株式会社リクルートホールディングス
(注) 当社は、IFRSに基づいて連結財務諸表を作成しています。
(2) 提出会社の経営指標等
(注) 最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部における株価を、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場における株価を記載しています。
2 【沿革】
(注1) ※は連結子会社(2023年3月31日現在)です。
(注2) 表内の「現」は、2023年3月31日現在の名称です。
3 【事業の内容】
当社グループは、1960年に日本において大学新聞に企業の求人広告を掲載し、学生に求人情報を提供することから始まりました。設立以来、主に個人ユーザーと企業クライアントを結びつけるプラットフォームを創造し運営しています。
現在は、テクノロジーとデータを活用し、マッチングの更なる効率性向上と高速化に注力し、グローバル市場における個人ユーザーに最適な選択肢を提供し、企業クライアントの更なる業務効率化を支援しています。
また当社グループは、個人ユーザーのプライバシー保護を含めたデータセキュリティ・プライバシー対応の強化を企業活動の重要な基盤として位置づけ、体制や施策を整備しています。
当社グループは、HRテクノロジー、マッチング&ソリューション及び人材派遣の3つの戦略ビジネスユニット(Strategic Business Unit、以下「SBU」)ごとに統括会社を設置した経営体制により、各SBUが迅速に事業戦略を遂行すると同時に、当社グループ経営戦略であるSimplify Hiring、Help Businesses Work Smarter、そしてProsper TogetherをSBU間で連携しながら遂行しています。当社が持株会社としての機能の集中と強化を図り、戦略の策定と推進、適切なグループガバナンスやモニタリングの実行により、更なる企業価値の向上を実現することを目指しています。当連結会計年度末において、当社の連結子会社は257社、関連会社は8社です。
(1) セグメント別事業内容
① HRテクノロジー事業
HRテクノロジー事業は、Indeed、Glassdoor及びその他の関連する事業で構成されています。
Indeed及びGlassdoorは求職者が求人情報を検索したり、企業に関する情報を収集したりすることができるオンライン求人マッチングプラットフォームです。Indeedは「We help people get jobs」を、Glassdoorは「We help people everywhere find a job and company they love」をミッションとして掲げ、求職者が理想の仕事を見つけ、求職活動に成功することがIndeed及びGlassdoorのミッションの実現に繋がっています。
Indeedは、アグリゲート技術と独自の検索アルゴリズムによる最も適切な求人情報を検索結果として提供することにより、個人ユーザーの求職活動に変革をもたらしました。そして、毎月3億3,000万人(注1)のユニークビジター及び年間300万社(注2)の企業クライアントが利用する世界最大の求人情報サイト(注3)になっています。Glassdoorは求人情報にユーザー投稿による企業や雇用条件等のレビューを組み合わせることによって、職場の透明性を高め、求職者の仕事や企業の検索や評価の方法に変革をもたらしています。この結果、Glassdoorは個人ユーザーの投稿による企業レビューや見識を提供するオンライン求人マッチングプラットフォームのリーダーとして認識されるようになり、毎月5,500万人(注4)の求職者に利用されています。
Indeed及びGlassdoorでは、求職者が求人情報を見つけ、履歴書及びプロフィールを開示し、企業情報やそのレビューを調べ、ビデオ面接や電話面接のスケジュールを設定し受けることができるようにする等、求職活動を支援する一連の機能を提供しています。企業クライアントは、求人広告の掲載や採用のための企業ブランディング等を双方のプラットフォームを通して行うことで、より効率的に多様な求職者へのアプローチが可能になります。また、IndeedとGlassdoorは、ペイフォーパフォーマンスモデルを採用する求人広告を通じて効率的な採用活動を支援すると同時に、ソーシング、スクリーニング、採用候補者とのやり取りや面接といった採用プロセスに係るサービスを提供しています。結果として、求職者が仕事を見つけ、企業クライアントが優秀な人材を見つけることができる、グローバル人材マーケットプレイスを構築しています。
(注1) 社内データに基づく2022年10月から2023年3月までの期間にIndeedのウェブサイトを訪問したクッキーIDの月間平均数
(注2) 2023年3月時点における直近12ヶ月のアクション数に基づく社内データ
(注3) comScoreに基づく2023年3月の訪問数
(注4) Google Analyticsを用いた社内データに基づく2022年10月から2023年3月までの期間におけるGlassdoorのウェブサイトを訪問したクッキーIDの月間平均数
② マッチング&ソリューション事業
マッチング&ソリューション事業は日本国内において、住宅、美容、旅行、結婚、飲食、その他の各事業分野に合わせた企業クライアントの集客・顧客管理、決済にわたる事業運営に係る各種ソリューションを提供する販促領域、個人ユーザーの求職活動及び企業クライアントの採用活動支援サービスを提供する人材領域で構成されています。
両領域で、個人ユーザーと企業クライアントを結ぶマッチングプラットフォーム、テクノロジーやデータを駆使して企業クライアントの業務運営の効率化を支援するSaaS (Software as a Service)を提供しています。これらによって日本国内の、企業クライアントの事業運営を支える「エコシステム」を構築し、企業クライアントの生産性と収益性の向上を同時に実現することを目指しています。
また、マッチング&ソリューション事業は、個人ユーザーのプライバシーを尊重し、パーソナルデータ指針に則ったデータ活用を遵守し、オンラインプラットフォーム及び紙メディア上で、個人ユーザーが安心して利用できる利便性の高いサービスを通じて、最適な選択肢を提供しています。
販促領域が提供するマッチングプラットフォームは、住宅分野はSUUMO、美容分野はHotPepper Beauty、旅行分野はじゃらん、結婚分野はゼクシィ、飲食分野はHotPepperグルメ等があり、主にマッチングプラットフォームへの広告掲載課金体系を採用していますが、旅行分野等一部の分野はトランザクション課金を採用しています。
人材領域では、マッチングプラットフォームとして、就職活動を行う学生向けのリクナビ、転職活動を行う社会人向けのリクナビNEXT、アルバイトやパート等の求職者向けのタウンワーク等を運営しています。また、リクルートエージェントやリクルートダイレクトスカウト等を通じて人材紹介サービスを提供しています。
マッチング&ソリューション事業は、決済アプリであるAirペイ、POSレジアプリであるAirレジ、クラウドベースの応募情報一元管理システムであるAirワーク 採用管理等、15以上のAir ビジネスツールズに加えて、各事業分野のマッチングプラットフォームに付随したSaaSを提供し、アカウント数の拡大に注力しています。
③ 人材派遣事業
人材派遣事業は、日本並びに欧州、米国及び豪州で構成され、事務職派遣、製造業務・軽作業派遣及び各種専門職派遣等の人材派遣サービスを提供しています。労働者の派遣に際しては、予め派遣スタッフを募集・登録し、当該登録者の中から派遣先企業の希望する条件に合致する派遣スタッフを人選し、当社グループとの間で雇用契約を締結した上で、派遣先企業へ派遣しています。国内、海外共にマーケット特性に応じて組織をユニット単位に区分し、権限移譲により、各ユニットがマーケットに最適な戦略を実行することによって、利益の最大化を目指すユニット経営を推進しています。
日本では、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」の規定に従い、厚生労働大臣の許可を受けて派遣スタッフを募集・登録し、企業へ派遣する労働者派遣事業等を行っており、㈱リクルートスタッフィング及び㈱スタッフサービス・ホールディングス等を通じて、サービスを提供しています。
欧州、米国及び豪州では、欧州のRGF Staffing France SAS、RGF Staffing Germany GmbH、RGF Staffing the Netherlands B.V.、RGF Staffing UK Limited及びUnique NV、北米のStaffmark Group, LLC及びThe CSI Companies, Inc.、並びに豪州のChandler Macleod Group Limited等を通じて、サービスを提供しています。
(2) 事業の内容と当社グループ各社の位置づけ
2023年3月31日時点において、当社グループの主な事業の内容と当社又は主な関係会社の当該事業における位置づけ及びセグメントとの関連は以下のとおりです。
なお、当社は特定上場会社等に該当し、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準のうち、上場会社の規模との対比で定められる数値基準については連結ベースの計数に基づいて判断しています。
(3) 事業系統図

4 【関係会社の状況】
(1) 連結子会社
(2) 持分法適用関連会社
(注1) 主要な事業の内容欄にはセグメントの名称を記載しています。
(注2) 議決権の所有割合欄の(内書)は間接所有です。
(注3) 特定子会社です。
(注4) 有価証券届出書及び有価証券報告書を提出しています。
(注5) 当連結会計年度末において、債務超過の金額が100億円以上である会社はIndeed Hire, Inc.であり、その債務超過の金額は、15,334百万円です。
(注6) ㈱リクルート及びIndeed, Inc.については、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く)の連結売上収益に占める割合が10%を超えています。なお、下記はいずれも単体決算数値であるため、当社が各子会社を買収した際に生じたのれん、無形資産及び当該無形資産に係る償却費を含んでいません。
