株式会社ドーン
Dawn Corporation
神戸市中央区磯上通二丁目2番21号 三宮グランドビル5F
証券コード:23030
業界:情報・通信業
有価証券報告書の提出日:2023年8月30日

 

 

回次

第28期

第29期

第30期

第31期

第32期

決算年月

2019年5月

2020年5月

2021年5月

2022年5月

2023年5月

売上高

(千円)

893,404

1,050,916

1,119,272

1,222,077

1,368,390

経常利益

(千円)

205,833

294,760

343,100

404,074

451,049

当期純利益

(千円)

156,216

200,837

237,721

283,501

321,058

持分法を適用した
場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

363,950

363,950

363,950

363,950

363,950

発行済株式総数

(株)

3,300,000

3,300,000

3,300,000

3,300,000

3,300,000

純資産額

(千円)

1,475,456

1,660,125

1,881,407

2,138,745

2,226,246

総資産額

(千円)

1,645,229

1,883,519

2,101,747

2,368,010

2,495,562

1株当たり純資産額

(円)

463.39

520.12

588.01

667.52

715.55

1株当たり配当額
(1株当たり中間配当
額)

(円)

7.50

10.00

12.00

14.00

16.00

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益

(円)

49.08

62.98

74.36

88.53

101.11

潜在株式調整後1株当たり当期純利益 

(円)

自己資本比率

(%)

89.7

88.1

89.5

90.3

89.2

自己資本利益率

(%)

11.1

12.8

13.4

14.1

14.7

株価収益率

(倍)

19.7

35.7

38.1

21.5

20.1

配当性向

(%)

15.3

15.9

16.1

15.8

15.8

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

114,036

293,213

228,539

257,071

365,694

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

49,816

119,358

110,777

102,668

58,831

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

19,033

23,872

31,857

38,370

244,497

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

378,724

528,708

614,612

730,645

793,011

従業員数

(人)

52

52

56

60

61

株主総利回り

(%)

64.2

149.5

188.6

128.3

137.7

(比較指標:配当込み

TOPIX)

(%)

(88.6)

(94.1)

(118.2)

(120.3)

(137.8)

最高株価

(円)

1,670

2,750

4,015

3,115

2,469

最低株価

(円)

811

911

1,938

1,501

1,705

 

 

(注)1.当社は連結財務諸表を作成していないため、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

4.第30期の1株当たり配当額には、創立30周年記念配当1円を含んでおります。

5.第31期の1株当たり配当額には、株式上場20周年記念配当1円を含んでおります。

6.最高・最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所(スタンダード市場)におけるものであり、2022年4月3日以前は東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)におけるものであります。

 

 

2 【沿革】

 

年度

事項

1991年

6月

神戸市灘区にて前代表取締役社長滝野秀一が㈲ドーンを設立

1994年

10月

地理情報システム構築用基本ソフトウエア「GeoBase Ver.1.1」発売

1996年

5月

神戸市地盤情報/震災被害解析GISシステム開発開始

1997年

3月

㈱ドーンに組織変更

1998年

5月

神戸市中央区港島南町に本社を移転

 

9月

兵庫県において「中小企業創造的活動促進法」の認定

 

10月

参画しているコンソーシアムが通商産業省次世代GISモデル事業に採択

1999年

5月

Web(インターネット、イントラネット)に対応した「GeoBase Ver.4.1」発売

 

7月

n次元空間データ検索表示制御装置及びその方法に関する日本国内の特許を取得

2000年

5月

「モバイル利用のためのインターネット用地図データリアルタイム作成・配信技術の研究開発」が通信・放送機構の「1999年度 先進技術型研究開発助成金」対象事業に選定

 

7月

「モバイルGIS モバイル機器への最適地図リアルタイム作成及び配信」が通商産業省の「2000年度 創造技術開発費補助金」対象事業に選定

 

10月

東京都目黒区に東京開発センター(現:東京テクノロジーセンター)を開設

2001年

5月

神戸市中央区磯上通に本社を移転

 

6月

XMLデータの直接入出力機能に対応した「GeoBase Ver.6」発売

2002年

6月

携帯電話、PDA(携帯情報端末)等のモバイル機器に対応した「GeoBase 7」発売

 

6月

大阪証券取引所ナスダック・ジャパン(のちの東京証券取引所JASDAQ)市場に株式を上場

 

12月

東京営業所(現:東京テクノロジーセンター)を港区に移転

2003年

6月

GIS構築にかかるコストを低減する「GeoBase 8」発売

2004年

6月

統合型GIS用のアプリケーションソフトを標準装備した「GeoBase 9」発売

2005年

10月

地図情報配信ASPサービス「まちかど案内 まちづくり地図」提供開始

2006年

12月

プライバシーマーク(Pマーク)取得

2007年

11月

Microsoft社の「.NET Framework」に完全対応した「GeoBase.NET」発売

 

11月

地図データ提供システム、地図データ記憶装置の管理装置及び管理方法に関する日本国内の特許を取得

2009年

5月

地方自治体の庁内業務に対応した地図情報配信ASPサービス「総合地図ASP Pro」提供開始

2010年

4月

「緊急通報システムWeb119」提供開始

 

10月

品質マネジメントシステムの国際標準規格(ISO9001:2008)の認証取得

 

12月

地域情報プラットフォーム標準仕様(APPLIC)に準拠した「GeoBase.NET Ver2.2」発売

2013年

10月

情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC27001:2005)の認証取得

2014年

9月

「緊急通報システムWeb119」が一般財団法人日本消防設備安全センター「消防防災製品等」の推奨を得る

2015年

4月

「NET119緊急通報システム」提供開始

 

12月

「NET119緊急通報システム」を東京消防庁に提供開始

 

 

