トヨタ自動車株式会社
連結財務諸表提出会社(以下、当社という。)は、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しており、関係会社の範囲についてもIFRSの定義に基づいています。「第2 事業の状況」および「第3 設備の状況」においても同様です。
当社および当社の関係会社(子会社569社、関連会社および共同支配企業168社(2023年3月31日現在)により構成)においては、自動車事業を中心に、金融事業およびその他の事業を行っています。
なお、次の3つに区分された事業は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記5」に掲げるセグメント情報の区分と同様です。
自動車 当事業においては、セダン、ミニバン、コンパクト、SUV、トラック等の自動車とその関連部品・用品の設計、製造および販売を行っています。自動車は、当社、日野自動車㈱およびダイハツ工業㈱が主に製造していますが、一部については、トヨタ車体㈱等に生産委託しており、海外においては、トヨタ モーター マニュファクチャリング ケンタッキー㈱等が製造しています。自動車部品は、当社および㈱デンソー等が製造しています。これらの製品は、国内では、トヨタモビリティ東京㈱等の全国の販売店を通じて顧客に販売するとともに、一部大口顧客に対しては当社が直接販売を行っています。一方、海外においては、米国トヨタ自動車販売㈱等の販売会社を通じて販売しています。
自動車事業における主な製品は次のとおりです。
金融 当事業においては、主として当社および当社の関係会社が製造する自動車および他の製品の販売を補完するための金融ならびに車両のリース事業を行っています。国内では、トヨタファイナンス㈱等が、海外では、トヨタ モーター クレジット㈱等が、これらの販売金融サービスを提供しています。
その他 その他の事業では、情報通信事業等を行っています。
主な事業の状況の概要図および主要な会社名は次のとおりです。

上記以外の主要な会社としては、北米の製造・販売会社の統括および渉外・広報・調査活動を行うトヨタ モーター ノース アメリカ㈱、欧州の製造・販売会社の統括および渉外・広報・調査活動を行うトヨタ モーター ヨーロッパ㈱、金融会社を統括するトヨタファイナンシャルサービス㈱、ソフトウェアを中心とした様々なモビリティの開発を担うウーブン・プラネット・ホールディングス㈱(※)があります。
※ウーブン・プラネット・ホールディングス㈱は、2023年4月1日付でウーブン・バイ・トヨタ㈱に社名変更しています。
2023年3月31日現在
2023年3月31日現在
① 提出会社
(参考1)正社員における男女別の平均年齢(歳)
(参考2)正社員における職種・男女別の在籍割合(%)
なお、正社員について、同一年齢かつ同職種であれば男女間の賃金差は縮小します。
年齢が30歳の正社員について、職種別に男女間の賃金差を算出すると、以下のとおりとなります。
事技職:89.0%、業務職:データなし(男性0名のため)、技能職:79.8%、医務職:89.1%
パート・有期契約社員等の男女間賃金の差は「就業形態の違い」に起因しています。特に、定年後再雇用者は、職務内容や定年前の資格等を踏まえて処遇を決定しており、差異が出る要因となっています。
(参考3)パート・有期契約社員等における就業形態別・男女別の在籍割合(%)
② 主要な連結子会社
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2023年3月31日現在において判断したものです。
トヨタは経営の基本方針を「トヨタ基本理念」として掲げており、その実現に向けた努力が、企業価値の増大につながるものと考えています。その内容は次のとおりです。
1. 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2. 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3. クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4. 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5. 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6. グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7. 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
トヨタはモビリティカンパニーへの変革を進めるために、改めて歩んできた道を振り返り、未来への道標となる「トヨタフィロソフィー」をまとめました。
トヨタはモビリティカンパニーとして移動にまつわる課題に取り組むことで、人や企業、コミュニティの可能性を広げ、「幸せを量産」することを使命としています。そのために、モノづくりへの徹底したこだわりに加えて、人と社会に対するイマジネーションを大切にし、様々なパートナーと共に、唯一無二の価値を生み出してまいります。
「トヨタフィロソフィー」
当社は2023年4月7日に新体制方針説明会を行いました。新体制のテーマは「継承と進化」です。私たちが培ってきた最も大切な価値観は「もっといいクルマをつくろうよ」です。「現場」でクルマを語り、お客様の笑顔のために努力し、もっといいクルマを追求し続けていきます。そして、世界37万人のトヨタの仲間と、仕入先、販売店の皆様と一緒に、全員でクルマをつくっていきます。クルマづくりはチームプレーです。「チームで、同時に、有機的に動く」経営スタイルで、未来への挑戦を加速してまいります。
目指す未来
これから私たちはモビリティカンパニーへの変革を目指していきます。
トヨタの使命は「幸せの量産」です。クルマがこれからも社会に必要な存在であり続けるためには、クルマの未来を変えていく必要があります。そのためのふたつの大きなテーマは「カーボンニュートラル」と「移動価値の拡張」です。
カーボンニュートラル
私たちはクルマのライフサイクル全体で、2050年カーボンニュートラルの実現に全力で取り組んでいきます。クルマづくりにおいては、エネルギーの未来と、地域毎の現実に寄り添って、マルチパスウェイを軸に、今後も多様な選択肢を追求していきます。
まずは今すぐにできる電動化を徹底的にやっていきます。新興国も含めてハイブリッド車(HEV)の販売を強化し、プラグインハイブリッド車(PHEV)の選択肢も増やしてまいります。重要な選択肢のひとつであるBEVは、今後数年で、ラインアップを拡充します。
BEVの開発、新しい事業モデルの構築に全力で取り組んでまいります。
その先の水素社会の実現に向けたプロジェクトも加速してまいります。タイや福島での社会実装や、商用燃料電池車(FCEV)の量産化、そして、モータースポーツの場を活用した水素エンジン技術の開発など、産業や国を越えたパートナーの皆様と一緒に、水素を「使う」領域の拡大を進めていきます。さらに、エネルギー産業と連携し、カーボンニュートラル燃料の技術開発も進めてまいります。
私たちは、新興国も含めて、誰ひとり取り残すことなく電動車の普及やCO2の低減に取り組んでまいります。こうした全方位での取り組みにより、全世界で販売するクルマの平均CO2排出量は2019年と比べて、2030年には33%、2035年には50%を越える削減レベルを目指します。2050年に向かってグローバルで、着実に、脱炭素を進めてまいります。
移動価値の拡張
これからのクルマは電動化、知能化、多様化が進んでいくことで、社会とつながった存在になってまいります。ヒトの心が動く、感動するというMOVEやヒトやモノの移動に加えて、エネルギー、情報のMOVEを取り込み、データでひとつにつながっていきます。
それにより、他のモビリティと連動したシームレスな移動体験や、社会インフラとしてのクルマの新しい価値を提供できるようになってまいります。そして、社会とつながったクルマは、通信や金融など人々の暮らしを支える様々なサービスとも密接につながり、モビリティを軸にした新しい付加価値の輪が広がってまいります。
トヨタモビリティコンセプト
私たちが目指すモビリティ社会のあり方をまとめたものが、「トヨタモビリティコンセプト」です。安全・安心や運転する楽しさなどこれまで培ってきたクルマの本質的な価値を基盤にもっと社会の役に立つ存在へクルマを進化させていきます。
そんな未来に向けて、今後、3つの領域で、モビリティカンパニーへの変革を進めてまいります。
ひとつめは「モビリティ1.0」です。ここで目指すのは様々なMOVEをつなげてクルマの価値を拡張させていくことです。例えば、BEVには、電気を運ぶモビリティとしての新しい可能性があります。エネルギーグリッドとして社会のエネルギーセキュリティを高める役割も果たせます。また、知能化により、クルマやお客様から集まる情報を活用すれば、クルマはもっと進化できます。この新しいクルマづくりのカギを握るのが、ソフトウェア基盤の「Arene(アリーン)」です。最新のハードとソフトがつながり、クルマと様々なアプリも自由自在につながります。Areneは、こうした進化を支えるプラットフォームとして重要な役割を担っていきます。2026年の次世代BEVに向けてウーブン・プラネット・ホールディングス㈱(※)と一緒に全力で開発を進めてまいります。
※ウーブン・プラネット・ホールディングス㈱は、2023年4月1日付でウーブン・バイ・トヨタ㈱に社名変更しています。
ふたつめの「モビリティ2.0」で目指すのは新しい領域へのモビリティの拡張です。ご高齢の方々や過疎地にお住まいの方々、クルマ市場が成熟していない新興国など、私たちが、移動をお支えできていない方々が、たくさんいらっしゃいます。また、「空のモビリティ」など、新しい移動の可能性も広がっています。トヨタには、フルラインアップのクルマに加えて「e‐Palette」などの新しいモビリティや、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)領域をはじめ、産業を越えた仲間とのネットワークがあります。こうした強みを生かし、今の事業範囲を越えて世界中のお客様の移動をお支えしていきたいと考えています。
そして、「モビリティ3.0」は社会システムとの融合です。エネルギーや交通システム、物流、暮らしのあり方まで入り込み、街や社会と一体となったモビリティのエコシステムをつくり、そして、ウェルビーイングを実現していく未来です。そのために、Woven City(ウーブン・シティ)での実証実験を進めていきます。例えば、新しい物流の仕組みづくりや街と一体となった自動運転モビリティの開発、また、Woven Cityを起点としたCO2フリー水素のサプライチェーン実証や暮らしの中で水素利用の可能性を広げる実証も進めてまいります。デジタルを活用したこれまでの実証に加えて、2025年からは、リアルな街での総合的な実証を加速し、パートナーとともに社会実装につなげていきます。
