株式会社DNAチップ研究所
(注) 1 当社は、連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については、記載しておりません。
2 持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。
3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第23期の期首から適用しており、第23期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
4 第20期、第21期、第22期及び第23期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在するものの1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。
5 第24期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
6 第23期まで、株主総利回りの比較指標に東証第二部株価指数をを用いておりましたが、2022年4月4日の東京証券取引所の市場再編に伴い廃止されました。このため第24期から比較指標を、継続して比較することが可能な配当込みTOPIXに変更しております。
7 最高株価および最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第二部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所スタンダード市場におけるものです。
当社名誉所長である松原謙一は、長年遺伝子関連の先端研究を行っており、この研究活動の成果を事業化するとともに、高い技術を保持し、かつグローバルな視点からの競争力のある技術を絶えず開発していくことでわが国のバイオ産業の発展に貢献するため、この目的に賛同されたライフサイエンス分野で活躍されている方々の出資、協力を受け、1999年4月1日に当社を設立いたしました。
当社は、DNAチップ(マイクロアレイ)・次世代シークエンス等の遺伝子解析受託並びに関連技術開発を行う「研究事業」と、「肺がんコンパクトパネル」を中心に医療関連機関等に診断関連検査の販売を行う「診断事業」を主な事業の内容としております。
過去3期間における事業別売上高推移は次の表のとおりであります。
(注) 1 数量については、その内容が多岐にわたるため記載を省略しております。
2 売上高には、消費税等は含まれておりません。
(1) 研究事業
研究事業におきましては、大学や公的研究機関、製薬会社等の企業を主要な顧客としてマイクロアレイ、次世代シークエンス実験解析等を行っております。
市場動向に合わせた最新の受託解析の導入、ならびに国家プロジェクトや独自の研究開発などの経験から得られたノウハウを活用し、新規サービスメニューの拡充を図っております。
また、これらの経験に基づき、顧客の目的に合わせた実験デザインの提案、データ解析及びサポートの対応に注力しております。
研究事業の主なサービスには、マイクロアレイ受託解析サービス、次世代シークエンス受託解析サービス及びPCR解析を含むその他遺伝子解析サービスがあり、次のような種類があります。
① マイクロアレイ受託解析サービス
マイクロアレイ受託解析サービスでは大学や公的研究機関、製薬会社等の顧客に積極的な提案型営業を行うとともに、きめ細かなフォローを推進しております。また、新規サービスメニューの拡充を図っております。主要なサービスは以下のとおりです。
・遺伝子発現解析サービス
各種生物種由来のRNAサンプルから、遺伝子発現量を測定し、発現差のある遺伝子の抽出などの解析を行い、データを理解し易いように加工します。
・miRNA発現解析サービス
各種生物種由来のRNAサンプルから、miRNA発現量を測定し、発現差のあるmiRNAの抽出などの解析を行い、データを理解し易いように加工します。
・ゲノム構造解析サービス
CGH(Comparative Genomic Hybridization)解析 / CNV (Copy Number Variation)解析
DNAの微細な領域の構造(欠損、重複、コピー数変化等)を捉えます。
・C3チェックサービス
再生医療研究向けのサービスとなります。癌関連遺伝子領域の検査に適した当社独自開発のカスタムアレイCGH解析により、培養工程におけるゲノムコピー数異常を高精度に検出し、再生医療用細胞の品質評価を実施します。
② 次世代シークエンス受託解析サービス
次世代シークエンサーにより、DNAやRNAを網羅的に解読することで、遺伝子の変異や細胞中の遺伝子の量を測定することができます。当該サービスにおきましては、データ解析とサポートに力をいれております。主要なサービスは以下のとおりです。
・エクソーム解析、全ゲノム解析サービス
遺伝子全体あるいは遺伝子のある領域のみを濃縮して解析することにより、効率的に遺伝子上の変異を検出します。希少疾患の原因やがんの原因となる遺伝子を網羅的に探索することができます。
・エピジェネティクス解析
Chip-seq、DNAメチル化解析により、遺伝子の転写調節にかかるゲノム領域の探索を網羅的に行います。
・RNA-Seq、small RNA-seq(miRNA-seq)
細胞の中のmRNAやmiRNAを含むSmallRNAの配列を解読して、遺伝子の発現量の測定を行います。
・16S rRNA解析、メタゲノムショットガン解析(細菌叢解析)
糞便・唾液・皮膚等のサンプルから次世代シークエンサーを用いて、ヒト腸内や環境中に含まれる細菌叢の同定を行います。
・癌パネル解析
癌遺伝子の特定の領域における遺伝子変異を、次世代シークエンサーを用いて高感度に検出します。
③ その他遺伝子解析サービス
次世代シークエンスと並び注目を集める遺伝子解析サービスとして、「デジタルPCR受託サービス」を提供しています。また多様化する受託解析ニーズに合わせて、生体サンプル(細胞や組織等)からの「核酸(DNA/RNA)抽出サービス」にも力を入れています。
・デジタルPCR受託解析サービス
