株式会社デンソー
(注) 1.国際会計基準(以下、「IFRS」)に基づいて連結財務諸表を作成しています。
2.希薄化後1株当たり当期利益については、希薄化効果のある株式が存在しないため記載していません。
(注) 1.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、希薄化効果のある株式が存在しないため記載していません。
2.第97期の自己資本利益率、株価収益率及び配当性向については、当期純損失であるため記載していません。
3.最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。
4.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第99期の期首から適用しており、第99期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
連結会社は、当社(株式会社デンソー)及び子会社190社、関連会社83社により構成されています。連結会社の事業内容及び連結会社各社の当該事業における位置付けは、次のとおりです。
「日本」、「北米」、「欧州」、「アジア」、「その他」の各セグメントで以下製品を製造・販売しています。
[事業系統図]
連結会社の事業系統図及び主要な会社名は次のとおりです。
なお、当社は製造・販売・研究開発及び子会社・関連会社の統括の各機能を有しています。

(注) 1.*1:特定子会社に該当します。
2.*2:有価証券報告書を提出しています。
3.「議決権の所有又は被所有割合」欄の ( ) 内は、間接所有割合 (内数) です。
4.*3:デンソー・インターナショナル・アメリカ㈱については、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く)の連結売上収益に占める割合が10%を超えています。
5.*4:電装(中国)投資有限公司については、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く)の連結売上収益に占める割合が10%を超えています。
2023年3月31日現在
(注) 従業員数は就業人員(連結会社への出向者を除き、連結会社からの出向者を含む)であり、臨時雇用者数(期間従業員、人材派遣会社からの派遣社員、パートタイマー、契約社員等を含む)は、年間の平均人数を括弧内に外数で記載しています。
2023年3月31日現在
(注) 1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む)であり、臨時雇用者数(期間従業員、人材派遣会社からの派遣社員、パートタイマー等を含む)は、年間の平均人数を括弧内に外数で記載しています。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
3.当社は、「日本」の単一セグメントであるため、セグメント別の従業員の状況の記載を省略しています。
連結会社においては、当社及び主たる国内関係会社の労働組合は全トヨタ労働組合連合会に加盟し、全トヨタ労働組合連合会を通じて全日本自動車産業労働組合総連合会に加盟しています。
なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
(注)1.「管理職に占める女性労働者の割合」及び「労働者の男女の賃金の差異」は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
2.「男性労働者の育児休業取得率」は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
3.*1:「管理職に占める女性労働者の割合」について、女性活躍推進法の規定による公表をしていないため、記載を省略しています。
4.*2:「男性の育児休業取得率」について、女性活躍推進法等の規定による公表をしていないため、記載を省略しています。
5.*3:女性のパート・有期労働者はいません
6.パート・有期労働者には、期間従業員、定年後再雇用者、アルバイト等を含みます。
当社は、イノベーションの源泉は、異なる意見・アイデアを自由闊達に交わせる共創環境であると考えています。その環境を生み出すには、ダイバーシティ&インクルージョンが重要であり、多様な人財が活躍できる環境・組織風土の実現に向けて取り組みを進めています。現在、管理職に占める女性労働者の割合は1.8%(139人)です。2025年度には女性管理職数を200人(2015年度比 約4倍)とする目標を掲げ、メンター施策や研修等の育成施策を展開し、意識啓発や課題解決支援を行っています。また、将来のリーダー層の拡充に向け、新卒採用強化にも取り組んでいます。賃金においては、給与規程や賃金項目において性差はなく、同等の資格レベルであれば、人事制度上、男女で賃金差異が生じることはありません。現時点では、女性の管理職となる年齢層が少ないことが、実績に影響を与えていますが、約10年前から女性採用を強化し、上位資格や管理職昇格も含めたキャリア形成支援や各種研修等による育成等、成長を支援する取り組みを進めています。今後も柔軟な働き方や両立支援制度の拡充、男性の育児参画促進、ダイバーシティ&インクルージョンの風土醸成などを通じて、女性活躍を進めてまいります。
詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ⑶ 人的資本」をご参照ください。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。
① 魅力ある製品で、お客様に満足を提供する。
② 変化を先取りし、世界の市場で発展する。
③ 自然を大切にし、社会と共生する。
④ 個性を尊重し、活力ある企業をつくる。
を経営の方針としています。
連結会社は売上収益、営業利益及びROE(自己資本利益率)を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いています。
(3) 対処すべき課題
地球温暖化や高齢化、交通事故等が大きな社会課題となる中、連結会社は「デンソーグループ2030年長期方針」を策定し、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献する取り組みを進めてきました。この「デンソーグループ2030年長期方針」を実現させ、大きく変化する産業構造や事業環境に対応するために、中期でどのような活動に注力し、どのような姿を目指すのかという道筋と目標を示す「2025年中期方針」を策定しました。
