融商品、関連会社・共同支配企業に対する投資を合計1兆6,656億円保有しています。このうち、取引先や提携先の政策保有株式については、すべての株式を対象に、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を確認しており、時価が一定額を超える政策保有株式については、取締役会において毎年検証しています。しかしながら、投資先の業績不振、証券市場における市況の悪化等により、評価損が発生する可能性があります。また、上記のほかに、当期末において、制度資産(退職給付信託財産を含みます。)が当社グループ合計で4,773億円あり、この資産を構成する国内外の株式、債券等の価格変動や金利情勢の変動が財政状態等に影響を与える可能性があります。
(5)金融市場の変動や資金調達環境の変化
当期末における当社グループの連結有利子負債残高は、2兆6,993億円であり、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、事業資金を金融機関からの借入及び社債の発行等により調達しています。当社グループは、「中長期経営計画」に掲げた親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(劣後ローン・劣後債資本性調整後D/Eレシオ)0.7以下を目標とし、健全な財務体質の維持に努めていますが、金融市場が不安定となり又は悪化した場合、金融機関が貸出を圧縮したり格付機関が当社の信用格付の引き下げをしたりした場合等においては、必要な資金を必要な時期に適切な条件で調達できず、資金調達コストが増加することにより、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。その結果として、「中長期経営計画」に掲げた上記目標を達成できない可能性もあります。
(6)海外の主要市場における関税引上げ、輸入規制
これまで当社グループにおける一部の鋼材の輸出取引において、米国や東南アジア諸国等から反ダンピング税等の特殊関税を賦課されています。当社グループは、輸入規制を受ける可能性を認識のうえ輸出取引を行うなど、適切に対応するよう努めていますが、将来、海外の主要市場国において関税引上げ、特殊関税の賦課、数量制限等の輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受けることにより、当社グループの業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(7)会計制度や税制の大幅な変更
当社グループが事業活動を行う国において、会計制度や税制が大きく変更され又は当社グループに不利な解釈や適用がなされたりした場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社は、グローバル展開の一層の推進による企業価値の向上と資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上を目的に、連結財務諸表において国際会計基準(IFRS)を任意適用しています。
(8)各種法的規制、訴訟等
当社グループの事業活動はグローバルに展開しており、日本及び海外各国・地域の法令や規制に従って事業活動を行っています。法規制には、商取引法、競争法、労働法、証券関連法、知的財産権法、環境法、税法、輸出入関連法、個人情報保護関連法、刑法等に加えて、事業活動や投資を行うために必要とされる様々な政府の許認可及び経済安全保障に関連する規制等があります。今後、より厳格な規制が導入されたり、法令の運用・解釈が厳しくなったりすることにより、当社グループの事業活動の継続が困難となったり、法令遵守のための費用が増加する可能性があります。
当社グループは、法令遵守が事業活動の基盤であることを認識し、国内外の役員・従業員に対し、様々な形で法務・コンプライアンス教育を実施していますが、当社グループが何らかの法規制に違反したと認定された場合には、課徴金等の行政処分、罰金等の刑事処分を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループの広範な事業活動から、様々な第三者から訴訟を提起される可能性があり、重要な訴訟において当社グループに不利な判断がなされた場合には、事業活動の停止・制約、補償等により、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当期における当社グループの経営成績の状況の概要は、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。
② 当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー
当連結会計年度末における資産、負債、資本については、下記のとおりです。
連結総資産は9兆5,670億円と、前連結会計年度に比べて8,147億円増加しました。負債は4兆9,206億円と、前連結会計年度に比べて653億円増加しました。資本は4兆6,464億円と、前連結会計年度に比べて7,494億円増加しました。なお、当期末の親会社の所有者に帰属する持分は4兆1,811億円となり、有利子負債は当期末2兆6,993億円となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は0.65倍(劣後ローン・劣後債資本性調整後0.51倍)となりました。
(総資産)
現金及び現金同等物は、前期末(5,510億円)から1,193億円増加し、当期末6,704億円となりました。これは、高水準の事業利益による営業活動キャッシュ・フローの収入等によるものです。