このモビリティコンセプトで最もお伝えしたいことは「クルマが進化した先にモビリティがある」ということです。
モビリティカンパニーへの変革の真ん中には、クルマがあります。クルマの持つ可能性を広げていきます。そのためには、これまで培ってきたもっといいクルマづくりと町いちばんの考え方を基盤にした進化が必要です。商品・地域を軸に、クルマの未来を変えていきます。
商品を軸にした経営
トヨタモビリティコンセプトの中心にあるクルマの価値を高め、更に、新しいモビリティや移動の自由を拡げ、社会システムの一部として、新たなサービスやエネルギーソリューションを提供します。その実現のカギを握る3つのアプローチは、電動化、知能化、多様化です。
電動化は、マルチパスウェイを軸に、それぞれの強みや特色を活かし、お客様や地域に合わせた電動化を進めてまいります。BEVはラインアップを拡充させ、2026年までに、新たに10モデルの投入を目指し、販売台数も年間150万台を想定します。
また、電池を極限まで効率よく使い、航続距離を2倍に、さらに心揺さぶる走りとデザインを兼ね備えた次世代BEVも2026年に投入を想定しています。
また、トヨタ生産方式(TPS)を活かし、仕事のやり方を変え、工程数を1/2に削減し、コネクテッド技術による無人搬送や、自律走行検査などにより、効率的なラインへシフトしたものづくりへ変えていきます。グローバル全工場での、2035年カーボンニュートラルにつなげていきます。サプライチェーンの構築も、仕入先と良品廉価な部品調達に一体となって取り組んでいきます。
この実現のため、全権を委ねたワンリーダーの下、開発、生産、事業、全ての機能を持つ専任組織を作ります。TNGAの効果で半減した開発原単位、内製投資など、磨いてきた競争力と1,000万台の力で新しい組織を全面的にサポートしていきます。
PHEVは、電池の効率を上げ、EV航続距離を200km以上に延ばすことで、プラクティカルなBEVと再定義し、開発を進めます。
FCEVは、商用車を軸に量産化にチャレンジしていきます。エネルギーである水素は軽く、航続距離が増えてもBEVと比較してさほど重くならず、スペースも減りにくいという特徴があります。また、エネルギー充填時間が短いため、利点を生かせる商用車から拡大していきます。
2つ目の知能化は、クルマ、サービス、社会でつながりを拡げていきます。
クルマの知能化は、先進安全技術やマルチメディアをはじめ、時代進化に合わせた機能のアップデートを、全てのクルマに順次広げ、次世代BEVでは、車両OSの進化と共に、走る、曲がる、止まるにこだわった、「乗り味」のカスタマイズも可能にしていきます。加えて、クルマの素性をより磨き上げる事で、もっとFun to Driveなクルマをハード、ソフトの両面で実現していきます。
サービスの知能化は、クルマとインフラ、街とを繋ぎ、新しいサービスを提供していきます。リアルタイムの交通情報を活用し、輸送効率を高める物流システムや最適なエネルギーマネジメントを行うシステムは本年、社会実装を開始します。街や公共施設と連携し、BEVの充電ネットワーク拡充、エネルギーグリッドや人々の暮らしを支える様々なサービスを提供していきます。この取り組みはレクサスで既に始まっています。
社会の知能化は、モビリティのテストコースと位置づけたWoven Cityで、人、クルマ、社会を繋げる様々な実証実験を行っていきます。物流領域でのコネクテッドサービス、その社会実装で明らかになった課題をWoven Cityで改善し、再び社会実装し知能化を加速させていきます。
3つ目の多様化は、クルマ、移動、エネルギー領域まで拡げていきます。
クルマの多様化は、ラインアップの拡充と、コネクテッドを活用したサービス、用品、部品ビジネスも新たなパートナーと共に拡げていきます。
移動の多様化は、例えば、長年の福祉車両開発で培ったノウハウを生かし、ワンタッチで車いすを固定できる装置を開発し、実装を開始します。
エネルギーの多様化は、水やフードロスなどの廃棄物から作った水素やバイオマスなどから作ったカーボンニュートラル燃料を使用した実証実験を日本やタイで始めています。また、エネルギー活用技術をモータースポーツの現場でも鍛え、社会への普及につなげていきます。
地域を軸にした経営
トヨタは、HEVの性能と原価に磨きをかけ世代進化してきた結果、稼ぐ力を大きく向上させながら、未来への投資とステークホルダーの皆様との成長と、CO2排出量削減を両立してきました。これがまさに、もっといいクルマをベースとした、地域軸経営の成果だと考えています。これからもこの地域軸経営を更に深め、事業基盤を、いっそう強固なものにしていきます。
そのために、まず向き合わなくてはならないのがカーボンニュートラルです。炭素に国境はありませんし、CO2排出量は待ったなしの課題です。できることから、すぐに始める必要があります。
だからこそ、我々は、地域毎の電動化の進展度合いや多様なクルマの使われ方を踏まえ、電動車を少しでも早く、一台でも多く普及させるため、きめ細かな対応が必要です。故に、BEVのラインアップ強化とともに、HEV、PHEVなど、全てのパワートレーンの一層の魅力と競争力の強化を行っていきます。
先進国では、BEVの準備と並行し、bZシリーズを中心に、品揃えを拡充していきます。米国では、2025年に3列SUVの現地生産を開始し、ノースカロライナ州で生産するバッテリーを搭載し、生産能力の増強を進めていきます。中国では、現地のニーズにあわせた現地開発のBEVを2024年に2モデル投入し、その後もモデル数を順次増強していきます。アジアをはじめとする新興国は、年内にBEVピックアップトラックの現地生産を開始するほか、小型BEVを投入し、伸び始めたBEVの需要にしっかりと対応します。先進国では、市場が成熟する中で電動車へのシフトが予想されます。一方、新興国は、新規や増車による市場の拡大が見込まれます。
トヨタは、フルラインアップと稼げるHEV・PHEV、増強していくBEVの多様な選択肢で、グローバルの幅広い需要に確実にこたえ、更に成長していきます。新興国の成長には、収益力の上がったHEVで対応し、稼ぐ源泉とします。販売台数約1,000万台のバリューチェーンで幅広い事業機会も取り込んでいきます。加えて、TPSの強みを活かした原価低減とカイゼンの効果を発揮し、BEVやモビリティ領域の広がりに向けた未来の投資余力をこれまで以上に生み出し、カーボンニュートラルと成長を両立させる強い事業基盤を確立していきます。
電動化・知能化・多様化の技術革新が進む中で、地域貢献、産業報国へのチャレンジも進めていきます。例えば、アメリカでは、人々のモノづくり離れや構造的なコスト増など、自動車産業は大きな課題に直面しています。現場で磨きあげた「匠の技能」と「知能化」を組み合わせ、新しいモノづくり・自働化工程を提案し、人不足の課題を解決しながら、アメリカにモノづくりを残す、という恩返しをします。タイのCP、サイアムセメントグループと協業し、電動化やコネクテッドの技術でクルマ・人・物・情報を繋げ、モビリティを社会のインフラの一部として活用した実装を開始します。こうした取り組みを通じ、深刻な渋滞や大気汚染、多発する交通事故などの地域課題の解決にチャレンジしていきます。
「クルマの未来を変えていこう」
どんなに時代が変わってもトヨタは、「商品で経営」し、世界中で、お客様や社会の多様化にお応えし、幸せを量産していく会社です。グローバル、フルラインアップの力を磨いてきたトヨタだからこそ、目指せるモビリティ社会の未来があります。
正解がない時代に、未来を変えていくのは意志と情熱にもとづく「行動」です。仲間とともに、常識にとらわれず、挑戦していきます。その先に、クルマ屋らしく、トヨタらしいモビリティの未来があると信じています。「クルマの未来を変えていこう」、モビリティカンパニーを目指す私たちのテーマです。このブレない軸のもと、意志と情熱をもって、挑戦してまいります。
日野自動車㈱およびダイハツ工業㈱の認証不正問題について
2022年3月4日、連結子会社の日野自動車㈱は、日本市場向け車両用エンジンの排出ガスおよび燃費に関する認証申請における不正行為を確認し、公表しました。外部有識者で構成される特別調査委員会の調査報告書を受領、国土交通省から立ち入り検査を受け、是正命令を受けました。10月7日には、再発防止策に関する報告書を国土交通省に提出しました。本件に関する経営責任の明確化として取締役・専務役員および専務役員4名の辞任、取締役の報酬減額、過去の代表取締役の報酬自主返納に加え、二度と不正を起こさないための「3つの改革」を策定・公表しています。「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」という会社の使命に立ち返り、二度と不正を起こさないよう全社を挙げて取り組みを進めています。
2023年4月28日、連結子会社のダイハツ工業㈱は、同社が開発を行った海外向け車両の側面衝突試験の認証申請における不正行為を確認し、公表しました。その後の同社内での点検を行う中で、新たに、ダイハツ・ロッキーおよびトヨタ・ライズのHEV車のポール側面衝突試験に関する認証手続きに不正があることが判明し、公表しました。事実が判明後、速やかに審査機関・認証当局に報告・相談の上、認可対象国における該当車両の出荷・販売を停止しました。また、社内再試験を行い、試験で定められた基準を満足していることを確認し、報告しています。本件について、法律面および技術面での外部専門家から構成される第三者委員会を設置し、事案の全容解明および真因分析に加え、同社の組織の在り方や開発プロセスにまで踏み込んだ再発防止策の提言を委嘱しています。
2009年に発生した大規模リコールの問題の際に、世界中のお客様に対し、トヨタは「逃げない、隠さない、嘘をつかない」ことをお約束しました。それにも関わらず、当社グループでこうした問題が発生したことを大変重く受け止めています。本件の当社グループのクルマづくりのオペレーション上の問題については、執行トップである社長が責任をもって改善に取り組み、ガバナンスやコンプライアンスに関する部分は、会長が責任をもって取り組んでまいります。
当社グループとして、2023年5月12日にグループ各社トップが集まり、「当社グループとして誠実にものづくりに向き合う」べく、当社グループとしての認識を新たにしました。現在、当社も含め各社が全社を挙げて、これまでのガバナンスの在り方などにつき、改めて検討し、徹底的に見直しを始めています。本件についても、個人や職場の問題としてではなく、個人や職場が不正を行わざるを得なかった会社全体の問題としてとらえ、ダイハツ工業㈱と共に現場の声に耳を傾けながら、丁寧に対応してまいります。