2025年中期方針は人財に主眼を置き、実現力のプロフェッショナルを生みだす人づくりや、ダイバーシティ&インクルージョンを強力に推進し、変化に強く活力溢れる組織づくりが、社員一人ひとりの力を結集させ、方針実現の推進力になると考えています。そして安全/品質、危機管理、収益力向上等の盤石な経営基盤を確立し、事業ポートフォリオの変革を通じて新たな価値創出を進め、社会課題の解決と事業成長を両立させます。
また、当社は従来から「環境・安心・共感」を基に「地球に優しいモノづくり」と「安心で価値のある移動」の実現に取り組んできました。一方で世界は急激に変化し、地球規模の社会課題も一層深刻化しています。
・社会課題の深刻化(気候変動・人口増加・資源不足等)
・循環型社会への要請(再生可能エネルギー、リサイクル材利用が義務に)
・デジタル化の伸展(物理情報がデータ化され仮想空間で解析されるサイバーフィジカルシステムが現実に)
・価値観の多様化(世代差・地域差等価値観が多様に)
当社はこれらの社会課題に向き合い、「幸福の循環」の輪をモビリティから社会全体に広げるべく、「社会活動を止めない」「多様な価値観、幸福感に応える」ことを目指し、「人流」「物流」「エネルギー流」「資源流」「データ流」の5つの流れのアプローチに取り組みます。そして、5つの流れを相互につなげ、統合的に制御することで、幸福循環社会の実現を目指します。


注力する分野では、「環境」分野においては、「2035年生産活動でのカーボンニュートラルの実現」を目指すべく、「モノづくり」、「モビリティ製品」、「エネルギー利用」の3つの領域で取り組みを進めています。
「モビリティ製品」では、当社初となるSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を用いたインバータを市場投入しました。本製品は株式会社BluE Nexusの「eAxle」に組み込まれ、LEXUS初の電気自動車(BEV)専用モデル「RZ」に搭載されました。このSiCパワー半導体は、電力損失を大幅に低減する半導体の材料でつくられており、BEVの電費向上と航続距離の延伸に貢献します。
「モノづくり」と「エネルギー利用」では、当社と株式会社デンソー福島、トヨタ自動車株式会社は共同で株式会社デンソー福島工場内でのグリーン水素の製造、及び製造した水素の工場における活用の実証を開始します。今回の実証を通じて、「水素地産地消」モデルの構築や、カーボンニュートラル工場の実現を目指します。
(上記2つの事例は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの支援を得て推進しています。)
また、「安心」分野においては、「社会に『安心』を提供するリーディングカンパニー」を目指すべく、「交通事故死亡者ゼロ」、「快適空間」、「働く人の支援」の3つの領域で取り組みを進めています。
「交通事故死亡者ゼロ」では、車両周辺の歩行者や自転車を認識し、安全運転支援に貢献する画像センサについて、検知角度のさらなる広角化を実現しました。広角化により、道路脇からの自転車や歩行者の飛び出し検知に貢献します。
「働く人の支援」では、当社は熊本県と「食」・「農」分野に関する包括連携協定を締結しました。この協定を通じ、当社と熊本県がこれらの分野で緊密に連携し、モノづくり技術等を活用し、フードバリューチェーンの最適化に向けた生産・流通分野での効率化及び付加価値向上や、熊本由来の地域資源を生かした新商品開発等に取り組みます。
連結会社の事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。連結会社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月20日)現在において連結会社が判断したものです。
(1) 事業環境に関するリスク
① 経済状況
連結会社の全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、連結会社が製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアを含む連結会社の主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、連結会社の事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、連結会社と同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、連結会社の売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、連結会社のみならず他のメーカでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。
② 為替レートの変動
連結会社の事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に連結会社の売上の重要部分を占める米ドル、ユーロ及び元に対する円高)は連結会社の事業に悪影響を及ぼし、円安は連結会社の事業に好影響をもたらします。
連結会社が日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、連結会社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。連結会社は、為替相場や金利の変動リスクを軽減するために、現地生産や通貨ヘッジ取引を行い、主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 原材料や部品の供給による影響
連結会社は、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等により原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、連結会社製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容に関するリスク
① 新製品開発力
連結会社は、直近売上収益の9%台を目安として研究開発投資を行う等、積極的な研究開発活動を実施しており、継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。
ⅰ) 新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。
ⅱ) 長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。
ⅲ) 連結会社が顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、また、これらの 製品の販売が成功する保証はありません。
ⅳ) 新たに開発した製品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。