年度

事項

2016年

3月

防犯アプリ「Digi Police」を警視庁犯罪抑制対策本部に提供開始

 

10月

緊急通報管理装置に関する日本国内の特許を取得

2017年

4月

「DMaCS(災害情報共有サービス)」提供開始

2018年

7月

「AED GO(スマートフォン活用型AED運搬システム)」提供開始

2020年

7月

「Live119(映像通報システム)」提供開始

2021年

4月

「Live-X(映像通話システム)」提供開始

 

7月

大阪市北区に大阪オフィスを開設

 

7月

「交通規制情報のデータ精度向上等に係るモデルシステムに関する調査研究」が内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期に採択

2022年

4月

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所のJASDAQ市場からスタンダード市場へ移行

2022年

7月

東京消防庁で「Live119(映像通報システム)」の本運用を開始

2023年

5月

防災DX官民共創協議会に参加(「DMaCS(災害情報共有サービス)」及び防災アプリが「防災DXサービスカタログ」に掲載)

 

 

 

3 【事業の内容】
事業内容について

当社は、地理情報システム構築用ソフトウエアのライセンス販売、地理情報システムに係るアプリケーションソフトウエア(以下、「アプリケーション」という。)の受託開発といった創業期からの事業品目を継続するとともに、中核となる領域を、地理情報に関連づけた各種クラウドサービス(SaaS)の開発・提供にシフトし、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全等に関する業務の高度化を実現する独自のクラウドソリューションを展開しております。

なお、当社は情報サービス事業の単一セグメントであります。

 

① クラウドサービス(SaaS)の提供について

主に、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全等の官公庁等の業務に係る各種情報を地理情報に関連づけて配信するクラウドサービス(インターネット回線を通じてソフトウエアを配信し、ユーザーの利用に供するサービス)を行っております。

<主な自社サービス>

サービス名称

主な販売先

サービス概要

NET119緊急通報システム

地方自治体及び消防本部

2010年4月よりサービスを開始した「緊急通報システムWeb119」の広域対応版。言語や聴覚に障害がある方が、スマートフォン等のGPS機能を利用し、簡単な画面操作で素早く119番通報をすることができるサービス

Live119・Live110(映像通報システム)

消防本部及び警察本部

2020年7月よりサービス開始。119番通報の現場の映像を撮影・伝達することで視覚的な情報をリアルタイムに収集でき、救命・救急等を支援するシステム

Live-X(映像通話システム)

地方自治体

2021年4月よりサービス開始。スマートフォンが撮影する映像を介した相談業務を行うことで、非接触・遠隔での行政対応を実現するシステム

DMaCS(災害情報共有サービス)

地方自治体

2017年4月よりサービス開始。大規模災害時に被害情報や避難所・物資管理等の情報を共有し、迅速な災害対策を支援するサービス

まちかど案内 まちづくり地図

地方自治体及び

警察等の官公庁

2005年10月よりサービス開始。地方自治体や警察等の公的機関が保有する様々な地図情報(防犯・防災、観光、公的施設、環境等)を住民等に対して公開するサービス

まちかど地図Pro

地方自治体

2009年5月よりサービス開始。地方自治体の庁内各課で保有する地図情報等を共有し、庁内の資産を低コストで有効に活用する仕組みを提供

Mailio(メッセージ配信サービス)

地方自治体

2021年10月よりサービス開始。電子メールを含む各種ネットワークメディアを用いたメッセージの一斉配信を行い、地方自治体の業務等に関連する適時の情報伝達を支援するシステム

 

表に掲示したもの以外にも、感染症サーベイランス情報を収集・共有する「感染症危機管理システム」、警察・消防や自治体が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリ等、官公庁等の業務を支援する各種のクラウドサービスを提供しております。なお、行政が扱う情報の多くは地理的な位置に関係したものであるため、各種クラウドサービスの機能には、創業期からの地理情報システム事業における技術やノウハウが生かされています。

 

<クラウドサービスに係る営業形態>

クラウドサービスは、主なユーザーである官公庁から直接受注する形態が多く、その場合は、一般競争入札を経ることが一般的であります。

当社と官公庁との契約は、官公庁の予算に合わせ1年契約を毎年更新する場合が一般的ですが、複数年にわたる長期契約を締結する場合もあります。

クラウドサービスの売上は、サービス開始前に環境を構築する請負の対価(初期構築費)とサービス提供期間中に継続的に受領する月額利用料により構成されます。なお、クラウドサービスの初期構築については、次に掲げる「受託開発」の品目として扱っており、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」において、受託開発の売上に含めております。

 

② 受託開発について

地理情報に関連する各種システムの受託開発に係る事業品目であり、以下の内容で構成されております。

a)クラウドサービスの初期構築等

受託開発としては、主にクラウドサービスの初期構築・導入支援及びカスタマイズ並びにオーダーメイド開発を行っており、自社サービスについては、「NET119緊急通報システム」や「Live119(映像通報システム)」のように初期構築・導入支援(環境設定や操作説明会等)が主になるものと、「DMaCS(災害情報共有サービス)」のように機能等のカスタマイズを行うものがあり、そのほか、警察・消防や自治体が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリのオーダーメイド開発を行うケースもあります。

b)オンプレミス環境でのシステム開発・保守

他方で、オンプレミス環境(情報システムの利用に必要となるサーバー等の機器をユーザーの管理下に設置する従来型の運用形態)でのシステム開発・保守も行っており、取り扱う情報や業務の性質上クラウド環境で運用する形態に適さないもの(例えば警察業務に関するシステム等)について、ユーザーが定める仕様に基づいて開発する案件があります。

また、従来の地理情報システムのアプリケーション開発(当社の「GeoBase(ジオベース)」「GeoBase.NET」を用いた地理情報システムの構築)についても、電力事業者の設備管理用のシステムを中心に継続的に受注しております。