当社グループの現場は、みんなが「もっといいクルマをつくろう」という気持ちを持っています。トヨタは、問題が発生した時には、全員が必ず立ち止まり、現地現物で真因を追求し、改善し、再発防止に取り組んでいく会社です。これは、創業以来ずっと大切にしてきたトヨタの思想です。当社グループ各社が、今一度、この思想に立ち戻り、各社のトップ自らが、それぞれの現場と向き合い、問題をあぶり出し、一つ一つ改善していく、この地道な努力を続けていく以外に、信頼回復の道はありません。一日も早く、お客様の信頼を取り戻せるよう、グループ一丸となって取り組んでまいります。
三菱ふそうトラック・バス㈱と日野自動車㈱の統合に関する基本合意書の締結について
2023年5月30日、当社は、ダイムラートラック社、三菱ふそうトラック・バス㈱および日野自動車㈱と、CASE技術開発の加速を目指すとともに、三菱ふそうトラック・バス㈱と日野自動車㈱を統合する基本合意書を締結しました。当社は、ダイムラートラック社、三菱ふそうトラック・バス㈱および日野自動車㈱と、グローバルでのCASE技術開発・商用車事業の強化を通じたカーボンニュートラルの実現、豊かなモビリティ社会の創造に向けて協業してまいります。
三菱ふそうトラック・バス㈱と日野自動車㈱は対等な立場で統合し、商用車の開発、調達、生産分野で協業し、グローバルな競争力のある日本の商用車メーカーを構築できるよう取り組んでまいります。当社とダイムラートラック社は、両社統合の持株会社(上場)の株式を同割合で保有予定であり、水素をはじめCASE技術開発で協業、統合会社の競争力強化を支えます。
なお、新会社の名称、所在地、体制、協業の範囲や内容については、協議の上、2024年3月期中の最終契約締結、2024年中の統合完了を目標として進めてまいります。
以下において、トヨタの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下はトヨタに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2023年6月30日)現在において判断したものです。
世界の自動車市場では激しい競争が繰り広げられています。トヨタは、ビジネスを展開している各々の地域で、自動車メーカーとの競争に直面しています。近年、自動車市場における競争はさらに激化しており、厳しい状況が続いています。また、世界の自動車産業におけるCASEなどの技術革新が進むことによって、競争は今後より一層激化する可能性があり、業界再編につながる可能性もあります。競争に影響を与える要因としては、製品の品質・機能、安全性、信頼性、燃費、革新性、開発に要する期間、価格、カスタマー・サービス、自動車金融の利用条件、各国の税制優遇措置等の点が挙げられます。競争力を維持することは、トヨタの既存および新規市場における今後の成功、販売シェアにおいて最も重要です。トヨタは、エンジン車から電動車へのお客様のニーズの変化など、昨今の自動車市場の急激な変化に的確に対応し、今後も競争力の維持強化に向けた様々な取り組みを進めていきますが、将来優位に競争することができないリスクがあります。競争が激化した場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、それによりトヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。
トヨタが参入している各市場では、今までも需要が変動してきました。各市場の状況によって、自動車の販売は左右されます。トヨタの販売は、世界各国の市場に依存しており、各市場の景気動向はトヨタにとって特に重要です。当連結会計年度においては、地政学的な緊張を背景としてエネルギー価格などが高騰し、先進国および新興国ともに消費者物価の上昇が加速しました。8月以降は、各国中央銀行による金融引き締めペースの加速に伴う世界経済の減速懸念により、需要減少の動きが見られました。自動車市場においては、世界的な半導体の需給ひっ迫・部品供給不足による、グローバルでの生産制約が継続しましたが、年度後半に向け緩和していきました。このような需要の変化は現在でも続いており、この状況が今後どのように推移するかは不透明です。今後トヨタの想定を超えて需要の変化が継続または悪化した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受ける可能性があります。また、需要は、販売・金融インセンティブ、原材料・部品等の価格、燃料価格、政府の規制(関税、輸入規制、その他の租税を含む)など、自動車の価格および自動車の購入・維持費用に直接関わる要因により、影響を受ける場合があります。需要が変動した場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、それによりトヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。
③お客様のニーズに速やかに対応した、革新的で価格競争力のある新商品を投入する能力
製品の開発期間を短縮し、魅力あふれる新型車でお客様にご満足いただくことは、自動車メーカーにとっては成功のカギとなります。特に、品質、安全性、信頼性、サステナビリティにおいて、お客様にご満足いただくことは非常に重要です。世界経済の変化や技術革新に伴い、自動車市場の構造が急激に変化している現在、お客様の価値観とニーズの急速な変化に対応した新型車を適時・適切にかつ魅力ある価格で投入することは、トヨタの成功にとってこれまで以上に重要であり、技術・商品開発から生産にいたる、トヨタの事業の様々なプロセスにおいて、そのための取り組みを進めています。しかし、トヨタが、品質、安全性、信頼性、スタイル、サステナビリティ、その他の性能に関するお客様の価値観とニーズを適時・適切にかつ十分にとらえることができない可能性があります。また、トヨタがお客様の価値観とニーズをとらえることができたとしても、その有する技術、知的財産、原材料や部品の調達、原価低減能力を含む製造能力またはその他生産性に関する状況により、価格競争力のある新製品を適時・適切に開発・製造できない可能性があります。また、トヨタが計画どおりに新製品の投入や設備投資を実施し、製造能力を維持・向上できない可能性もあります。お客様のニーズに対応する製品を開発・提供できない場合、販売シェアの縮小ならびに営業収益と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。
④効果的な販売・流通を実施する能力
トヨタの自動車販売の成功は、お客様のご要望を満たす流通網と販売手法に基づき効果的な販売・流通を実施する能力に依存します。トヨタはその参入している各主要市場につきお客様の価値観または地政学的な緊張関係や規制環境において、変化に効果的に対応した流通網と販売手法を展開できない場合は、営業収益および販売シェアが減少するリスクがあります。
⑤ブランド・イメージの維持・発展
競争の激しい自動車業界において、ブランド・イメージを維持し発展させることは非常に重要です。ブランド・イメージを維持し発展させるためには、トヨタグループおよび仕入先が法令遵守を徹底し、お客様の価値観やニーズに対応した安全で高品質の製品を提供すること、また、ステークホルダーの皆様への迅速かつ適切な情報発信を通じ、ステークホルダーの皆様の信頼をさらに高めていくことが重要です。また、企業としてサステナビリティに貢献することの重要性も高まっています。
しかし、トヨタグループや仕入先があらゆる場面において、それを徹底できるとは限りません。例えば、2022年3月4日、連結子会社の日野自動車㈱は、日本市場向け車両用エンジンの排出ガスおよび燃費に関する認証申請における不正行為を確認し、公表しました。また、2023年4月28日、連結子会社のダイハツ工業㈱は、同社が開発した海外向け車両の側面衝突試験の認証申請における不正行為を確認し、公表しました。日野自動車㈱およびダイハツ工業㈱の認証不正問題に関しては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)会社の対処すべき課題」を参照ください。
さらに、トヨタまたは仕入先がサステナビリティに貢献しない、または気候変動やサプライチェーンにおける人権保護など、特定のサステナビリティに関する目標または目的を達成できない場合、トヨタのブランド・イメージが低下する可能性があります。トヨタのブランド・イメージを効果的に維持し発展させることができなかった場合、営業収益と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。
⑥仕入先への部品・原材料供給の依存
トヨタは、部品や原材料などの調達部品を世界中の複数の競合する仕入先から調達する方針を取っていますが、調達部品によっては他の仕入先への代替が難しいものもあり、特定の仕入先に依存しているものがあります。また、かかる特定の仕入先からの調達ができない場合、当該部品等の調達がより困難となり、生産面への影響を受ける可能性があります。さらに、トヨタが直接の取引先である一次仕入先を分散していたとしても、一次仕入先が部品調達を二次以降の特定の仕入先に依存していた場合、同様に部品の供給を受けられないリスクもあります。仕入先の数に関わらず、トヨタが調達部品を継続的にタイムリーかつ低コストで調達できるかどうかは、多くの要因の影響を受けますが、それら要因にはトヨタがコントロールできないものも含まれています。それらの要因の中には、仕入先が継続的に調達部品を調達し供給できるか、またトヨタが、仕入先から調達部品を競争力のある価格で供給を受けられるか等が含まれます。このような能力に悪影響を与える可能性のある状況には、地政学的な緊張や、経済制裁などの政府の行動が含まれます。特定の仕入先を失う、またはそれら仕入先から調達部品をタイムリーもしくは低コストで調達できない場合、トヨタの生産に遅延や休止またはコストの増加を引き起こす可能性があり、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶ可能性があります。
⑦金融サービスにおける競争の激化
世界の金融サービス業界では激しい競争が繰り広げられています。自動車金融の競争激化は、利益率の減少を引き起こす可能性があります。この他トヨタの金融事業に影響を与える要因には、トヨタ車の販売台数の減少、中古車の価格低下による残存価値リスクの増加、貸倒率の増加および資金調達費用の増加が挙げられます。