棚卸資産は、前期末(1兆7,565億円)から3,293億円増加し、当期末2兆859億円となりました。これは、原料価格上昇等によるものです。
有形固定資産は、前期末(3兆526億円)から1,309億円増加し、当期末3兆1,836億円となりました。これは、設備の新鋭化を図るべく、名古屋製鉄所における第3高炉改修や瀬戸内製鉄所広畑地区における電気炉の新設等を実行したこと、注文構成を高度化すべく、九州製鉄所八幡地区や瀬戸内製鉄所広畑地区における電磁鋼板製造設備の増強、名古屋製鉄所における次世代型熱延ライン新設工事を実行したこと等によるものです。
持分法で会計処理されている投資は、前期末(1兆790億円)から1,314億円増加し、当期末1兆2,105億円となりました。これは、持分法による投資利益(1,029億円)等によるものです。
(負債)
有利子負債は前期末(2兆6,533億円)から460億円増加し、当期末2兆6,993億円となりました。これは、次期以降の経済情勢・調達環境見通し等を勘案した借入金の調達、社債の発行等による増加があった一方で、長期借入金の返済を実行したこと等による減少があったことによるものです。
営業債務及びその他の債務は、前期末(1兆5,267億円)から654億円増加し、当期末1兆5,921億円となりました。これは、主に未払金の増加によるものです。
未払法人所得税等は、前期末(1,099億円)から580億円減少し、当期末519億円となりました。これは、主に未払法人税等の減少によるものです。
(資本)
利益剰余金は、前期末(2兆5,147億円)から5,643億円増加し、当期末3兆791億円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益(6,940億円)等による増加があった一方で、配当金の支払いによる減少(1,659億円)があったことによるものです。
その他の資本の構成要素は、前期末(1,969億円)から1,442億円増加し、当期末3,411億円となりました。これは、為替相場の変動による、在外営業活動体の換算差額の増加(939億円)、金利の変動等による、キャッシュ・フロー・ヘッジの公正価値の純変動(338億円)等によるものです。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローについては、下記のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは6,612億円の収入となりました(前期は6,156億円の収入)。
投資活動によるキャッシュ・フローは3,665億円の支出となりました(前期は3,788億円の支出)。
この結果、フリーキャッシュ・フローは2,946億円の収入となりました(前期は2,367億円の収入)。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,976億円の支出となりました(前期は613億円の支出)。
以上により、当期末における現金及び現金同等物は6,704億円(前期は5,510億円)となっています。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益8,668億円に、減価償却費及び償却費(3,401億円)の加算等による収入があった一方、棚卸資産の増加(3,095億円)、法人所得税の支払(2,144億円)、持分法による投資損益(1,029億円)の控除の調整等による支出がありました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資有価証券の売却による収入(886億円)等があった一方、設備の新鋭化を図るべく、名古屋製鉄所における第3高炉改修や瀬戸内製鉄所広畑地区における電気炉の新設等を実行したことに加え、注文構成を高度化すべく、九州製鉄所八幡地区や瀬戸内製鉄所広畑地区における電磁鋼板製造設備の増強、名古屋製鉄所における次世代型熱延ライン新設工事を実行したこと等による有形固定資産及び無形資産の取得による支出(4,700億円)等がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前期末及び当第2四半期末の配当(1,659億円)等による支出がありました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は製造原価による。
2 上記の金額には、グループ向生産分を含む。
当連結会計年度における受注状況をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注)1 上記の金額には、グループ内受注分を含まない。
2 「製鉄」、「ケミカル&マテリアル」は、多種多様な製品毎に継続的かつ反復的に注文を受けて生産・出荷する形態を主としており、その受注動向は、生産実績や販売実績に概ね連動していく傾向にあり、また、需要動向等についても、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」において記載していることから、金額又は数量についての記載を省略している。
当連結会計年度における外部顧客に対する販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 前連結会計年度及び当連結会計年度における輸出販売高及び輸出割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
2 主な輸出先及び輸出販売高に対する割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
