川崎重工業株式会社
(注)1 2022年度より国際会計基準(以下「IFRS」という。)に基づいて連結財務諸表を作成しています。
2 希薄化後1株当たり当期利益については、潜在株式が存在しないため記載していません。
(注)1 2022年度の諸数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。
2 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載していません。
3 2021年3月期の自己資本利益率及び株価収益率については、親会社株主に帰属する当期純損失が計上されているため記載していません。
4 2021年3月期に、従来、決算日が12月31日であった連結子会社6社の決算日を3月31日に変更又は連結決算日に仮決算を行う方法に変更しました。これにより、2021年3月期は連結子会社6社の決算対象期間が15ヶ月(2020年1月~2021年3月)となる変則決算となっています。
5 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2022年3月期の期首から適用しており、2022年3月期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載していません。
2 最高株価及び最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。
3 2021年3月期の自己資本利益率、株価収益率及び配当性向については、当期純損失が計上されているため記載していません。
4 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2022年3月期の期首から適用しており、2022年3月期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっています。
5 2021年10月1日付で当社の車両事業及びモーターサイクル&エンジン事業(現・パワースポーツ&エンジン事業)を会社分割の方法により川崎車両株式会社及びカワサキモータース株式会社へ承継させたことに伴い、2022年3月期第3四半期より両事業の数値は含まれていません。
当社グループは、当社(提出会社)、子会社127社及び関連会社(共同支配企業を含む)27社により構成されており、当社を中心として航空宇宙システム事業、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業、精密機械・ロボット事業、パワースポーツ&エンジン事業及びその他事業を営んでいます。これらの6事業区分はセグメント情報の報告セグメントの区分と同一です。
なお、当連結会計年度より当社グループの事業戦略と整合性をとることを目的に、従来「モーターサイクル&エンジン」としていた報告セグメントの名称を「パワースポーツ&エンジン」に変更しています。
当社グループの主な事業内容と当社及び主要関係会社の位置づけを概説すれば、以下のとおりです。
[主な事業内容]
航空宇宙システム事業
航空機、航空機用エンジン等の製造・販売
車両事業
鉄道車両、除雪機械等の製造・販売
エネルギーソリューション&マリン事業
エネルギー関連機器・システム、舶用推進関連機器・システム、プラント関連機器・システム、船舶等の製造・販売
精密機械・ロボット事業
油圧機器、産業用ロボット等の製造・販売
パワースポーツ&エンジン事業
二輪車、オフロード四輪車(SxS、ATV)、パーソナルウォータークラフト(PWC)「ジェットスキー」、汎用ガソリンエンジン等の製造・販売
その他事業
商業、販売・受注の仲介・斡旋、福利施設の管理等
[当社及び主要関係会社の位置づけ]
航空宇宙システム事業
当社で製造・販売を行っているほか、日本飛行機㈱(連結子会社)が独自に製造・販売並びに製造の一部分担を行っています。
車両事業
川崎車両㈱(連結子会社)で製造・販売を行っているほか、海外向け鉄道車両についてはKawasaki Rail Car, Inc.(連結子会社)が一部の製造・販売を、Kawasaki Motors Manufacturing Corp., U.S.A.(連結子会社)が一部の製造を行っています。
エネルギーソリューション&マリン事業
当社で製造・販売を行っているほか、川重冷熱工業㈱(連結子会社)がボイラ及び空調機器の製造・販売を独自に行い、㈱カワサキマシンシステムズ(連結子会社)が産業用ガスタービンの販売を、㈱アーステクニカ(連結子会社)が破砕機等の製造・販売を、安徽海螺川崎工程有限公司(持分法適用関連会社)他が産業機械、環境装置等の製造・販売を、南通中遠海運川崎船舶工程有限公司、大連中遠海運川崎船舶工程有限公司(いずれも持分法適用関連会社)が独自に船舶の製造・販売を行っています。
精密機械・ロボット事業
当社で製造・販売を行っているほか、Flutek, Ltd. (連結子会社)他が油圧機器の製造・販売を、川崎精密機械(蘇州)有限公司(連結子会社)他が製造を、川崎精密機械商貿(上海)有限公司(連結子会社)他が販売を独自に行っています。また、Kawasaki Robotics (USA) Inc.、川崎機器人(昆山)有限公司、川崎機器人(天津)有限公司(いずれも連結子会社)他が産業用ロボットを、㈱メディカロイド(持分法適用関連会社)が医療用ロボットの製造・販売を行っています。
パワースポーツ&エンジン事業
カワサキモータース㈱(連結子会社)で製造・販売を行っているほか、製造については二輪車、オフロード四輪車(SxS、ATV)、PWC「ジェットスキー」、汎用ガソリンエンジンをKawasaki Motors Manufacturing Corp., U.S.A.、Kawasaki Motors Enterprise (Thailand) Co., Ltd.(いずれも連結子会社)他がそれぞれ製造しています。また、販売面においては、国内向け二輪車他を㈱カワサキモータースジャパン(連結子会社)が、海外向け二輪車他をKawasaki Motors Corp., U.S.A.、Kawasaki Motors Europe N.V.、Kawasaki Motors (Phils.) Corporation、PT. Kawasaki Motor Indonesia(いずれも連結子会社)他が、それぞれ販売しています。
その他事業
川重商事㈱(連結子会社)他が商業を、㈱カワサキライフコーポレーション(連結子会社)他が商業及び福利施設管理等の諸事業を営んでいます。
以上で述べた事項を事業系統図によって示せば、次のとおりです。

(注) 1 実線枠は連結子会社、点線枠は持分法適用関連会社であり、主要な会社のみ記載しています。
2 他3社は安徽海螺川崎装備製造有限公司、安徽海螺川崎節能設備製造有限公司、上海海螺川崎節能環保工程有限公司です。
(注) 1 「主要な事業の内容」欄には、事業セグメントに記載された名称を記載しています。
2 「議決権の所有割合欄」の(内書)は間接所有です。
3 特定子会社です。
4 Kawasaki Motors Corp., U.S.A.については、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く)の連結売上収益に占める割合が10%を超えています。
主要な損益情報等 ① 売上収益 327,040百万円
② 税引前利益 3,968
③ 当期利益 3,211
④ 資本合計 32,204
⑤ 資産合計 219,628
2023年3月31日現在
(注) 1 従業員数は就業人員のみを対象としています。なお、臨時従業員数については従業員総数の100分の10未満であるため記載を省略しています。
2 従業員数は再雇用従業員を含みます。
2023年3月31日現在
(注) 1 従業員数は就業人員のみを対象としています。なお、臨時従業員数については従業員総数の100分の10未満であるため記載を省略しています。
2 従業員数は再雇用従業員を含みます。
3 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
4 平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与は60歳以降の従業員を含みません。