⑧デジタル情報技術および情報セキュリティへの依存
トヨタは、機密データを含む電子情報を処理・送信・蓄積するため、または製造・研究開発・サプライチェーン管理・販売・会計を含む様々なビジネスプロセスや活動を管理・サポートするために、第三者によって管理されているものも含め、様々な情報技術ネットワークやシステムを利用しています。さらに、トヨタの製品にも情報サービス機能や運転支援機能など様々なデジタル情報技術が利用されています。これらのデジタル情報技術ネットワークやシステムは、安全対策が施されているものの、ハッカーによる不正アクセスやコンピュータウィルスによる攻撃、トヨタが利用するネットワークおよびシステムにアクセスできる者による不正使用・誤用、開発ベンダー・クラウド業者など関係取引先からのサービスの停止、電力供給不足を含むインフラの障害、天災などによって被害や妨害を受ける、または停止する可能性があります。特にサイバー攻撃や他の不正行為は苛烈さ、巧妙さ、頻度において脅威を増しており、そのような攻撃の標的であり続ける恐れがあります。このような事態が起きた場合、重要な業務の中断や、機密データの漏洩、トヨタ製品の情報サービス機能・運転支援機能などへの悪影響のほか、法的請求、訴訟、賠償責任、罰金の支払い義務などが発生する可能性もあります。その結果、トヨタのブランド・イメージや、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、トヨタの取引先やビジネスパートナーに対する同様の攻撃は、トヨタにも同様の悪影響を与える可能性があります。
気候変動リスクは、日本および世界で、社会面、規制を含む政治面での関心が高まっています。これらのリスクには、気候変動による物理的リスクや低炭素経済への移行リスクが含まれます。
気候変動の物理的リスクには、台風、洪水、竜巻など突発的な気象変化に起因する影響と、気温上昇、海面上昇、干ばつ、山火事の増加など、長期的な気象変化による影響の両方が含まれます。トヨタはBusiness Continuity Plan(BCP)を策定していますが、異常気象による大規模災害は、トヨタならびに仕入先および取引先の従業員、施設およびその他の資産に損害を与える可能性があり、トヨタの生産、販売またはその他の事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。大規模な災害はまた、お客様の財政状態に悪影響を及ぼし、トヨタの製品およびサービスの需要に悪影響を与える可能性があります。
低炭素経済への移行リスクとは、気候関連のリスクを軽減するための規制、技術、および市場の変化やその対応に伴うリスクです。例えば、トヨタは、気候変動に関する法律、規制、政策の変更、気候変動に対処するための技術革新、市場構造の変化を捉えた自動車産業への新規参入者などの要因により、自動車に対するお客様のニーズが変化するリスクにさらされています。お客様のニーズの変化は、トヨタが部品や原材料などの調達部品を継続的かつ競争力のある価格で調達するために、新たな供給網の確立や既存の供給網の強化が必要になるなど、付随的なリスクや課題をもたらす可能性があります。トヨタは、そのようなリスクの顕在化の結果として、またはリスク軽減やリスク対応の努力の結果として、多額の費用および支出を負担する可能性があります。また、お客様のニーズに対応する製品を開発・提供できない場合、販売シェアの縮小ならびに営業収益と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。
トヨタは、トヨタの事業やビジネスパートナーに関する気候変動関連事項の開示を公表しています。この開示には、トヨタの予想に基づき、将来の見通しに関する記述が含まれており、結果的にこれらが実現できない可能性があります。また、気候変動に関する取り組みは意図した結果をもたらさない可能性があり、目標の達成時期やコスト、達成能力に関する予測は、リスクと不確実性を伴います。その結果、気候変動関連の目標が達成できない恐れがあります。特に、中長期にわたるトヨタの気候変動関連の目標の達成には、多大なリソーセスと投資、ならびに新たなコンプライアンス、リスク管理システム、内部統制およびその他の内部手続の導入が必要です。また、トヨタがコントロールできない環境・エネルギー規制、政策の変更、技術革新、顧客や競合他社の行動等にも影響を受けます。気候変動関連の目標を達成できない、または達成できないとみなされた場合、トヨタのブランド・イメージ、財務状況、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(4)気候変動対応 (TCFDに基づく気候関連財務情報開示)」を参照ください。
事業環境の急激な変化やモビリティカンパニーへの変革に向けた取り組みを進めるにあたり、優秀で多様な人材を確保し、育成し続けることが重要です。しかしながら、そのような人材の獲得競争は激しく、トヨタが高い専門性や豊富な経験を持つ多様な人材を計画通りに採用、定着化できない場合、または成長に必要な機会、教育、リソースを提供できない場合、競争力低下につながり、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
①為替および金利変動の影響
トヨタの収益は、外国為替相場の変動に影響を受け、主として日本円、米ドル、ユーロ、ならびに豪ドル、加ドルおよび英国ポンドの価格変動によって影響を受けます。トヨタの連結財務諸表は、日本円で表示されているため、換算リスクという形で為替変動の影響を受けます。また、為替相場の変動は、外国通貨で販売する製品および調達する材料に、取引リスクという形で影響を与える可能性があります。特に、米ドルに対する円高の進行は、トヨタの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
為替相場および金利の変動リスクを軽減するために、現地生産を行い、先物為替予約取引や金利スワップ取引を含むデリバティブ金融商品を利用していますが、依然として為替相場と金利の変動は、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。為替変動の影響およびデリバティブ金融商品の利用に関しては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①概観 d.為替の変動」および連結財務諸表注記19ならびに20を参照ください。
②原材料価格の上昇
鉄鋼、貴金属、非鉄金属(アルミ等)、樹脂関連部品など、トヨタおよびトヨタの仕入先が製造に使用する原材料価格の上昇は、部品代や製造コストの上昇につながり、これらのコストを製品の販売価格に十分に転嫁できない、あるいは仕入先がこれらのコストを十分に吸収できない結果、トヨタの将来の収益性に悪影響を与える可能性があります。資材価格の高騰は、2023年3月期の業績に悪影響を及ぼしており、2024年3月期の業績においても影響が継続すると予想しています。
③金融市場の低迷
世界経済が急激に悪化した場合、多くの金融機関や投資家は、自らの財務体力に見合った水準で金融市場に資金を供給することが難しい状況に陥る可能性があります。その結果、企業がその信用力に見合った条件で資金調達をすることが困難になる可能性があります。必要に応じて資金を適切な条件で調達できない場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受ける可能性があります。
①自動車産業に適用される政府の規制
世界の自動車産業は、自動車の安全性や排ガス、燃費、騒音、公害をはじめとする環境問題などに関する様々な法律と政府の規制の適用を受けています。特に、安全面では、法律や政府の規制に適合しない、またはその恐れのある自動車は、リコール等の市場処置の実施が求められます。さらに、トヨタはお客様の安心感の観点から、法律や政府の規制への適合性に関わらず、自主的に販売停止やリコール等の市場処置を実施する可能性もあります。トヨタが市場に投入した車両にリコール等の市場処置が必要となった場合(リコール等に関係する部品はトヨタが第三者から調達したものも含む)、製品のリコール等にかかる費用を含めた様々な費用が発生する可能性があります。また、多くの政府は、価格管理規制や為替管理規制を制定しています。さらに、規制を遵守できなかった場合、法的手続、リコール、改善措置の交渉、罰金、政府承認の取り消しやその他の政府制裁の賦課、製品提供の制限、補償金、あるいは日野自動車㈱が排出ガスや燃費試験に関する不正行為に関連して生じたような不利益をもたらす可能性があります。詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)会社の対処すべき課題」を参照ください。トヨタは、国際貿易の動向や政策の変化に関する費用を含むこれらの規制に適合するために費用を負担し、今後も法令遵守のために費用が発生する可能性があります。また、新しい法律または現行法の改正により、トヨタの今後の費用負担が増えるリスクがあります。このように、市場処置を講じたり法律や政府の規制へ適合するために多額の費用が発生した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
②法的手続
トヨタは、製造物責任、知的所有権の侵害等、様々な法的手続の当事者となる可能性があります。また、株主との間で法的手続の当事者となったり、行政手続または当局の調査の対象となる可能性もあります。現在トヨタは、行政手続および当局の調査を含む、複数の係属中の法的手続の当事者となっています。トヨタが当事者となる法的手続で不利な判断がなされた場合、トヨタの評判、ブランド・イメージ、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。政府の規制等の法的手続の状況については連結財務諸表注記30を参照ください。
③自然災害、感染症、政治動乱、経済の不安定な局面、燃料供給の不足、インフラの障害、戦争、テロまたはストライキの発生
トヨタは、全世界で事業を展開することに関連して、様々なイベントリスクにさらされています。これらのリスクとは、自然災害、感染症の発生・蔓延、政治・経済の不安定な局面、燃料供給の不足、天災などによる電力・交通機能・ガス・水道・通信等のインフラの障害、戦争、テロ、ストライキ、操業の中断などが挙げられます。トヨタが製品を製造するための材料・部品・資材などを調達し、またはトヨタの製品が製造・流通・販売される主な市場において、これらの事態が生じた場合、トヨタの事業運営に障害または遅延をきたす可能性があります。トヨタの事業運営において、重大または長期間の障害ならびに遅延が発生した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、地政学的な緊張を背景としたエネルギー価格などが高騰し、先進国および新興国ともに消費者物価の上昇が加速しました。8月以降は、各国中央銀行による金融引き締めペースの加速に伴う世界経済の減速懸念により、需要減少の動きが見られました。