3 前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりである。
(注) 総売上収益に対する割合が10%未満の場合は、当該連結会計年度の記載を省略し、「-」表示している。
当連結会計年度において、生産及び販売の実績金額が著しく増加しています。なお、生産、受注及び販売等に関する特記事項については、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」等に記載しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
当期の世界経済は、ウクライナ情勢によるインフレの進行や欧米の金融引締め等の影響による下押し圧力があったものの、全体的に底堅い動きとなりました。日本経済については、緩やかに持ち直したものの、円安等の影響により、大幅にインフレが進行しました。
鉄鋼需要については、上期は中国においてロックダウン解除後もサプライチェーン正常化に時間を要し需要回復が遅れました。また、米国・欧州ではインフレが進行し、新興国では通貨安で景気が悪化するなど、鋼材市況は急速に減速しました。下期は、中国においてはゼロコロナ政策終了により経済が回復基調にあったものの、米国では金利政策により景気が後退し、欧州・新興国では景気悪化が継続するなど、世界的な鋼材需要は低迷しました。こうした状況において、世界粗鋼生産量は過去に例を見ない長期間かつ大規模な減少が継続し、当社単独粗鋼生産量も2012年の経営統合後ピークの4,900万トンレベルから、当期は3,425万トンに著しく減少しました。
当期の連結業績については、極めて厳しい事業環境が継続するなかにおいても、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組むことで、通期の売上収益は7兆9,755億円(前期は6兆8,088億円)、事業利益は9,164億円(前期は9,381億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は6,940億円(前期は6,373億円)となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりです。当社グループは、製鉄事業を中核として、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しており、製鉄セグメントが連結売上収益の約9割を占めています。
(当期のセグメント別の業績の概況)
<製鉄>
製鉄セグメントの売上収益は7兆2,455億円(前期は6兆1,536億円)、セグメント利益は8,614億円(前期は8,710億円)となりました。
製鉄セグメント利益の前期に対する増減△96億円の主な要因は次のとおりです。
極めて厳しい事業環境が継続するなかにおいても、当社は従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組むことで、生産・出荷数量の減少により1,350億円の減益となったものの、マージン改善による600億円の増益、コスト改善効果による500億円の増益等により、前期並みのセグメント利益となりました。
<エンジニアリング>
日鉄エンジニアリング㈱においては、カーボンニュートラル社会への貢献と災害に強いレジリエントな街づくりに関連する事業の成長に向けて、廃棄物発電・洋上風力発電事業等及び免制震デバイスや橋梁商品の開発・販売等の拡大に取り組んでいます。また、安定収益事業の強化・拡大のため、M&Aにより廃棄物処理O&M(運転・維持管理)事業やガス導管事業を取得し、洋上風力発電施設のO&M事業に関しては、専門企業や作業船保有企業との協業を開始しました。当期は環境・エネルギーセクターを中心に各セクターとも、前期までに積み上がった受注プロジェクトを着実に遂行したことにより、売上収益、事業利益とも増加しました。エンジニアリングセグメントの売上収益は3,522億円(前期は2,792億円)、セグメント利益は116億円(前期は63億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
製鉄プラントセクターは、高炉改修の大型案件が完工したこと等により、538億円と前期(415億円)に対して増加しました。環境・エネルギーセクターは、廃棄物発電、バイオマス発電、洋上風力発電、海外海洋等の事業で大型案件の工事が進捗し、2,374億円と前期(1,823億円)に対して増加しました。都市インフラセクターは、免制震デバイスや橋梁商品、大型物流施設の建設等において堅調な売上を計上し、690億円と前期(603億円)に対して増加しました。
<ケミカル&マテリアル>
日鉄ケミカル&マテリアル㈱においては、原燃料価格の高騰や年央からの半導体等の需要減少等により、前期比で減益となりました。ケミカル&マテリアルセグメントの売上収益は2,745億円(前期は2,498億円)、セグメント利益は161億円(前期は253億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
コールケミカル事業では、タイヤ向けカーボンブラックの販売は好調に推移しましたが、黒鉛電極用ニードルコークスは需要の低迷が継続し、620億円(前期は390億円)となりました。化学品事業では、ベンゼン市況は概ね安定的に推移しましたが、スチレンモノマーやビスフェノールAは中国での生産設備の新増設が進む一方、需要低迷が続き、1,250億円(前期は1,200億円)となりました。機能材料事業では、半導体関連材料、ディスプレイ関連材料の急速な需要減が進み、販売数量が減少しました。複合材料事業では、インフラ更新の需要は継続する見通しながら、着工の遅れから、主力の土木・建築向け補強材料の販売数量は減少しました。一方、スポーツ分野向けを中心に炭素繊維の販売は好調を継続し、機能材料と複合材料をあわせて880億円(前期910億円)となりました。