当社の労働組合は、川崎重工労働組合と称し、上部団体は日本基幹産業労働組合連合会(略称 基幹労連)です。
また、組合とは信頼関係を基礎に労働協約を締結し、労働条件その他労使間の重要問題について労働協議会・経営協議会等を開催し、相互の理解と隔意ない意見交換により円満に解決を図っています。
なお、当連結会計年度、連結会社において労働組合との間に特記すべき事項等は生じていません。
当社グループは、持続的な企業価値の向上を図っていくために、全社を挙げて多様性を促進しています。特に、本社組織等の全社共通部門で率先して女性活躍を推進しており、当該部門の女性割合は20%となっています。また、全部門でキャリア採用を積極的に行っており、当事業年度の川崎重工業㈱のキャリア採用実績に占める女性割合は21%となっています。(ダイバーシティの推進については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。)
当社グループは、これまで主に機械・電気分野の技術に立脚したインフラを支える大型製品の設計・製造・販売を主事業としてきており、現在は当該分野を専門とする女性割合は高くないものの、今後は事業モデルの転換を進めるとともに、引き続き、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、事務系30~40%、技術系5%~15%の女性新卒採用に取り組むとともに、年齢・性別・国籍等の属性に関わらず適材配置や育成強化を推進し、女性管理職割合を向上させるなど多様な人財の活躍促進を図り、差異の縮小並びに多様性の促進に努めていきます。
(参考:川崎重工業㈱の新卒採用における女性比率(実績推移) <1995年度>事務系3.2%、技術系0%、生産系0% <2005年度>事務系16.2%、技術系3.5%、生産系2.4% <2015年度>事務系27.6%、技術系1.3%、生産系2.6% <2022年度>事務系42.2%、技術系6.4%、生産系4.8%)
①提出会社及び常用雇用労働者数301名以上の国内連結子会社
2023年3月31日現在
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
3 パート・有期労働者の男女の賃金の差異は、無期雇用者以外の多様な雇用形態を含むとともにその構成も会社ごとに異なるため、数値が分散する傾向があります。
4 育児休業取得事由に該当する従業員はいません。
5 パート・有期労働者に該当する従業員はいません。
6 パート・有期労働者に該当する女性従業員はいません。
②常用雇用労働者数300名以下で女性活躍推進法により該当指標を公表している国内連結子会社
2023年3月31日現在
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
3 育児休業取得事由に該当する従業員はいません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
[経営の基本方針]
当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り拓く企業グループを目指しています。
また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、社会課題に対するソリューションの提供を通じてSDGs達成に貢献すべく、経済的価値・社会的価値の2つの軸で企業価値を高める経営を推進していきます。
[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]
2020年11月から、当社グループの目指す将来像として「グループビジョン2030」を推進しています。現有主力事業の強化、事業間シナジー促進による将来の柱となる新事業育成、更に事業の選択と集中を行って事業ポートフォリオの変革を実現し、持続的な成長を追求します。
《注力するフィールド》
新たな時代の社会課題を見据え、地球環境保護のための脱炭素社会の実現、先進国を中心とした高齢化社会・労働力不足への対応、医療などの種々の地域間格差の解消、自然災害の抑止や早期復旧、各種資源・物資やエネルギーの安定供給など、様々な社会課題に対するソリューションをタイムリーに提供するため、以下の3つのフィールドに注力しています。
「安全安心リモート社会」-ロボティクスとネットワークを活用した新しい価値の創出
医療・ヘルスケア、ものづくり、産業インフラなど様々な分野で、当社グループが持つ遠隔操作・遠隔情報技術・ロボティクス等を用いて、安全かつ安心して暮らせる社会を創るとともに、リモート社会の実現によりすべての人々が社会参加できる新しい働き方・くらし方も提案していきます。
「近未来モビリティ」-人とモノの移動の変化・トレンドに素早く対応
宅配需要やライフスタイルの変化に伴う個人モビリティ需要の増加など、人とモノの移動の変化・トレンドに素早く対応するため、無人で物資を運ぶヘリコプタや自動配送ロボットなど、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。
「エネルギー・環境ソリューション」-クリーンエネルギーの安定供給に向けて
カーボンニュートラル社会の早期実現に向け、世界に先駆けて水素サプライチェーンを構築します。また、当社及び国内連結子会社事業所のCO2排出を2030年までに実質ゼロにするという、自立的なカーボンニュートラルも推進します。世界各地で、様々な方法で作ることができる水素は、カーボンニュートラルだけでなくエネルギー安全保障面からも期待が高まっており、早期に水素社会を実現できるよう取組を加速します。更に、電動化なども含めた当社グループの脱炭素ソリューションを社会やステークホルダーの皆様にも幅広くその輪を広げ、2040年にZero-Carbon Ready、2050年にはグループ全体でのCO2排出量の実質ゼロを目指します。
《成長シナリオ》
2022年度に過去最高益を記録したパワースポーツ&エンジン事業等の量産系事業が全社の収益を支えていますが、国際線を含む航空需要の本格的な回復に伴い、航空宇宙システム事業をはじめとする受注系事業の収益が安定的に拡大し、当社グループの成長を牽引します。更に、水素事業や医療ロボット事業、近未来モビリティ等をはじめとする新規事業も収益の柱となり、安定した成長軌道を描くことを目指します。成長シナリオの実現のため、モノ売りからコト売りへのシフトなどのビジネスモデルの見直し、政府や自治体、他企業、研究機関との連携による新しい社会創造、ポートフォリオ改革・組織改革にも取り組み、高収益体質を実現していきます。
それらを支える仕組みとして、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進し、データ活用による新たなソリューションの創出と業務プロセスの効率化・高付加価値化を追求し、経営の意思決定のスピードアップにも取組んでいきます。また、人財は成長シナリオを支える最も重要な財産であり、多様な人財の獲得・育成、その個性と能力を発揮する環境整備、前向きに挑戦し続ける人と組織の実現に向けて、各種施策も展開しています。人財を年齢に関係なくそのポテンシャルを最大限発揮できるポストに配置するなど、人事制度の刷新を含め様々な改革を絶えず推進できる企業風土が醸成されつつあります。
[経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]
世界経済は、各国の渡航規制の緩和による航空需要の増加や中国のゼロコロナ政策終了に伴う内需拡大などにより堅調に推移しており、国内においても、新型コロナウイルス感染症に関する各種規制が緩和され、サービス消費やインバウンドを中心として着実に回復に向かっています。一方、欧米各国を中心に高インフレや金融引き締めに伴う景気減速への警戒感が強まっており、世界経済の先行きや国内景気への影響については引き続き注視が必要です。