なお、受託開発案件の納品においては、顧客の要望により、デジタル地図やハードウエア等の仕入れ販売を併せて行うケースがあります。

 

<受託開発に係る営業形態>

クラウドサービスと同様、ユーザーである官公庁や電力事業者から直接受注する形態が多く、官公庁から受注する場合は、一般競争入札を経ることが一般的であります。

なお、これら受託開発の品目については、顧客(大手企業や官公庁等)の決算期が集中する3月末にかけて売上計上される案件が多いため、第3又は第4四半期会計期間に売上計上が偏重する傾向があります。

 

③ 地理情報システム構築用ソフトウエアのライセンス販売について

GIS(Geographic Information System)の訳語である地理情報システムは、電子地図を背景として地理的な位置の情報に属性データ(空間データともいう。)を重ね合わせ、統合的に処理・分析を行い、表示するシステムであり、主に、地方公共団体等の官公庁における防災・都市計画、医療・福祉・教育等の分野で利用されているほか、民間の施設管理や出店計画等にも利用されております。

 

<ライセンス販売の営業形態について>

当社は、自社製の地理情報システム構築用ソフトウエア(「GeoBase」「GeoBase.NET」)を、エンドユーザーの仕様にあわせたアプリケーションとして開発する企業に対し、ライセンス販売を行っております。

販売先であるソフトウエア開発事業者・総合電機メーカー・測量又は建設土木に関するコンサルタント及び電力等のインフラ関連事業者(以下、「SI事業者等」という。)が当社製品をもとに地理情報システムを開発し、地方自治体等の官公庁及び電力・通信事業者等のインフラ系事業者といったユーザーに提供することに対し、当社がロイヤリティを受け取る契約形態をとっております。

当社の「GeoBase」及び「GeoBase.NET」は、地理情報システムを構築するためのソフトウエアであり、単体のソフトウエアとして地理情報システムの機能を有するものではなく、当該製品を組み込み、エンドユーザーの用途に必要な機能や仕様に応じたアプリケーションを開発するための部品を組み合わせたもの(アプリケーションを構成する関数の集合体)であり、一般にエンジンとも呼ばれる基幹部分の機能が含まれております。

 


 

④ 品目別の売上構成の推移について

「第一部 企業情報 第1 企業の概況 2 沿革」に記載のとおり、1994年から開始している地理情報システム構築用ソフトウエアのライセンス販売及び当該ソフトウエアを用いた受託開発については、長年にわたり当社の主力となる事業でしたが、近年、従来の構築型やパッケージ型のシステムからクラウドサービスへと利用形態が変化しております。当社も2005年からクラウドサービスの提供を開始し、主に地方自治体の防犯や防災分野で利用するクラウドサービスの提供に注力しており、クラウド利用料の売上が年々増加し、品目別の売上構成が変化しております。

<各事業年度の売上高を100%とした場合の品目別の売上構成(第28期以降)>

 


 

 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。 

 

5 【従業員の状況】
(1) 提出会社の状況

2023年5月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

61

37.7

8.0

5,874

 

 

事業部門の名称

従業員数(人)

営業部門

12

サービス推進部門

11

開発部門

33

全社(共通)

5

合  計

61

 

(注)1.従業員数は、兼務役員を除く就業人員であります。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含め、株式報酬費用は除いております。

3.当社は、単一セグメントであるため、事業部門別の従業員数を記載しております。

4.全社(共通)は、総務及び経理等の管理部門の従業員であります。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は結成されていませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針
① 企業理念

当社は、「社会課題に挑戦し新しい価値を創造する」を使命に定めるとともに、この使命を果たす原動力となる大切な価値観として「“なぜ誰も思いつかなかったのか”をカタチに」を掲げ、ユーザーや社会の新しい課題と真剣に向き合う社員の情熱を表現しております。

② 経営方針

上記の理念に基づき、次に掲げる経営方針をもとに事業展開を行います。

一、位置情報その他各種機器から収集・分析されるデータと関連づけた各種情報システムの分野において最先端の技術と信頼性のある製品、サービスを提供します。

一、技術力・販売力を有する企業との提携、共同展開により新事業の開拓を積極的に進めます。

一、規模の拡大よりも経営資本を有効に活用した効率の高い経営を追求します。

一、法令を遵守し、公正かつ透明性の高い企業経営に努めます。

③ ビジョン

当社は、上記の使命の遂行を通じて目指す姿(ビジョン)として“エッセンシャル カンパニー”を宣言しております。未来の人々が安心して暮らせる社会の実現に向け、新世代のクラウドアプリケーションを多角的に提供することで、時代を変える新しい価値を創造し、“社会に必要不可欠な存在”となる決意を込めております。

 

(2) 目標とする経営指標

新たな成長軌道に繋げる創造的進化のスタートの3年間と位置づけた、2023年5月期を初年度とする中期経営計画に基づき、以下の数値目標を掲げるとともに、新サービスまたはM&A等による更なる成長を目指します。

 

2022年5月期

(実績)

2023年5月期

(実績)

2024年5月期

(計画)

2025年5月期

(計画)

 

売上高

百万円

1,222

百万円

1,368

百万円

1,460

百万円

1,550

営業利益

400

443

493

551

ROE(自己資本当期純利益率)

14.1

14.7

10以上

10以上

 

なお、2022 年度(2023 年5月期)において主にクラウドサービスに関する初期構築及び利用料が当初の想定を上回り、売上高・営業利益ともに初年度の目標を達成したことを受け、2023 年度(2024 年5月期)の売上高の目標値を更新(1,430百万円から1,460百万円へ更新)しました。一方で、足元の物価高及び賃金上昇の影響を勘案し、営業利益については当初の目標値を据え置いております。また、2024 年度(2025 年5月期)の売上高・営業利益につきましては、主に受託開発の受注について一定の不確実性があること及び物価高の先行きを明確に見通すことが困難であること等の理由により、目標値を据え置いております。

