日本紙パルプ商事株式会社
当社は、弘化2年(1845年)京都において和紙商、越三商店として創業し、日本で洋紙の生産が開始されると同時に洋紙の取扱いを始めました。1876年中井商店と改称、1902年には合名会社中井商店に改組すると同時に本店を東京へ移し、1916年に株式会社に改組いたしました。株式会社設立後の主な変遷は次のとおりであります。
当社グループは、当社、子会社105社及び関連会社21社の計127社で構成されており、紙パルプ等の卸売を主な事業とし、これに関連する製造、加工等の事業並びに再資源化等の事業及び不動産賃貸事業に取り組んでおります。
当社グループのセグメントごとの事業は、次のとおりであります。なお、関係会社のセグメントとの関連は、事業系統図、及び「4 関係会社の状況」に記載しております。
事業の系統図は次のとおりであります。

(1)連結子会社
(2)持分法適用関連会社
2023年3月31日現在
2023年3月31日現在
① 提出会社
② 連結子会社
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針について
紙流通のリーディングカンパニーとして、社会・産業・文化の発展を支え、人々の営みにおいて欠くことの出来ない紙・板紙の安定供給を果たすとともに、社会の要請に応じた新たな事業を展開していくことを基本方針としております。
また、社会と地球環境のより良い未来を拓くことをグループ全体の使命として、グループ役職員は積極的に自らを変革し、領域を超えた挑戦を続け、新たな価値を創造することにより、全てのステークホルダーの皆様から信頼される企業を目指してまいります。
なお、当社グループが目指すグループ企業理念等につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ①コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方」に記載しております。
(2) 当社を取り巻く経営環境と事業環境
当期における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、社会経済活動の正常化に向け、緩やかに持ち直しの動きが続きました。また、欧米・アジア等各国においても同感染症による影響が緩和され、持ち直しの動きがみられましたが、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等の地政学的リスクの顕在化や原燃料価格の高騰など景気の先行きは不透明な状況が継続しております。
このような情勢のもと、当社グループは、「中期経営計画2023」の達成を目指し、原燃料価格の高騰に伴う価格修正を行うとともに、景気の持ち直しにあわせ回復傾向にある紙需要の増加に応えるべく、事業に取り組みました。
(3) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び事業上の対処すべき課題
当社グループは、長期ビジョン『OVOL長期ビジョン2030 “Paper, and beyond”』(以下、「長期ビジョン2030」)を策定し、2030年のあるべき姿を掲げ、その実現を目指しております。
(当社グループのあるべき姿)
「世界最強の紙流通企業グループ」
「持続可能な社会と地球環境に一層貢献する企業グループ」
「紙業界の枠を超えたエクセレントカンパニー」
また、長期ビジョン2030の実現に向け、2021年度を初年度とした3年間の中期経営計画『中期経営計画2023』を策定しております。
当中計期間におけるグループの基本方針として『New Normal、新たな価値観の中での付加価値の創造』、『紙業界の枠を超えたエクセレントカンパニーへの進化』を掲げ、中計最終年度(2023年度)グループ連結経常利益の目標を150億円とし、ネットD/Eレシオを1.4倍以下としつつ、ROA及びROICの向上とROE8%の達成を目指しております。
セグメント別には次の事業方針を掲げ、各事業のさらなる充実に向け挑戦を継続しております。
(セグメント別事業方針)
「国内卸売セグメント」
構造改革と合理化による収益回復
「海外卸売セグメント」
既存プラットフォームの強化と安定した収益体制の構築
「製紙加工セグメント」
製紙・加工事業におけるグループの総合力向上
「環境原材料セグメント」
安全操業のもとでの持続可能な社会と地球環境への貢献
「不動産賃貸セグメント」
保有不動産からの安定収益の継続と不動産ポートフォリオの最適化
(4) 財務上の対処すべき課題
当社グループの資本政策は、成長投資に必要な資金を確保し、安定的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めることを基本としております。経常利益率、資本効率を高め、キャッシュ・フローの拡大に努めることで、ROA、ROEの向上等、持続的な成長を目指してまいります。
当社の配当政策につきましては、安定的な株主還元を基本に連結業績の動向を勘案して決定しており、こうした方針のもと、当連結会計年度においては、中間配当を60円とし前期55円から5円増配といたしました。また、自己株式の取得については、資本効率の向上に資する株主還元策として機動的に実施を検討することとしております。
なお、配当金の支払いについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結株主資本等変動計算書関係) 3 配当に関する事項」に記載しております。
(5) セグメントごとの経営環境と対処すべき課題
① 国内卸売セグメント