なお、上記は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に反映されているIFRSによるものであるため、経常利益は記載していません。
5 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
(注1) 従業員は当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員です。臨時従業員は含みません。
(注2) 臨時従業員は、当連結会計年度の臨時従業員の年間平均雇用人員です。
(注3) 臨時従業員はアルバイト等を含み、派遣社員を除いています。
(注4) 全社(共通)として記載されている従業員は、主に持株会社である当社のファイナンス及びリスクマネジメント等の管理部門の従業員です。
(注5) 前連結会計年度に比べ従業員数が6,736人増加しています。これは主に、HRテクノロジー事業とマッチング&ソリューション事業の拡大を目的とした人材拡充と、人材派遣事業において海外の非常勤従業員を集計に加えるとともに日本の常用型派遣が増加したことによるものです。また、HRテクノロジー事業傘下の子会社が2023年3月に発表した人員の削減は、2024年3月期に反映されます。
(2) 提出会社の状況
(注1) 従業員は当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員です。臨時従業員は含みません。
(注2) 臨時従業員は、当事業年度の臨時従業員の年間平均雇用人員です。
(注3) 臨時従業員はアルバイト等を含み、派遣社員を除いています。
(注4) 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。報酬制度改定の移行期として当事業年度に支給時期の調整が発生したことと、会社業績に連動する報酬の支給が増加したことにより年間平均給与が増加しています。
(注5) 全社(共通)として記載されている従業員は、主に持株会社である当社のファイナンス及びリスクマネジメント等の管理部門の従業員です。
(3) 労働組合の状況
労働組合は結成されていませんが、労使関係は円満に推移しています。
(4) 多様性に関する状況
当社グループでは、創業以来、従業員一人ひとりの違いを大切にし、多様な個人の好奇心から生まれるアイデアや情熱に投資することで新たな事業やサービスを生み出してきました。あわせて、当社グループでは人権方針を定め、企業活動において差別や人権侵害を行わないよう努めるとともに、すべての人々に公正な機会を提供し、その人らしい生き方や働き方を尊重することを目指しています。当社グループの人的資本や人権に対する考え方や取組みについては「第2 事業の状況」「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
これらの方針のもとで、当社グループでは、属性や就労における制約等に関わらず、誰にとっても働きやすく働きがいのある職場の実現に向けて取り組んでいます。そして、2021年5月にDEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)を経営戦略の一環として掲げ、「2031年3月期までにすべての階層における女性比率を約50%にする」目標を決め、その実現に向けて3ヵ年計画を定めて取組みを進めています。また、3カ年計画の達成如何を、業務執行取締役と主にESGテーマの推進を担う執行役員の長期インセンティブ報酬(注1)の一部に連動させることで、更に取組みを加速しています。DEIに関する取組みの進捗については「第2 事業の状況」「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「(3)経営戦略」「ProsperTogether - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
2031年3月期までに目指す女性比率50%の目標に向けた当社グループのマイルストン

2023年4月1日時点の当社グループ(注2)の無期雇用従業員、管理職、上級管理職に占める女性の割合は以下のとおりです。
(注1) 長期インセンティブ BIP信託(株式)報酬の一部として設定し、3カ年目標の達成如何により支給有無を決定します。
(注2) 当社グループとして提出会社、SBU統括会社及び各SBU配下の主要連結子会社を集計しており海外子会社を含みます。なお、「無期雇用従業員」の定義は当社グループの雇用管理区分に基づきます。一方、「管理職」及び「上級管理職」の定義は、それぞれ注4、注5のとおりであり「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下「女性活躍推進法」)に基づく「一般事業主行動計画等に関する省令」の「管理職」の定義(課長級及び課長級より上位の役職(役員を除く)にある労働者の合計)とは異なります。
(注3) 無期雇用従業員として、期間の定めの無い従業員を集計しています。また、当社グループから他社への出向者を除き、他社から当社グループへの出向者を含む就業人員です。
(注4) 管理職は部下を持つすべての従業員を示し、委任契約役員を含みます。
(注5) 上級管理職は、提出会社及びマッチング&ソリューション事業においては執行役員及び専門役員、HRテクノロジー事業と人材派遣事業においては主要子会社社長及び重要機能トップを示しています。
当社の管理職に占める女性の割合、男性の育児休業等の取得率、男女間の賃金の差異は以下のとおりです(注1)。
(注1) 当社は女性活躍推進法及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」)」に基づく公表義務はありませんが参考情報として任意開示しています。
(注2) 管理職とは部下を持つ従業員であり、委任契約役員を除きます。当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員を対象に女性活躍推進法の規定に準じて算出しています。2023年4月1日時点。
(注3) 当社の労働者の大部分は㈱リクルートからの出向者で構成され、出向者の報酬は当社が定めるミッショングレードと基準に従って決定しています。このような就労と報酬決定の実情を踏まえ、当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含めて集計しています。従って、後述する㈱リクルートが算定対象としている当該会社の労働者名簿に記載されている従業員(以下「原籍者」)のうち、当社に出向している従業員を含めて集計しており、当社の原籍者のみを対象に集計した場合は数値が異なります。
(注4) 育児・介護休業法に準じて「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(以下「育児・介護休業法施行規則」)」第71条の4第2号の育児休業等の取得割合を、当連結会計年度を対象に算出しています。また、育児休業等には法令で定められた育児休業及び出産育児を目的とした休暇制度等を含みます。
(注5) 女性活躍推進法の規定に準じて、当連結会計年度を対象に算出しています。
(注6) 無期雇用従業員とは期間の定めの無い従業員です。
(注7) パートタイム・有期雇用従業員等は、無期雇用従業員の所定労働時間(1日8時間)で換算した人員数を基に試算しています。
また、女性活躍推進法及び育児・介護休業法に基づいて開示する国内の主要連結子会社における管理職に占める女性の割合、男性の育児休業等の取得率、男女間の賃金の差異は以下のとおりです。
その他24社(注7)
(注1) 主要な事業の内容欄にはセグメントの名称を記載しています。
(注2) 管理職は部下を持つ従業員であり、委任契約役員を除きます。当該会社から他社への出向者を除き、他社から当該会社への出向者を含む就業人員を対象に女性活躍推進法の規定に基づき算出しています。2023年4月1日時点。
(注3) 当該会社の原籍者を対象に集計しています。育児・介護休業法の規定に準じて、育児・介護休業法施行規則第71条の4第2号における育児休業等の取得割合を、当連結会計年度を対象に算出しています。育児休業等には法令で定められた育児休業及び、出産育児を目的とした休暇制度等を含んでいます。
(注4) 当該会社の原籍者と当該会社を通じて他社に派遣されている労働者を含み、当該会社に派遣されている労働者を含まずに、当連結会計年度を対象に女性活躍推進法の規定に基づき算出しています。そのため、人材派遣セグメントの連結子会社は、当該会社を通じて他社に派遣されている労働者を含んでいます。
(注5) 無期雇用労働者とは期間の定めの無い従業員です。
(注6) パートタイム・有期雇用労働者等は、無期雇用労働者の所定労働時間(1日8時間)で換算した人員数を基に試算しています。
(注7) 連結子会社のうち主要な連結子会社以外のものについては「第7 提出会社の参考情報」「2 その他の参考情報」に記載しています。
今回示した男女間の賃金の差異について、当社及び主要な国内連結子会社では「Pay for Performance」を基本方針とし、無期雇用労働者については、年齢や入社年次等に関わらず、期待される役割とそれに対する成果の大きさで従業員の報酬を決定する「ミッショングレード制」を導入しているため、同一のミッショングレードや評価において男女間での賃金格差はありません。
そのため、男女間の賃金差異の低減に向けた第一の課題は、より高いミッショングレードや管理職の女性割合が低いことであると考えています。そこで、当社グループが掲げた女性管理職比率を約50%にする目標に向けた取組みを加速することで、高度プロフェッショナル人材を含めたより高いミッショングレードを担う女性比率の向上を目指しています。