このような状況の下、当社グループは収益性の向上に向け、適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化、サプライチェーンの多様化に取り組んでいきます。また、経営資源の投入については、案件の厳選に努めつつも、注力する3つのフィールドについては、スピード感をもって積極的な投資を実行するなど、メリハリのある意思決定を行っていきます。資金面に関しても、前述の収益性向上や投資選別のほか、適正在庫の実現、資産圧縮などの対応策を進めることで、キャッシュ・フロー創出力の強化及び有利子負債の削減に努めていきます。
[経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等]
2022年度までは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標を、利益(営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益)及び資本効率を測る指標である投下資本利益率(税前ROIC = EBIT(税引前利益 + 支払利息) ÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本))としていました。
2023年度以降は、グループ全体として資本コストを意識した経営を推進する視点に立ち、資本市場からの要請に応え対話をより促進するため、利益(事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益)及び税後ROIC※を指標とします。
なお、2022年度は税前ROICに加え税後ROICも開示することとし、2023年度以降は一般的に理解しやすい税後ROICに統一する予定です。
そして、世界GDP成長率を上回る売上高の成長を目指し、成長分野・新規事業への開発投資を継続しつつ、グループ全体として事業利益率は5~8%、統一後の指標である税後ROICは資本コスト(WACC)+3%以上を確保すべく努めていきます。これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社の所有者に帰属する当期利益 ÷ 自己資本の期首・期末平均)の向上も図っていきます。
※税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均)とします。これに伴い、税前ROICの投下資本も税後ROICの投下資本と一致させています。
[セグメントごとの戦略及び課題]
① 航空宇宙システム事業
P-1固定翼哨戒機・C-2輸送機の修理・部品供給を含めた量産の推進及び派生型機への展開と抜本的な防衛力強化という防衛省の方針に沿った活動強化、ボーイング既存機及び民間航空エンジンのコストダウン、需要回復に伴うサプライチェーン及び増産体制の再整備、市況変化を踏まえた技術戦略の見直し
② 車両事業
品質管理の強化、顧客ニーズに適合した技術・製品による差別化、コスト競争力の強化、海外プロジェクトのリスク管理強化、IoTを活用したメンテナンス事業及び軌道モニタリング事業参入等のストック型ビジネスの拡大、海外生産・海外調達及びパートナーシップの活用などグローバルな最適事業遂行体制の構築
③ エネルギーソリューション&マリン事業
水素関連プロジェクトの研究開発・事業化の推進、コアコンポーネント強化とその組み合わせによる最適システム構築、分散型エネルギー供給システムの提案、新興国・資源国を中心とした海外事業の拡大、アフターサービス事業の強化、ガス関連船建造におけるコスト競争力の強化、船舶海洋事業における中国合弁会社の収益性改善
④ 精密機械・ロボット事業
油圧事業は、新製品・戦略製品の早期開発・上市、アフターサービスビジネスの拡大、グローバル展開の加速によるコスト競争力の強化。ロボット事業は、それぞれの市場に応じた差別化による製品の付加価値向上、コスト競争力の強化、オープンイノベーションと協業の推進、デジタルプラットフォーム(Robo Cross)の構築、「hinotori™」を中心とする医療ビジネスの拡大
⑤ パワースポーツ&エンジン事業
“Kawasaki”らしい魅力ある新機種の継続投入、顧客に訴求する卓越した品質と信頼性、高いブランド価値の実現、新興国市場におけるコスト競争力の強化、連結ベースのマネジメントの徹底と効率化
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。これらのリスクは、経営会議等での審議等を経て抽出しており、取締役会において連結財務諸表での重要性、影響度、網羅性を確認した上で選定しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績の見通しに重要な影響を与える可能性があると認識しているリスク
① 地政学リスク
米中貿易摩擦問題、台湾有事懸念、ロシア・ウクライナ情勢、世界各国における経済安全保障法制の強化など地政学リスクが高まっており、原材料価格及び物流費の高騰、エネルギー価格上昇、サプライチェーン問題などをもたらしています。
当社グループの連結売上収益の約半分が海外向けであり、米国・中国をはじめとする多くの国に生産・販売拠点を構えています。また、原材料や部品についても、海外から多く調達しています。そのため、事業に関連する国・地域の政治、経済、社会、法規制、自然災害等の影響を受ける可能性がありますが、当社グループは、国際情勢の動向や各国の法規制の改正等を注視しつつ、状況の変化に迅速に対応できる社内体制を構築し、情報の共有及び対応策を実施しています。
② 調達品価格の高騰リスク
コロナ禍からの本格的な経済回復、国内外のインフレ進行、ロシア・ウクライナ情勢の長期化等に伴い、原材料価格、人件費、エネルギー価格、物流費等の上昇が続いています。事業計画策定にあたっては一定のコスト上昇を織り込んでいますが、想定を超える価格の上昇が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、コストダウン活動を継続しつつ、販売契約へのエスカレーション条項の織込みや調達品価格の高騰を適切に販売価格へ反映するなどの対策を行っています。
③ 部品入手困難による生産遅延リスク
米中貿易摩擦やコロナ禍の影響で半導体などの調達部品が不足しており、一部の製品において生産遅延が生じています。今後の部品調達の状況によっては、パワースポーツ&エンジン事業やロボット事業を中心に販売が減少する可能性がありますが、代替品の活用や生産調整等の対策を実行し、利益の確保に努めています。
④ 景気変動リスク
景気変動は企業の事業活動に影響を及ぼし、売上収益等に影響する可能性があります。当社グループは、官公庁向けと民間向け、先進国向けと新興国向け、受注生産型と見込み生産型、B to BやB to Cなど、景気サイクルの異なる多様な事業でポートフォリオを構成しており、景気変動リスクを分散させています。
また、社会情勢や国際動向を注視し、社会課題、市場ニーズ等に対応した開発・受注活動を継続することで売上収益を確保するほか、見込み生産型事業においては、販売や在庫の状況をモニタリングして生産調整をタイムリーに行うなど、景気が減速する局面においても経営成績及びキャッシュ・フローに及ぼす影響が最小限になるように努めています。
⑤ プロジェクトの契約・履行に関するリスク
当社グループは、過去に鉄道車両、エネルギー関連設備、海洋資源開発支援船など大型プロジェクトにおいて多額の損失を計上した反省を踏まえ、見積、契約条件、技術仕様等に対するリスク検知と適正な評価、実効性のあるリスク回避策の立案が重要と考え、受注前のリスクチェック機能を強化してきました。2020年度からは、過去の損失案件等から得た教訓を規律として社則化するとともに、過去の案件から統計的に導いた損失リスクの総量を自己資本に見合った範囲に抑えるリスク統制アプローチを導入しています。特に、契約条件・条項に起因して損失に繋がったケースが過去にあり、契約に関するリスクを低減するために、法務部門が契約書の最終確認を行っています。また、法務機能を担う人財の育成及び獲得、社外弁護士の活用等を通じて、より一層の法務対応力の強化にも取り組んでいます。