紙の需要は国内における人口の減少や世界的なデジタル化など構造的要因を背景に縮小傾向が続いておりましたが、加えて新型コロナウイルス感染拡大の影響による社会経済活動の変化により大幅に縮減しました。今後については、社会経済活動の正常化に伴う紙の需要回復が期待されるものの、企業における販促費の抑制やコロナ禍で進んだ電子化の定着により、紙の需要にマイナスの影響が出る可能性もあります。
板紙は、通販関連や加工食品向けの需要が引き続き堅調に推移するとともに、インバウンド需要の回復による増加を見込んでおります。
当社グループは、販売規模の拡大以上に、適正な販売価格、利益、利益率の確保を重視し、更に業務効率や資本効率を高めることで収益の拡大を目指してまいります。
また、サステナブル素材である紙・板紙に対し、容器や包装資材としての注目が増している中、新たな需要への取り組みについても積極的に推進しております。
紙の専門商社である当社の機能と付加価値を提供し続け、市場での存在感を一層拡大させるとともに、紙・パルプ業界並びに広く社会に貢献してまいります。
② 海外卸売セグメント
当社グループは、世界最強の紙流通企業グループの実現に向けて、海外においてはグローカリゼーションとして、グローバルネットワークと地場に根差した流通体制の構築に取り組み、現在では、アメリカ、イギリス、オセアニア、インド、香港、シンガポール、マレーシアで自前の在庫・物流機能を有する各国屈指の紙商を経営し、世界最強の紙流通企業グループの実現に最低限必要なプラットフォームを構築しており、各拠点における補完的M&Aを実施することで、地理的プラットフォームを強化しております。
各市場における社会経済活動の正常化に伴う紙の需要回復に対して、製紙メーカーの生産体制再編等によるグラフィック用紙の供給能力の減少と海上輸送の混乱等が重なることで、需給がひっ迫する状況が継続しておりましたが、その状況は緩和され、欧米やオセアニアにおいて市況の低下や需要の減少が見込まれております。
当社グループは国内外製紙メーカーと連携し、グローバルなサプライチェーンを最大限に活用したリソース力により、取引先の需要を確実に取り込むとともに、サイン&ディスプレイ、パッケージ、フィルム、環境対応素材などの高付加価値品の取り扱いを拡大してまいります。そして、その効果的な拡大のために、補完的なM&Aも必要に応じて実施してまいります。
③ 製紙加工セグメント
当社グループは、古紙を主原料とした家庭紙、段ボール原紙、印刷用紙の製紙事業を展開し、再生原料である古紙の回収から製紙、加工、流通に至るまで、紙のサプライチェーンの川上から川下までをグループ内でカバーする事業体制を構築しております。この事業体制を活かして、安全操業と環境対応の管理を徹底しつつ、環境配慮型の商品を効率的に生産し、安定的にお客様へ供給する事業を展開しております。
再生家庭紙製造事業では、同分野のリーディングカンパニーであるコアレックスグループによる安定的な供給体制を構築しており、災害発生時のトイレットペーパーの供給支援や災害に備えた備蓄推進活動も行っております。再生家庭紙は、コロナ禍において減少していたオフィスや商業施設での業務用需要やインバウンド消費の回復を見込んでおります。
段ボール原紙製造事業では生産設備の更新投資や、多様なニーズに対応する段ボール加工体制の構築にも注力しており、2021年度にはインドネシアにおいて新工場が稼働、国内では段ボール製造会社2社を子会社化しております。段ボール原紙は、引き続き通販関連や加工食品向けを中心とした堅調な国内需要に加え、アジア諸国への輸出需要を見込んでおります。
再生家庭紙製造事業及び段ボール原紙製造事業においては、原燃料価格や副資材、物流費等のコストが上昇しているものの、製造工程の見直しや徹底したコスト削減を継続し、製品の安定供給と品質維持に取り組んでまいります。
④ 環境原材料セグメント
イ 古紙再資源化事業:
古紙の国内市況と需給状況は、中国の古紙輸入禁止に伴うアジア諸国における段ボール原紙及び古紙パルプ輸出を含めた需給の変動、米国や欧州の古紙の発生量及び海上輸送の状況、為替レートの水準等により左右されております。
国内において古紙の発生数量が減少する中、中国の段ボール製品需要やアジア諸国の古紙需要の急激な変動により、輸出価格は乱高下し、今後の国内市況と需給状況は引き続き不透明なものとなっております。
当社グループは、国内製紙メーカーへの原料古紙の安定供給を最優先し、国内の古紙リサイクルシステムの維持と古紙利用率の向上に貢献しつつ、採算とのバランスを勘案しながらアジア諸国への輸出も行ってまいります。
ロ 環境事業:
当社グループは、環境事業を重点事業分野として位置付け、プラスチックや木質系廃棄物の再資源化事業、再生可能エネルギーによる発電事業等への投資、参画を進めております。
現在、当社グループが参画している発電事業会社は岩手県、島根県での木質バイオマス発電事業会社2社、北海道、岩手県、宮城県での太陽光発電事業会社3社の計5社になっており、そこで発電したエネルギーはすべて再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を活用し社会に供給しております。
今後は同事業分野におけるノウハウをさらに蓄積し、安全かつ安定操業の徹底により、脱炭素化をはじめとした持続可能な社会と地球環境に貢献する事業活動のさらなる拡大に取り組んでまいります。
⑤ 不動産賃貸セグメント
当社が東京・大阪・京都等に所有する不動産は立地条件に恵まれており、オフィス・集合住宅等での活用及びホテル事業者への賃貸により得られる賃貸料収入は、当社グループ業績に対して継続して安定的に寄与するものと見込んでおります。
契約テナントのオフィス集約化や営業活動の変更により、2022年度には一時的に空室が発生したものの、新たなテナントが入居し、保有テナントビルは高稼働を維持しております。