またこの取組みを通じて、組織にある無意識の偏見(バイアス)に気づき、働く場所や時間等に対する先入観を低減し、多様な個人にとって更に働きやすく働きがいのある職場とするために創意工夫を凝らすことは、更に幅広い人材が活躍できる組織への進化に繋がると考えています。「仕事」に関わる事業を展開する当社グループとして、社会の更なる多様性と公平性、包括性の向上に向けて、事業やサービスを含めた企業活動全体を通じて貢献していきます。
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
① ビジョン・ミッション・バリューズ
当社グループの経営理念として、基本理念、ビジョン(目指す世界観)、ミッション(果たす役割)、バリューズ(大切にする価値観)を掲げています。
これらを実現するため、当社グループが創業より大切にし活用してきたリボンモデルをビジネスモデルの基礎としています。リボンモデルとは、個人ユーザーと、企業クライアントのマッチング・プラットフォームを作り出し、より多くの最適なマッチングソリューションを提供することにより双方の満足を追求するビジネスモデルです。
現在は、テクノロジーとデータを活用することで、マッチングの更なる効率性向上と高速化に注力し、個人ユーザーに対して最適な選択肢を提供し、企業クライアントに対して更なる業務効率化を支援しています。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、長期的な利益成長と企業価値及び株主価値の最大化に向け、新規事業投資や研究開発、M&A等の成長投資を機動的且つ積極的に実行していきます。そのための主な経営指標を調整後EBITDA及び調整後EPSと設定し、特に調整後EBITDAの達成度を役員の報酬に連動させることにより、株主の皆様との価値共有を促進しています。また、2023年3月期から、ESG目標の達成度を一部の役員の報酬に連動させています。詳しくは、「(3)経営戦略」「Prosper Together」をご参照ください。
当社グループは、テクノロジーの進化等により急速に変化する事業環境に対応し、グローバル市場におけるニーズやビジネス機会をいち早く捉え、迅速な意思決定の下で、企業価値及び株主価値の最大化に取組んでいます。
HRテクノロジー事業、マッチング&ソリューション事業の人材領域及び派遣事業が、グローバル人材マッチング市場において、マッチング&ソリューション事業の販促領域が日本において、インターネット広告事業にとどまらず、テクノロジーを駆使して企業クライアントの業績向上及び生産性改善をサポートするソリューションプロバイダーに進化することを目指しています。
加えて、不確実性が高まる中で持続的な企業価値向上を目指すためには、健全なガバナンスの基で、企業活動全体を通じて社会や地球環境にポジティブなインパクトを与え、すべてのステークホルダーとの共存共栄を目指す必要があると考えています。そのため、ESG(環境・社会・ガバナンス)について具体的な目標を掲げ、社内外ステークホルダーとの対話を重視しながら、その実現に向けて取組んでいます。
当社グループ全体の経営戦略と対処すべき課題は、以下のとおりです。
Simplify Hiring - 人材マッチング市場における採用プロセスの効率化
当社は、求人広告及び採用ツール市場、人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採用オートメーション市場及び人材派遣市場の総称を人材マッチング市場と定義し、求職者がより速く容易に仕事を得られることや、企業クライアントの採用に係るコストと時間を削減することを通じた人材マッチング市場における採用プロセスの効率化に取組んでいます。
当社グループは、事業を展開しているすべての人材マッチング市場において、数多くある採用プロセスを自動化し、マッチングの質とスピードの向上に取組んでいます。各サービスが持つ膨大なデータをAIや機械学習技術と組み合わせて活用することで、採用プロセスを簡素化し、求職者と企業クライアントに更なる価値を提供することを目指しています。長期的には、ボタンをクリックするだけで完了するような、より速く効率的で、公正な求職者と企業クライアントのマッチングを目指します(注1)。
HRテクノロジー事業は、世界有数のオンライン求人マッチングプラットフォームであるIndeedとGlassdoor(注2)を含む、求職者と採用企業からなるグローバル人材マーケットプレイスを運営しており、Simplify Hiring戦略推進の中心的な役割を担っており、求職者と中小企業や大企業、派遣会社といった事業規模を問わず数多くの企業クライアントのマッチングを可能にしています。
当社のプラットフォームに掲載されている求人件数は、社外のウェブサイトからアグリゲートされたものを含めると3,000万件以上(注3)にのぼり、更に、求職者は何億もの企業評価、企業クチコミ、給与情報(注4)にアクセスできるため、それらの情報に基づいた仕事やキャリアに関する意思決定をすることができます。また、求人情報の検索やレコメンデーション、履歴書の掲載、キャリアアドバイス、動画や電話による面接の設定や実施等、テクノロジーを活用した求職活動の時間的負荷の軽減や、テクノロジーでは代替できない作業に求職者が集中できるような一連のツールを提供しています。
企業クライアントにとっては、IndeedとGlassdoor共に、求人広告の掲載や採用のための企業ブランディング等を通して、より効率的に多様な求職者へのアプローチを可能にしています。また、ペイフォーパフォーマンスモデルあるいはサブスクリプションモデルを採用する求人広告を通じて効率的な採用活動を支援すると同時に、ソーシング、スクリーニング、採用候補者とのやり取りや面接といった採用プロセスに係るサービスを提供しています。
Indeedを採用のために毎年利用する企業クライアントは300万社(注5)、求人検索、履歴書作成、企業研究等の採用プロセスに参加するユニークビジターは毎月3億3,000万人(注6)、Glassdoorのユニークビジターは毎月5,500万人(注7)であり、これらの数値が、IndeedとGlassdoorが構築する人材マーケットプレイスの規模を示しています。
人材マーケットプレイスの効率性と有効性を高めるためには、求職者と企業クライアントをマッチングするプロセスを改善することが不可欠です。そのためには、当社が使用する情報の正確性と適時性を改善し続けながら、AIや機械学習技術を活用し、求職者には最適な求人のレコメンデーションを、また企業クライアントには最適な候補者リストを提供することが必要です。更に、この改善を可能にするためには、当社の人材マーケットプレイスにおける求職者とのエンゲージメントを高めることも不可欠です。求職者がログインをしてプロフィールを作成することで、当社は求職者のスキルや好みをより深く理解することができ、よりパーソナライズされた求人情報を提供することができるようになります。これにより、求職者はより良いユーザー体験を得られるだけでなく、より効率的に適切な就職の機会を見つけることができるようになります。
更に、当社がマッチング成立あるいは不成立の要因を理解することも、求職者と企業クライアントそれぞれにとって極めて重要だと考えています。当社の人材マーケットプレイスでは、求職者と企業クライアントの間で、メッセージのやり取り、電話、応募書類の提出、面接の申し込みや返信のリマインド、採用オファー等のやり取りが行われています。これらのやり取りを採用プロセスにおけるそれぞれのステップにおいて追跡することで、求職者と企業クライアント双方の視点から、何故次のステップに進むことができたのかという貴重な情報を得ることができます。
採用プロセスの効率化の進捗度合いを表す指標は、Indeed及びGlassdoor上における1分当たりの平均採用者数(注8)であると考えています。この指標はマッチング精度の向上、採用プロセスの自動化、企業クライアントとの関係性の深化の進捗を計るものであり、これら要素の改善は更なる採用者数の増加に繋がります。2022年の1分当たりの平均採用者数は、社内測定に基づくと平均23名となりました。
また、Simplify Hiringを実現することを目指し、当社グループ全体が保有する企業との関係性、オフライン、オンライン合わせたすべてのユニークなデータを活用した機械学習やAIのテクノロジーを活用し、グループ全体でマッチングエンジンの進化に取り組んでいます。
マッチング&ソリューション事業の人材紹介サービスであるリクルートエージェントやリクルートダイレクトスカウトでは、当社グループのマッチングエンジンを活用し、履歴書のスクリーニング等これまで人が手作業で行っていた工程の効率化を進めています。日本市場で60年以上、人材マッチングビジネスを運営する当社のノウハウやデータと、このマッチングエンジンを連携させることで、日本国内でのSimplify Hiring戦略を今後加速的に進めていきます。
人材派遣事業では、アプリベースのプラットフォームであるIndeed Flexとの連携により、データ活用と従来の人材派遣の事業プロセスの自動化や、求人情報、給与の選択肢及び柔軟な労働スケジュールの設定機能を提供することで、派遣社員の求職活動における満足度の向上に取組んでいます。
当社は、2022年のグローバル人材マッチング市場規模を3,270億米ドル程度(注9)と推定しています。
2020年の新型コロナウイルス感染症による縮小から、2021年当初反発した後、グローバル人材マッチング市場は2022年に再び大きく拡大したと考えています。
当社は、直近2年間における大幅な市場規模の拡大は、新型コロナウイルス感染症の拡大による初期影響からの経済回復と、感染症拡大に対する企業クライアント及び求職者双方の反応によるものであり、歴史的に見ても世界の労働市場は特異な期間にあったことを反映していると考えています。
当社は、グローバル人材マッチング市場が長期的に成長すると想定していますが、2023年には経済状況によるマイナスの影響を受ける可能性があり、企業クライアントの採用活動の低下や、求職者の求職活動の増加、またリスク回避を背景とした転職活動の減少をはじめ、労働市場が調整局面となり平準化するため、市場規模が縮小すると予想しています。