更に、受注後のプロジェクトについては、市場環境やその進捗状況において、経営成績等に大きな影響を与える可能性がある兆候を経営会議及び取締役会へタイムリーに報告し、モニタリング機能の強化にも努めてきました。現在履行中の大型プロジェクトのうち、北米向け地下鉄車両案件は、量産車の製造が本格化しており、社長直轄のタスクフォース組織において、プロジェクト遂行に伴うリスクを低減させるとともに、生産効率や製品品質を更に改善させ、事業採算性の向上、利益の拡大に努めています。
また、当社グループが取り組んでいる大規模水素サプライチェーン構築プロジェクトについては、NEDOグリーンイノベーション基金事業で採択された各種事業が、商用化に向けて始動しています。事業推進に際して、各フェーズで発生する問題を早期段階で認識し、リスクを最小限に抑えながら円滑にプロジェクトを進めるべく取り組んでいます。
⑥ 訴訟に関するリスク
当社グループは事業を展開するにあたり、契約条件の明確化、知的財産権の適正な取得・使用、各種法規制の遵守等により、トラブルを未然に防止するよう努めています。しかし、予期せぬ事象が生じた場合、損害賠償の請求や訴訟を提起されることがあり、当社グループの業績や財務状況、社会的信用等に影響を及ぼす可能性があります。
一方で、取引相手先による契約不履行や当社グループが保有する知的財産権の侵害等が生じたときには、当社グループの権利保護を求めて訴訟を提起する場合があります。それらの対応にあたっては、弁護士等の外部専門家と連携する等、最善策を講じるための体制を整備しています。
なお、当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす重要な訴訟に関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(2)その他」をご参照下さい。
⑦ 為替変動に関するリスク
当社グループの業績見通しにおいては、一定量の為替変動リスクが含まれています。そのため、実需の外貨建債権・債務に対し、投機的な要素を排除した形で日本円のディスカウントコストを考慮しながら為替予約等のリスクヘッジを行っています。また、パワースポーツ&エンジン事業を中心として、為替影響分の価格転嫁、海外調達の拡大及び海外生産比率の増加等を通じて為替リスクの低減に取り組んでいます。
現在、日米金利差拡大、日本の貿易赤字の影響等を背景とした円安は、売上収益には好影響を及ぼす一方で、調達価格やエネルギー価格上昇などのコスト増をもたらしています。日米の金融政策の動向、金融システム不安や地政学リスク顕在化等の影響により、為替相場の変動幅は大きくなっており、為替リスクに関する不確実性は高まっています。そのため、引き続き相場を注視するとともに、必要に応じて対策を講じていきます。
⑧ 資金調達リスク・金利変動リスク
当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行等により資金調達を行っていますが、金融危機が発生する等、金融市場が正常に機能しない場合には、一時的に資金調達を想定どおり行うことが難しくなる可能性があります。そのため、資金調達手段の多様化やコミットメントラインを含む十分な融資枠を確保する等の対策を講じています。また、市場金利の急激な上昇によって資金調達コストが増大した場合、支払利息等の金利負担増加により金融収支が悪化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、固定金利での長期資金調達を行うこと等により、金利変動リスクの抑制に努めています。なお、金融機関からの借入金には、コベナンツ(財務制限条項)が付されていることがあり、コベナンツに抵触する事象が発生した場合、当該借入金についての期限の利益を喪失する可能性があるほか、その他の債務についても一括返済が求められる可能性があります。その結果、当社グループの信用力や財政状態に大きな影響を及ぼすこととなりますが、現在の財務状況に鑑みるとその可能性は低いと見ています。当社グループは引き続き財務体質の強化に取り組み、資金調達力の維持・向上を図るほか、サステナブルファイナンスを積極的に活用することで、資金調達の面からも「グループビジョン2030」の実現に向けて取り組んでいます。
⑨ 品質管理リスク
当社グループは、顧客ニーズや社会課題解決のため、多岐にわたる製品・サービスを提供しています。それらの製造・サービス提供過程においては、社内外の基準に則り厳格な品質管理を実施していますが、予期せぬ製品の欠陥や品質面での不備が発生した場合、発生した損害について賠償を求められ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、2017年にN700系新幹線台車枠に亀裂が発生するという極めて重大なインシデントを引き起こしたことを重く受け止め、社内に品質管理委員会を立上げ、原因究明と再発防止に努めてきました。また、2019年度に全社的なTQM(Total Quality Management)を推進する専門組織を立上げ、TQMに則った業務遂行体制の構築、品質管理教育、全員参加での品質向上に努めてきました。今後のTQM活動においては、業務プロセスの整流化に加え、人の恣意性を排除したデジタル技術を用いた品質管理の導入を、当社グループ全体で推進していく予定です。
⑩ コンプライアンスに関するリスク
当社グループの役員・従業員が法令違反行為や企業倫理違反行為等を発生させた場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜、当社グループ製品の不買運動等に至り、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、「川崎重工グループ行動規範」を制定し、コンプライアンス違反を容認しない企業風土の醸成及び維持に努めています。また、社長を委員長とする全社コンプライアンス委員会を設置し、企業としての社会的責任を果たすために各種施策の審議・決定、遵守状況のモニタリング等を行っています。
2022年6月に川重冷熱工業㈱が製造・販売した一部の製品の検査などに関する不適切行為が判明しました。今後このような不適切行為を起こすことがないよう、外部の弁護士で構成する特別調査委員会での徹底した原因究明を踏まえた是正措置を講じるとともに、コンプライアンスの一層の強化を図り、再発防止に取り組んでいます。
⑪ 情報セキュリティリスク
当社グループは、社会インフラから消費者向け製品に至るまで、多様な製品を国内外に提供しており、重要な情報資産として多岐にわたる技術・営業情報や顧客情報を蓄積・保有しています。業務プロセスのデジタル化が進むなか、社外からのサイバー攻撃は増加傾向にあり、重要情報の漏洩やシステム停止、その復旧を条件とした身代金要求といった事象に加え、工場の生産システムが攻撃を受けることで事業損失が発生するリスクも高まっています。このような事態に適切に対処するため、サイバーセキュリティ統括部門を中心に、管理ルールの整備、最新技術の導入、オペレーションの高度化によるサイバーディフェンス態勢の強化を推進しています。更にeラーニングによる役員・従業員への情報セキュリティ教育や訓練等、ITリテラシー向上を通したリスク低減にも継続して取り組んでいます。
⑫ 貸倒リスク
当社グループは、国内外の顧客に対して代金債権を有しています。顧客の信用不安や契約不履行等により、債権回収に問題が生じた場合は、担保の充当や債権債務の相殺等により回収しますが、回収不能な場合は貸倒れによる損失が発生する可能性があります。当社グループは、取引開始前の与信管理を徹底するとともに、取引期間中は顧客の財務状況を定期的にモニタリングする等、貸倒リスクの低減に取り組んでいます。
〔経理処理に関するリスク〕
⑬ 固定資産の減損リスク
当社グループは、継続的に設備投資を行いながら事業活動を進めており、多くの有形固定資産及び無形資産を有しています。現時点において、多額の減損を計上するような懸念事項はないと考えていますが、今後何らかの外部環境の変化により減損処理を行う必要性が生じた場合、損益が悪化するリスクがあります。なお、大規模事業投資(設備投資を含む)案件について、大型プロジェクトの受注前プロセスと同様、投資決定前のリスク審査を強化する取組を行っています。
⑭ 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク
当社グループは、税効果会計を適用し、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異に対して繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産は、事業計画を基礎として将来の課税所得の発生やタックスプランニングに基づき、回収可能性を検討しています。なお、将来の見通しに変化が生じた際は、回収可能性の見直しが必要となり、繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなったと判断された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、将来の見通しの変化等により事業計画にダウンサイドリスクが判明した場合には、繰延税金資産に関しての見直しの要否を適時に判断できるような体制を構築しています。
(2) 経済動向・社会・制度等の変化により事業活動の継続が困難となる重要事象
① 人財の獲得・維持
人財の獲得・維持は事業活動の継続及び成長のための重要な経営課題と考えています。しかし、少子高齢化等に伴う労働力人口の不足、近年の人件費上昇や労働市場を取り巻く環境変化等によって人財の獲得・維持が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、人的資本に関する基本方針「川崎重工グループ人財マネジメント方針」を掲げ、各種施策に取り組んでいます。施策の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。
また、労働力人口不足という問題に対し、当社グループはそのソリューションとして、離れた場所からでも社会参画を可能とするリモートロボティクス、輸送ニーズに対応した配送ロボット、無人輸送ヘリコプタなどの市場投入を迅速に行うことで社会課題解決に貢献していきます。
② 脱炭素化社会・ゼロエミッション
当社グループが提供する輸送機器やエネルギーシステムの多くは、化石燃料をベースにしています。また、生産をはじめとする事業活動においてCO2を排出しています。脱炭素社会やゼロエミッションの到来によって、現在の製品・技術が各種規制によって使用不可となることや、顧客をはじめとする様々なステークホルダーへの価値を創出できなくなることで、事業そのものが淘汰される可能性があります。また、事業活動におけるCO2排出を削減するための莫大な追加コストが発生するリスクも存在しています。
そのため、水素サプライチェーン商用化に向けた活動や、水素を燃料とする輸送機器・エネルギーシステム、電動機器など脱炭素社会に対応した事業に向けた研究開発を行うとともに、水素エネルギーを活用して2030年までに当社グループの国内事業所のCO2排出量を2030年までに実質ゼロにする等、様々な対策を進めています。更に、当社グループの脱炭素ソリューションを社会や各ステークホルダーへと広げ、2040年にZero-Carbon Ready、2050年にはグループ全体でのCO2排出量の実質ゼロを目指します。
③ 経済安全保障
近年、地政学リスクが高まるなか、世界各国の政府が地政学的な課題解決のために、経済的手段を行使する場面が増加する等、経済活動と安全保障の関係が深くなっており、日本においても経済安全保障推進法が成立しました。当社グループにおいても、重要な部品や原材料の安定的な確保、他国への技術流出の防止等の対応が、従来以上に必要となっています。そのため、経済安全保障に関する変化に対応すべく、2022年に経済安全保障推進に関する専門組織を設置し、国際情勢や各国の政策・法制度の動向等の調査・分析、各種リスクの評価を行う等、適切な措置を講じています。
④ 開発投資
当社グループは、社会課題の解決と持続的な企業価値向上のため、将来の収益が期待できる分野への研究開発投資や設備投資を行っています。開発の項目や内容の選定判断を誤ることで競合に対する競争力を失い、事業・製品のシェアを低下させるリスクがあります。また、水素利活用分野など基礎研究から実証、製品化へは長期にわたる投資が必要なものが多く、市場変化や顧客、競合動向、各国規制の変化等によっては開発戦略の見直しや撤退を迫られる分野もあり、過去には投入した開発費が回収できなかった事業も存在しています。開発投資が当社グループの経営に大きな影響を及ぼすことがないよう、対象分野の選定やその内容、人財投入計画等については、経営戦略や事業ポートフォリオ上の位置付けなども踏まえて決定し、進捗管理についても適宜フォローしています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。これらは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営方針・経営戦略等を踏まえて分析しています。
当社グループは当連結会計年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値をIFRSに組み替えて比較・分析を行っています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 連結業績の概況
世界経済は、各国の渡航規制の緩和による航空需要の増加や中国のゼロコロナ政策終了に伴う内需拡大などにより堅調に推移しており、国内においても、新型コロナウイルス感染症に関する各種規制が緩和され、サービス消費やインバウンドを中心として緩やかに回復しています。また、米国における金融機関の経営破綻から、一時は金融システムや実体経済への悪影響が懸念されましたが、現時点でその影響は比較的軽微に留まっています。
一方、欧米各国を中心に高インフレや金融引き締めに伴う景気減速への警戒感が強まっており、世界経済の先行きや国内景気への影響については引き続き注視が必要です。
このような経営環境の中で、当連結会計年度における当社グループの連結受注高は、車両事業、パワースポーツ&エンジン事業などにおける受注増加により増加となりました。連結売上収益については、パワースポーツ&エンジン事業、航空宇宙システム事業などが増収となったことにより、全体でも前期比で増収となりました。利益面に関しては、事業利益は、精密機械・ロボット事業などでの減益はあったものの、パワースポーツ&エンジン事業、航空宇宙システム事業、エネルギーソリューション&マリン事業での増益などにより、前期比で増益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、為替差損益などの悪化はあったものの、事業利益の増益により増益となりました。
この結果、当社グループの連結受注高は前期比4,353億円増加の2兆374億円、連結売上収益は前期比2,247億円増収の1兆7,256億円、事業利益は前期比519億円増益の823億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比403億円増益の530億円となりました。また、事業利益率は4.7%、税前ROICは7.7%、税後ROICは5.7%、ROEは9.8%となりました。(※) なお、現状の資本コスト(WACC)は4%台と推計しており、これを上回る税後ROICを確保しています。「グループビジョン2030」で掲げた適正な利益水準(事業利益率:5~8%、税後ROIC:資本コスト(WACC)+3%以上)の達成に向け、順調に推移しています。
※ 税前ROIC = EBIT(税引前利益 + 支払利息) ÷ 投下資本(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の
期首・期末平均)
税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本
(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均)
グループ全体として資本コストを意識した経営を推進する視点に立ち、資本市場との対話を促進するため、2022年度は税前ROICに加え税後ROICも開示し、2023年度以降は税後ROICに統一する予定です。
② セグメント別業績の概要