ⅴ) 技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、連結会社製品が時代遅れになる可能性があります。
ⅵ) 現在開発中の新技術の製品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。
上記のリスクをはじめとして、連結会社が業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 価格競争
自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっています。特に、自動車メーカからの価格引き下げ要請は、近年、強まってきています。
また、連結会社は、連結会社が属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカがあり、その一部は連結会社よりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカ等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。
連結会社は、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 製品の欠陥
連結会社は世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き連結会社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストの発生や連結会社の評価が低下することに伴う売上の減少を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 顧客企業の業績への依存
連結会社の事業の大部分を占める自動車メーカ向け部品供給事業は、世界中の自動車メーカを対象としており、提供する製品は、自動車部品におけるサーマルシステム、パワトレインシステム、モビリティエレクトロニクス、エレクトリフィケーションシステム、先進デバイス等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や連結会社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客企業の価格引き下げ要請は、連結会社の利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、顧客企業の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
連結会社の売上の約半分を、トヨタグループ向けが占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。
⑤ 企業買収・資本提携
連結会社は、既存提携関係の強化又は新規提携を行うことにより、事業の拡大、機能強化又は新技術の開発を目指しています。このため、他社との提携による新会社設立や既存企業への投資を行っており、さらに、今後も投資活動を行う可能性があります。
新規投資については、幅広い視点から十分に議論を重ねた上で実行に移していますが、投資先企業の価値が低下した場合や提携企業との間で戦略性や優先順位について不一致が生じた場合には、投資に見合った効果を享受できず、投資金額の回収が困難となり、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
連結会社の生産及び販売活動において、北米や欧州、アジア等の海外市場の占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
ⅰ) 予期しない法律又は規制の変更
ⅱ) 不利な政治的又は経済的要因の発生
ⅲ) 人材の採用と確保の難しさ
ⅳ) 社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響
ⅴ) 潜在的に不利な税影響
ⅵ) ストライキ、テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱
⑦ 環境問題の重要性の高まりに係るリスク
連結会社は、国内及び海外の環境法規制を遵守した上で、環境負荷の低減と高効率な移動の実現に取り組んでいます。具体的には、会社の環境方針「エコビジョン2025」に基づき、事業活動における環境負荷の削減、環境効率・資源生産性の追求及び環境規制に適合した製品開発に努めています。
しかし、世界的な人口の増加や経済発展・利便性の追求により、エネルギーや資源の消費スピードが加速していることから、地球温暖化や資源枯渇、環境汚染等のリスクへの懸念が高まっています。それに伴い環境に関する取り組みの重要性は益々高まり、今後も様々な環境規制が改正・強化され、即時の対応や将来に向けての取り組みを求められる可能性があります。その対応が不十分な場合には、製品の売上減少、生産量の限定又はレピュテーション低下等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 気候変動によるリスク
国連気候変動枠組条約第21回締結国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、平均気温の上昇を抑えるため、温室効果ガスの削減に向けた取り組みが世界的に進められています。また直近では、欧・米・中・日等の主要各国政府が脱炭素を宣言、国家成長戦略の重大な政策の1つとして位置づけています。このような背景から、気候変動への対応は、経済成長を制約するものではなく、競争力の源泉になるものと考えています。
連結会社では、持続可能なモビリティ社会のあり方を模索し、長期ビジョンで掲げた、「環境」の提供価値を最大化する目標に向けて、2019年に賛同を表明した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」のフレームワークを参照し、気候変動が事業に与える影響とそれによる機会とリスクをシナリオに基づいて分析、事業戦略に反映していくように検討を進めました。
気候変動によるリスクについては、以下のとおり連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。脱炭素社会への移行リスクとして、気候変動に伴う燃費・排ガス規制や電動化の拡大に、現行製品が適切に対応できないことで、販売機会を喪失する可能性があります。また物理リスクとしてサイクロンや洪水等の異常気象の深刻化と頻度の上昇が考えられ、工場の操業停止やサプライチェーンの分断により売上が減少する可能性があります。