なお、2021年の市場規模は、2022年5月16日以降に取得した後述の市場に関する最新情報に基づき、2022年5月16日時点の当社推定値からアップデートしました。主な理由は、採用オートメーション市場及び人材派遣市場の定義と範囲を更新し、採用オートメーション市場に採用管理システム市場(以下「ATS市場」)のグローバルでの年間推定売上(注10)と身辺調査のうち第三者によるサービスによって代替可能な社内リソースの年間推定金額(注11)を新たに含め、人材派遣市場に人材プラットフォーム市場(注12)、人材派遣プラットフォーム市場(注13)及びベンダー/フリーランス管理システム市場(以下「VMS/FMS」)(注14)のグローバルでの年間推定売上、並びにマネージドサービスプロバイダー(以下「MSP」)(注15)及び採用アウトソーシング(以下「RPO」)(注16)により代替可能な企業クライアントのリソースの年間推定金額を新たに含めたことによるものです。また、その他の市場についても2022年5月16日以降に取得した市場に関する最新情報に基づき、アップデートしました。
・求人広告及び採用ツール市場
2022年におけるオンライン求人広告及び採用ツール市場は、グローバルでの年間売上金額ベースで300億米ドル程度(注17)と推定しています。一方で、当社グループがグローバルで2022年における年間売上金額ベースが20億米ドル(注18)を超える規模と見積もるオフライン求人広告市場は、今後もオンライン求人広告市場に流入を続けながら縮小していくと考えています。
・人材紹介市場
人材紹介市場は、2022年におけるグローバルでの市場規模を年間売上金額ベースで610億米ドル程度(注21)と推定しており、同市場における多くのサービスは属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルを採用しています。
・エグゼクティブサーチ市場
2022年におけるエグゼクティブサーチ市場はグローバルでの年間売上金額ベースで420億米ドル程度(注21)の市場規模であると推定しており、同市場における多くのサービスは、人材紹介市場と同様に属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルによるものです。
・人材派遣市場
2022年における人材派遣市場は、グローバルでの年間売上金額ベースで5,850億米ドル程度(注24)の市場規模であると推定しており、売上金額から派遣スタッフの給料や関連する費用を控除した売上総利益金額は1,160億米ドル程度(注24)と推定しています。更に、新規市場として人材プラットフォーム、人材派遣プラットフォーム及びVMS/FMSにおける2022年のグローバルでの年間推定売上、並びにMSP及びRPOにより代替可能な企業クライアントのリソースの年間推定金額(自動化によって得られる企業クライアントのコスト削減効果を考慮)もこの市場に含まれています。伝統的な人材派遣市場とこれらの新規市場の関連性及び人材派遣のサービスプロバイダーが新規市場のサービスの一部又は全部を提供する頻度を考慮し、当社は新規市場を人材派遣市場として統合することが適切であると考えています。なお、2022年のこれらの市場規模の合計は約1,280億米ドルであると推定しています。当社グループは、同市場において短期的には、テクノロジーを活用して人材派遣事業の効率化に繋がるオンラインプラットフォームサービスを提供し、長期的にはこれらのソリューションを通して市場の変革を図ります。当社は、人材派遣市場における革新的なソリューションの開発を模索し、それを新規及び既存事業に応用することで、データやテクノロジーを活用した将来の事業機会に繋げることを目指します。
・採用オートメーション市場
当社が既に一部で事業展開を行っている採用オートメーション市場は、2022年において、640億米ドル程度(注27)の市場規模であると推定しています。市場規模は、企業クライアントが人材採用のために社内リソースに費やしている金額を基に、その金額のうちどの程度が第三者による採用オートメーションサービスによって代替可能であるかを推定することに加え、自動化によって得られる企業クライアントのコスト削減効果を考慮した上で算出しています。更に、採用プロセスにおいて現在使用されている自動化ツールをより包括的に含めるため、この市場にATS市場における2022年のグローバルでの年間推定売上と身辺調査のうち、第三者によるサービスによって代替可能な社内リソースの年間推定金額も含む定義に変更しました。
人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採用オートメーション市場は、候補者のソーシングやスクリーニング、面接の設定、候補者の選定や配属といった、多くのサービスにおいて属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルを採用しているとされてきました。当社グループはデータや自動化を活用し、これらの作業を効率化するソリューションを、業界平均よりも低価格で採用担当者や企業経営者に提供することを目指します。それによって、当社がサービスを提供する企業クライアント数を更に増やし、採用予算のうち、より多くのシェアを獲得することを目指します。
Help Businesses Work Smarter - SaaSによる日本国内企業クライアントの生産性及び業績向上
Help Businesses Work Smarterは、マッチング&ソリューション事業で、各分野、つまりバーティカルに特化した販促マッチングプラットフォーム及びそれに付随するバーティカル業務支援SaaSや、バーティカルを問わない業務支援SaaSのAir ビジネスツールズを提供する販促領域を中心に推進する、日本における企業クライアントの生産性及び業績向上に貢献するという戦略です。
これは、販促マッチングプラットフォームとSaaS、人材マッチングサービスで構成するエコシステム内で、企業クライアントの事業運営に係るすべての経済活動を支える業務を循環、完結させることで実現します。
当社はエコシステムの構築にあたって、「個人ユーザーのアクション数(注1)」、「SaaSサービス別アカウント数(注2)」、「決済流通額(注3)」をKPIとして掲げています。
個人ユーザーのアクション数は、マッチングプラットフォーム上で発生した美容院や飲食店、宿泊施設への予約数、求人広告等への応募数を指し、当連結会計年度は約4.2億件となり、前年同期比34%増となりました。アクション数の増加は、販促領域のマッチングプラットフォームでは企業クライアントの売上増加に繋がり、人材領域では求職者と企業クライアントのマッチング機会の増加に繋がります。
SaaSサービス別アカウント数は、2023年3月末時点で前年同期比30%増の約318万アカウントとなりました。SaaSのAir ビジネスツールズによって、既存のバーティカルに属さない小売店等の新規企業クライアント獲得が可能となり、アカウント数の増加を牽引するキャッシュレス決済サービスのAirペイや採用管理システムのAirワーク 採用管理の新規企業クライアントによる利用も増加しました。当事業が提供するSaaSの日本における潜在顧客事業所数を453万程度(注4)と推定しており、各事業所による複数のSaaS利用を想定するため、アカウント数の成長余地は依然として大きいと認識しています。この指標の拡大は、当事業の顧客基盤の拡大を意味します。
決済流通額の当連結会計年度の実績は約1.3兆円となり、前年同期比69%増となりました。Airペイのアカウント数増加に加えて、当連結会計年度はじゃらんネットに次いで、HotPepper BeautyやHotPepperグルメでAirペイによるオンライン決済サービスを開始しました。これにより、予約だけではなく、予約時に決済までをマッチングプラットフォーム上で完結させることが可能になり、決済流通額の拡大に寄与しました。この指標の拡大は、新たな収益貢献の可能性があるフィンテックサービスをエコシステムに加えていく上で重要になります。
当連結会計年度は、フィンテックサービスの拡充も進めました。企業クライアント向けの売上収益早期現金化サービスであるAirキャッシュや、スマホ1つで支払いもできる請求書管理サービスであるAirインボイスの提供を開始しました。
当社は、販促マッチングプラットフォームにSaaSのAir ビジネスツールズを組み合わせることで、企業クライアントと広く事業接点を持つことが可能になります。更に、人材マッチングサービスを加えることで、エコシステム内で企業クライアントの事業運営に係るすべての業務を完結することにより、多様なサービスを継続的に利用いただき、ライフタイムバリューの増加に繋げます。
例えば、販促マッチングプラットフォームと人材マッチングサービスが連携したHotPepper Beauty WORKを2023年2月に提供を開始しました。HotPepper Beauty掲載店舗による求人広告とHotPepper Beautyの掲載情報を自動で連携し、サロンスタッフ紹介、客層や口コミ等、リアルで信頼性のある情報を求職者に提供することで、入社前に具体的なイメージを持った求職活動を可能にしました。また、企業クライアントにとっては、HotPepper Beautyとの自動連携によって、求人情報以外の追加の情報入力の必要がなく、常に最新の情報を基に求人が可能となることから、求職者及び企業クライアントの双方にとって、利便性の高いサービスを提供しています。
当社が目指すエコシステム

Prosper Together -ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長
当社は、企業活動全体を通じて社会や地球環境にポジティブなインパクトを与え、すべてのステークホルダーと共存共栄を目指していくことが、当社の持続的な成長に繋がると考えています。2021年5月に経営戦略として掲げたESG(環境・社会・ガバナンス)の目標に対する当連結会計年度の進捗は以下のとおりです。
・環境(E)
短期目標として定めた、当社グループの事業活動におけるカーボンニュートラルは、前連結会計年度に続き当期も達成する見込みです(注1,2)。そして、2031年3月期までに目指すバリューチェーン全体を含めたカーボンニュートラル(注1,2)に向けては、3カ年の実質削減目標(注3)を定め、SBTi (Science Based Targets initiative)の1.5℃目標(注4)に署名し、排出削減を進めています。その活動が評価され、前連結会計年度に引き続き当期もCDP(注5)によるサプライヤー・エンゲージメント評価において最高評価であるサプライヤー・エンゲージメント・リーダーに選定されました。