今後も所有不動産の稼働率の維持向上を図るとともに、築年数が経過した不動産については再開発や売却を行い不動産ポートフォリオの最適化を推し進めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
リスク項目は、「特に重要なリスク」、「その他のリスク」に区分しております。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年3月31日)現在において当社グループが判断したものであり、現時点では予見できないまたは重要と見なされていないリスクや、国内外の経済情勢等により影響を受ける可能性があります。
(1)特に重要なリスク
①市況・市場リスク
②取引関係に係るリスク
③その他の重要なリスク
(2)その他のリスク
①経営環境に係るリスク
②金融市場に係るリスク
③気候変動・自然災害等に係るリスク
④その他のリスク
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なもの
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的な判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
① 貸倒引当金
債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率等により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を見積り計上しておりますが、将来において、取引先の財務状況等が悪化し、支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
経営者は、貸倒引当金は十分に計上され、債権が回収可能な額として計上されていると判断しております。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により債権の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループにおいて貸倒引当金を増額又は減額する可能性もあります。
② のれんの減損
当社グループにおけるのれんの残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
当社グループは、企業買収により取得した子会社の将来の超過収益力として連結貸借対照表にのれんを計上し、その効果の発現する期間(5~20年)を個別に見積り、当該期間にわたり均等償却を行っております。ただし、金額が僅少なものについては、発生年度に全額償却しております。
経営者は当連結会計年度末におけるのれんの資産性について、償却期間及び金額は適切であると判断しております。ただし、これらの前提条件には子会社の業績や事業計画等を基にした判断が含まれており、経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、将来において当初想定した子会社の収益力等が見込めなくなった場合にはのれんの減損損失が計上される可能性があります。
③ 投資有価証券の減損
当社グループは、仕入先企業、販売先企業、取引金融機関、関係会社等、業務上密接な関係にある企業の株式等を保有しており、これらの有価証券の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
なお、当該株式の減損にあたり市場価格又は合理的に算定された価額のある有価証券については、個々の銘柄の時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には、「著しく下落し、回復可能性がないもの」と判定し処理しております。個々の銘柄の時価が取得原価に比べ30%以上50%未満下落した場合も「著しく下落した」とする判定基準を設け、この場合の時価の回復可能性について過去の時価の推移に基づく一定の形式基準により判定し処理しております。また、市場価格のない株式については、個々の銘柄の1株当たり簿価純資産額が帳簿価額を50%以上下回っている場合及び保有資産に大幅な含み損がある可能性のある場合について、当該会社の資産の時価額を加味及び業績見通し等を勘案したうえで減損処理の要否を四半期ごとに判断し、決定しております。
将来において、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、さらなる評価損の計上が必要となる可能性があります。
経営者は、所有する有価証券の公正価値の評価は合理的であると判断しております。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により有価証券の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社グループにおける公正価値評価額が変動する可能性もあります。
④ 固定資産の減損
当社グループは、多くの有形固定資産及び無形固定資産を保有しており、これらの固定資産の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
当社グループは固定資産の減損会計を適用しており、減損会計では、資産のグルーピング、減損の兆候の識別、減損損失の認識、減損損失の測定の各過程で、将来キャッシュ・フロー等の見積りを要します。