これらのリスクへ対処すべく、移行リスクについては、エレクトリフィケーションシステム事業、サーマルシステム事業、パワトレインシステム事業において新たな燃費規制や電動化需要に応えるための研究開発の加速と得意先への提案をしています。また物理リスクについては、建物、構造物への気象災害対策(洪水含む)の実施のほか、部材等の購入先を複数社化することによりサプライチェーンに対するリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動」をご参照ください。
⑨ 情報セキュリティリスク
連結会社は、様々なグループ内専用ネットワークや情報技術システムを利用しています。さらに、連結会社の車載製品は、高度運転支援や自動運転等の高度な情報技術システムに使われています。
連結会社は、社内ネットワークや生産ライン等にセキュリティ対策を講じるとともに、社員へのセキュリティに対する更なるリテラシー向上教育を実施する等、情報資産の保護、安定的な供給の実現を図っているほか、車載製品をサイバー攻撃から守る技術を開発し、確実に搭載すべくグループ独自の仕組みを構築、運用の定着に取り組んでいます。
しかしながら、サイバー攻撃等の不正行為は脅威を増しており、連結会社を標的とした事象も発生しています。想定を大幅に超えるサイバー攻撃等を受けた場合、重要な業務の中断、機密情報の漏洩、車載製品の機能への悪影響等が生じる可能性もあります。その結果、競争力の喪失やレピュテーション低下を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) その他のリスク
① 災害等による影響
連結会社は、大規模な自然災害、事故、疫病等の発生時に製造ラインの中断等による事業へのマイナス影響を最小化するため、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)や有事行動マニュアルの策定等の減災対応に取り組んでいます。
しかし、連結会社の生産施設及び連結会社の顧客企業、仕入先企業で発生する災害等による中断等の影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、連結会社の事業所の多くは東海地震防災対策強化地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。
② 法的手続
連結会社はビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
なお、連結会社は、特定の自動車部品の過去の取引に関する独占禁止法違反の疑いに関連して、一部の国において当局による調査を受けており、また、主要顧客(自動車メーカ)との間で和解交渉を行っています。その結果を予測することは困難ですが、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 人権
連結会社は、従来「デンソーグループサステナビリティ方針」 や「社員行動指針」において、人権を侵害する労働またはそれに準ずる行為の禁止を明文化し、グループで共有するとともに徹底を図っています。昨今、グローバル社会でビジネスにおける人権尊重への取り組みの重要性が高まる中、人権に関する取り組みをより一層推進すべきと考え、人権に関する個別方針「デンソーグループ人権方針」を策定しました。
しかしながら、差別やハラスメントによるコンプライアンス違反が発生した場合、社会的信頼が失墜し、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
連結会社に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。
連結会社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。また、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の制限の緩和が進み、緩やかな回復基調となりました。一方、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等の影響を受け、世界的にエネルギーや車載向け半導体が不足し、これらを中心に取引価格が高騰しました。また、欧米各国の金融引締め等による景気後退懸念や、中国でのゼロコロナ政策の影響による国内外混乱等、世界経済の不透明な状況が続きました。
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
当連結会計年度の業績について、売上収益は、半導体不足や中国のロックダウン等により車両生産は影響を受けたものの、年間を通じて回復基調となりました。加えて、注力領域である電動化関連製品や先進安全製品を中心に、順調な拡販を進め、6兆4,013億円(前年度比8,858億円増、16.1%増)と前年比増収になりました。営業利益は、電子部品を中心とした部材費・素材費や、物流費・エネルギー費用の高騰等、厳しい外部環境の中、グローバルでの自社努力による合理化と、コスト上昇分の価格反映により、4,261億円(前年度比849億円増、24.9%増)、税引前利益は4,569億円(前年度比721億円増、18.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,146億円(前年度比507億円増、19.2%増)と増益になりました。
また半導体の安定調達に向けて、半導体メーカーとの長期契約締結やパートナーシップを強化したほか、型費の支払いについても、従来の分割支払いから一括支払いに変更する等、サプライチェーン全体での競争力向上や、経済循環への取り組みを強化しました。今後も社会課題の解決と企業価値向上を両立させ、持続可能な社会の実現に挑戦し続けます。
当連結会計年度の資産については、非流動資産に属するその他の金融資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ236億円減少し、7兆4,087億円となりました。
負債については、社債及び借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,138億円減少し、2兆8,290億円となりました。
資本については、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ902億円増加し、4兆5,797億円となりました。
セグメント別の業績について、売上収益は、いずれの地域も直近の車両減産の影響があるものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復や、拡販の実現に伴い、前年比では全セグメントで増収となりました。営業利益は、外部環境の悪化等があるものの、変動対応力強化等の効果刈り取りがグローバルで進んだ結果、全セグメントで増益となりました。