また、プロダクトを通じた環境への貢献も始めています。Indeed上で採用面接を完結するIndeed Interviewによって面接のための交通移動を減らすことで、温室効果ガスの排出回避に貢献(注6)しています。
・社会(S)
世界で人材マッチング事業を展開する当社グループとして、人々にとって欠かせない生活基盤である「仕事」の領域で、社会に大きなインパクトを創出し、すべての求職者の失業期間の短縮に貢献するために2つのコミットメントを掲げています。
2031年3月期までに就業までに掛かる時間を半分にする目標に向けては、まず、Indeed上のユーザーデータの収集と分析に注力する中で、仕事の種類や年収等によって求職期間に大きな違いがあることが分かってきました。
そして、就業までに掛かる時間の短縮に向けて、Indeed上のプロダクト開発を進めました。例えば、企業クライアントが求人広告へのクリック数に対して課金される「Pay Per Click」モデルではなく、応募に対して課金される「Pay Per Application」モデルを利用した場合、就業までに掛かる時間が約17%(注7)短縮されました。また、企業クライアントがIndeed上でスキルによるマッチングができる「Indeedアセスメント」を利用すると、採用に掛かる期間が約16%(注8)短くなるといった結果が出てきています。
2031年3月期までに累計3,000万人の障壁に直面する求職者の就業を支援する目標に向けては、世界で共通した障壁となっている学歴や障がい、犯罪歴(注9)、軍隊経験(注10)、求職活動のために必要なテクノロジーや交通手段へのアクセスを持っていないといった障壁(注11)の低減に取組みました。そして、プロダクトの進化とパートナーシップを通じて(注12)、約390万人の就業を支援することができました(注13)。
また、当社グループでは、創業以来、従業員一人ひとりの違いを大切にし、その好奇心から生まれるアイデアや情熱に投資することで新たな事業やサービスを生み出してきました。そこで、多様な従業員の価値創造への意欲を最大化することを経営の重要テーマと位置付け、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の推進に取組んでいます。
2031年3月期までに当社グループ全体における上級管理職・管理職・従業員それぞれの女性比率を約50%とする目標(注14)に向けては、3カ年目標を定めて取組みを加速しています。特に、ジェンダーギャップが大きい日本を中心に事業を展開するマッチング&ソリューション事業では、これまで暗黙知として管理職に求めていたスキルや働き方を問い直し、管理職要件を明文化しました。その結果、女性候補者はもちろん、男性候補者も増え、候補者全体が拡大するといった兆しが出てきています。
・ガバナンス(G)
当社は、経営の透明性と健全性を向上し、経営の意思決定の質を上げるためには、取締役会構成員(注15)の多様性を高めることが重要であると考えています。スキルや経験、バックグラウンドの多様性を高めることに加えて、特にジェンダーについては目標を定めて取組んでいます。
2031年3月期までに当社の取締役及び監査役全体の女性比率を約50%にする目標に向けては、2023年6月の定時株主総会にて、新たな女性取締役候補であるKatrina Lake氏を含む選任議案が可決され、女性比率が約27%から約33%に上昇しました(注15)。本選任によって、ジェンダーに加えて、国籍や年齢、スキルや経験等の属性についても取締役会の多様性が高まりました。
また、当社の業務執行取締役と主にテーマを推進する執行役員に対して、3カ年目標を定めたGHG排出量削減と女性比率向上の達成如何を、当連結会計年度からの長期インセンティブ報酬(注16)の一部に連動させることを取締役会において決定し、取組みを加速しています。
また、当社のサステナビリティに関する考え方や取組の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
② SBU事業戦略
当社グループ全体の経営戦略を推進するために取組んでいる各SBU事業戦略は、以下のとおりです。
HRテクノロジー事業
より効率的な求職活動及び採用活動の需要に応え、テクノロジーと当社が保有する膨大なデータを活用することにより、IndeedとGlassdoorの求人広告事業及び採用ソリューション事業のグローバル市場での更なる売上収益の成長に注力していきます。
マッチング&ソリューション事業
販促・人材領域のオンラインマッチングプラットフォームと、業務支援ツールのSaaSの提供を通じて、金融サービスを含む、企業クライアントの事業運営に係るすべての経済活動を支えるエコシステムを構築していきます。
人材派遣事業
幅広い業界で求職者への就業機会や企業クライアントへの柔軟な労働サービスを提供しながら、安定的な事業運営を目指します。日本では調整後EBITDAマージン水準の維持、欧州、米国及び豪州では調整後EBITDAマージンの継続的な改善に取組みます。
(4) キャピタルアロケーション方針
当社のキャピタルアロケーションは、以下を優先順位として設定しています。
- 既存事業の継続的な成長に資する開発費用及びマーケティング費用
- 安定的な1株当たりの配当の継続的な実施
- 人材マッチング市場におけるHRテクノロジー事業を中心とした戦略的M&A
- 市場環境及び財務状況の見通しを考慮した上での自己株式取得
また、個別の投資案件の実行の是非を判断する際には、資本コストを上回るハードルレートを適用する等、資本効率を意識した経営に取組んでおり、ROEは15%程度を目安として設定しています。
3 【事業等のリスク】
(1) リスクマネジメント体制
① リスクマネジメントに関する規程
当社では、当社グループ全体のリスクマネジメントの体制を体系的に定める「リクルートグループリスクマネジメント規程」や、重大案件の迅速な報告及び情報共有を行うことを目的とした「リクルートグループエスカレーション細則」を制定し、グループ全体のリスクマネジメントを、当社グループの事業の継続及び安定的な発展を確保するために重要なものと捉えて積極的に取組んでいます。
② リスクマネジメント委員会
当社は、取締役会の諮問機関としてリスクマネジメント委員会を設置しています。当社のリスクマネジメント委員会は、当社の取締役及び執行役員が参加し、各SBUのリスクマネジメント状況のモニタリングを行い、その状況及び当社におけるリスクマネジメント状況も踏まえてグループリスクマップを基に、当社グループを取り巻くリスクについての包括的な議論を行っています。その上で、当社のリスクマネジメント委員会においてグループトップリスクを選定し、その対応策やモニタリングの方針を決定しています。
③ 当社及びSBUにおけるリスクマネジメント体制
当社は、取締役 兼 常務執行役員を、リスクマネジメント本部担当として配置しています。当社は、リスクへの対応のポイントが日本と海外とで差異があると考えていることから、リスクマネジメント本部配下にJapan担当とInternational担当の執行役員を配置し、それぞれの特性に応じて、グループトップリスクへの対応を行っています。加えて、当社の内部監査所管部署においてグループトップリスクへの対応状況の業務監査を円滑に実施することができるよう、当社のリスクマネジメント所管部署は当社の内部監査所管部署とも適時に情報共有を行い、連携をしています。
また、SBUにおけるリスクマネジメント体制は以下のとおりです。
a. SBU統括会社では、当該SBUにおけるリスクマネジメント担当役員を任命し、当該SBUにおける子会社の事業に関連するリスクマネジメントの状況のモニタリングを行っています。これに加え、SBU統括会社は、それぞれSBUリスクマネジメント委員会を半期に一度開催し、SBUを取り巻くリスクを包括的に確認して議論を行うとともに、SBUのトップリスクの選定と対応策の決定を行い、それらのリスクの状況のモニタリングを行っています。
b. SBUリスクマネジメント委員会には当社のリスクマネジメント本部担当取締役 兼 常務執行役員も参加し、SBUにおけるリスクマネジメント状況を確認しています。各SBUの子会社においては、リスクの洗い出しや重要性の判断、対応策の実施等、リスク管理を実施することとしています。
当社のリスクマネジメント委員会の事務局を担うリスクマネジメント所管部署は、これらのリスクマネジメント活動について、定期的に当社の取締役会に報告し、取締役会が当社グループを取り巻くリスクの状況や対応状況について、適切にモニタリングできる体制を整えています。
当社グループのリスクマネジメント体制図

(2) 当社グループのトップリスクと主な対応策
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下「経営成績等」)に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、当社の取締役及び執行役員が特に注力して対応が必要であると認識するグループトップリスクとそれに対する主な対応策は以下のとおりです。
このリスクについての詳細な説明は、本項目「(3) 当社グループの経営成績等に影響を与える重要なリスク ⑨データセキュリティ・データプライバシーに関連するリスク」をご参照ください。
(注) 上記は、本報告書提出日時点において、グループトップリスクによる、当社が想定する当社グループの経営成績等への影響を低減するために有効と判断した対応策のうち主要なものを記載したものです。しかし、人為的なミスや内部者の意図的な行為により情報漏洩が発生する等、上記の対応策が奏功しない可能性があり、また、係る対応策を有効に実施したとしてもリスクが一切消滅することを保証するものではありません。更に、将来データプライバシーの保護に関する法令等が改正され、又は新たな不正アクセス方法やコンピュータウイルスが開発される等により、リスク自体の重要性や内容が変化し、又その対応策の有効性が低下する可能性があります。