経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断に関する評価は合理的であると判断しております。ただし、これらの見積りには経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により固定資産の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社グループが追加で減損損失を認識する可能性もあります。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
当社グループにおける繰延税金資産の残高は多額であるため、繰延税金資産の回収可能性に関する評価は会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積り、将来課税所得を減算できる可能性が高いものに限って繰延税金資産を認識しております。繰延税金資産の回収可能性は毎連結会計年度末日に見直し、課税所得の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
経営者は、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しております。ただし、これらの見積りによる繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存し、経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件や仮定の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
① 当期の財政状態の概況
イ 資産の部 (単位:百万円、%)
ロ 負債の部 (単位:百万円、%)
ハ 純資産の部 (単位:百万円、%)
ニ セグメントごとの資産の概況 (単位:百万円、%)
② 当期の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、当社が東京都中央区に所有する固定資産の一部譲渡等に伴い有形固定資産が減少したものの、当該譲渡の収入による預金の増加や、売上債権及び棚卸資産の増加、また、為替換算の影響による増加等により、前連結会計年度末に比べて46,190百万円増の385,129百万円となりました。
総負債は、未払法人税等の増加や仕入債務の増加、また、為替換算の影響による増加等により、前連結会計年度末に比べて18,211百万円増の256,834百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて27,978百万円増の128,295百万円となりました。
(3) 経営成績の状況
① 経営成績の状況の概要
イ 経営成績の状況の概要 (単位:百万円、%)
ロ 当期の経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの業績は、売上収益545,279百万円(前期比22.6%増)、営業利益20,264百万円(同44.1%増)、経常利益21,233百万円(同41.1%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、当社が東京都中央区に所有する固定資産の一部譲渡に伴う固定資産売却益を特別利益に計上したこと等により、前期比120.8%増の25,392百万円となりました。売上収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は共に過去最高となりました。
② セグメントごとの経営成績
イ 当期の経営成績のセグメント別の概況
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
外部売上収益 (単位:百万円、%)
(注) 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
セグメント利益(経常利益) (単位:百万円、%)
ロ 当期の経営成績のセグメント別の分析
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
「国内卸売」
紙は、新型コロナウイルス感染症対策の行動制限が緩和されたことによる社会経済活動の正常化に伴い、イベント向けのチラシやパンフレットなど一部需要回復の動きが見られたものの、定期雑誌の発行部数減少の影響やPPC用紙の販売数量減少等の影響が大きく、販売数量は前期に比べ減少しました。
板紙は、通販関連や加工食品向けの需要が堅調に推移し、また人流の回復に伴い土産や贈答品向けの需要の回復が見られたものの、自動車及び機械関連向けの需要が低調に推移したことから、販売数量は前期に比べ減少しました。
電子部品関連機能材については、中国におけるゼロコロナ政策や解除後の景気低迷等の影響で半導体をはじめとする電子部品向けの需要が減少し、販売数量は前期に比べ減少しました。
売上収益は、紙、板紙ともに価格修正により販売価格が上昇したことから、前期比5.5%増の183,516百万円となりました。
経常利益は、運賃や倉庫料等の販売直接費の増加があったものの、売上収益の増加や人件費等の減少により、前期比24.7%増の5,359百万円となりました。
「海外卸売」
主要拠点である米国、英国、豪州において、社会経済活動の正常化に伴う需要の回復に加え、原燃料価格の高騰に起因する複数回にわたる価格修正が需給ひっ迫の環境下で浸透し販売金額が増加しました。本邦からの輸出においては、第3四半期連結会計期間後半より中国や東南アジアにおける需要の減少が見られたものの、当期を通じて板紙の販売数量が増加したことに加えて、紙及び板紙の販売価格が上昇しました。以上の結果に加えて為替換算の影響もあり、売上収益は前期比39.4%増の281,858百万円となりました。