低濃度のサンプルを使って、高い精度で検量線を作成せずに絶対定量を行うことができ、わずかなコピー数の差の違いを検出することができます。遺伝子の変異解析等に利用されます。
・核酸(DNA/RNA)抽出サービス
細胞や組織等の各種生体サンプルから、マイクロアレイや次世代シークエンスの目的に応じた核酸(DNA/RNA)抽出を行います。
(2) 診断事業
診断事業は、当社が培ってきた遺伝子解析技術を活用して、社会のニーズである「個別化医療」や「未病社会」に対応した以下の検査を社会に広めることを目的とした事業で、医療関連機関や研究機関、企業等を主要な対象顧客としております。診断事業の主なメニューは「EGFRリキッド」及び「肺がんコンパクトパネル 」であります。
「EGFRリキッド」
当社のEGFRリキッドは、がん患者を対象とした低侵襲性(患者さんに特別な負荷を与えることなく採血するだけ)のコンパニオン診断として、イレッサに代表されるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を、血中腫瘍DNAを用いて調べるものです。
これまでの遺伝子検査は、肺生検や手術などにより生体組織や臓器の一部を採取し、DNA検査を行うことにより実施していますが、患者さんの身体への負担が大きいため好ましくありません。代替する手法として血液により検査するのが本検査です。
年間11万人といわれている新規肺がん患者の中で、本検査の対象は6万人とされる腺がん患者のうち半数の約3万人を対象としたものとなります。
本検査は地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターの研究成果をもとに、当社と同機構が共同開発しました。
「肺がんコンパクトパネル 」
当社の肺がんコンパクトパネルは、肺癌患者さんそれぞれの遺伝子異常に対応した個別化医療・精密医療を実現するためのコンパニオン診断検査です。現在、EGFR ALK MET BRAF ROS1 KRAS RET NTRKといったドライバー変異に対応する分子標的薬が上市されており、一括で遺伝子変異の検査が可能なパネル検査の重要性が高まってきております。肺がんコンパクトパネルは、肺癌に特化して薬剤投与につながる遺伝子変異にターゲットを絞り、高感度かつ一括での遺伝子パネルコンパニオン診断を提供いたします。組織生検から抽出する核酸のクオリティは、患者さんの検体ごとによってまちまちですが、クオリティの悪い検体にも対応可能な設計となっています。また、胸水・細胞診といったこれまでにパネル検査の実施が難しかった検体種へ適用することも可能なシステムであり、より多くの患者さんにお薬を届けることができるようになると期待しております。
年間11万人といわれている新規肺がん患者を対象とした初回検査において、パネル検査の普及が進んでおり、対象薬剤および対象遺伝子が増えてきたことから、単一遺伝子検査の積み上げで対応することは困難になってきています。このような状況から、パネル検査の実施割合は今後さらに増えていくことが予想されます。また、手術時の補助療法として分子標的薬を用いることの有用性も示されてきていることや、薬剤耐性時の薬剤切り替えの際の適用補助の検査ニーズも高まっており、コンパニオン遺伝子検査の対象も広がりつつあります。最終的には全肺癌症例の半数程度が実施すると推定し、国内全体で年間5万件規模の市場規模になると予想しております。
本検査は国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学と地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターの共同研究成果をもとに、当社が開発・薬事試験を進めてきました。2022年11月16日に薬事承認を取得し、現在、臨床検査ラボ・メディカルラボラトリー(川崎市)にて保険診療検査サービスを提供しています。
「MammaPrint」
MammaPrintは乳がんの再発リスクを予測する遺伝子検査です。
乳がんの予後診断は大変難しく、術後も再発・転移を防ぐための治療が必要となります。MammaPrintは、手術によって切除されたがん組織の遺伝子発現を調べ、一人一人のがんの再発リスクを明確にします。その結果、予後のリスクをあらかじめ知ることができ、乳がんの体系的な治療計画を立てることが可能となります。
本検査は、Agendia社(本社オランダ)において行われ、当社はMammaPrintの日本国内における販売代理店となっております。
(3) 研究開発
① 次世代シークエンサーを使用したがん診断技術に関する研究開発
EGFRリキッドの技術をさらに改良した、NOIR-SS技術(分子バーコード技術を用いて高感度かつ正確な分子数測定が可能となる超低頻度変異DNAの検出技術)の研究開発に取り組んでおります。これは、複数の遺伝子を、高い精度で変異検査ができる技術です。
この技術の活用範囲として、リキッドバイオプシー(内視鏡や針を使って腫瘍組織を採取する方法に代えて、血液などの体液サンプルを使用する方法)による低侵襲的遺伝子検査、クリニカルシークエンスによる個別化医療、血液からのがん再発の早期発見、免疫チェックポイント阻害剤の効果判定などが期待されております。
肺がんコンパクトパネルで培ったパネル開発・薬事戦略・プログラム医療機器システム構築のノウハウを他癌種のコンパニオンパネル検査へ応用する開発も進めております。肺癌以外でも、複数の薬剤が上市されることで一括パネル検査の需要が高まっている癌種も増えてきており、国内の診療ニーズにマッチしたパネル製品の開発を目指しています。
これらの研究は、国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学及び地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター及び聖マリアンナ医科大学など、国内のがん関連の研究機関・病院と共同で開発を進めております。
② RNAチェックの研究開発