(3) 当社グループの経営成績等に影響を与える重要なリスク
上記の当社グループトップリスクを含む、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があると当社の経営陣が認識するリスクの詳細は以下のとおりです。但し、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの経営成績等に影響を与える重要なリスク一覧
① 景気の動向等のマクロ環境に関するリスク
当社グループの業績は、一般的に日本、米国、欧州及び豪州を中心とする各国の景気等の経済情勢、社会情勢及び地政学的状況に影響されます。特に、HRテクノロジー事業、マッチング&ソリューション事業の人材領域及び派遣事業で構成される人材マッチング事業は、経済情勢の不透明感又は悪化に伴う企業の雇用環境の変化の影響を受けます。また、マッチング&ソリューション事業の販促領域においても、経済情勢等の変動により個人ユーザーの消費が低迷すること等に伴って、企業クライアントが広告宣伝費を削減する可能性があります。
新型コロナウイルス感染症への既存の対応策の終了による顧客や企業の活動を含む世界的な経済活動への影響に加え、近時の急激な物価上昇や日本における長期的な少子高齢化及び総人口の減少等、米中間の政治的経済的対立等、当社グループが事業を展開する各国の経済情勢の不確実性が高まっていることや、エネルギー価格の大幅な上昇や金融市場の変動を引き起こしている、ロシア・ウクライナの軍事衝突及びそれに関連して実施されているロシアへの国際的制裁措置の影響とその拡大・長期化の可能性、中国経済の減速、台湾・北朝鮮及び中東諸国の地政学的リスクの増加等、グローバルの経済情勢等に及ぼす影響も懸念されます。また、多くの国で新型コロナウイルス感染症の対応策は緩和されてきているものの、新たな変異株の出現により係る対策が再度導入された場合、かかる対策が企業及び個人の経済活動の制約となります。
HRテクノロジー事業においては、新型コロナウイルス感染症に対する各国の規制緩和や経済活動の回復に伴う企業クライアントの強い採用需要が継続していましたが、足元では、米国において、金利の上昇やIT大手企業等における人員削減の発表等により、企業クライアントにおいて景気後退を意識する状況となっている結果、採用意欲が減退し、労働需給の平準化が進む状況になっています。他方で、欧州・日本においては米国ほどに労働需給の平準化が進んでいない結果、売上収益の増加傾向は継続しました。しかし、今後係る傾向が長期間継続する保証はなく、労働需給の不均衡が解消された場合、HRテクノロジー事業の求人広告収入は減少する可能性があります。
マッチング&ソリューション事業の販促領域においては、旅行、外食又は結婚式に対する根本的な意識の変化が生じる等、新型コロナウイルス感染症の影響により、これらのサービスの需要がより長期的に変化する場合に、同事業の業績に影響を与えます。通常の消費行動が制限される状況において、企業クライアントによる広告出稿の停止が継続したり低価格プランへ移行する傾向が継続する等の場合、売上収益が減少して当社グループの経営成績等に影響を与えます。
また、マッチング&ソリューション事業の人材領域においては、企業クライアントの活動が徐々に回復してきたことに伴い採用需要も回復傾向にありますが、企業クライアントの採用需要の見通しは引き続き不透明であり、採用需要が再び低水準となる場合には、同事業の業績に影響を与えます。
日本における人材派遣事業については、当連結会計年度において派遣労働者受入れの需要が回復傾向にあり、また、米国、欧州及び豪州については、当連結会計年度は経済活動の回復により、売上収益が増加傾向にあったものの、そのような傾向が継続するかは不透明であり、そうした需要が再び低水準となる場合には、売上収益が減少し、当社グループの経営成績等に影響を与えます。
経済情勢等の停滞・悪化により当社グループのサービスに対する需要が低迷する場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
② 競合に関するリスク
当社グループの各事業が事業展開を行う市場には、複数の競合他社が存在する上、参入障壁が必ずしも高くない事業も存在するため、他業種の事業者等を含む新規参入者による市場への新規の参加が比較的容易であり、競争はより激しくなる傾向にあります。これらの市場の中には、テクノロジーの重要性が高く、テクノロジーの進歩が非常に速いものがあるため、当社グループが技術革新に対応できない場合や競合他社が技術革新に成功した場合、業界の動向が一変し、当社グループが大きく市場シェアを失う可能性や当社グループの将来の事業展開が著しく困難となる可能性があります。
これらの市場においては、ブランド・ロイヤリティ、法規制及び大きな資金力や既存の顧客基盤等により競争上の優位性を維持することが必ずしも容易ではありません。当社グループの競合他社の中には、グローバルに事業展開を行う巨大テクノロジー企業を中心に、テクノロジー、ビジネスモデル、資金力、価格競争力、グローバル又は特定の地域における認知度、既存ユーザー層の厚さ、クライアントとの関係、人材の確保、独自のサービス及び営業・マーケティング力それぞれの点において、現在当社グループより優位に立つ事業者も存在します。このような競合環境において当社グループが競争力を維持できない場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
更に、当社グループが、個人ユーザー及び企業クライアントのニーズ又は嗜好の変化等に対応できないこと、その提供するサービスの機能向上を図れないこと、当社グループの提供するサービスについて競合他社との十分な差別化を図れないこと、競合他社が当社グループより低い価格で同水準のサービスを提供すること、競合他社が個人ユーザーの嗜好にあったサービスを導入すること、競合他社間が合併・統合等により競争力を高めること及び規制環境の変化等に対応できないこと等によっても、当社グループの競争力を維持できなくなる可能性があります。また、企業クライアントが自らユーザー基盤を確立し、当社グループのサービスを利用しなくなる可能性もあります。
当社グループは、特に日本では、マッチング&ソリューション事業の多くの主要事業において既に高い市場シェアを獲得しているため、それらの領域において更なる成長を達成する難易度は高く、クライアントが当社グループに支払う広告宣伝費を維持又は増加できない場合や、当社グループが過去に取引実績がなかったクライアント等に対する新規開拓が進まなかった場合には、当社グループが持続的な成長を達成することは困難となる可能性があります。仮に当社グループが市場シェアを維持又は増加するために価格を下げ、又は新サービスを導入する場合には、当社グループの事業の収益性が低下する可能性があります。
③ 個人ユーザー・企業クライアントのニーズの変化に関するリスク
当社グループが競争力や市場シェアを維持するためには、個人ユーザー及び企業クライアントのニーズの変化に対応する必要があります。また、昨今、従来のマスメディアによる情報発信だけでなく、急速に普及したインターネット・SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等により、リアルタイムでの情報発信が行われていることや、技術革新により多様なサービスが比較的少額の投資で短期間に個人ユーザーに普及し得ること、新たなデバイスや技術の普及によりユーザー・エクスペリエンスが大きく変わり得ること等により、個人ユーザーのニーズの移り変わりや、これを受けた企業クライアントのニーズの変化は非常に激しくなっています。
また、HRテクノロジー事業やマッチング&ソリューション事業においては、当社グループのオンラインプラットフォームへの広告出稿が売上収益の多くを占めますが、一部のサービスにおいては企業クライアントのニーズに即するために出稿期間を短期に設定することも可能であるため、当社グループのサービスを継続的に使用しない可能性や、他のプラットフォーマーへの乗り換えが容易になる可能性があります。
更に、新型コロナウイルス感染症の影響により、今後個人ユーザーの生活様式や企業クライアントの事業運営の方法が変わる可能性や、それに伴い個人ユーザー及び企業クライアントのニーズや嗜好が変化する可能性があります。
当社グループがこのような個人ユーザー及び企業クライアントのニーズの変化を的確且つ迅速に把握できない場合や、個人ユーザー及び企業クライアントのニーズに対応する当社グループのサービスの適切なタイミングでの改良又は開発及びサービスの提供ができない場合並びにこれらのニーズにより合致したサービスが他社により新たに開発された場合、個人ユーザー及び企業クライアントそれぞれのニーズと利害のバランスの取れたサービスを提供することができない場合には、個人ユーザー及び企業クライアントが当社グループのサービスから離れ、当社グループの市場シェアの縮小や売上収益の減少、又はそれに対応した値下げ等による利益率の低下、係る利益率の低下に対応するためのビジネスモデルの改良又は開発が成功しないこと等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
④ 技術革新によるリスク
テクノロジー業界においては、技術革新のサイクルが極めて速く、競合他社が使用するテクノロジー、個人ユーザー及び企業クライアントのニーズに影響することから、当社グループが競争力を維持するためには、将来における技術革新を予測して、新たなテクノロジーへの投資と導入・事業化を継続的に行う必要があります。このような技術革新に関しては、以下のような様々なリスクが伴います。
・当社グループが技術革新や業界標準技術のトレンドを正確に予測することができず、結果として当社グループが採用又は開発した新技術等が、そもそも事業化できない、又は使用可能となってもその時点では陳腐化、競争力低下等が生じているリスク
・高度な専門性や斬新なアイデアを創出する技術者又はマネジメントを確保又は育成できない、又は係る技術者の確保又は育成に多額の費用が発生するリスク