航空宇宙システム事業
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、今後の需要増が期待されます。民間航空機については、新型コロナウイルス感染拡大により旅客需要が低迷していましたが、経済活動再開を優先する諸国が増加してきていることから、回復に向けて大きく前進しています。
このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空エンジン分担製造品が増加したものの、防衛省向けの大口案件の受注があった前期に比べ377億円減少の3,455億円となりました。
連結売上収益は、民間航空エンジン分担製造品や民間航空機向け分担製造品などが増加したことにより、前期に比べ506億円増収の3,488億円となりました。
事業損益は、民間航空エンジン分担製造品や民間航空機向け分担製造品などの増収により、前期に比べ252億円改善して148億円の利益となりました。
車両事業
車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による鉄道利用者数の減少の影響がありましたが、感染が収束し利用者数の回復が見込まれ、国内外で鉄道車両への投資が再開しつつあります。一方で、足元への影響は限定的ではあるものの、電子部品等の供給不足や物流混乱、原材料価格の高騰については、収束が見えつつも注視が必要です。中長期的には、海外市場では大都市の環境対策のための都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれます。
このような経営環境の中で、連結受注高は、ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車のオプション契約を受注したことなどにより、前期に比べ2,417億円増加の3,132億円となりました。
連結売上収益は、米国向け車両や国内向け車両が増加したことなどにより、前期に比べ52億円増収の1,319億円となりました。
事業利益は、増収はあったものの、米国ロングアイランド鉄道向け車両案件の工程遅れによる影響等により、前期並みの13億円となりました。
エネルギーソリューション&マリン事業
エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大の影響による停滞から正常化に向かう中、回復基調を維持しています。国内外の分散型電源需要、及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続しています。また、LPG/アンモニア運搬船も堅調な需要が見込まれます。更には、世界的にカーボンニュートラルの実現を目指す動きが強まっており、当社が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加しています。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費、輸送運賃の高止まり等による受注、売上収益への影響には注視が必要です。
このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向け潜水艦の受注やLPG/アンモニア運搬船、発電設備の受注増加などにより、前期に比べ954億円増加の4,390億円となりました。
連結売上収益は、国内向けごみ処理施設案件の工事量減少はあったものの、エネルギー事業や防衛省向け潜水艦の工事量増加などにより、前期に比べ172億円増収の3,145億円となりました。
事業損益は、国内向けごみ処理施設案件の工事量減少はあったものの、エネルギー事業、防衛省向け潜水艦の増収や持分法損益の改善などにより、前期に比べ147億円改善の39億円の利益となりました。
精密機械・ロボット事業
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国以外の地域における建設機械市場については堅調に推移しましたが、中国建設機械市場は、ゼロコロナ政策に伴うロックダウン等の影響により需要が低迷しました。ロボット分野では、足元ではメモリを中心とする半導体市場の落込みや米中経済摩擦の影響により、半導体製造装置向けロボット需要は減速していますが、通期では好調に推移しました。また、一般産業用ロボットは、世界的に自動化投資の高い需要が続いています。
このような経営環境の中で、連結受注高は、各種ロボットの増加はあったものの、中国建設機械市場向け油圧機器が減少したことなどにより、前期に比べ98億円減少の2,620億円となりました。
連結売上収益は、中国建設機械市場向け油圧機器の減収はあったものの、拡販や部品供給不足の緩和による各種ロボットの増収などにより、前期並みの2,526億円となりました。
事業利益は、電子部品や素材費高騰等のコストアップ、中国でのロックダウンで一時操業が低下したことや、中国建設機械市場向け油圧機器が減少したことなどにより、前期に比べ51億円減益の87億円となりました。
パワースポーツ&エンジン事業
パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による市場への影響は徐々に弱まっています。半導体等の不足による製品供給への影響は今なお残っており注視が必要ですが、物流の混乱は落ち着きを取り戻しています。主要市場である米国では需要はやや減速しつつあるものの、今のところ堅調に推移しています。また、東南アジア市場は国ごとの差はありつつも全体として前年度より回復しています。
このような経営環境の中で、連結売上収益は、北米向け、東南アジア向け二輪車及び北米向け四輪車、汎用エンジンが増加したことに加え、為替レートが円安に推移したことなどにより、前期に比べ1,432億円増収の5,911億円となりました。
事業利益は、原材料費、物流費の高騰、固定費の増加はあったものの、価格転嫁が順調に進んでいることに加え、二輪車、四輪車及び汎用エンジンの拡販や為替の影響などにより、前期に比べ340億円増益の715億円となりました。
その他事業
連結売上収益は、前期に比べ83億円増収の863億円となりました。
事業損益は、前期に比べ49億円悪化の18億円の損失となりました。
当社グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、更には、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素事業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を着実に進めています。
(資産)
流動資産は、棚卸資産や営業債権及びその他の債権、契約資産などの増加により前期末比2,501億円増加し、1兆5,703億円となりました。
非流動資産は、使用権資産の増加などにより前期末比329億円増加し、8,873億円となりました。
この結果、総資産は前期末比2,830億円増加の2兆4,577億円となりました。
(負債)
有利子負債は、前期末比359億円増加の5,898億円となりました。
負債全体は、社債、借入金及びその他の金融負債の増加などにより前期末比2,111億円増加の1兆8,608億円となりました。
(資本)
資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより、前期末比719億円増加の5,968億円となりました。
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は前期比299億円増の1,384億円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前年同期に比べ1,332億円減の236億円となりました。収入の主な内訳は、減価償却費及び償却費773億円、営業債務及びその他の債務の増加額422億円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加額642億円、契約資産の増加額502億円、営業債権及びその他の債権の増加額593億円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、前年同期に比べ190億円増の774億円となりました。これは主に有形固定資産及び無形資産の取得によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、前年同期に比べ1,942億円増の853億円となりました。これは主に債権流動化による収入によるものです。