 

(3) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

当社の属する情報サービス産業界においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連の需要が拡大するとともに、テレワークといった働き方の変化に伴うオンラインのコミュニケーションツールの活用が浸透しております。また、当社の主な事業分野である官公庁向けシステムは、従来のオンプレミス環境からクラウド環境への移行が加速するなか、特に防災・防犯に係る行政の高度化の要請は高く、重点施策として予算が確保されております。

当社は、このようなシステムの利用構造や市場環境の変化を捉え、これまでの地理情報システム(GIS事業)で培った独自技術・ノウハウや知見を最大限に活用しつつ、中核となる領域を、地理情報に関連づけた各種クラウドサービス(SaaS)にシフトし、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全の分野を中心に、サービス利用料や保守料等のストック型収入を増やすという事業構造改革に取り組んでまいりました。

その結果、収益の増大・季節変動の軽減や収益基盤の安定化が一定程度進んだことから、更なる企業価値の向上と持続的な成長の実現を目指し、2022年7月、新たに中期経営計画をスタートしました。新中期経営計画では、既存事業の安定的な拡大を図りつつ新たな成長軌道に繋げることを基本方針とし、事業を通じて持続的な社会の実現に貢献することを意識した施策を示しており、最重点施策である「Gov-tech市場の深耕」を推進する一方で、ストレッチ目標の達成に向けて「社会課題解決サービスの創出」や「M&A・事業提携によるシナジー創出」に取り組むとともに、これらの達成を支える人材基盤の強化に注力しております。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

中期経営計画の実現に向けた主な重点施策は以下のとおりであります。

① Gov-tech市場の深耕

主力の「NET119緊急通報システム」は、全国普及に向けた残りの地域への導入を引き続き推進し、今後数年間の成長を牽引するサービスと位置付ける「Live119(映像通報システム)」は、2025年5月期に200か所の消防本部を目標として導入を進めるとともに、映像通報の技術を応用した「Live-X(映像通話システム)」や災害対策本部での情報収集を支援する「DMaCS(災害情報共有サービス)」、自治体や警察が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリ等は、防災やライフラインの安定供給といった分野の課題の解決に有用なサービスとして案件開拓に引き続き注力いたします。

② 社会課題解決サービスの創出・課題解決へのシナジー創出

当社が、既存事業の安定的成長を継続しつつ、公共システム分野における市場創出の流れを受けて新たな成長軌道の第一歩を踏み出すため、当社のクラウドソリューションに次世代のテクノロジーを融合させる試み(たとえば、産官学連携により映像機器やセンサーの情報測定技術を防災等の危機管理に活用する研究や実証実験)を通じて新規事業を開拓することや、AI領域の知見を有する企業等を対象としたM&Aや事業提携を通じて社会課題解決に向けたグループシナジーを実現していくことに注力いたします。

あわせて、これらの施策を実現していくための共通の課題が人材基盤の強化であります。IT人材の獲得競争は激化する一方であり、採用数は足踏み傾向となっておりますが、社員が性別を問わず働き甲斐や仕事の創造性を実感し会社とともに成長し合うことができる職場環境や社内制度(教育・処遇等)を充実させることで、高度専門職の人員確保を進めて参ります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても投資家の投資判断上、重要なものであると考えられる事項につきましては、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下の記載は、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 官公庁等に係る市場動向及びその依存度について

当社のクラウドサービス及びシステム開発の主要顧客は、地方自治体等の官公庁であり、民間は電力会社等のインフラ系事業者等に限られていることから、公共市場への依存度が高い状況となっております。

民間市場の開拓にも努めておりますが、当面は官公庁市場への高い依存度が継続するものと想定されます。そのため、地方自治体の財政状態が新型コロナウイルス感染症対策等により急激に悪化し予算が減額されたり、政府の重点施策の変更により予算配分が変更された場合等は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 特定の製品やサービスへの依存度が高いことについて

地理情報システム構築用ソフトウエア(「GeoBase」及び「GeoBase.NET」)のライセンス販売が当事業年度の売上高に占める割合は5%程度まで低下しておりますが、利益面におけるライセンス販売への依存度は未だ高い状態にあります。したがって、当社ライセンスの主要顧客が競合製品に切り換えたり、設備投資の大幅な減額等により受注が急激に減少した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当事業年度において売上高の52.2%を占めるクラウド利用料のうち、当社の主力サービスである「NET119緊急通報システム」の利用料の割合が大きい状態にあります。当社は、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全等の業務に係る各種クラウドサービスの開発を進めておりますが、当面は特定のサービスへの依存度が高い状態が続くものと思われます。したがって、他社の同様のシステムに切り換えられたり、緊急時における聴覚障害者支援において他の方式のシステムが採用されることとなった場合には、契約数が減少し当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 製品の不具合の発生による影響について

当社は、ISO9001に基づく品質管理基準に従って製品開発や受託開発を行っており、不具合等の発生防止に最大限の注意を払っております。

しかしながら、当社製品の不具合により顧客が損害を被った場合、損害賠償請求を受けたり、当社に対する信頼の低下により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システム障害について

当社のクラウドサービスは、通信ネットワークを通じてサービスを提供しておりますが、災害や事故により通信ネットワークが切断された場合、サーバー機能が停止した場合、コンピュータウイルスによる被害にあった場合、ソフトウエアに不具合が生じた場合等によりサービスが提供できなくなる可能性があります。