大学・研究機関との共同研究等により、将来の診断・創薬に役立つ遺伝子の働きを検査する新しい方法を開発しております。その方法は、“RNAチェック”(遺伝子発現検査)と呼び、遺伝子の「変異」を調べるDNA検査(遺伝子検査)とは別の検査方法で、遺伝子の種類と量を調べる検査です。その検査対象は、人、動物、植物、微生物、細菌(ウィルス)など生物の血液・組織等の検体であり、現在、このRNAチェックに基づいた次の研究開発を進めております。
主なものとしましては、学校法人慶應義塾大学、学校法人埼玉医科大学及び学校法人北里大学との共同による抗リウマチ薬の効果予測についての研究や、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターとの共同によるうつ病の早期発見を目的としたバイオマーカー研究などを進めております。これらの共同研究を通して、将来の診断・創薬に役立つRNAチェック技術の実用化に向けた研究を進めております。
なお、研究開発活動の詳細につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 6 研究開発活動」をご参照ください。
事業の系統図は次のとおりであります。

該当事項はありません。
(1) 提出会社の状況
2023年3月31日現在
(注) 1 従業員数は当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員であります。
2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3 全社(共通)は、総務・経理等管理部門の従業員であります。
(2) 労働組合の状況
労働組合の結成はありませんが、必要の都度従業員代表と意見交換を行っております。その結果、労使関係は相互信頼のもと安定的に維持されております。
当社の事業分野でありますライフサイエンス分野は、近年、ヒトiPS細胞関連の臨床試験が盛んに行われており、再生医療の実用化が本格化してきました。また、再生医療分野に異業種を含めた様々な業者が参入するなど、再生医療の産業化が本格的なステージに入ってきました。今後再生医療分野の市場規模は大きく拡大することが予想されております。最新のがん治療におきましては、従来の三大治療である「手術(外科治療)」、「薬物治療(抗がん剤治療)」、「放射線治療」に加えて、「免疫療法(体の中に侵入した異物を排除するために、生まれながらに備えている能力を高め、がんの治療を行う方法)」が注目されています。近年、免疫療法に用いる「免疫チェックポイント阻害剤」が医薬品として承認され、従来自由診療であった免疫療法による治療が一部保険診療可能となり、患者負担が少なく治療を受けることが可能となりました。
また、遺伝子解析技術の向上により、今後がん予防や治療に新たな展開が期待されております。
このような環境下において、当社は、経営方針を「開発力強化と事業化加速」と定め、既存の研究受託事業の成長と、新しい診断事業におけるEGFRリキッド及び肺がんコンパクトパネルのオンコロジー分野でのコンパニオン診断の事業化に取り組んでおります。現在、血液を用いて肺がんの遺伝子変異検査を行うEGFRリキッドをコンパニオン診断として、2019年7月10日に厚生労働省へ承認申請を行い、2020年7月31日に高度管理医療機器製造販売承認(以降薬事承認といいます)を取得いたしました。薬事申請・承認プロセスにおける経験・ノウハウを活かし、オンコロジー分野での検査開発をさらに加速していきます。また、次の主力検査として、複数の肺がんドライバー遺伝子変異を、高感度かつ一括で検査可能な肺がんコンパクトパネルの開発を進め、2021年10月28日に厚生労働省へ承認申請を行い、2022年11月16日に薬事承認を取得しました。当社は、EGFRリキッドの市場への普及、および肺がんコンパクトパネルの継続的な製品改良と市場への普及を最優先事項として取り組んでおります。また、2023年1月24日に三井化学株式会社と資本業務提携契約を締結したことにより、当社が有するDNA、RNAを中心とする遺伝子解析技術と三井化学が有するライフサイエンス関連技術とのシナジー効果で、より高精度・高品質な診断ツールの開発が可能になり今後の診断事業の加速化に繋がることが期待できます。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 肺がんコンパクトパネルの製品改良および市場への普及に向けた取組み
当社は、肺がんコンパクトパネルの市場への普及を重点課題と捉え各種薬事試験と普及活動を進めております。2022年11月16日にEGFR ALK ROS1 METの4遺伝子を搭載した製品として薬事承認を取得し、現在、国内のマルチコンパニオン検査としては、国産初となるプログラム医療機器検査サービスをメディカルラボラトリー(川崎市)にて提供しています。弊社検査ラボに一括集約・アッセイ解析を実施するLDT検査として、大手検査会社3社(株式会社ビー・エム・エル社、株式会社エスアールエル社、株式会社LSIメディエンス)での検査取り扱いが開始されております。また、BRAF RET KRAS の3遺伝子をさらに追加する追加承認申請を2022年12月16日に実施しました。7遺伝子がCDx対象として搭載されている製品としての追加申請部分の薬事承認、7遺伝子製品の保険収載に向けた取組みを実施してまいります。
(2) EGFRリキッドの臨床現場への普及
当社は、EGFRリキッドの薬事試験を優先事項として進めてきた結果、2020年7月に薬事承認を取得し、2021年5月21日に保険収載いたしました。今後、検査サービスの開始、さらなる有用性の検証を通した製品価値の向上、市場への普及を実施してまいります。
(3) 診断メニューの拡充
当社の重点課題として、診断事業の拡充があります。診断サービス市場は、国内外で大きな伸びが期待されており、今後の当社事業の大きな柱と位置付けております。このため、EGFRリキッド及び肺がんコンパクトパネルの新規機能追加と、他がん種へのコンパクトパネルシステムの適用など新規検査メニューの開発を積極的に行ない、診断メニューの拡充を推進してまいります。
(4) 人材の確保