このような経営環境の中、トヨタは、お客様の期待を超える「もっといいクルマづくり」に取り組んできました。商品を軸にした経営を進めるため、走る・曲がる・止まるに関わるクルマの基本部分で高い性能を実現した「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」、どんなジャンルのクルマでも情熱と責任をもって考えるための「カンパニー制」、各地域の市場特性やお客様ニーズに対応する「地域制」に取り組んだことで、グローバル・フルラインアップでバランスの取れた事業構造に変化しました。これらの取り組みにより、当期に発売したクルマは、TNGAのプラットフォームを活用し、スピーディーに開発・展開が出来ています。また、「クラウン」、「GRカローラ」はロングセラーのブランド力を活かし、時代のニーズにあわせたラインアップを構築しています。
当連結会計年度における日本、海外を合わせた自動車の連結販売台数は、882万2千台と、前連結会計年度に比べて59万1千台(7.2%)の増加となりました。日本での販売台数については、206万9千台と、前連結会計年度に比べて14万5千台(7.5%)増加しました。海外においても、675万3千台と、前連結会計年度に比べて44万6千台(7.1%)の増加となりました。
当連結会計年度の業績については、次のとおりです。
なお、営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。
事業別セグメントの業績は、次のとおりです。
営業収益は33兆8,200億円と、前連結会計年度に比べて5兆2,142億円(18.2%)の増収となりましたが、営業利益は2兆1,806億円と、前連結会計年度に比べて1,036億円(4.5%)の減益となりました。営業利益の減益は、資材高騰の影響などによるものです。
営業収益は2兆8,096億円と、前連結会計年度に比べて4,856億円(20.9%)の増収となりましたが、営業利益は4,375億円と、前連結会計年度に比べて2,194億円(33.4%)の減益となりました。営業利益の減益は、米国の販売金融子会社において、金利スワップ取引などの時価評価による評価損が計上されたことなどによるものです。
営業収益は1兆2,249億円と、前連結会計年度に比べて950億円(8.4%)の増収となり、営業利益は1,034億円と、前連結会計年度に比べて611億円(144.6%)の増益となりました。
所在地別の業績は、次のとおりです。
営業収益は17兆5,831億円と、前連結会計年度に比べて1兆5,917億円(10.0%)の増収となり、営業利益は1兆9,014億円と、前連結会計年度に比べて4,780億円(33.6%)の増益となりました。営業利益の増益は、為替変動の影響などによるものです。
営業収益は13兆8,439億円と、前連結会計年度に比べて2兆6,774億円(24.0%)の増収となりましたが、営業利益は前連結会計年度に比べて6,405億円減少し、747億円の損失となりました。営業利益の減少は、資材高騰の影響および米国の販売金融子会社において、金利スワップ取引などの時価評価による評価損が計上されたことなどによるものです。
営業収益は4兆2,737億円と、前連結会計年度に比べて4,058億円(10.5%)の増収となりましたが、営業利益は574億円と、前連結会計年度に比べて1,055億円(64.7%)の減益となりました。営業利益の減益は、ロシアでの生産事業終了による損失計上の影響などによるものです。なお、当連結会計年度におけるロシアでの生産事業終了による影響額は995億円となり、欧州における影響額は898億円です。
営業収益は8兆449億円と、前連結会計年度に比べて1兆5,143億円(23.2%)の増収となり、営業利益は7,144億円と、前連結会計年度に比べて421億円(6.3%)の増益となりました。営業利益の増益は、為替変動の影響ならびに生産および販売台数の増加などによるものです。
営業収益は3兆4,721億円と、前連結会計年度に比べて5,440億円(18.6%)の増収となりましたが、営業利益は2,313億円と、前連結会計年度に比べて68億円(2.9%)の減益となりました。営業利益の減益は、資材高騰の影響などによるものです。
当連結会計年度末における財政状態については、次のとおりです。
資産合計は74兆3,031億円と、前連結会計年度末に比べて6兆6,144億円 (9.8%)の増加となりました。負債合計は45兆389億円と、前連結会計年度末に比べて4兆5,050億円 (11.1%)の増加となりました。資本合計は29兆2,642億円と、前連結会計年度末に比べて2兆1,093億円 (7.8%)の増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7兆5,169億円と、前連結会計年度末に比べて1兆4,033億円(23.0%)の増加となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前連結会計年度に対するキャッシュ・フローの増減は、次のとおりです。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、2兆9,550億円の資金の増加となり、前連結会計年度が3兆7,226億円の増加であったことに比べて、7,675億円の減少となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、1兆5,988億円の資金の減少となり、前連結会計年度が5,774億円の減少であったことに比べて、1兆213億円の減少となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、561億円の資金の減少となり、前連結会計年度が2兆4,665億円の減少であったことに比べて、2兆4,103億円の減少幅の縮小となりました。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
当社および連結製造子会社は、国内販売店、海外販売店等からの受注状況、最近の販売実績および販売見込等の情報を基礎として、見込生産を行っています。
当連結会計年度における販売実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
前述の当連結会計年度における「自動車事業」の販売数量を、仕向先別に示すと、次のとおりです。
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2023年6月30日)現在において判断したものです。
トヨタの事業セグメントは、自動車事業、金融事業およびその他の事業で構成されています。自動車事業は最も重要な事業セグメントで、当連結会計年度においてトヨタの営業収益合計(セグメント間の営業収益控除前)の89%を占めています。当連結会計年度における車両販売台数ベースによるトヨタの主要な市場は、日本(23.5%)、北米(27.3%)、欧州(11.7%)およびアジア(19.8%)となっています。
世界の自動車市場は、非常に競争が激しく、また予測が困難な状況にあります。さらに、自動車業界の需要は、社会、政治および経済の状況、新車および新技術の導入ならびにお客様が自動車を購入または利用される際に負担いただく費用といった様々な要素の影響を受けます。これらの要素により、各市場および各タイプの自動車に対するお客様の需要は、大きく変化します。
当連結会計年度は、地政学的な緊張を背景としてエネルギー価格などが高騰し、先進国および新興国ともに消費者物価の上昇が加速しました。8月以降は、各国中央銀行による金融引き締めペースの加速に伴う世界経済の減速懸念により、需要減少の動きが見られました。
次の表は、過去2連結会計年度における各仕向地域別の連結販売台数を示しています。
(注)「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中東ほかからなります。
トヨタの日本における当連結会計年度の連結販売台数は、市場が前連結会計年度を上回る状況のもと、増加しました。トヨタの海外における連結販売台数は、堅調な需要により、アジア、その他の地域を中心に販売台数が大きく増加しました。
各市場における全車両販売台数に占めるトヨタのシェアは、製品の品質、安全性、信頼性、価格、デザイン、性能、経済性および実用性についての他社との比較により左右されます。また、時機を得た新車の導入やモデルチェンジの実施も、お客様のニーズを満たす重要な要因です。変化し続けるお客様の嗜好を満たす能力も、売上および利益に大きな影響をもたらします。
自動車事業の収益性は様々な要因により左右されます。これらには次のような要因が含まれます。
車両販売台数
販売された車両モデルとオプションの組み合わせ
部品・サービス売上
価格割引およびその他のインセンティブのレベルならびにマーケティング費用
顧客からの製品保証に関する請求およびその他の顧客満足のための修理等にかかる費用
研究開発費等の固定費
原材料価格
コストの管理能力
生産資源の効率的な利用
特定の仕入先への部品供給の依存による生産への影響
気候変動による物理的リスクや低炭素経済への移行リスクを含む、気候変動リスク
自然災害および感染症の発生・蔓延や社会インフラの障害による市場・販売・生産への影響
日本円およびトヨタが事業を行っている地域におけるその他通貨の為替相場の変動
法律、規制、政策の変更およびその他の政府による措置も自動車事業の収益性に著しい影響を及ぼすことがあります。これらの法律、規制および政策には、車両の製造コストを大幅に増加させる環境問題、車両の安全性、燃費および排ガスに影響を及ぼすものが含まれます。
多くの国の政府が、現地調達率を規定し、関税およびその他の貿易障壁を課し、あるいは自動車メーカーの事業を制限したり本国への利益の移転を困難にするような価格管理あるいは為替管理を行っています。このような法律、規制、政策その他の行政措置における変更は、製品の生産、ライセンス、流通もしくは販売、原価、あるいは適用される税率に影響を及ぼすことがあります。トヨタは、トヨタ車の安全性について潜在的問題がある場合に適宜リコール等の市場処置(セーフティ・キャンペーンを含む)を発表しています。前述のリコール等の市場処置をめぐり、トヨタに対する申し立ておよび訴訟が提起されています。これらの申し立ておよび訴訟に関しては、連結財務諸表注記24ならびに30を参照ください。