<システムソリューション>
日鉄ソリューションズ㈱においては、今後の日本企業のDX本格展開を見据え、お客様との関係性を深化させながら、全社を挙げてDXニーズを最大限に捕捉し、事業拡大に取り組んでいます。注力領域の一つであるデジタル製造業領域では、無線IoTセンサ活用プラットフォーム「NS-IoT」や統合データプラットフォーム「NS-Lib」を構築し、当社のDX推進に取り組むとともに、製薬企業と共同で統合データ利活用基盤を構築するなど製造業のDX推進支援に取り組みました。また、AI領域、業務プロセスのデジタル化支援、データ利活用領域、豊富なDX人材リソース等、それぞれ強みを有する各企業との資本業務提携や戦略的パートナーシップ契約の締結に加え、電力業界、金融業界及び食品業界向けの新規ソリューション開発を行うなど、DXニーズへの対応力の強化に取り組みました。システムソリューションセグメントの売上収益は2,925億円(前期は2,713億円)、セグメント利益は321億円(前期は308億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
業務ソリューションは、産業、流通・サービス分野におけるプラットフォーマー向けの増加に加えて、公共公益分野での官公庁向け大型基盤構築案件により、1,898億円と前期(1,757億円)に対して増加しました。サービスソリューションは、ITインフラ分野におけるクラウド事業を中心とした増加に加えて、鉄鋼分野における当社及び当社グループ向けの増加により、1,019億円と前期(947億円)に対して増加しました。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」に掲げた収益・財務体質目標、株主還元とそれに対する当期の状況は以下のとおりです。
2022年度の連結業績につきましては、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組み、通期の売上収益は7兆9,755億円(うち上期3兆8,744億円、下期4兆1,011億円)、事業利益は9,164億円(うち上期5,417億円、下期3,747億円)、ROSは11.5%(うち上期14.0%、下期9.1%)となりました。
(*) 劣後ローン・劣後債資本性調整後
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析については、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー」 に記載しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(資本政策)
一定水準の財務健全性が維持されることを前提として、当社グループは投下資本の運用効率を重視し、投資先への資本の投入(資本的支出、R&D、M&A含む)によって企業価値を最大化する資本政策を推進しています。それは、資本コストを超過する収益の創出が期待され、持続的な成長を可能にすると同時に、株主への利益還元によって株主の要求を満たすものです。
当社グループは、上記資本政策の達成に必要な資金を、主として「稼ぐ力」の維持と向上によって生み出される営業キャッシュ・フローから獲得することに加え、必要に応じて銀行借入や社債の発行等、外部からの資金調達も実施しています。
また当社グループは、ROS、ROE及びD/Eレシオを中長期的な収益の成長と財務体質の健全性を達成する上での主要な経営管理指標としています。
剰余金の配当等につきましては、本報告書「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しています。
また、自己株式の取得については、機動性を確保する観点から、定款第33条の規定に基づき取締役会の決議によることとします。取締役会においては、機動的な資本政策等の遂行の必要性、財務体質への影響等を考慮したうえで、総合的に判断することとしています。
(資金需要の動向に関する経営者の認識と資金調達の方法)
1)中長期経営計画の実行状況
2021年3月に公表した「日本製鉄グループ中長期経営計画」では、成長の実現に向けた経営資源投入として、5年間で2兆4,000億円規模の設備投資と6,000億円規模の事業投資に加え、カーボンニュートラル生産の実現に向けた研究開発や設備投資の実行、デジタルトランスフォーメーション戦略への資金投入を計画しています。これら経営計画に必要な投資を実行する前提で、2025年度断面では、D/Eレシオ(※)0.7以下を実現することを目標としています。
(※)劣後ローン・劣後債資本性調整後
上記方針のもと、設備投資については、強靭な国内生産体制を再構築するための投資や戦略商品の対応力強化に資する投資等を積極的に進めてきました。具体的には、自動車業界において一層高まっていくと想定される車体の軽量化・高強度化ニーズに応えるべく、超ハイテン鋼板等の高級薄板の生産体制を抜本的に強化するため、戦略的な投資として約2,700億円を投入し、自動車鋼板製造の中核拠点である名古屋製鉄所に次世代熱延ラインを新設することを2022年5月に決定しました。また、電磁鋼板についても、カーボンニュートラルに向けた社会的ニーズを踏まえ、既決定投資に加え、新たに約900億円を投入し、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)・九州製鉄所八幡地区においてハイグレード無方向性電磁鋼板の能力対策を実施することを2023年5月に決定しました。