大学、公的病院等と共同研究開発を進めていく上では、専門的知識と技術を有した人材の確保及び育成とその定着を図ることが重要であると認識しております。経験豊富な研究者の確保を進めておりますが、今後新規サービスメニュー等新たな研究開発を進めていく上で、さらなる優秀な研究者の確保が必要であり、これら人材の確保に努めてまいります。また、システム開発、臨床検査技師を中心に遺伝子検査にフォーカスした人材補強と各種教育を進めてまいります。
(5) 営業体制の強化
当社の営業部門は、人員もまだ少数であり、充分な体制を整えているとは言い難い状況にあります。診断事業への展開を考慮すると、提案型営業など技術部門とより密接に連携した受注活動が必要であり、営業要員の増員により、顧客ニーズの迅速な取り込みはもとより、顧客第一主義の徹底を図り、製販一体となった受注活動を推進してまいります。
(6) 特許対応
遺伝子関連事業においては、競合会社に対抗していくためには特許権その他の知的財産権の確保が非常に重要であると考えております。当社は、これまでDNAチップ開発のための基礎特許を中心に特許出願を行ってまいりましたが、今後は大学、公的病院等と共同研究開発を進めている診断関連コンテンツを中心に積極的に特許権として取得する方針です。このため、共同研究開発契約でも契約先と共同で特許出願を行う権利確保を標準としております。戦略特許に値するものについては、当社単独での出願も行う方針です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 技術革新について
当社が属しているライフサイエンス関連市場分野は、技術革新が著しく新技術の研究開発が盛んに行われております。当社は、最新の技術を利用したサービス展開を主眼に研究開発を行っておりますが、技術革新により他社が同種のサービスを異なる技術を利用して開始し、異なる付加価値が追加された場合や、当社よりも大幅に安価なサービスが市場に提供された場合、期待どおりの収益をあげることができない可能性があります。
(2) 経営上の重要な契約等
当社は当事業年度末現在、「5.経営上の重要な契約等」に示すとおりビジネス展開上重要と思われる契約を締結しております。契約先とは密接な関係があり、相互利益のもとに研究開発を推進していることから、当該契約の解消の可能性は低いと考えておりますが、契約が継続されない場合は当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 知的財産権について
① 特許について
当社が事業を営んでいるバイオ業界は技術革新が著しく、特許が非常に重要視されております。
当社が現在保有している特許は19件でありますが、これ以外に出願中のものが8件あります。しかしながら、現在出願している特許がすべて成立するとは限らず、他社特許に抵触した場合等、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社は他社特許に抵触するおそれがないよう細心の注意を払っております。
② 共同研究における特許の帰属について
当社と大学及びその他公的機関に属する研究者との間で実施する共同研究において、その成果となる知的財産権に関しては、共同研究開発契約により各々の権利の持分を定めております。今後、大学等の特許管理体制の方針転換が行われた場合、新たな費用発生が生じる可能性があり、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 法規制等について
当社は遺伝子検査サービスの展開や開発において、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」や「個人情報の保護に関する法律」等の法規制に抵触しないよう進めておりますが、法規制の改正その他規制の強化などの制約を受けた場合、当該サービスの開始の遅れや新たな費用発生など、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社は法規制等に関する動向を注視し、遺伝子検査サービスの開発を行っております。
(5) 政府のバイオ関連政策について
大学及びその他公的機関からの研究受託は、当社の売上高の大きな部分を占めております。政府のバイオ関連政策の変更に伴い、大学及びその他公的機関の研究予算が削減された場合は当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
新型コロナウイルス感染症の影響については、現時点における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへの影響は僅少でありますが、今後のコロナウイルスの収束状況によっては売上の計上時期がずれ込む可能性があります。
(6) 小規模組織であることについて
当社は当事業年度末現在で、従業員36名の小規模組織であります。当社は、業務遂行体制の充実に努めてまいりますが、小規模組織であり、限りある人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、当社の業務に支障をきたすおそれがあります。
(7) 提出会社が将来にわたって事業を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象
将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況といたしまして、2006年3月期より、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しております。当事業年度におきましても営業損失362百万円、経常損失365百万円、当期純損失362百万円、営業キャッシュ・フロー△336百万円を計上しております。
(8) 提出企業が将来にわたって事業を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象を解消し、又は改善するための対応策