世界の自動車産業は、グローバルな競争の時期にあり、この傾向は予見可能な将来まで続く可能性があります。また、トヨタが事業を展開する競争的な環境は、さらに激化する様相を呈しています。トヨタは一独立企業として自動車産業で効率的に競争するための資源、戦略および技術を予見可能な将来において有していると考えています。
自動車金融の市場は、大変競争が激しくなっています。自動車金融の競争激化は、利益率の減少を引き起こす可能性があり、また、顧客がトヨタ車を購入する際にトヨタ以外の金融サービスを利用するようになる場合、マーケット・シェアが低下することも考えられます。
トヨタの金融サービス事業は、主として、顧客および販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムの提供を行っています。トヨタは、顧客に対して資金を提供する能力は、顧客に対しての重要な付加価値サービスであると考え、金融子会社のネットワークを各国へ展開しています。
小売融資およびリースにおけるトヨタの主な競争相手には、商業銀行、消費者信用組合、その他のファイナンス会社が含まれます。一方、卸売融資における主な競争相手には、商業銀行および自動車メーカー系のファイナンス会社が含まれます。
トヨタの金融事業に係る債権は、主に小売債権などの増加により、当連結会計年度において増加しました。また、賃貸用車両及び器具は、主に北米の金融子会社でのオペレーティング・リース件数の減少により、当連結会計年度において減少しました。
金融事業に係る債権および賃貸用車両及び器具の詳細については、連結財務諸表注記8および12を参照ください。
トヨタの金融債権は、回収可能性リスクを負っています。これは顧客もしくは販売店の支払不能や、担保価値(売却費用控除後)が債権の帳簿価額を下回った場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記4および19を参照ください。
トヨタは、車両リースを継続的に提供してきました。当該リース事業によりトヨタは残存価額のリスクを負っています。これは車両リース契約の借手が、リース終了時に車両を購入するオプションを行使しない場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記3(8)を参照ください。
トヨタは、主に固定金利借入債務を機能通貨建ての変動金利借入債務へ転換するために、金利スワップおよび金利通貨スワップ契約を結んでいます。特定のデリバティブ金融商品は、経済的企業行動の見地からは金利リスクをヘッジするために契約されていますが、トヨタの連結財政状態計算書における特定の資産および負債をヘッジするものとしては指定されていないため、それらの指定されなかったデリバティブから生じる未実現評価損益は、その期間の損益として計上されます。詳細については、連結財務諸表注記20および21を参照ください。
資金調達コストの変動は、金融事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。資金調達コストは、数多くの要因の影響を受けますが、その中にはトヨタがコントロールできないものもあります。これには、全般的な景気、金利およびトヨタの財務力などが含まれます。当連結会計年度の資金調達コストは主に市場金利の上昇により増加しました。
トヨタは、2001年4月に日本でクレジットカード事業を立上げました。カード会員数は、2023年3月31日現在16.1百万人と、2022年3月31日から0.4百万人の増加となりました。カード債権は、2023年3月31日現在5,548億円と、2022年3月31日から534億円の増加となりました。
トヨタのその他の事業には、情報通信事業等が含まれます。
トヨタは、その他の事業は連結業績に大きな影響を及ぼすものではないと考えています。
トヨタは、為替変動による影響を受けやすいといえます。トヨタは日本円の他に主に米ドルおよびユーロの価格変動の影響を受けており、また、米ドルやユーロに加え、豪ドル、加ドルおよび英国ポンドなどについても影響を受けることがあります。日本円で表示されたトヨタの連結財務諸表は、換算リスクおよび取引リスクによる為替変動の影響を受けています。
換算リスクとは、特定期間もしくは特定日の財務諸表が、事業を展開する国々の通貨の日本円に対する為替の変動による影響を受けるリスクです。たとえ日本円に対する通貨の変動が大きく、前連結会計年度との比較において、また地域ごとの比較においてかなりの影響を及ぼすとしても、換算リスクは報告上の考慮事項に過ぎず、その基礎となる業績を左右するものではありません。トヨタは換算リスクに対してヘッジを行っていません。
取引リスクとは、収益と費用および資産と負債の通貨が異なることによるリスクです。取引リスクは主にトヨタの日本製車両の海外売上に関係しています。
トヨタは、生産施設が世界中に所在しているため、取引リスクは大幅に軽減されていると考えています。グローバル化戦略の一環として、車両販売を行う主要市場において生産施設を建設することにより、生産を現地化してきました。前連結会計年度および当連結会計年度において、トヨタの海外における車両販売台数のそれぞれ71.6%および77.3%が海外で生産されています。北米では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ68.5%および76.8%が現地で生産されています。欧州では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ69.1%および73.9%が現地で生産されています。アジアでは前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ90.6%および98.3%が現地で生産されています。生産の現地化により、トヨタは生産過程に使用される供給品および原材料の多くを現地調達することができ、現地での収益と費用の通貨のマッチングをはかることが可能です。
トヨタは、取引リスクの一部に対処するために為替の取引およびヘッジを行っています。これにより為替変動による影響は軽減されますが、すべて排除されるまでには至っておらず、年によってその影響が大きい場合もあり得ます。為替変動リスクをヘッジするためにトヨタで利用されるデリバティブ金融商品に関する追加的な情報については、連結財務諸表注記20および21を参照ください。
一般的に、円安は営業収益、営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼします。日本円の米ドルに対する期中平均および決算日の為替相場は、前連結会計年度に比べて円安に推移しました。また、日本円のユーロに対する期中平均および決算日の為替相場は、前連結会計年度に比べて円安に推移しました。詳細については、連結財務諸表注記19を参照ください。
トヨタの最も重要な事業セグメントは、自動車事業セグメントです。トヨタは、世界の自動車市場においてグローバル・コンペティターとして自動車事業を展開しています。マネジメントは世界全体の自動車事業を一つの事業セグメントとして資源の配分やその実績の評価を行っており、自動車事業セグメント内で資源を配分するために、販売台数、生産台数、マーケット・シェア、車両モデルの計画および工場のコストといった財務およびそれ以外に関するデータの評価を行っています。トヨタは国内・海外または部品等のような自動車事業の一分野を個別のセグメントとして管理していません。
次の表は、過去2連結会計年度のトヨタの地域別外部顧客向け営業収益を示しており、当社または連結子会社の所在国の位置を基礎として集計しています。
(注)「その他」 は、中南米、オセアニア、アフリカ、中東からなります。
(注)「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中東からなります。
当連結会計年度の営業収益は37兆1,542億円と、前連結会計年度に比べて5兆7,747億円(18.4%)の増収となりました。この増収は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響1兆1,500億円や、為替変動の影響3兆5,800億円によるものです。
トヨタの事業別外部顧客向け営業収益の商品別内訳は次のとおりです。
営業収益は自動車事業およびその他の事業の合計である商品・製品売上収益ならびに金融事業に係る金融収益で構成されており、当連結会計年度の商品・製品売上収益は34兆3,676億円と、前連結会計年度に比べて18.2%の増収となり、金融事業に係る金融収益は2兆7,866億円と、前連結会計年度に比べて20.8%の増収となりました。商品・製品売上収益の増収は、主にトヨタの販売台数が591千台増加したことや、為替変動の影響によるものです。前連結会計年度末および当連結会計年度末の各地域における融資件数(残高)の状況は次のとおりです。
・金融事業における融資件数残高
(注)「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカからなります。
当連結会計年度の営業収益(セグメント間の営業収益控除前)は前連結会計年度に比べて、日本では10.0%、北米では24.0%、欧州では10.5%、アジアでは23.2%、その他の地域では18.6%の増収となりました。為替変動の影響3兆5,800億円を除いた場合、当連結会計年度の営業収益は前連結会計年度に比べて、日本では10.0%、北米では3.2%、欧州では2.8%、アジアでは7.9%、その他の地域では12.7%の増収であったと考えられます。
各地域における営業収益(セグメント間の営業収益控除前)の状況は次のとおりです。
・日本
日本においては、主に輸出台数を含むトヨタの販売台数が前連結会計年度に比べて62千台増加したことや、輸出取引に係る為替変動の影響などにより、増収となりました。前連結会計年度および当連結会計年度における輸出台数はそれぞれ1,716千台および1,634千台となりました。
・北米
北米においては、主にトヨタの販売台数が前連結会計年度に比べて13千台増加したことや、為替変動の影響により、増収となりました。
・欧州
欧州においては、主にトヨタの販売台数が前連結会計年度に比べて13千台増加したことや、為替変動の影響により、増収となりました。
・アジア
アジアにおいては、主にトヨタの販売台数が前連結会計年度に比べて208千台増加したことや、為替変動の影響により、増収となりました。
・その他の地域
その他の地域においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて213千台増加し、増収となりました。