当社は、サーバーを冗長化したり、地理的に複数箇所に分散して配置する等の対策を行っておりますが、これらの障害が発生した場合には、回復のためのコスト負担や当社に対する信頼の低下により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 受託開発業務に係る仕様拡大の影響について

当社の受託開発については、業務仕様に関し、事後的に発注元との認識の違い等が発生する可能性があります。当社は、受注までに発注元と入念に仕様等について打ち合わせを行い、認識の齟齬が発生しないように努めておりますが、万一、齟齬が発生した場合は、発注元との協議の結果、納入後に当社の責任において再開発や補修するための費用が発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 競合他社による影響について

当社のクラウドサービスは、防災・防犯関連にターゲットを絞り、先行者メリットを活かしつつ顧客ニーズに合ったサービスを開発することにより優位性を高めております。

また、特許の取得にも積極的に取り組んでいるものの、新規参入の障壁は必ずしも高いものとはいえず、類似したサービスが開発され、価格競争が激化した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 小規模組織における管理体制について

当社は、当事業年度末現在、取締役(監査等委員を含む。)6名及び従業員61名と組織としての規模は小さく、内部管理体制もこのような組織の規模に応じたものとなっております。

また、小規模な組織であることから、業務遂行を特定の個人に依存している場合があります。今後、さらなる権限委譲や業務の定型化、代替人員の確保・育成等を進める予定でありますが、特定の役職員の社外流出等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 人材の確保について

デジタル化推進の流れを受け、現在、情報サービス業界においてはIT人材の確保が厳しい状況であります。当社は、採用市場や求職者の動向の変化に対応し、オンラインでのインターンシップや会社説明会、直接求職者にアプローチするダイレクトリクルーティング等の多様な募集方法を活用することにより、新卒及び中途採用の応募者の裾野を広げ、優秀な人材の獲得に努めております。

しかしながら、当社が必要な人材の獲得ができなかった場合や優秀な従業員の退職が発生した場合には、製品・サービスの開発や受託開発に遅れが生じることによる売上の未達、人員の採用や教育等に伴う経費の増加等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 知的財産権について

当社は、当社製品の名称について商標登録を行っているほか、独自に開発したシステムについても特許の登録を行っております。

また、当社は、第三者の知的財産権を侵害しないよう留意し、調査を行っておりますが、万一、当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者より使用差止及び損害賠償請求等を提起される可能性並びに当該特許使用にかかる対価等の支払い等が発生する可能性があります。このような場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 個人情報等の取り扱いについて

当社が保有する利用者等の個人情報、特定個人情報及び顧客企業に関する情報の取り扱いについては、2006年12月にプライバシーマーク(Pマーク)を取得、2013年10月に情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC27001)を取得し、厳重に社内管理並びに委託先管理を行っております。
 しかしながら、不正アクセス者等からの侵入や委託先管理不備により、個人情報等が外部に漏洩し、不正使用される可能性が完全に排除されているとはいえません。また、不正使用等に備え、当社は個人情報漏洩に対応する保険に加入しておりますが、全ての損失が完全に補てんされるとは限りません。
 したがって、このような事態が起こった場合には、当社への損害賠償請求や信用の失墜により、当社の経営成績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の緩和や外国人観光客の受入れ再開等により、景気は緩やかに持ち直しの動きがみられたものの、ロシアのウクライナへの侵攻の長期化や、円安の進行に伴う物価上昇等により、景気の先行きは不透明な状況で推移いたしました。
 情報サービス産業界においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)(注1)の進展とともに、人工知能(AI)やチャットボット(注2)等の技術革新によってコミュニケーションの未来像が描かれ、当社の事業領域である公共システムの分野、とりわけ防災や市民の安全にかかわる社会課題を解決するテクノロジーに対して官民の共創の取り組みが推進され、新たな市場形成の動きが広がっております。

このような環境において、当社は、2022年度中期経営計画の最重点施策である「Gov-tech(注3)市場の深耕」を推進する一方で、ストレッチ目標の達成に向けて「社会課題解決サービスの創出」や「M&A・事業提携によるシナジー創出」に取り組むとともに、これらの達成を支える人材基盤の強化に注力しております。

当事業年度においては、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全の課題解決を実現するシステムの導入拡大が進みました。なかでも、主力の「NET119緊急通報システム」は株式会社両備システムズからの顧客の引き継ぎが進み、導入消防の管轄人口カバー率(導入消防の管轄人口の合計が日本の総人口に占める割合)が7割を超え、「Live119(映像通報システム)」は東京消防庁や福岡市等の主要都市で本運用が始まるなど、今後の導入拡大に弾みがついております。そのほか、映像通報の技術を応用した「Live-X(映像通話システム)」や災害対策本部での情報収集を支援する「DMaCS(災害情報共有サービス)」、自治体や警察が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリ等は、防災やライフラインの安定供給といった分野の課題の解決に有用なサービスとして紹介され、新規案件の受託に繋がりました。

以上の結果、当事業年度の売上高につきましては、各種クラウドサービス・アプリの契約数が積み上がり、ストック型の利用料収入が順調に増加するとともに、クラウドサービスの初期構築やオンプレミス(注4)環境でのシステム開発等に係る受託開発も順調に推移したことにより、1,368,390千円(前事業年度比12.0%増)となりました。

利益面では、売上高の増加が人件費等の売上原価・販売費及び一般管理費の増加を上回ったことにより、営業利益443,258千円(前事業年度比10.7%増)、経常利益451,049千円(前事業年度比11.6%増)、当期純利益321,058千円(前事業年度比13.2%増)となりました。

(注1)デジタルトランスフォーメーション(DX):データとデジタル技術を活用し、ユーザーや社会のニーズをもとに、製品・サービス、ビジネスモデルや業務プロセス等を変革すること