「(7) 提出企業が将来にわたって事業を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象」の記載に基づき、中期事業計画におきまして、研究事業では、次世代シークエンス解析ビジネスの拡大等により持続的成長・収益化を、また、診断事業では肺がんコンパニオン診断の事業拡大を目指してまいります。
その中で次事業年度は以下の施策に取組み、700百万円の売上確保を目標としております。
①研究事業
ⅰ.当社のノウハウを活用した提案型研究受託の営業強化
提案型研究受託の営業強化を図り、従来の大学・研究所中心のビジネスに加え、製薬会社等の企業向けビジネスの拡大を図ってまいります。特に、カスタムパネル等を用いた遺伝子変異解析、small-RNA-SeqやmRNA-Seq等の遺伝子発現解析、微量サンプルからの解析等、独自技術を用いた研究受託解析に注力してまいります。
ⅱ.実験デザインの提案、検体の受領からデータ解析まで、顧客ニーズに応じた一気通貫の大型案件の受注確保
大型案件の受注を確実に確保し、売上の拡大を図ってまいります。バイオ分野の研究受託は、実験デザインが非常に重要であり、実験を行う前のデザインコンサルテーションにまで踏み込んだサービスを行い、多検体での解析受託の受注へつなげてまいります。
ⅲ.試薬や受託等の外部企業との連携強化
最新の技術を取り入れるため、新しい試薬、マシンなどの導入を通じて、他社との販売連携を強化し、受注件数を拡大してまいります。
ⅳ.新サービスメニュー開発によるメニューの差別化
微量サンプルや臨床検体などからの解析や、情報解析を駆使したサービス等、お客様の要望の高い新サービスメニューを開発し、他社との差別化を図りながら受注の拡大を図ってまいります。
②診断事業
ⅰ.肺がんコンパクトパネルの薬事承認・公的医療保険適用による事業化
2021年10月28日に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して肺がんコンパクトパネルの薬事申請を行い、2022年11月16日に薬事承認を取得しました。さらに、2023年1月16日に保険適用の申請を行い、2023年2月11日より保険診療検査サービスを提供しています。また、共同研究による臨床有用性の評価と製品価値の向上を引き続き実施し、新たに上市される新規分子標的薬剤の追加試験・追加申請も実施していきます。製品改良の第一弾として、2022年12月16日には、BRAF(V600E)、RET融合遺伝子、KRAS遺伝子(G12C)の3遺伝子のコンパニオン診断を追加する一部変更申請を実施しました。また、共同研究により得られた成果を肺癌学会などの学術集会での企業セミナーにて公開し、共同研究でさらなる臨床有用性を示していくことにより、各種ガイドラインへの肺がんコンパクトパネル検査の掲載を目指し、製品特徴の周知及び臨床現場への浸透を推進していきます。細胞診を対象としたコンパクトパネルの活用については、聖マリアンナ医科大学との単施設試験により、その有用性を示してきました。現在は多機関共同試験(cPANEL試験)により、多施設での有用性評価のフェーズへと移行し、検体採取の標準化を推進していきます。2023年3月には細胞診検体の目標症例数の集積が終了し、現在データ解析が行われております。本検査は、2023年度上半期中の7遺伝子製品の追加薬事承認を目指しており、全国での普及と拡販体制強化に向けて、検査センター及び製薬企業との協業体制の構築に注力しております。
ⅱ.EGFRリキッドの臨床現場への普及
EGFRリキッドの公的医療保険適用後の市場への普及に向けた活動を行っております。
ⅲ.新規診断検査メニューの開発
今後は、EGFRリキッド・肺がんコンパクトパネルに続く新たな診断検査の開発を進めてまいります。
ⅳ.MammaPrint及びBluePrintの販売拡大
MammaPrint及びBluePrintの販売拡大により、従来以上の売上を獲得することに注力いたします。
v.着床前胚染色体検査(PGT-A/PGT-SR)の拡大
新規検査メニューとして、今年度より着床前胚染色体検査(PGT-A/PGT-SR)の準備を開始しております。
ⅵ. 研究用検査サービスの提供
リキッドバイオプシーの独自技術を中心とした研究用検査サービスおよびAI駆動診断解析コンサルティングサービスを提供し、研究用検査・共同研究を通した検査顧客の開拓、さらには次の診断技術のシーズ確立につなげていきます。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当事業年度における我が国経済は、年初から春先までは「まん延防止等重点措置」で欧米に比べ脱コロナ・ウィズコロナで出遅れ、対ロシア制裁の影響による物価上昇が個人消費の回復を遅らせながらも、その間設備投資が堅調拡大を維持し景気を下支えしました。夏以降のコロナ感染拡大が収束した後はウィズコロナに移行、政府の支援策もあり個人消費は持ち直すも、年末にかけては海外景気の悪化を受けてモノの輸出が減少し、中国のゼロコロナ政策も混乱要因となりました。2023年3月には昨年から続く世界的な金融引き締めによる利上げの影響で米国の金融機関が破綻するなど金融不安が生じつつも、今後中国のゼロコロナ政策解除に伴う中国需要の復活やコロナ禍による経済社会活動への制約がほぼ解消され景気が感染状況に左右されないアフターコロナ期へ移行することで国内経済が緩やかに回復することが期待されます。
当社が属するヘルスケア分野は、高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に需要期待が高まっております。政府も成長戦略の一つと位置付けており、ヘルスケア産業の活性化は今後も引き続き見込まれております。
バイオ業界では、がんゲノム医療時代の幕開けと言える話題として、2019年6月に患者のがん細胞の遺伝子変異を調べて、最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」の遺伝子検査システムに公的医療保険が適用になりました。対象になるのは、原発不明がん、標準治療を終えたがんや希少がんの患者で、これまでは限られた医療機関において、自費で高額の費用をかけ、わずかな可能性にかけて検査を受け、使える薬を探っていたものが、公的医療保険を利用して全国の医療機関で広く検査を受けられるようになりました。