① 財務政策
当社グループの運転資金・投資向け資金等の必要資金については、主として営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源としていますが、必要に応じて、短期的な資金については銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど、設備投資資金・投融資資金等の長期的な資金については、設備投資・事業投資計画に基づき、金融市場動向や固定資産とのバランス、既存借入金及び既発行債の償還時期などを総合的に勘案し、長期借入金や社債などによって調達しています。
当社グループは上述の多様な資金調達源に加え、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、事業活動に必要な資金の流動性を確保しています。また、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行っており、グループ内の資金効率向上に努めています。
② 資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では生産活動に必要な運転資金(材料費、外注費、人件費等)、受注活動又は販売促進のための販売費、新規事業の立ち上げや製品競争力の強化のための研究開発費などがあります。投資活動に係る資金支出には、事業の遂行、新規立ち上げ、生産性向上のための設備や施設への投資などがあります。
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を利益及びROICとし、事業利益率で5~8%、税後ROICで資本コスト(WACC)+3%以上を確保すべく努めていきます。
2022年度は、先進国の旺盛なアウトドア需要を背景にパワースポーツ&エンジン事業が大幅な増益となったことに加え、航空宇宙システム事業が旅客需要の回復に伴い大幅に改善したことから、事業利益823億円、事業利益率4.7%、税後ROIC5.7%と前年度から大きく好転しました。
2023年度は、パワースポーツ&エンジン事業における販促費の増加等を見込むものの、旅客需要の一段の回復が見込まれる航空宇宙システム事業等の採算改善により、為替影響を除けば堅調に推移すると予想しています。引き続き適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化に取り組み、各指標の超過達成を実現するべく努めていきます。
なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の全社及びセグメントごとの事業利益率は、次のとおりです。
(単位:%)
航空宇宙システム事業においては、民間航空エンジン分担製造品や民間航空機向け分担製造品などの増収等により、事業利益率は前期に比べ7.7ポイント上昇しました。また、エネルギーソリューション&マリン事業においては、国内向けごみ処理施設案件の工事量減少はあったものの、エネルギー事業、防衛省向け潜水艦の増収や持分法損益の改善などにより、前期に比べ4.9ポイント上昇しました。更に、パワースポーツ&エンジン事業においては、原材料費、物流費の高騰、固定費の増加はあったものの、価格転嫁が順調に進んでいることに加え、二輪車、四輪車及び汎用エンジンの拡販や為替の影響などにより、前期に比べ3.7ポイント上昇しました。
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりです。
(注) 金額は、生産高(製造原価)によっています。
② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績は、次のとおりです。
(注) 1 パワースポーツ&エンジン事業については、主として見込み生産を行っていることから、受注高について売上収益と同額とし、受注残高を表示していません。
2 セグメント間の取引については、受注高及び受注残高から相殺消去しています。
③ 販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。
(注) 1 販売高は、外部顧客に対する売上収益です。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。その作成においては、連結財政状態計算書上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しています。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の見積り及び判断の利用」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下、「日本基準」)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりです。なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。
要約連結損益計算書
要約連結包括利益計算書
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(連結の範囲に関する事項)
新規設立等により3社を連結の範囲に含め、他の子会社による吸収合併により1社を連結の範囲から除外しています。
(持分法適用の範囲の変更)
新規設立により3社を持分法適用の範囲に含め、株式譲渡等により2社を持分法適用の範囲から除外しています。
(収益認識に関する会計基準等の適用)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識しています。
この適用により、当社が参画している民間航空エンジンプログラムに関連して負担する費用の一部について、従来は売上原価に計上していましたが、顧客に支払われる対価として売上高から減額する方法に変更しています。これに伴い、従来仕掛品に計上していた民間航空エンジンプログラムに係る開発分担金については、投資その他の資産に振替を行っています。また、民間航空エンジンプログラムのアフターサービス業務については、従来は当社のメインパートナーからの通知情報に基づいて売上高及び売上原価を計上していましたが、履行義務の充足に基づいて収益を認識するとともに、収益認識時に変動対価及び顧客に支払われる対価を見積もって計上する方法に変更しています。このほか、民間航空エンジンプログラムに関して当社が参画割合に応じて負担する一種の値引きについて、従来はメインパートナーからの通知情報に基づいて計上していましたが、収益認識時に当該値引きの金額を変動対価として見積もって計上する方法に変更しています。
収益認識会計基準等の適用については、収益認識会計基準第84項ただし書きに定める経過的な取扱いに従って、当連結会計年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、当連結会計年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用しています。ただし、収益認識会計基準第86項に定める方法を適用し、当連結会計年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約には、新たな会計方針を遡及適用していません。また、収益認識会計基準第86項また書き(1)に定める方法を適用し、当連結会計年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき会計処理を行い、その累積的影響額を当連結会計年度の期首の利益剰余金に加減しています。