当連結会計年度における営業費用は34兆4,292億円と、前連結会計年度に比べて6兆454億円(21.3%)の増加となりました。
・原価改善の努力
当連結会計年度は、1兆2,900億円の営業費用の増加となりました。この増加は、資材高騰の影響1兆5,450億円によるものですが、仕入先と一体となった原価改善活動に引き続き精力的に取り組んだ結果、VE(Value Engineering)活動を中心とした設計面での原価改善など2,050億円および工場・物流部門などにおける原価改善500億円により一部相殺されています。
原価改善の努力は、継続的に実施されているVE・VA(Value Analysis)活動、部品の種類の絞込みにつながる部品共通化、ならびに車両生産コストの低減を目的としたその他の製造活動に関連しています。なお、資材高騰の影響には、鉄鋼、貴金属、非鉄金属(アルミ等)、樹脂関連部品などの資材・部品価格の変動による影響が含まれています。
・売上原価
当連結会計年度における売上原価は29兆1,285億円と、前連結会計年度に比べて4兆8,777億円(20.1%)の増加となりました。この増加は、主に為替換算レート変動の影響、資材高騰の影響ならびに車両販売台数および販売構成の変化による影響によるものです。
・金融事業に係る金融費用
当連結会計年度における金融事業に係る金融費用は1兆7,127億円と、前連結会計年度に比べて5,556億円(48.0%)の増加となりました。この増加は、主に金利スワップおよび金利通貨スワップの評価損益ならびに市場金利の上昇等により資金調達コストが増加したことによるものです。
・販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は3兆5,879億円と、前連結会計年度に比べて6,120億円(20.6%)の増加となりました。この増加は、主に為替換算レート変動の影響、労務費の増加ならびに研究開発費の増加によるものです。
当連結会計年度における営業利益は2兆7,250億円と、前連結会計年度に比べて2,706億円(9.0%)の減益となりました。この減益は、原価改善の努力1兆2,900億円および諸経費の増減・低減努力5,250億円などによるものですが、為替変動の影響1兆2,800億円および営業面の努力6,800億円により一部相殺されています。
上記の営業面の努力は、車両販売台数および販売構成の変化ならびに販売諸費用などを含んでいます。その他は、金利スワップおよび金利通貨スワップの評価損益などを含んでいます。
また、為替変動の影響の増益要因は、主に輸出入等の外貨取引による影響1兆2,000億円によるものです。
当連結会計年度における営業利益(セグメント間の利益控除前)は前連結会計年度に比べて、北米では6,405億円、欧州では1,055億円(64.7%)、その他の地域では68億円(2.9%)の減益、日本では4,780億円(33.6%)、アジアでは421億円(6.3%)の増益となりました。
各地域における営業利益の状況は次のとおりです。
・日本
・北米
・欧州
・アジア
当連結会計年度における持分法による投資損益は6,430億円と、前連結会計年度に比べて827億円(14.8%)の増益となりました。この増益は、主に持分法適用会社の親会社の所有者に帰属する当期利益の増益によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融収益は3,793億円と、前連結会計年度に比べて445億円(13.3%)の増益となりました。この増益は、主に受取利息の増加によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融費用は1,251億円と、前連結会計年度に比べて811億円(184.4%)の減益となりました。この減益は、主に有価証券評価損の増加によるものです。
当連結会計年度における為替差損益<純額>は1,245億円と、前連結会計年度に比べて916億円の減益となりました。為替差損益は、外国通貨建て取引によって生じた外貨建ての資産および負債を、取引時の為替相場で換算した価額と、先物為替契約を利用して行う決済を含め、同会計年度における決済金額または決算時の為替相場で換算した価額との差額を示すものです。為替差損益<純額>の減益916億円は、主に当連結会計年度の海外子会社における外貨建て買掛債務において取引時の為替相場に比べて決済時の為替相場が現地通貨安に推移したことにより、為替差損を計上したことによるものです。
当連結会計年度におけるその他<純額>は781億円の損失と、前連結会計年度に比べて56億円の減益となりました。
当連結会計年度における法人所得税費用は1兆1,757億円と、前連結会計年度に比べて598億円(5.4%)の増加となりました。これは、主に繰延税金資産の回収可能性の見直しによる取崩しなどの影響によるもので、当連結会計年度における平均実際負担税率は32.0%となりました。
当連結会計年度における非支配持分に帰属する当期利益は416億円と、前連結会計年度に比べて171億円(70.0%)の増益となりました。この増益は、主に連結子会社の当期利益の増益によるものです。
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は2兆4,513億円と、前連結会計年度に比べて3,987億円(14.0%)の減益となりました。
当連結会計年度におけるその他の包括利益(税効果考慮後)は8,277億円と、前連結会計年度に比べて3,154億円利益が減少しました。これは、主に米ドルやユーロに対する為替レートが円安に進んだことにより、在外営業活動体の為替換算差額が前連結会計年度の9,028億円の利益に対し、当連結会計年度は6,760億円の利益となったことや、持分法で会計処理されている投資のその他の包括利益に対する持分相当額が前連結会計年度の3,074億円の利益に対し、当連結会計年度は1,030億円の利益となったこと、および主に公社債の価格が変動したことにより、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値変動が前連結会計年度の2,034億円の損失に対し、当連結会計年度は165億円の損失となったこと、ならびに主に制度資産の公正価値が変動したことにより、確定給付制度の再測定が前連結会計年度の1,362億円の利益から当連結会計年度は651億円の利益となったことによるものです。
以下は、トヨタの事業別セグメントの状況に関する説明です。記載された数値は、セグメント間の営業収益控除前です。
・自動車事業セグメント
自動車事業の営業収益は、トヨタの営業収益のうち最も高い割合を占めます。当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業収益は33兆8,200億円と、前連結会計年度に比べて5兆2,142億円(18.2%)の増収となりました。この増収は、主に為替変動の影響3兆1,700億円や、車両販売台数および販売構成の変化による影響1兆1,500億円によるものです。
当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業利益は2兆1,806億円と、前連結会計年度に比べて1,036億円(4.5%)の減益となりました。この営業利益の減益は、主に原価改善の努力1兆2,900億円および諸経費の増減・低減努力5,250億円によるものですが、為替変動の影響1兆2,200億円および営業面の努力7,550億円などにより一部相殺されています。
・金融事業セグメント
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業収益は2兆8,096億円と、前連結会計年度に比べて4,856億円(20.9%)の増収となりました。この増収は、主に為替変動の影響によるものです。
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業利益は4,375億円と、前連結会計年度に比べて2,194億円(33.4%)の減益となりました。この営業利益の減益は、主に金利スワップおよび金利通貨スワップの評価損益などによるものです。
・その他の事業セグメント
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業収益は1兆2,249億円と、前連結会計年度に比べて950億円(8.4%)の増収となりました。
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業利益は1,034億円と、前連結会計年度に比べて611億円(144.6%)の増益となりました。
トヨタは従来、設備投資および研究開発活動のための資金を、主に営業活動から得た現金により調達してきました。
2024年3月31日に終了する連結会計年度については、トヨタは設備投資および研究開発活動のための十分な資金を、主に手元の現金及び現金同等物、営業活動から得た現金、および社債・借入金等の資金調達で充当する予定です。トヨタはこれらの資金を、従来の設備の維持更新・新製品導入へ効率的に投資しつつ、モビリティ・カンパニーへの変革に向け、競争力強化・将来の成長に資する分野に重点を置いて投資する予定です。2022年4月1日から2023年3月31日までに行われた重要な設備投資および処分に関する情報ならびに現在進行中の重要な設備投資および処分に関する情報は、「第3 設備の状況」を参照ください。
顧客や販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムで必要となる資金について、トヨタは営業活動から得た現金と販売金融子会社の社債・借入金等の資金調達によりまかなっています。トヨタは、金融子会社のネットワークを拡大することにより、世界中の現地市場で資金を調達する能力を向上させるよう努めています。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の3兆7,226億円の資金の増加に対し、2兆9,550億円の資金の増加となり、7,675億円減少しました。この減少は、当連結会計年度(2023年3月31日に終了した12ヶ月間)における当期利益が減少した結果、資金が3,816億円減少したことなどによるものです。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の5,774億円の資金の減少に対し、1兆5,988億円の資金の減少となり、1兆213億円減少しました。この減少は、主に定期預金の解約の金額が前連結会計年度と比較して、1兆7,627億円減少したことによる影響です。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2兆4,665億円の資金の減少に対し、561億円の資金の減少となり、2兆4,103億円減少幅が縮小しました。この減少幅の縮小は、主に長期有利子負債による資金調達が1兆1,542億円増加したことおよび短期有利子負債による資金調達が8,189億円増加したことによるものです。