・技術革新に対応するために必要なシステム・技術インフラを維持又は更新できない、そのために多額の費用が発生する、又は適切なシステム・技術インフラの取捨選択に失敗するリスク
・5G等の新たな通信技術や端末や業界標準技術の多様化及び進化に対応した改良が適時に行えない、又は既存のシステム又は設備等の改良や新たな開発等により多額の費用が発生するリスク
・新技術を適用した商品又はサービスに、想定していないバグ、欠陥又は不備があるリスク
・新技術をいち早く導入した企業や、新技術をより効果的に利用する企業との間で新たな競争が生じるリスク
これらの各要因により、当社グループが追加の費用の支出を余儀なくされ、又は技術革新に対応することが困難となる場合、個人ユーザー及び企業クライアントが当社グループのサービスから離れ、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑤ 事業戦略に関するリスク
当社グループは、急速に変化するインターネット事業環境等に対応し、グローバル市場におけるニーズやビジネス機会をいち早く捉え、迅速な意思決定の下で、企業価値及び株主価値の最大化に取組むため、SBU単位で事業価値の拡大に取組んでいます。
各SBUにおいては、広範で地理的にも多様な事業ポートフォリオの構築を通じた持続可能な成長を志向していますが、このためには既存事業の拡大に加え、戦略的な提携や買収の慎重な実施を含む新規事業への参入が必要です。しかし、変化が極めて速く不確実性の高い事業環境において、将来の業績や市場環境の正確な予測及びこれに基づく有効な戦略の策定は極めて困難であるため、当社グループの予測や各種施策が有効であるとの保証はなく、また、以下に記載するリスク要因を含む様々なリスク要因が存在するため、当該事業戦略が当社グループの将来の業績の向上につながらない可能性や、将来において当該事業戦略の変更を余儀なくされる可能性があります。
HRテクノロジー事業
Indeed及びGlassdoorを中心に買収等の成長投資による事業規模の拡大を含め、オンライン求人広告市場での持続的な成長を企図しています。しかし、当社グループの成長は経済全体の成長及び雇用状況に大きく依存しています。加えて、売上収益の成長性は、顧客層の拡大、有料求人広告数の増加、採用プロセスの自動化を通じた収益性の向上に影響されます。また、人材マッチング市場の中で、HRテクノロジー事業が市場シェアを拡大できるかにも影響されます。
また、当社の採用オートメンションに係るサービスは、企業クライアントの採用オートメーションの活用に対する意欲が当社の予想を下回るといった、様々な要因により、当社が現在想定している速度で成長しない可能性があります。
また、当社グループによる新しいテクノロジーへの対応の遅れ、人材市場における個人ユーザー及び企業クライアントのニーズの急激な変化、新たな法規制の導入、競争環境の激化等により、当社グループが事業機会を捉え収益化することができない可能性があります。
マッチング&ソリューション事業
主に日本国内の企業クライアントを対象に、販促・人材領域において、テクノロジーやデータを駆使したオンラインプラットフォームや業務・経営支援ツールであるSaaSの提供等を行っています。
しかし、当社グループが新規の個人ユーザー及び企業クライアントを獲得できない、又は競合他社よりも魅力的・革新的なサービスを提供できないことにより、当社グループが提供するオンラインプラットフォームやSaaSが個人ユーザー及び企業クライアントに採用されない若しくは採用されるために多額の費用を要する可能性があります。
人材派遣事業
グローバルレベルで事業の収益性の向上を図ります。しかし、当社グループが事業展開する主要な法域における法規制の強化等により、収益性が想定どおりに向上しない又は悪化する可能性があります。
また、人材マッチング市場においては、市場における当社グループの存在感の拡大を目指して投資を行います。現在、当社グループは、HRテクノロジー事業やマッチング&ソリューション事業の人材領域及び派遣事業において人材マッチング事業を展開していますが、求人広告及び採用ツール市場、人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、人材派遣市場並びに採用オートメーション市場において、テクノロジーの活用により業務プロセスを自動化・効率化し、これまでとは異なる課金モデルを提供するとともに、より費用対効果が高くより高い生産性をもたらすマッチングソリューションの拡大を続けることを目指しています。例として、当社グループは、求人の掲載から面接までの採用プロセスをソフトウエアを追加せずにIndeed上で直接行えるサービスとしてIndeed Hiring Platformを提供しています。
しかし、かかるソリューションの開発や導入ができない可能性や人材市場の急激な変化に対応できない可能性、当社グループのソリューションが市場に受け入れられない可能性、かかるソリューションの提供に必要な投資を回収できない可能性があります。
更に、当社グループは、人材マッチング市場において、従来の人的作業によらずに先端的なテクノロジーや大量のデータを駆使して、企業クライアントの採用活動を自動化するという長期ビジョンを掲げていますが、効率的なソリューションが開発できない、かかるソリューションの収益化のための需要が足りない、又は法令による規制等により、当社グループが当該長期ビジョンを達成できる保証はありません。また、業務プロセスの効率性を高めるソリューションを提供していくことにより、当社グループが運営している人材紹介や人材派遣等の既存事業と、新規に開始又は拡大する事業が競合関係になる場合、当社グループの既存の事業の収益性が低下する可能性があります。
当社は社外の第三者のデータ及び独自の市場調査及び仮定に基づき、当社の事業が展開可能な市場に関する市場規模を推定しています。しかし、いかなる推定も、確実に実現可能であることを示すものではありません。特に、採用オートメーション市場に関しては、社内における開発が初期段階にあるため、係る市場における事業機会を推定することが困難です。その結果、当社事業の成長機会が想定を下回る可能性があり、係る成長機会を追求するために結果として誤った資源配分を行う可能性があります。
加えて、新規事業の展開全般については、当社グループが新規に開始し又は拡大した事業に対する個人ユーザー及び企業クライアントのニーズが想定を下回り又はその嗜好や需要が変化した場合、新たな国又は事業への参入やそのための人材確保・育成に要する費用が想定よりも増加する場合、当該市場での競争が激化した場合、個人ユーザーに対する訴求力や取引する企業クライアント数を増加させるための施策が不十分である場合等には、既存事業の拡大や新規事業の開発のための投資に見合った収益を得られない可能性があります。
逆に、当社グループが新規に開始し又は拡大した事業が当初期待していた効果をあげることができなかった場合や当該事業の成長余力が低いと判断した場合には、これらの事業の撤退や事業の縮小を行うことにより、費用又は損失が発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。また、これらの事業についての撤退や縮小についての判断が遅れた場合には、損失の計上が長期化し、また、撤退等に要する費用や損失が増加する可能性があります。
⑥ 買収・投資活動等に伴うリスク
当社グループでは、長期的な利益成長の実現に向け、海外での事業展開、新規ユーザーの獲得、新規サービスの展開、既存サービスの拡充、関連技術の獲得等を目的として、買収や出資、協業・提携を機動的且つ積極的に実行しており、今後も、将来の当社グループの業績や企業価値の向上に貢献すると判断した場合には、これらを実行していきます。
買収や出資における対象会社の選定においては、対象会社の事業計画とそのリスク等を予測して行いますが、これらの予測を誤る場合には、買収した企業が期待された収益やシナジーを生み出さず、当該買収等により生じた投資の回収に想定以上の期間を要する可能性や、投資の回収を図れない可能性があります。
特にテクノロジー企業の買収や出資については、対象会社のテクノロジーが初期段階に留まることや技術革新が急速に発生し得ることから、係る買収・出資においては、上記のリスクはより高まる可能性があります。加えて、適切な対象企業又は合弁パートナーを見つけることができないこと、受入可能な取引条件を交渉・合意できないこと、買収資金を調達できないこと、必要な同意や許可等を取得できないこと、法令上の問題を解決できないこと等の理由に基づき、買収、合弁事業その他の提携行為を行うこと自体ができない可能性があります。
この他、革新的なテクノロジーや人材の獲得等を目的に、社歴が浅く経営管理体制が不十分な企業を買収する場合や、利益を計上していない企業を買収する場合、十分なデューディリジェンスが実施できない場合には、想定していなかった又は想定していた金額以上の債務の存在やコンプライアンス上の問題点が買収後に判明する可能性があります。
また、当社グループが対象企業の支配権を有しない案件においては、出資先の経営に対して十分なコントロール又はモニタリングができない可能性や、事業開始後に経営方針の相違等から期待した収益が得られない可能性があります。
更に、買収や協業・提携の実施には、事業・テクノロジー等の統合や期待したシナジーの実現が困難となる可能性や多額の費用が発生する可能性、協業先・提携先に対して、当社グループの保有するノウハウやマネジメント・人材・取引先が流出する可能性、各国における法規制、労使関係、文化、言語等の違いや政治・経済情勢により買収等の実施又はその後の対象会社の経営が困難となる可能性、買収や投資のために借入が増加する可能性があります。
また、将来的に各合弁パートナーとの間で何らかの理由により協業・提携関係に支障をきたすような事態が発生した場合、当該事業の経営成績等に影響を与え、又は当該事業の継続が不可能になる可能性があります。当社グループのHRテクノロジー事業においては、革新的なテクノロジーや人材の獲得を目的に、比較的社歴の浅く利益を計上していない企業の買収・出資が増加することが見込まれますが、係る買収・出資においては、上記の各リスクはより高まる可能性があります。