このような環境下において、当社は、経営方針を「開発力強化と事業化加速」と定め、既存の研究事業の成長と、新しい診断事業におけるEGFRリキッド及び肺がんコンパクトパネルといった製品を中心に、オンコロジー分野でのコンパニオン診断の事業化に取り組んでおります。現在、血液を用いて肺がんの遺伝子変異検査を行う、EGFRリキッドをコンパニオン診断として、2019年7月10日に厚生労働省へ承認申請を行い、2020年7月31日に高度管理医療機器製造販売承認(以降薬事承認といいます)を取得し、2021年5月21日に未固定組織を対象とした検査を、同年8月1日には血漿を対象とした検査の保険算定が開始となりました。薬事試験・申請・承認プロセスにおける経験・ノウハウを活かし、オンコロジーを中心とした診断分野での検査開発をさらに加速してまいります。また、次の主力検査として、複数の肺がんドライバー遺伝子変異を、高感度かつ一括で検査可能な肺がんコンパクトパネルを開発し、薬事試験を進めてきておりました。本製品は、2021年10月28日に薬事申請を行い、2022年11月16日に薬事承認を取得、2023年1月16日に保険適用の申請を行い、2023年2月11日より保険検査サービスを提供しています。当社は、肺がんコンパクトパネルを肺癌治療薬の開発状況に合わせ継続的に製品改良を重ね、製薬企業・検査センターと連携による販売促進活動を通して、本検査を市場へ普及させることを最優先事項として取り組んでおります。
このような状況下において、当事業年度の経営成績は、ともに前事業年度よりも売上高が減少し、売上高は327百万円(前年同期比76.5%)となりました。利益面では、営業損失362百万円(前年同期166百万円)、経常損失365百万円(前年同期138百万円)、当期純損失362百万円(前年同期134百万円)となりました。
財政状態におきましては、当事業年度末における総資産の残高は、前事業年度末に比べ18百万円減少し871百万円となりました。
また、キャッシュ・フローの状況におきましては、当事業年度末における現金及び現金同等物の期末残高は前事業年度末に比べ213百万円減少し275百万円となりました。
①経営成績の状況
当事業年度における経営成績の状況は以下のとおりであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は、327百万円(前年同期比76.5%)となりました。セグメント別の状況は以下のとおりです。
ⅰ.研究事業
研究事業におきましては、主な事業として受託解析サービスを行っております。大学や公的研究機関、製薬会社等の企業を主要な顧客として、遺伝子関連解析の各種サービスを提供しております。主なサービスは、マイクロアレイ受託解析サービスと次世代シークエンス受託解析サービスがあります。両サービスのどちらも大学や公的研究機関、製薬会社等の企業に対し積極的な提案型営業を行い、きめ細やかなフォローを推進しております。また、各種受託解析の実績から顧客の目的に合わせた実験デザインの提案、データ解析及びサポートに力を入れるとともに、顧客ニーズに合わせた新規サービスメニューの拡充を図っております。また、核酸の抽出は遺伝子検査の非常に重要な最初のステップであり、当社の長年の研究開発の経験を元に、非常にクオリティの良い核酸抽出サービスを展開しています。
また、特に国の施策としても注目されている次世代シークエンスを活用した、「がんゲノム解析」や「遺伝子パネル解析」「網羅的な遺伝子解析」「マイクロRNA解析」を行う受託サービスにも注力しております。さらに「デジタルPCR受託サービス」等、多様化する研究ニーズに合わせた遺伝子解析メニューを展開しております。
いずれのサービスにつきましても、他社との差別化を意識し、多様化するユーザーの各種ニーズに応えることができる体制の構築と、クオリティの高いサービス内容をお客様に提供すべく取り組んでおります。
当事業年度の研究事業は、マイクロアレイ受託解析サービスが次世代シークエンス受託解析サービスに移行する傾向が顕著となり、主としてその影響により売上が大幅に減少いたしました。その結果、当事業年度の研究事業の売上高は297百万円(前年同期比78.9%)となりました。
診断事業におきましては、血液を用いて肺がんの遺伝子変異を検査する、EGFRリキッド及び肺がんの分子標的薬の適用となる遺伝子異常を一括検査可能な肺がんコンパクトパネルの市場への普及を当社の最優先事項として取り組んでおります。EGFRリキッドは、2020年7月31日に薬事承認を取得し、2021年5月21日に未固定組織を対象とした検査を、同年8月1日には血漿を対象とした検査の保険算定が開始となりました。この検査は、低侵襲的な血液遺伝子検査により、血中に微量に存在する血中腫瘍DNA上のEGFR変異を次世代シークエンス法により高感度に検出するリキッドバイオプシー検査です。肺がん組織の生検(気管支鏡検査、CTガイド下生検)は、侵襲性が高く患者さんへの負担も大きいことから、リキッドバイオプシー検査への期待が高まっています。また、EGFRリキッドに続いて、肺がん組織検査に特化した高感度な一括遺伝子検査パネル(肺がんコンパクトパネル)を開発し、2021年10月28日に薬事申請を行い、2022年11月16日に薬事承認を取得しました。肺がんコンパクトパネルは、EGFR・ALK・ROS1・BRAF・MET・KRASの薬剤適用の対象となっている遺伝子変異に加え、近い将来分子標的治療薬の上市が見込まれているHER2などのターゲット遺伝子の変異を検出します。初回の申請ではまず、EGFR・ALK・ROS1・METの4つの遺伝子変異に対応する分子標的治療薬のコンパニオン診断システムとして薬事申請を行い、薬事承認を得ました。また、2022年12月16日にBRAF(V600E)、RET融合遺伝子及びKRAS遺伝子(G12C)への適用を追加申請したことで、今後のコンパニオン診断対象を拡大していく予定です。現在本製品は、保険収載され検査サービスを提供しております。本手法は、高感度であることから細胞診(液性)を対象とした解析も可能であり、学校法人聖マリアンナ医科大学との共同研究でその有用性を示してきました。現在、多施設での評価を目的としたcPANEL多機関共同研究(学校法人聖マリアンナ医科大学及び地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンターを主幹施設とした全国から7施設)を実施しており、細胞診を対象とした肺がんコンパクトパネルの有用性評価と検体採取の標準化を進めています。2022年9月30日までに集積した検体を対象に中間解析評価を実施しており、2022年12月の肺癌学会学術集会にて成果を発表し、多機関の検証においても高い成功率が示されました。本多機関共同試験の症例エントリー及び検体集積は順調に進行し、2023年3月に目標症例数に到達し、現在学校法人聖マリアンナ医科大学でデータ解析が実施されております。本成果は2023年度の学術集会にて成果が公表される予定です。