(注2)チャットボット(chatbot):チャット(インターネット上での双方向での文字のやり取りによりリアルタイムなコミュニケーションを行う仕組み)とボット(ロボット)を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した自動会話プログラムのこと

(注3)Gov-tech(ガブテック):既存の産業とテクノロジーを組み合わせることでイノベーションを起こす動きをさすxTech(クロステック)のひとつであり、政府(Government)が積極的に新しい技術(Technology)をとりいれ、公的サービスをテクノロジーの力でより良いものにする取り組み

(注4)オンプレミス:情報システムの利用に必要となるサーバー等の機器をユーザーの管理下に設置する運用形態

 

なお、当社は情報サービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しておりますが、品目別の売上構成比は、クラウド利用料が52.2%(前事業年度は50.3%)、受託開発が41.3%(前事業年度は42.4%)、ライセンス販売が5.0%(前事業年度は6.1%)、商品売上が1.5%(前事業年度は1.2%)となっており、品目別の実績は次のとおりであります。

 

(クラウド利用料)

「NET119緊急通報システム」・「Live119(映像通報システム)」・「DMaCS(災害情報共有サービス)」のほか、行政・警察向けスマートフォンアプリ等の顧客獲得が順調に進み、既存契約の継続に加えて、新規顧客の獲得により契約数が積み上がったため、713,721千円(前事業年度比16.1%増)となりました。

(受託開発)

地理情報関連システムの受託開発の売上及びクラウドサービスの初期構築や機能追加に係る売上がともに増加したため、売上高は565,358千円(前事業年度比9.1%増)となりました。

(ライセンス販売)

既存顧客から継続して防災関連等のシステム用のライセンスの受注がありましたが、新規受注が減少傾向にあり、売上高は68,436千円(前事業年度比8.9%減)となりました。

(商品売上)

受託開発に伴うデジタル地図等の納品を行うとともに、新規自治体案件の販売があったため、20,873千円(前事業年度比48.6%増)となりました。

 

② 財政状態の状況
(資産)

当事業年度末の総資産は2,495,562千円となり、前事業年度末と比較して127,551千円増加いたしました。これは主に、売掛金が9,718千円、投資有価証券が401,690千円それぞれ増加した一方で、現金及び預金が212,634千円、有価証券が72,602千円それぞれ減少したことによるものであります。

(負債)

当事業年度末の負債は269,316千円となり、前事業年度末と比較して40,050千円増加いたしました。これは主に、前受収益が18,807千円、長期前受収益が34,304千円それぞれ増加した一方で、買掛金が9,308千円減少したことによるものであります。

(純資産)

当事業年度末の純資産は2,226,246千円となり、前事業年度末と比較して87,501千円増加いたしました。これは主に、譲渡制限付株式の付与等により資本剰余金が8,749千円、当期純利益の計上により利益剰余金が321,058千円それぞれ増加した一方で、配当金の支払いにより利益剰余金が44,856千円減少し、自己株式の取得等により自己株式が199,358千円増加したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、投資活動によるキャッシュ・フローが58,831千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが244,497千円の支出となったものの、営業活動によるキャッシュ・フローが365,694千円の獲得となったため、前事業年度に比べ62,365千円増加し、当事業年度末には793,011千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において営業活動の結果獲得した資金は、365,694千円(前事業年度比108,623千円増)となりました。これは主に、税引前当期純利益が451,049千円、前受収益の増加額が53,111千円あった一方で、法人税等の支払額が130,645千円あったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において投資活動の結果支出した資金は、58,831千円(前事業年度比43,836千円減)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入が1,110,000千円、有価証券の償還による収入が72,500千円あった一方で、定期預金の預入による支出が835,000千円、投資有価証券の取得による支出が399,381千円、無形固定資産の取得による支出が4,704千円あったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動の結果支出した資金は、244,497千円(前事業年度比206,126千円増)となりました。これは、自己株式の取得による支出が199,913千円、配当金の支払による支出が44,583千円あったことによるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の状況

当社は、情報サービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。

 

(生産実績)

当事業年度の生産実績は次のとおりであります。

 

品目

当事業年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

受託開発

548,716

101.9

合計

548,716

101.9

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

(受注状況)

当事業年度の受注状況は次のとおりであります。

 

品目

当事業年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

受注高

受注残高

金額(千円)

前年同期比(%)

金額(千円)

前年同期比(%)

受託開発

606,893

103.5

233,858

121.6

合計

606,893

103.5

233,858

121.6

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

(販売実績)

当事業年度の販売実績を品目別に示すと次のとおりであります。

 

品目

当事業年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

クラウド利用料

713,721

116.1

受託開発

565,358

109.1

ライセンス販売

68,436

91.1

商品売上

20,873

148.6

合計

1,368,390

112.0

 

(注) 前事業年度及び当事業年度の主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。当社経営陣は、財務諸表の作成に際して、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積り及び仮定設定を行う必要があります。経営陣は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績の分析
(売上高)

当事業年度の売上高につきましては、各種クラウドサービス・アプリの契約数が積み上がり、ストック型の利用料収入が順調に増加するとともに、クラウドサービスの初期構築やオンプレミス環境でのシステム開発等に係る受託開発も順調に推移したことにより、1,368,390千円(前事業年度比12.0%増)となりました。