当連結会計年度における資本的支出(賃貸資産を含む)は、前連結会計年度の3兆6,115億円から3兆4,962億円と前年度並みになりました。
2024年3月31日に終了する連結会計年度において、賃貸および賃借資産を除く設備投資額は約1兆8,600億円となる予定です。
現金及び現金同等物は、2023年3月31日現在で7兆5,169億円でした。現金及び現金同等物の大部分は円建てまたは米ドル建てです。
トヨタは、現金及び現金同等物、定期預金、公社債および信託ファンドへの投資を総資金量と定義しており、当連結会計年度において総資金量は、1兆2,639億円(9.4%)増加し、14兆7,150億円となりました。
当連結会計年度における営業債権及びその他の債権は、4,432億円(14.1%)増加し、3兆5,861億円となりました。これは主に、当第4四半期連結会計期間(2023年3月31日に終了した3ヶ月間)における売上増加の影響によるものです。
当連結会計年度における棚卸資産は、4,342億円(11.4%)増加し、4兆2,556億円となりました。これは主に、貴金属の調達数量の上昇によるものです。
当連結会計年度における金融事業に係る債権合計は、3兆63億円(13.8%)増加し、24兆7,708億円となりました。これは主に、為替変動の影響によるものです。2023年3月31日現在における金融債権の地域別内訳は、北米56.9%、アジア12.0%、欧州14.0%、日本6.3%、その他の地域10.8%でした。
当連結会計年度におけるその他の金融資産合計は、2,475億円(2.1%)増加しました。
当連結会計年度における有形固定資産は、3,073億円(2.5%)増加しました。これは主に、設備投資によるものです。
当連結会計年度における営業債務及びその他の債務は、6,942億円(16.2%)増加しました。これは主に、部品調達に伴う買掛金の増加によるものです。
当連結会計年度における未払法人所得税は、4,222億円(51.1%)減少しました。これは主に、法人所得税の中間納付の増加などによるものです。
当連結会計年度における有利子負債合計は、2兆8,839億円(10.9%)増加しました。トヨタの短期借入債務は、加重平均利率2.02%の借入金と、加重平均利率3.81%のコマーシャル・ペーパーにより構成されています。当連結会計年度における短期借入債務は、前連結会計年度に比べて4,853億円(11.8%)増加し、4兆5,901億円となりました。トヨタの長期借入債務は、加重平均利率が1.29%から6.53%、返済期限が2023年から2048年の無担保の借入金、担保付きの借入金、ミディアム・ターム・ノート、無担保普通社債、担保付普通社債などにより構成されています。当連結会計年度の1年以内に返済予定の長期借入債務は6,217億円(8.8%)増加し、7兆6,485億円となり、返済期限が1年超の長期借入債務は1兆7,416億円(11.7%)増加し、16兆6,853億円となりました。借入債務合計の増加は、主に金融子会社における融資残高の伸びに伴う資金需要の高まりによるものです。2023年3月31日現在で、長期借入債務の約53%は米ドル建て、約11%は円建て、約13%はユーロ建て、約6%は豪ドル建て、約3%は加ドル建て、約14%はその他の通貨によるものです。トヨタは、金利スワップを利用することにより固定金利のエクスポージャーをヘッジしています。トヨタの借入必要額に重要な季節的変動はありません。
2022年3月31日現在におけるトヨタの親会社の所有者に帰属する持分合計に対する有利子負債比率は、101.0%でしたが、2023年3月31日現在では103.7%となりました。
トヨタの短期および長期借入債務は、2023年5月31日現在、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ(Moody's)および格付投資情報センター(R&I)により、次のとおり格付けされています。なお、信用格付けは株式の購入、売却もしくは保有を推奨するものではなく、何時においても撤回もしくは修正され得ます。各格付けはその他の格付けとは個別に評価されるべきです。
当連結会計年度における確定給付負債(資産)の純額は、国内および海外で、それぞれ1,240億円および3,138億円と、前連結会計年度に比べて、国内は1,082億円(46.6%)減少し、海外は508億円(19.3%)の増加となりました。確定給付負債(資産)の純額は、トヨタによる将来の現金拠出または対象従業員に対するそれぞれの退職日における支払いにより解消されます。国内においては、主に割引率の上昇に伴う確定給付制度債務の減少により、確定給付負債(資産)の純額は減少しました。詳細については、連結財務諸表注記23を参照ください。
トヨタの財務方針は、すべてのエクスポージャーの管理体制を維持し、相手先に対する厳格な信用基準を厳守し、市場のエクスポージャーを積極的にモニターすることです。トヨタは、トヨタファイナンシャルサービス㈱に金融ビジネスを集中させ、同社を通じて金融ビジネスのグローバルな効率化を目指しています。
財務戦略の主要な要素は、短期的な収益の変動に左右されず効率的に研究開発活動、設備投資および金融事業に投資できるような、安定した財務基盤を維持することです。トヨタは、現在必要とされる資金水準を十分満たす流動性を保持していると考えており、また、高い信用格付けを維持することにより、引き続き多額の資金を比較的安いコストで外部から調達することができると考えています。高い格付けを維持する能力は、数多くの要因に左右され、その中にはトヨタがコントロールできないものも含まれています。これらの要因には、日本およびトヨタが事業を行うその他の主要な市場の全体的な景気ならびにトヨタの事業戦略を成功させることができるかなどが含まれています。
トヨタは金融事業のための資金調達の一つの方法として特別目的事業体を通じた証券化プログラムを利用しています。これらの証券化取引は、トヨタが第一受益者であるものとして連結しており、当連結会計年度におけるオフバランス化される取引に重要なものはありません。
トヨタの非デリバティブ金融負債およびデリバティブ金融負債の残存契約満期期間ごとの金額に関しては、連結財務諸表注記19を参照ください。また、トヨタはその通常業務の一環として、一定の原材料、部品およびサービスの購入に関して、仕入先と長期契約を結ぶ場合があります。これらの契約は、一定数量または最低数量の購入を規定している場合があります。トヨタはかかる原材料またはサービスの安定供給を確保するためにこれらの契約を締結しています。
次の表は、2023年3月31日現在のトヨタの契約上の債務および商業上の契約債務を要約したものです。
* 長期借入債務の金額は、将来の支払元本を表しています。
また、トヨタは2024年3月31日に終了する連結会計年度において、退職後給付制度に対し、国内および海外で、それぞれ38,309百万円および16,423百万円を拠出する予定です。
トヨタは金融事業の一環としてクレジットカードを発行しています。トヨタは、クレジットカード事業の慣習に従い、カード会員に対する貸付の制度を有しています。貸出はお客様ごとに信用状態の調査を実施した結果設定した限度額の範囲内で、お客様の要求により実行されます。カード会員に対する貸付金には保証は付されませんが、貸倒損失の発生を最小にするため、また適切な貸出限度額を設定するために、トヨタは、提携関係にある金融機関からの財務情報の分析を含むリスク管理方針により与信管理を実施するとともに、定期的に貸出限度額の見直しを行っています。2023年3月31日現在のカード会員に対する貸出未実行残高は1,714億円です。
トヨタは金融事業の一環として販売店に対する融資の制度を有しています。貸付は買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保のために行われます。これらの貸付金については、通常担保権が設定されており、販売店の不動産、車両在庫、その他販売店の資産等、場合に応じて適切と考えられる物件に対して設定しています。さらに慎重な対応が必要な場合には販売店が指名した個人による保証または販売店グループが指名した法人による保証を付しています。貸付金は通常担保または保証が付されていますが、担保または保証の価値がトヨタのエクスポージャーを十分に補うことができていない可能性があります。トヨタは融資制度契約を締結することによって生じるリスクに従って融資制度を評価しています。トヨタの金融事業は、販売店グループと呼ばれる複数のフランチャイズ系列に対しても融資を行っており、しばしば貸出組合に参加することでも融資を行っています。こうした融資は、融資先の卸売車両の購入、買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保等を目的とするものです。2023年3月31日現在の販売店に対する貸出未実行残高は3兆8,209億円です。
詳細については、連結財務諸表注記30を参照ください。
詳細については、連結財務諸表注記32を参照ください。
⑧会計基準の選択に関する基本的な考え方
当社は、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上等を目的として、2021年3月期第1四半期よりIFRSを任意適用しています。
IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債およびトヨタの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の見積りおよび仮定に関する情報は、次のとおりです。
・品質保証に係る負債
・金融事業に係る金融損失引当金
・非金融資産の減損
・退職給付に係る負債
・公正価値測定
・繰延税金資産の回収可能性
詳細については、連結財務諸表注記4を参照ください。
トヨタは、類似の事業を営む事業所が国内外で多数設立されているため、その設備の状況を事業別セグメントごとに示すとともに主たる設備の状況を開示する方法によっています。
当連結会計年度末(2023年3月31日現在)における状況は、次のとおりです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
2023年3月31日現在
2023年3月31日現在