また、事業投資については、将来的なグローバル粗鋼1億トン体制及び外部環境に左右されない厚みを持った事業構造への進化に向けた施策を推進しています。2022年度においては、2022年9月に、ArcelorMittal Nippon Steel India Limitedのハジラ製鉄所での鉄源拡張、及び、港湾・電力等重要インフラの買収を通じた、同社における製鉄事業基盤強化施策の実施を決定しました。2022年12月には、鉄鋼製造サプライチェーンの下流にあたる流通分野へ事業領域を拡大するため、持分法適用関連会社であった日鉄物産株式会社に対する公開買付け及び子会社化を決定し、2023年4月に公開買付けが完了・成立しました。
環境面では、カーボンニュートラルの実現に向けて、2021年4月に専任プロジェクトを設置し、3つの超革新技術(高炉水素還元、100%水素直接還元プロセス、大型電炉での高級鋼製造)を他国に先駆けて開発・実機化するための取組みを推進しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、当社を含む4社による共同提案を行い、2021年12月に採択されました(支援規模:1,935 億円)。
2)資金調達
上記経営計画に関して多額の資金所要が見込まれるなか、調達コストを抑制しながら成長投資資金を確保し財務基盤を強化することを目的として、2021年10月に転換社債型新株予約権付社債3,000億円を発行しました。2023年3月には、脱炭素社会に向けた取組みを推進していくための所要資金を調達する手段として、グリーンボンド(無担保社債)500億円を発行しました。
また、フリーキャッシュ・フローの状況に応じて、調達環境、金利条件等を勘案して、最適なタイミングで資金調達面での対応を図ります。
2023年3月末における劣後ローン・劣後債資本性調整後のD/Eレシオは0.51倍となり、2025年中長期経営計画の目標である0.7倍以下を維持しています。中長期的に機動的かつ確実な成長戦略の遂行を継続するため、財務規律を重視した キャッシュ・マネジメントを引き続き実行していきます。
(流動性管理及び資金調達の方針について)
当社グループの円滑な事業活動に必要な資金を確保するため、手許資金及び外部借入を有効に活用しています。手許資金については、実需に見合った最低限の現預金を保有する方針としており、過去及び将来の資金繰りを勘案し、最適な保有残高を志向しています。外部借入については、安全性・安定性・柔軟性を担保する観点から基本的な調達の枠組みを決定しています。具体的には、不測の事態発生時における、当社の支払余力を確保すべく、適正な長期固定適合比率を維持するとともに、安全性の補完のためにコミットメントライン(当社連結:6,109億円)契約を締結しています。
また短期資金と長期資金のバランスを踏まえた有利子負債残高の設計により自由度を確保しており、当該枠組みの範囲内で、最適な資金調達の実現を志向しています。
③会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されています。重要な会計方針については、本報告書「第一部企業情報 第5 経理の状況」に記載しています。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、引当金の計上、非金融資産の減損、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っています。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
当社が特に重要と判断している会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下です。
a.非金融資産の減損
当社グループは、資産が減損している可能性を示す兆候のいずれかが存在する場合、資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額を回収可能価額として見積り、回収可能価額が資産又は資金生成単位の帳簿価額を下回る場合、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しており、使用価値は見積将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより算出しています。当該キャッシュ・フローは中長期経営計画及び最新の事業計画を基礎としており、これらの計画には鋼材需給の予測及び製造コスト改善等を主要な仮定として織り込んでいます。鋼材需給及び製造コスト改善の予測には高い不確実性を伴い、これらの経営者による判断が将来キャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすと予想されます。なお、当期末における有形固定資産の残高は3兆1,836億円、無形資産の残高は1,574億円となっています。
b.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、鋼材需給の予測及び製造コスト削減等の仮定に基づいて算定された将来における課税所得の見積り等の予想など、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。当社グループは、税務上の便益が実現する可能性が高いと判断した範囲内でのみ繰延税金資産を認識していますが、経営環境悪化に伴う中長期経営計画及び事業計画の目標未達等による将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更を含む税制改正などにより回収可能額が変動する可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,032億円です。