各品目の実績は次のとおりであります。

a.クラウド利用料

「NET119緊急通報システム」・「Live119(映像通報システム)」・「DMaCS(災害情報共有サービス)」のほか、行政・警察向けスマートフォンアプリ等の顧客獲得が順調に進み、既存契約の継続に加えて、新規顧客の獲得により契約数が積み上がったため、713,721千円(前事業年度比16.1%増)となりました。

b.受託開発

地理情報関連システムの受託開発の売上及びクラウドサービスの初期構築や機能追加に係る売上がともに増加したため、売上高は565,358千円(前事業年度比9.1%増)となりました。

c.ライセンス販売

既存顧客から継続して防災関連等のシステム用のライセンスの受注がありましたが、新規受注が減少傾向にあり、売上高は68,436千円(前事業年度比8.9%減)となりました。

d.商品売上

受託開発に伴うデジタル地図等の納品を行うとともに、新規自治体案件の販売があったため、20,873千円(前事業年度比48.6%増)となりました。

(売上原価、販売費及び一般管理費)

売上原価は、地図等の仕入や外注費等の増加の他、人件費の増加及び新型コロナウイルス感染症に伴う一時的な支払手数料の増加により、479,754千円(前事業年度比76,479千円増)となりました。 

売上総利益は、売上高が増加したものの、売上原価が増加したことに伴い、売上高総利益率が2.1ポイント減少し、888,636千円(前事業年度比69,833千円増)となりました。

販売費及び一般管理費は、主に人件費の増加及びNET119の移行に伴う支払手数料の増加により、445,377千円(前事業年度比27,169千円増)となりました。 

(営業利益)

営業利益は、売上高が増加したものの、売上原価及び販売費及び一般管理費が増加したことに伴い、営業利益率が0.4ポイント減少し、443,258千円(前事業年度比42,663千円増)となりました。 

(営業外収益)

営業外収益は、有価証券利息、補助金収入及び助成金収入等により7,790千円(前事業年度比4,311千円増)となりました。 

(経常利益)

経常利益は451,049千円(前事業年度比46,975千円増)となりました。

 

(当期純利益)

当期純利益は、321,058千円(前事業年度比37,557千円増)となりました。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、市場動向による影響等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しており、これらのリスクの発生を抑え、影響を最小限に抑えるよう適切に対応する所存であります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(流動性と資金の源泉)

当社の所要資金は、主にソフトウエアの製造・販売を行うための投資及び経常の運転資金であり、これらについてはすべて自己資金により対応しております。

当社の当事業年度末の自己資本比率は89.2%であり、充分な流動性を確保しております。翌事業年度においては、特記すべき設備投資計画は無く、経常の運転資金については自己資金で賄う予定であります。

(財政状態の分析)

当事業年度における財政状態の状況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」をご参照ください。 

(キャッシュ・フローの分析)

資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としております。

なお、当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 

 

⑤ 経営者の経営状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するように努めております。

当社が属する情報サービス産業においては、デジタル庁創設が後押しとなり、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む自治体や企業が増加し、需要が拡大するものと思われます。また、技術面では、AI、5G等の技術革新により既存の事業環境が激変する可能性があり、ビジネスチャンスが生じる一方で、収益構造の変化や顧客要望の多様化・高度化への対応が求められております。また、デジタル化推進の高まりを受け、IT技術者は慢性的に不足しており、人材の確保と育成が課題となっております。

このような環境下において、当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載した各課題への対応を実施することにより、さらなる売上の増大と収益力の向上を目指します。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

2 【主要な設備の状況】

2023年5月31日現在における主要な設備は次のとおりであります。

 

事業所名
(所在地)

設備の内容

帳簿価額(千円)

従業員数
(人)

建物

工具器具備品

合計

本社
(神戸市中央区)

ソフトウエア開発機器等

2,270

2,461

4,731

38

東京テクノロジーセンター
(東京都港区)

ソフトウエア開発機器等

1,815

984

2,800

17

大阪オフィス

(大阪市北区)

ソフトウエア開発機器等

560

560

6

 

(注)1.当社は、情報サービス事業の単一セグメントであるため、セグメントの名称については記載を省略しております。

2.上記の他、主要な賃借している設備として、以下のものがあります。

事業所名

設備等の内容

年間賃借料(千円)

本社

建物(事務所)

15,715

東京テクノロジーセンター

建物(事務所)

13,730

大阪オフィス

建物(事務所)

8,695

 

 

① 【株式の総数】

種類

発行可能株式総数(株)

普通株式

9,000,000

9,000,000

 

 

② 【発行済株式】

種類

事業年度末現在
発行数(株)
(2023年5月31日)

提出日現在
発行数(株)
(2023年8月30日)

上場金融商品取引所名又は登録認可金融商品取引業協会名

内容

普通株式

3,300,000

3,300,000

東京証券取引所
スタンダード市場

単元株式数は100株であります。

3,300,000

3,300,000

 

 

① 【ストックオプション制度の内容】

該当事項はありません。

 

② 【ライツプランの内容】

該当事項はありません。

 

 

(4) 【発行済株式総数、資本金等の推移】

 

年月日

発行済株式
総数増減数
(株)

発行済株式
総数残高
(株)

資本金増減額
 
(千円)

資本金残高
 
(千円)

資本準備金
増減額
(千円)

資本準備金
残高
(千円)

2018年5月25日(注)

△260,000

3,300,000

363,950

353,450

 

(注) 自己株式の消却による減少であります。

 

(5) 【所有者別状況】

2023年5月31日現在

区分

株式の状況(1単元の株式数100株)

単元未満
株式の状況
(株)

政府及び
地方公共
団体

金融機関

金融商品
取引業者

その他の
法人

外国法人等

個人
その他

個人以外

個人

株主数
(人)

3

22

34

20

11

4,008

4,098

所有株式数
(単元)

257

1,137

4,230

2,444

106

24,780

32,954

4,600

所有株式数
の割合(%)

0.78

3.45

12.84

7.42

0.32

75.19

100.00

 

(注) 自己株式188,768株は、「個人その他」に1,887単元、「単元未満株式の状況」に68株含めて記載しております。

 

(6) 【大株主の状況】

2023年5月31日現在

氏名又は名称

住所

所有株式数
(株)