経常利益は、運賃や人件費、支払利息等の増加があったものの、売上収益の増加が上回り、特に米国、英国において大幅な増益となったことから、前期比121.5%増の12,579百万円となりました。
「製紙加工」
段ボール原紙製造事業において販売数量が減少したものの、インドネシアの段ボール事業及び国内再生家庭紙製造事業において販売数量が増加したことに加えて、段ボール原紙製造事業及び国内再生家庭紙製造事業において価格修正により販売価格が上昇したこと等により、売上収益は前期比17.8%増の48,945百万円となりました。
経常利益は、段ボール原紙製造事業及び再生家庭紙製造事業における原燃料価格及び電力価格の高騰による製造費用の増加により、前期比13.9%減の3,614百万円となりました。
「環境原材料」
国内古紙事業において、主に新聞古紙及び雑誌古紙の発生数量の減少に伴い販売数量が減少した一方で販売価格が上昇したことに加え、米国古紙事業における販売数量が増加したことにより、古紙事業全体の売上収益は増加しました。さらに、国内及び海外製紙メーカー向けのパルプ及び木質バイオマス発電所向けの燃料の販売数量が増加し、販売価格も上昇したことにより、売上収益は前期比22.7%増の26,776百万円となりました。
経常利益は、木質バイオマス発電事業において燃料価格の高騰など製造コストの増加により減益となったものの、米国古紙事業及び木質バイオマス発電所向け燃料販売事業の売上収益が増加したことにより、前期比9.3%増の1,906百万円となりました。
「不動産賃貸」
主要テナントビルにおける一部空室の発生及び当社が東京都中央区に所有する固定資産の一部譲渡により賃貸料収入が減少し、売上収益は前期比19.6%減の4,184百万円となりました。
経常利益は、固定資産の一部譲渡に伴い減価償却費及び不動産管理費等の減少があったものの、売上収益の減少が上回り、前期比8.0%減の1,406百万円となりました。
③ 地域別・製品別の売上収益
イ 地域別売上収益 (単位:百万円、%)
ロ 製品及びサービス別売上収益 (単位:百万円、%)
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは2021年度を初年度とした3年間の中期経営計画『中期経営計画2023』(以下、「中計2023」といいます。)を策定しております。中計2023最終年度である2023年度の目標としました連結財務指標目標及び進捗実績は以下のとおりです。
中計2023の2年目となる当期においては、経常利益をはじめ、ROA、ROE等すべての連結財務指標につき、最終年度目標を上回る結果となりました。引き続き、最終年度目標の着実な達成に向けて、中計2023の各方針に基づく施策に取り組んでまいります。
中計2023につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び事業上の対処すべき課題」、2024年3月期の連結業績予想につきましては、「(6) 今後の見通し」をご参照ください。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
イ 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
ロ 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
ハ 受注実績
当社グループは、主として需要等を勘案した見込生産を行っているため、記載を省略しております。
ニ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、「(3) 経営成績の状況 ② セグメントごとの経営成績 イ 当期の経営成績のセグメント別の概況」に記載しております。
① キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて17,819百万円増加し、30,550百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や仕入債務の増加等があったものの、売上債権及び棚卸資産の増加等により、304百万円の収入となりました(前期は14,007百万円の収入)。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却等により23,673百万円の収入となりました(前期は4,078百万円の支出)。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済や配当金の支払等により10,086百万円の支出となりました(前期は9,833百万円の支出)。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、中計2023において策定した連結財務指標目標に掲げましたように、各事業活動に必要とされる運転資金及び投融資資金の確保について、直接金融または間接金融における多様な手段の中から調達時点の市場環境等を考慮して資金調達を実施しております。また、当社グループのさらなる成長に必要な事業投資の継続と財務状況の健全性維持の両立を基本方針としております。
イ 資金調達手段
当社グループは、上記の資金調達の基本方針に則り、M&Aや設備投資資金ならびに運転資金といった資金使途を踏まえ、営業活動によって獲得されたキャッシュ・フローをベースに、直接金融市場においては社債及びコマーシャル・ペーパーを発行し、間接金融市場では銀行借入による長期借入金や短期借入金に加えて十分な当座貸越枠を確保しております。