2022年10月3日より臨床検査サービスの強化の一環として神奈川県川崎市に新ラボラトリーを開設し、肺がんコンパクトパネルを中心とした臨床検査を全国から検体を収集し、一括集約型Laboratory Developped Test(LDT)ラボとして検査サービスを提供しております。各種自動化及びシステム化による検体・情報管理システムLaboratory Information Management System(LIMS)を導入し、効率的でトレース可能かつ頑健な臨床検査システムの構築を構築し、日々改良を続けております。
診断事業の新規検査メニューとして、今年度より着床前胚染色体検査(PGT-A/PGT-SR)の準備を開始しております。「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」における研究分担施設(解析実施施設)として日本産科婦人科学会倫理委員会により承認されております。2022年4月より不妊治療の保険適用が始まり、PGT-Aは先進医療での試験を経て保険適用を目指すという方針が示されています。日本産科婦人科学会が主導する検査の枠組みに準拠した形で、検査サービスを提供していく予定としております。2023年度内に、先進医療Bの枠組みでの検査サービス提供を実施する予定としております。
また、希少変異検出の技術を発展させたNOIR-SS技術(分子バーコード技術を用いて高感度かつ正確な分子数測定が可能となる超低頻度変異DNAの検出技術)により、高感度に複数遺伝子を一括解析可能なリキッドバイオプシー検査サービスを研究用検査として提供しております。希少変異検出の独自特許技術及び薬事試験を通して培ったノウハウ、プログラム医療機器検査システムの構築ノウハウ、クリニカルシークエンスグレードでの精度管理・レポートシステムを活用し、リキッドバイオプシー分野・免疫プロファイル/バイオマーカー開発・抗体医薬開発分野での研究推進・医療現場での遺伝子解析の普及促進に貢献してまいります。また、大規模な解析結果から有益な情報を効率的に導き出すビッグデータ解析、AI技術開発も進めており、次世代型診断技術開発への応用やシーズ探索の効率化、検査系システムの頑健化・効率化に繋げていきます。
当事業年度の診断事業はコンパクトパネル事業の稼働準備に多くの経営資源を投入したため、売上高は30百万円(前年同期比59.1%)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、前事業年度338百万円から24百万円増加し363百万円、販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ71百万円増加して327百万円となりました。
(営業損失)
前事業年度は営業損失166百万円であったのに対し、当事業年度は営業損失362百万円と営業損失額は196百万円増加いたしました。
(営業外収益)
営業外収益は前事業年度は補助金収入等が28百万円ありましたが、当事業年度は0百万円となりました。
(営業外費用)
前事業年度は為替差損が1百万円ありましたが、当事業年度は第三者割当増資に伴う株式交付費等が2百万円ありました。
(経常損失)
前事業年度は経常損失138百万円であったのに対し、当事業年度の経常損失は365百万円となりました。
(特別利益)
前事業年度は新株予約権戻入益が16百万円あったのに対し、当事業年度は新株予約権戻入益が7百万円、物品受贈益が0百万円ありました。
(特別損失)
前事業年度は固定資産の減損損失が10百万円あったのに対し、当事業年度は固定資産の減損損失が4百万円ありました。
(当期純損失)
前事業年度は当期純損失134百万円であったのに対し、当事業年度は、当期純損失362百万円となりました。
なお、当事業年度の経営成績をふまえて、次事業年度におきましては以下の取組みを実施し、700百万円の売上確保を目指してまいります。
研究事業
・当社のノウハウを活用した提案型研究受託の営業強化
・実験デザインの提案、検体の受領からデータ解析まで、顧客ニーズに応じた一気通貫の大型案件の受注確保
・試薬や受託等の外部企業との連携強化
・新サービスメニュー開発によるメニューの差別化
診断事業
・肺がんコンパクトパネルの薬事承認・公的医療保険適用による事業化
・EGFRリキッドの臨床現場への普及
・新規診断検査メニューの開発
・MammaPrint及びBluePrintの販売拡大
・着床前胚染色体検査(PGT-A/PGT-SR)の拡大
・研究用検査サービスの提供
取組みの詳細は、上記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク(8) 提出企業が将来にわたって事業を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象を解消し、又は改善するための対応策」をご参照ください。
② 財政状態
当事業年度末における総資産の残高は、前事業年度末に比べ18百万円減少し871百万円となりました。その主な要因は次のとおりです。
(流動資産)
流動資産は、前事業年度末に比べて185百万円減少し、525百万円となりました。これは、現金及び預金が213百万円、前払費用が17百万円それぞれ減少し、売掛金が9百万円、仕掛品が6百万円、未収消費税等が26百万円それぞれ増加したことなどによるものです。