発行済株式
(自己株式を除く。)の総数に対する所有株式数の割合(%)

近 藤 浩 代

兵庫県西宮市 

231,700

7.45

株式会社ディキャピタル

大阪府大阪市北区堂島2丁目2-2

219,800

7.06

宮 崎 正 伸

大阪府泉大津市

217,000

6.97

株式会社サンセイエンジニアリング

東京都武蔵野市西久保1丁目47-15

 

136,000

4.37

GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券株式会社)

PLUMTREE COURT, 25 SHOE LANE, LONDON EC4A 4AU, U.K.
(東京都港区六本木6丁目10-1)

98,300

3.16

MSIP CLIENT SECURITIES
(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社)

25 CABOT SQUARE, CANARY WHARF, LONDON E14 4QA, U.K.
(東京都千代田区大手町1丁目9-7)

71,500

2.30

徳 永 道 太

兵庫県西宮市

43,900

1.41

中 山 慶一郎

東京都港区

39,200

1.26

楽天証券株式会社

東京都港区南青山2丁目6番21号

34,900

1.12

上田八木短資株式会社

大阪市中央区高麗橋2丁目4-2

31,600

1.02

1,123,900

36.12

 

(注) 上記のほか当社所有の自己株式188,768株があります。

 

①【貸借対照表】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前事業年度

(2022年5月31日)

当事業年度

(2023年5月31日)

資産の部

 

 

 

流動資産

 

 

 

 

現金及び預金

2,000,645

1,788,011

 

 

売掛金

125,347

135,065

 

 

有価証券

72,602

 

 

仕掛品

13,580

5,694

 

 

貯蔵品

2,516

2,921

 

 

前払費用

33,575

34,150

 

 

その他

1,792

2,598

 

 

貸倒引当金

125

135

 

 

流動資産合計

2,249,933

1,968,307

 

固定資産

 

 

 

 

有形固定資産

 

 

 

 

 

建物

8,501

9,231

 

 

 

 

減価償却累計額

4,700

5,145

 

 

 

 

建物(純額)

3,801

4,086

 

 

 

工具、器具及び備品

14,512

16,849

 

 

 

 

減価償却累計額

10,865

12,842

 

 

 

 

工具、器具及び備品(純額)

3,647

4,006

 

 

 

有形固定資産合計

7,448

8,093

 

 

無形固定資産

 

 

 

 

 

ソフトウエア

4,155

 

 

 

無形固定資産合計

4,155

 

 

投資その他の資産

 

 

 

 

 

投資有価証券

50,430

452,121

 

 

 

長期前払費用

10,037

9,263

 

 

 

繰延税金資産

19,383

21,015

 

 

 

その他

30,776

32,606

 

 

 

投資その他の資産合計

110,628

515,006

 

 

固定資産合計

118,077

527,255

 

資産合計

2,368,010

2,495,562

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前事業年度

(2022年5月31日)

当事業年度

(2023年5月31日)

負債の部

 

 

 

流動負債

 

 

 

 

買掛金

24,847

15,539

 

 

未払金

19,761

10,676

 

 

未払費用

13,114

13,259

 

 

未払法人税等

74,792

76,945

 

 

未払消費税等

21,804

23,938

 

 

前受金

198

198

 

 

預り金

15,597

16,695

 

 

前受収益

20,717

39,524

 

 

流動負債合計

190,833

196,777

 

固定負債

 

 

 

 

長期未払金

11,590

11,590

 

 

長期前受金

10,520

10,322

 

 

長期前受収益

16,321

50,626

 

 

固定負債合計

38,432

72,538

 

負債合計

229,265

269,316

純資産の部

 

 

 

株主資本

 

 

 

 

資本金

363,950

363,950

 

 

資本剰余金

 

 

 

 

 

資本準備金

353,450

353,450

 

 

 

その他資本剰余金

40,123

48,873

 

 

 

資本剰余金合計

393,573

402,323

 

 

利益剰余金

 

 

 

 

 

その他利益剰余金

 

 

 

 

 

 

繰越利益剰余金

1,390,716

1,666,919

 

 

 

利益剰余金合計

1,390,716

1,666,919

 

 

自己株式

9,500

208,858

 

 

株主資本合計

2,138,739

2,224,333

 

評価・換算差額等

 

 

 

 

その他有価証券評価差額金

5

1,912

 

 

評価・換算差額等合計

5

1,912

 

純資産合計

2,138,745

2,226,246

負債純資産合計

2,368,010

2,495,562

 

②【損益計算書】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前事業年度

(自 2021年6月1日

 至 2022年5月31日)

当事業年度

(自 2022年6月1日

 至 2023年5月31日)

売上高

 

 

 

商品売上高

14,042

20,873

 

製品売上高

1,208,035

1,347,516

 

売上高合計

※1 1,222,077

※1 1,368,390

売上原価

 

 

 

商品売上原価

 

 

 

 

当期商品仕入高

7,794

13,165

 

製品売上原価

395,480

466,588

 

売上原価合計

403,274

479,754

売上総利益

818,803

888,636

販売費及び一般管理費

※2,※3 418,207

※2,※3 445,377

営業利益

400,595

443,258

営業外収益

 

 

 

受取利息

37

36

 

有価証券利息

1,066

2,229

 

受取配当金

20

11

 

投資有価証券売却益

60

 

補助金収入

1,671

 

助成金収入

2,054

3,597

 

その他

300

183

 

営業外収益合計

3,478

7,790

経常利益

404,074

451,049

税引前当期純利益

404,074

451,049

法人税、住民税及び事業税

122,522

132,461

法人税等調整額

1,950

2,471

法人税等合計

120,572

129,990

当期純利益

283,501

321,058