また、資金調達手段の多様化を図ることで、資金使途及び調達環境の情勢に応じた有利な手段を選択し、機動的な資金調達を実施しております。
「フリー・キャッシュ・フロー」 (単位:百万円)
「有利子負債明細」 (単位:百万円)
(※1)一年内償還予定分の残高を含みます。
(※2)一年内返済予定分の残高を含みます。
ロ 資金の効率化
当社グループは、グループ内の資金効率向上を目的として、グループ各社における余剰資金の集中と配分を行うべく、グループファイナンス制度を国内及び海外の各地域にて導入しております。
ハ 財務指標目標
当社グループは、中計2023にて策定した財務指標目標に対して、基幹事業である紙・板紙の卸売事業で必要な運転資金の安定的な調達と、事業の多角化及びグループ経営の強化につなげる成長投資資金の調達余力を確保するため、営業活動の収益性向上、保有資産の効率的活用、ネットD/Eレシオや自己資本比率といった財務の健全性を示す経営指標の向上に取り組んでまいります。
「財務指標」
ニ 株主還元
当社グループは、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要施策のひとつとして位置づけ、長期にわたる経営基盤の安定と強化に努め、企業価値の向上を目指しております。配当の方針につきましては、安定的な配当を継続して行うことを基本方針とし、連結業績の動向を勘案して配当性向や純資産配当率を意識しながら実施しております。
なお、当社は、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる。」旨を定款に定めております。
(配当基準日 期末配当:毎年3月31日、中間配当:毎年9月30日)
連結の範囲につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)「1.連結の範囲に関する事項」及び「2.持分法の適用に関する事項」に記載しております。
紙の需要は、新型コロナウイルス感染状況の変化による社会経済活動の正常化に伴い一定程度回復したものの、国内における人口減少や世界的なデジタル化の進展などを背景に、当社グループの主要マーケットにおいては引き続き縮小することが想定されます。一方、板紙の需要は引き続き堅調に推移するとともに、国内においてはインバウンド需要の回復による増加が見込まれます。
2024年3月期については、2023年3月期に取り組んだ価格修正により売上収益の増加が見込まれるものの、海外卸売事業においては、流通在庫の膨張とアジアメーカー等による売り姿勢により市況価格が弱含みとなり、昨年の価格修正により大幅拡大した利益率の縮小が見込まれます。一方、製紙加工事業においては、電力費や燃料価格の高騰による製造費用の高止まりが想定されるものの、前年度、段階的に行った価格修正が通年にわたり収益改善に寄与することが見込まれます。これらを踏まえて、2024年3月期の連結業績予想は、営業利益18,000百万円(前期比11.2%減)、経常利益17,000百万円(同19.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益11,000百万円(同56.7%減)としております。
該当事項はありません。
当社グループ(当社及び連結子会社)における主要な設備は、以下のとおりであります。
(注) 提出日現在発行数には、2023年6月1日からこの有価証券報告書提出日までの新株予約権の行使により発行された株式数は、含まれておりません。
ストックオプション制度の内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(ストック・オプション等関係)に記載しております。
該当事項はありません。
(注) 発行済株式総数の減少は、2017年6月28日開催の第155回定時株主総会決議に基づき実施した株式併合(普通株式10株を1株に併合)によるものです。
2023年3月31日現在
2023年3月31日現在
(注) 1 上記所有株式数のうち、信託業務に係る株式数は次のとおりであります。
みずほ信託銀行㈱退職給付信託日本製紙口再信託受託者㈱日本カストディ銀行 1,402千株
日本マスタートラスト信託銀行㈱(信託口) 1,343千株
㈱日本カストディ銀行(信託口) 485千株
2 日本製紙㈱は当社普通株式1,402千株を信託財産としてみずほ信託銀行㈱退職給付信託日本製紙口再信託受託者㈱日本カストディ銀行へ拠出しておりますが、信託契約に基づき、議決権行使の指示権については委託者である日本製紙㈱が留保しております。
3 当社は、自己株式1,132千株を保有しておりますが、上記大株主からは除外しております。
4 ㈱日本カストディ銀行(信託口)が保有している株式のうち、148千株は当社役員向け株式交付信託に係る信託財産であります。なお、当該株式は、連結財務諸表及び財務諸表において自己株式として表示しております。
【セグメント情報】
1 報告セグメントの概要
当社の報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっている事業セグメントを集約したものであります。
当社は、経営資源の配分の決定及び業績の評価を、当社については事業の内容及び国内所在地等に基づく本部・会計単位別に、連結子会社については主として会社別に行っているため、これらを事業セグメントとして識別しております。当社の報告セグメントは、これらの事業セグメントを経済的特徴の類似性等を勘案し、事業の内容別に集約し、「国内卸売」、「海外卸売」、「製紙加工」、「環境原材料」及び「不動産賃貸」の5区分としております。
各区分に属する主な事業は、それぞれ次のとおりであります。