日本の売上収益は、3兆7,058億円(前年度比1,907億円増、5.4%増)と増収、営業利益は、為替差益や車両生産の回復、外部環境の悪化に対する採算改善努力の効果により、2,156億円(前年度比267億円増、14.1%増)と増益になりました。資産は、その他の金融資産や退職給付に係る資産の減少等により、4兆7,156億円(前年度末比167億円減)となりました。
北米地域の売上収益は、1兆5,041億円(前年度比3,439億円増、29.6%増)と増収、営業利益は、外部環境の悪化の影響が大きいものの、採算改善努力の効果により、179億円(前年度比137億円増、320.5%増)と増益になりました。資産は、営業債権及びその他の債権や有形固定資産の増加等により、8,307億円(前年度末比59億円増)となりました。
欧州地域の売上収益は、6,856億円(前年度比1,241億円増、22.1%増)と増収、営業利益は、車両生産の回復や、採算改善努力の効果に加え前年度の構造改革費用の解消により、175億円(前年度は34億円の営業損失)と増益になりました。資産は、営業債権及びその他の債権や未収消費税等(未収付加価値税)の増加等により、4,893億円(前年度末比619億円増)となりました。
アジア地域の売上収益は、1兆9,317億円(前年度比2,938億円増、17.9%増)と増収、営業利益は、採算改善努力の効果と円安の進行により、1,583億円(前年度比145億円増、10.0%増)と増益になりました。資産は、現金及び現金同等物の増加等により、1兆6,380億円(前年度末比1,293億円増)となりました。
その他地域の売上収益は、1,012億円(前年度比246億円増、32.2%増)と増収、営業利益は、車両生産の回復に加え、採算改善努力の効果により193億円(前年度比38億円増、24.5%増)と増益になりました。資産は、棚卸資産や営業債権及びその他の債権の増加等により、803億円(前年度末比129億円増)となりました。
② 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
連結会社はトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、連結会社の生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
① キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により6,027億円増加、投資活動により3,637億円減少、財務活動により4,001億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ1,340億円減少し、7,339億円となりました。
営業活動により得られた資金は、前年度の3,956億円に対し、6,027億円となり、2,071億円増加しました。この増加は、前年度と比べ税引前利益が721億円増加したことに加え、棚卸資産の増加額が1,936億円減少したこと等によるものです。
投資活動により使用した資金は、前年度の3,016億円に対し、3,637億円となり、621億円増加しました。この増加は、有形固定資産の取得による支出が242億円増加したこと等によるものです。
財務活動により使用した資金は、前年度の1,595億円に対し、4,001億円となり、2,406億円増加しました。この増加は、短期借入金の純増減額が1,395億円減少したことに加え、社債の償還による支出が600億円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度における有形固定資産の取得額は、前連結会計年度の3,364億円から7.2%増加し、3,606億円となりました。この増加は、注力分野への投入強化と規律ある事業運営を両立しながら投資を推進したことによるものです。
② 資本の財源及び資金の流動性について
資本の財源及び資金の流動性について、連結会社の運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。
当連結会計年度は、連結会社の運転資金及び設備投資資金について、自己資金及び、借入・社債発行による資金を充当しました。
連結会社の資本的支出は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替及び新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進する予定であり、その財源は、上記基本方針に従ったものとする予定です。
連結会社は、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力等により、連結会社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。
該当事項はありません。
連結会社における主要な設備は次のとおりです。
(1) 提出会社
2023年3月31日現在
(注) 網走テストセンターの設備はすべて、提出会社から㈱デンソー網走テストセンター(連結子会社)へ賃貸しているものです。
(2) 国内子会社
2023年3月31日現在
(3) 在外子会社
2023年3月31日現在
(注) 1.帳簿価額のうち「その他」は、工具、器具備品等であり、建設仮勘定216,734百万円を含みません。
2.現在休止中の主要な設備はありません。
3.上記の他、主要な賃借及びリース設備は次のとおりです。
提出会社
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注) 2018年11月30日付の自己株式の消却(6,123,762株)の実施により、発行済株式総数残高は減少しました。
2023年3月31日現在
(注) 1.自己株式39,088,978株は、「個人その他」に390,889単元及び「単元未満株式の状況」に78株含めて記載しています。
2.「その他の法人」の中には、証券保管振替機構名義の株式が1単元含まれています。
2023年3月31日現在
(注) 1.当社は自己株式を39,089千株保有していますが、上記大株主からは除いています。
2.株式会社豊田自動織機の所有株式数は、株式会社豊田自動織機が退職給付信託の信託財産として拠出している当社株式6,798千株(持分比率0.90%)を除いて表示しています。(株主名簿上の名義は、「株式会社日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・株式会社豊田自動織機退職給付信託口)」であり、その議決権行使の指図権は株式会社豊田自動織機が留保しています。)
3.前事業年度末において主要株主でなかった株式会社豊田自動織機は、当事業年度末現在では主要株主となっています。