(固定資産)
固定資産は、前事業年度末に比べて166百万円増加し、346百万円となりました。これは、有形固定資産が122百万円、無形固定資産が33百万円、投資その他の資産が33百万円それぞれ増加し、固定資産に係る減価償却費19百万円、減損損失4百万円による減少の影響などによるものです。
(流動負債)
流動負債は、前事業年度末に比べて22百万円増加し、121百万円となりました。これは、買掛金が7百万円、前受金が21百万円それぞれ増加し、未払金が4百万円、未払消費税が6百万円それぞれ減少したことなどによるものです。
(固定負債)
固定負債は、前事業年度末に比べて28百万円増加し、38百万円となりました。これは、新規ラボラトリーの移転に関連し発生した資産除去債務28百万円によるものです。
(純資産)
純資産は、前事業年度末に比べて69百万円減少し710百万円となりました。これは、第三者割当増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ139百万円、特定譲渡制限付株式報酬制度の導入により資本金及び資本準備金がそれぞれ10百万円増加し、当期純損失による利益剰余金362百万円の減少などによるものです。
当事業年度末における現金及び現金同等物の期末残高は前事業年度末に比べ213百万円減少し275百万円となりました。その主な要因は、税引前当期純損失による減少360百万円のほか、減価償却費の発生17百万円、減損損失の発生4百万円、売上債権の増加6百万円、前払費用の減少24百万円、仕入債務の増加6百万円、有形・無形固定資産の取得による支出126百万円、株式の発行による収入278百万円などによるものです。当事業年度における各項目の状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前事業年度では72百万円の支出となったのに対し、当事業年度は336百万円の支出となりました。主な要因は、収入では減価償却費17百万円及び減損損失4百万円、研究施設及び事務所の2020年1月から2022年12月までの賃借料(3年分)の前払いなどによる前払費用の減少24百万円、仕入債務の増加6百万円、前受金の増加21百万円、支出では税引前当期純損失360百万円、売上債権の増加6百万円、棚卸資産の増加8百万円、未払費用の減少17百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前事業年度は58百万円の支出に対し、当事業年度は155百万円の支出となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出93百万円、無形固定資産の取得による支出32百万円、敷金の差入れによる支出29百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、前事業年度は収入、支出ともに発生いたしませんでしたが、当事業年度は第三者割当増資による収入278百万円が発生いたしました。
④ 重要な会計上の見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 生産、受注及び販売の状況
当事業年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
当事業年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、仕入価格によっております。
③ 受注実績
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当事業年度は研究事業では次世代シークエンス受託解析サービスの受注が前年より大幅に増加した影響で、受注残が前年度470.9%の伸びとなりました。また、診断事業では診断受託の受注が前年より大幅に増加した影響で、受注残が前年比299,350.0%となりました。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
(1) 業務提携契約
(2) 当社が許諾を受けたライセンス契約
(3) 当社が許諾を与えたライセンス契約
(4) 共同研究契約
(5) 売買契約等
2023年3月31日現在
(注) 1 現在休止中の設備はありません。
2 本社及び営業所(研究施設及び事務所等)は賃借しており、年間賃借料(契約額)は62,614千円であります。
3 主要なリース設備はありません。
4 帳簿価額は減損損失控除後の金額であります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
(注)1 減資によるものです。
2 新株予約権の行使によるものです。
3 第4回新株予約権(第三者割当による行使価額修正条項付新株予約権)の行使によるものです。
4 当社取締役(監査等委員を除く)及び従業員に対する譲渡制限付株式報酬としての新株発行によるものです。
発行価格503円 資本組入額251.5円
主な割当先 当社の取締役2名 当社の従業員33名
5 第三者割当増資によるものです。
発行価格535円 資本組入額267.5円
主な割当先 三井化学株式会社
2023年3月31日現在
(注)自己株式137株は、「個人その他」に1単元、「単元未満株式の状況」に37株含まれております。
2023年3月31日現在
1 報告セグメントの概要
当社の報告セグメントは、当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。
当社は、受託解析及び関連技術の開発を行う「研究事業」とRNAチェックの技術を利用した診断サービスの開発や販売を行う「診断事業」を主な事業の内容としており、この事業区分ごとに包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しております。
従って、当社は事業区分を基礎としたセグメントから構成されており、「研究事業」及び「診断事業」の2つを報告セグメントとしております。