この結果、当連結会計年度の売上高が102,800百万円、売上原価が108,128百万円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ5,327百万円増加しています。
また、当連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、利益剰余金の期首残高は39,639百万円減少しています。
(時価の算定に関する会計基準等の適用)
「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日。以下「時価算定会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用し、時価算定会計基準第19項及び「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号 2019年7月4日)第44-2項に定める経過的な取扱いに従って、時価算定会計基準等が定める新たな会計方針を、将来にわたって適用することとしています。なお、連結財務諸表に与える影響はありません。
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
(連結の範囲に関する事項)
株式追加取得等により4社を連結の範囲に含め、第三者割当増資により1社を連結の範囲から除外しています。
(持分法適用の範囲の変更)
新規設立等により2社を持分法適用の範囲に含め、株式追加取得による連結子会社化により2社を持分法適用の範囲から除外しています。
(米国財務会計基準審議会会計基準編纂書(ASC)第842号「リース」の適用)
米国会計基準を適用する在外子会社において、当連結会計年度の期首からASC第842号「リース」を適用しています。これにより、原則として借手におけるすべてのリースを連結貸借対照表に資産及び負債として計上しています。また、適用にあたっては経過措置として認められている累積的影響額を適用開始日に認識する方法を採用しています。
この結果、当連結会計年度における要約連結貸借対照表は、「有形固定資産」が19,823百万円、「流動負債」が3,834百万円、「固定負債」が16,802百万円それぞれ増加しています。なお、当連結会計年度における連結損益計算書に与える影響は軽微です。
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 33.初度適用」に記載のとおりです。
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
(債権流動化取引に係る調整)
日本基準では債権流動化取引について認識を中止していた一部の営業債権について、IFRSでは認識の中止の要件を満たさないため営業債権の認識の中止を行わず「契約資産」等として認識するとともに、債権流動化に伴う支払債務を流動負債及び非流動負債の「社債、借入金及びその他の金融負債」として認識しています。
この結果、IFRSに基づく連結財政状態計算書では、「契約資産」等が158,428百万円、流動負債及び非流動負債の「社債、借入金及びその他の金融負債」が158,428百万円増加しています。
(有形固定資産及び無形資産に係る調整)
日本基準では開発費を研究開発費として発生時に「販売費及び一般管理費」として費用処理するとともに、新製品及び新機種の量産化に係る費用等の一部は「仕掛品」として計上していました。IFRSでは開発費の資産化の要件を満たすものについては、「無形資産」として計上しています。また、日本基準では研究開発費として発生時に「販売費及び一般管理費」として費用処理していた一部の費用について、IFRSでは資産計上要件を満たすため「有形固定資産」として計上しています。なお、IFRSでは資産の取得に対する政府補助金以外による圧縮記帳が認められないため、日本基準において直接減額方式で処理していたものを取り消しています。
この結果、IFRSに基づく連結財政状態計算書では、「有形固定資産」が9,550百万円、「無形資産」が41,696百万円増加、「棚卸資産」が40,886百万円が減少しています。
(使用権資産及びリース負債に係る調整)
日本基準ではファイナンス・リース取引を除き、リース料の発生時点で費用計上をしていますが、IFRSではリース取引開始日時点で、将来のリース料に基づいてその現在価値を測定し、「使用権資産」及び「リース負債」として計上しています。なお、「リース負債」は流動負債及び非流動負債の「社債、借入金及びその他の金融負債」に含めて表示しています。
この結果、IFRSに基づく連結財政状態計算書では、「使用権資産」が38,817百万円、流動負債及び非流動負債の「社債、借入金及びその他の金融負債」が44,613百万円増加しています。
(税効果に係る調整)
IFRSの適用に伴い、すべての繰延税金資産の回収可能性を再検討したため、「繰延税金資産」及び「繰延税金負債」が増減しています。また、未実現損益の消去に伴う税効果について、日本基準では売却元の税率を使用していましたが、IFRSでは売却先の税率を使用して算定しています。
この結果、IFRSに基づく連結財政状態計算書では、「繰延税金資産」が12,589百万円、「繰延税金負債」が20百万円増加しています。
(注) 1 上記の帳簿価額は、日本基準に基づく個別財務諸表の帳簿価額を記載しています。
2 上記の帳簿価額には、建設仮勘定並びに無形固定資産の金額は含みません。
3 名古屋第一工場・名古屋第二工場の従業員数は岐阜工場に含みます。
4 神戸本社には、中部・関西・中国・九州・沖縄支社、寮社宅等福利厚生施設他を含みます。
5 東京本社には、海外事務所、北海道・東北支社他を含みます。
(注) 1 上記の帳簿価額は、日本基準に基づく個別財務諸表の帳簿価額を記載しています。
2 上記の帳簿価額には、建設仮勘定並びに無形固定資産の金額は含みません。
3 カワサキモータース㈱明石工場には、西日本地区に複数保有する開発用テストコース他を含みます。
(注) 1 上記の帳簿価額は、IFRSに基づく金額を記載しています。
2 上記の帳簿価額には、建設仮勘定並びに無形資産の金額は含みません。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注) 発行済株式総数及び資本準備金の増加は、2021年8月1日付で川重冷熱工業株式会社を株式交換完全子会社とする株式交換を行ったことによるものです。
(注) 1 自己株式41,655株は「個人その他」に416単元、「単元未満株式の状況」に55株含みます。
2 証券保管振替機構名義の株式540株は「その他の法人」に5単元、「単元未満株式の状況」に40株含みます。
2023年3月31日現在
(注) 1 上記の所有株数のうち、信託業務に係る株式数は次のとおりです。
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 25,042千株
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 10,542千株
2 株式会社みずほ銀行から、2022年10月7日付で変更報告書が公衆の縦覧に供され、同社及び共同保有者2社が2022年9月30日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日現在における実質所有株式数が確認できないため、大株主の状況には含めていません。
3 三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社から、2022年12月21日付で変更報告書が公衆の縦覧に供され、同社及び共同保有者1社が2022年12月15日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日現在における実質所有株式数が確認できないため、大株主の状況には含めていません。
4 野村證券株式会社から、2023年2月22日付で大量保有報告書が公衆の縦覧に供され、同社及び共同保有者1社が2023年2月15日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日現在における実質所有株式数が確認できないため、大株主の状況には含めていません。