(注) 上記「契約会社名」及び「相手方当事者」の欄には、開示上重要でない者については記載していない。
*1 Ternium Investments S.à r.l.等(以下「テルニウム社等」という。)とのUsinas Siderúrgicas de Minas Gerais S.A. – USIMINAS (以下「ウジミナス社」という。)に関する株主間協定については、ブラジル独占禁止当局の承認等の前提条件が充足され、当社等が保有するウジミナス社株式のテルニウム社等への一部譲渡が完了した日をもって、ウジミナス社の運営体制等に関して、改訂する予定である。
*2 契約内容を一部改訂のうえ、契約期限を延長した。
(2023年3月31日現在)(単位 百万円)
(注) 1 土地(面積千㎡)の欄中[ ]内は、連結会社以外の者から賃借している土地の面積(千㎡)であり外数で表している。
2 本社等の欄には、技術開発本部、支社・支店及び海外事務所を含む。
3 上表には福利厚生施設が含まれている。
(2023年3月31日現在)(単位 百万円)
(注) 1 土地(面積千㎡)の欄中[ ]内は、連結会社以外の者から賃借している土地の面積(千㎡)であり外数で表している。
2 上表には福利厚生施設が含まれている。
(2023年3月31日現在)(単位 百万円)
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注) 2015年10月1日付にて株式の併合(10株を1株に併合)を実施したことに伴い、発行済株式総数が減少した。
2023年3月31日現在
(注) 1 自己株式が「個人その他」の欄に283,947単元、「単元未満株式の状況」の欄に85株含まれている。
なお、この自己株式数は、株主名簿上の株式数であり、実質保有株式数は28,394,120株である。
2 証券保管振替機構名義の株式が、「その他の法人」の欄に78単元及び「単元未満株式の状況」の欄に42株含まれている。
3 単元未満株式のみを有する株主数は、115,114人である。
2023年3月31日現在
(注) 1.上記のほか、当社所有の自己株式283,941百株(持株比率3.1%)がある。
2.2022年10月21日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書に係る変更報告書において、野村證券㈱並びにその共同保有者であるノムラ インターナショナル ピーエルシー(NOMURA INTERNATIONAL PLC)及び野村アセットマネジメント㈱が2022年10月14日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社としては、2023年3月31日現在における実質所有株式数の確認ができないので、上記大株主の状況には含めていない。
なお、変更報告書の内容は以下のとおりである。
3.2022年12月6日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書に係る変更報告書において、三井住友信託銀行㈱並びにその共同保有者である三井住友トラスト・アセット・マネジメント㈱及び日興アセットマネジメント㈱が2022年11月30日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社としては、2023年3月31日現在における実質所有株式数の確認ができないので、上記大株主の状況には含めていない。
なお、変更報告書の内容は以下のとおりである。
4.2023年3月20日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書に係る変更報告書において、ブラックロック・ジャパン㈱並びにその共同保有者であるブラックロック・フィナンシャル・マネジメント・インク (BlackRock Financial Management, Inc.)、ブラックロック(ネザーランド)BV (BlackRock (Netherlands) BV)、ブラックロック・ファンド・マネジャーズ・リミテッド (BlackRock Fund Managers Limited)、ブラックロック・アセット・マネジメント・アイルランド・リミテッド (BlackRock Asset Management Ireland Limited)、ブラックロック・ファンド・アドバイザーズ (BlackRock Fund Advisors)、ブラックロック・インスティテューショナル・トラスト・カンパニー、エヌ.エイ. (BlackRock Institutioal Trust Company, N.A.)、ブラックロック・インベストメント・マネジメント(ユーケー)リミテッド (BlackRock Investment Management (UK) Limited)及びアイ・シュアーズ(デーエー)・アインツ・インベストメントアクティエンゲゼルシャフト・ミット・タイルゲゼルシャフツフェアメーゲン (iShares (DE) I Investmentaktiengesellschaft mit Teilgesellschaftsvermogen) が2023年3月15日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社としては、2023年3月31日現在における実質所有株式数の確認ができないので、上記大株主の状況には含めていない。
なお、変更報告書の内容は以下のとおりである。