⑦ グローバル展開に伴うリスク
当社グループは、米国、欧州、豪州及びアジア諸国等多くの国と地域で事業を展開しています。
当社グループがこれらの多様な国と地域で事業を展開する上では、又は既に事業を展開していた国と地域以外にも新たに事業を展開していく上では、新型コロナウイルス感染症の拡大、各国・地域の政治情勢、経済情勢、法規制、税制、当局による監督、商慣習及び文化の差異、個人ユーザー及び企業クライアントの嗜好、インターネット・モバイル機器の普及状況、労働問題、言語の差異、国際関係の悪化、訴訟の多発、外資規制、人材確保の困難性、海外における当社グループの知名度の相対的な低さ、多様な国・地域における事業のモニタリングの困難性等、事前に想定することの困難な様々な課題に対応する必要があります。
これらの課題に適時適切に対応できない場合、各国・地域の事業展開において当社グループが期待する成果を上げられず、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑧ 人材確保・労務環境リスク
当社グループが、競争上の優位性の確保、事業環境の変化への対応又は持続的な成長を可能とするためには、マネジメント・技術・営業等の様々な分野において優秀な人材を確保し且つ育成する必要があります。近年、特にHRテクノロジー事業及びマッチング&ソリューション事業において、優秀なIT技術者の確保及び育成が重要となってきていますが、係るIT技術者の確保又は育成ができない場合や優秀な人材を確保するため従業員の報酬・賃金水準が上昇する場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
また、マネジメントや技術者を含む重要な人材が競合他社等に流出した場合や、当社グループが想定するよりも多くの離職が生じ、新たな人材を確保できない場合には、当社グループの競争力や社会的信用が悪化し、経営成績等に影響を与える可能性があります。
また、当社グループが人材の多様性等を確保した良好な職場環境や、特に新型コロナウイルス感染症への対応として増加しているリモートワーク等、従業員にとって柔軟な職場環境を整備できない場合には、優秀な人材の採用や確保に影響を及ぼすことやイノベーションを阻害すること等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
更に、当社グループの人材派遣事業においては、当社グループが派遣する社員が安全且つ衛生的に働ける職場環境が派遣先において整備されていない場合、派遣社員の人権が侵害され、当社グループの経営成績等やブランド及び社会的信用に影響を与える可能性があります。
⑨ データセキュリティ・データプライバシーに関連するリスク
当社グループは、その事業の運営に際し、個人ユーザー又は企業クライアントその他の関係者の個人情報及び機密情報を大量に保有しています。当社グループによる個人情報の取扱いについては、日本における「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」)、欧州連合(EU)の「欧州連合一般データ保護規則」、米国カリフォルニア州の「California Consumer Privacy Act」(2023年に効力が発生する「California Privacy Rights Act」による改正部分を含む)等、各国・地域の個人情報に関する法律が適用されます。
これらの法規制の中には、データセキュリティシステムが不十分であることが判明した場合に、データの流出について重大な制裁金や直接責任を課すものがあります。また、これらの法規制は、法域ごとに異なるものとなる可能性や、近年の個人情報及び機密情報の管理に対する意識の高まりから内容が複雑化しており、その遵守や事業運営のための費用が増加する可能性があります。更に、これらの個人情報等の取扱いに関する法規制には、制定又は施行されてからの期間が短いため当局の解釈及び運用が必ずしも明確でないことがあり、係る解釈や運用によっては、当社グループの従来の情報の取扱いと整合しない可能性があります。
一方で、当社グループの事業において個人情報や機密情報等を含むデータやそれを管理・運用するテクノロジーの重要性は高まる傾向にあり、当社グループのサービスにおけるデータの運用が意図せず法規制の違反や個人ユーザー又は企業クライアントの不利益又は不信感を招き、当局から業務停止命令、罰金その他の処分を受ける可能性、個人ユーザー又は企業クライアントから訴訟を提起される可能性や当社グループのブランドの価値及び信用が毀損する可能性があります。
また、個人情報等の取扱いに関する法規制が今後より厳格となる場合又は当社グループが法規制の違反若しくは社会的な意識の高まりその他の理由に基づき個人情報や機密情報等の管理・運用に関する当社グループの方針の変更を余儀なくされる場合には、情報の活用に対する制約が増すことにより、当社グループのサービスの品質が低下し、個人ユーザー又は企業クライアントが減少する可能性や、多種且つ大量の個人情報を用いて事業を展開する当社グループの優位性が失われ若しくは経営戦略の見直しを迫られる可能性があります。
更に、第三者によるセキュリティ侵害、ソフトウエアのバグ、ハッキング、従業員の故意又は過失等によって、当社グループが保有する個人ユーザー又は企業クライアントその他の関係者の個人情報や機密情報の外部流出又は不正使用等が発生した場合、当社グループは個人ユーザーや企業クライアント等に対する損害賠償責任を負うとともに、当局から業務の停止につながり得る行政処分等を受ける可能性がある等、当社グループの事業、社会的信用及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑩ 情報システムに関するリスク
当社グループでは、システムトラブルの発生可能性を低減するためのシステムやセキュリティの強化等の対策を行っていますが、その事業の運営において情報ネットワーク及びコンピュータシステムを多岐にわたり使用しているため、災害・事故等による通信ネットワークの障害、ハードウエアやソフトウエアの欠陥や事故によるシステム障害、過失や妨害行為、コンピュータウイルスや第三者による不正アクセス等のサイバーアタックが生じた場合、システムや通信ネットワークが使用できなくなることや、当社グループが保存する当社の個人ユーザー又は企業クライアントの個人情報及び機密情報が喪失又は流出することにより、当社グループの事業運営、社会的信用及び経営成績等に影響を与える可能性があります。更に、2021年12月に報告されたLog4jの脆弱性等、業界全体の脆弱性が、当社の事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
また、当社グループのマッチング&ソリューション事業においては、企業や店舗で必要な会計・決済等の機能に関するクライアントの経営・業務効率を改善するサービスとして、Air ビジネスツールズ 等のSaaSソリューションを提供していますが、これらのシステム障害等やサービスの中断等が発生した場合には、当社グループがこれにより個人ユーザー又は企業クライアントに対する損害賠償責任や補償金の支払い等を負担する可能性があることに加え、当社グループが提供するサービスへの信頼喪失を招き、当社グループの事業及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、システムの運用やメンテナンス等の一部を第三者に委託し、それらへの依存度が増加していくことが予想されるため、システムの不具合等について当社グループ自身で対処できない可能性が高まりつつあります。更に、情報インフラの構築、運用、拡張に係るシステム投資や維持費用が将来大幅に増加する可能性もあります。
⑪ 当社グループが提供するアプリケーションの欠陥等によるリスク
当社グループは、様々なサービスをアプリケーション等のソフトウエア及びデバイスを通じて個人ユーザーや企業クライアントに提供しています。これらの開発過程において検証やテストを実施し、動作確認には万全を期していますが、サービス提供開始後に、ソフトウエアやデバイスに重大なバグや欠陥が発生し、当社グループのサービスの一部又は全部を正常に提供することができない可能性、個人ユーザーや企業クライアントのデータの消滅や書換えその他係るデータを適切に保護できない可能性、第三者によるデータの不正入手、取引停止等が発生する可能性があります。
また、当社グループの提供する一部のサービスにおいては、オンライン上でのユーザー獲得、オンライン予約管理、POSレジ、決済等のクライアントが事業を運営する上での主要な機能全般をカバーするため、アプリケーションの欠陥等が発生した場合、クライアントに重大な損害が生じる可能性や、個人ユーザー又は企業クライアントの機密情報や個人情報が喪失又は流出する可能性があります。
今後当社グループは、マッチング&ソリューション事業において、中小企業を含むクライアントの事業運営の効率化と生産性の向上を企図する包括的なソリューションであるAir ビジネスツールズ等のSaaSソリューションを拡大する方針であるため、係るリスクはより高まることが見込まれます。これらの影響により、当社グループに対する訴訟や損害賠償請求が提起され、又は行政処分が課される等、当社グループの事業、社会的信用及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 法規制に関するリスク
当社グループは、自らが事業を展開する国又は地域の法令等を遵守する必要があります。個人情報保護、データ保護、電気通信、消費者保護、労働、人権、反贈収賄、税法、独占禁止法等、当社グループに適用される法令等に違反した場合、当社グループの事業運営、業績及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、一定の事業を行う上では各国・地域の許認可等を取得するとともに、当局の監視を受けることがありますが、当社グループがかかる許認可等を失い又は当局から業務停止命令、罰金、その他の処分を受ける場合には、対象事業を営むことができなくなる可能性があります。
更に、将来当社グループに適用される法令等の新設又は改正、司法・行政解釈等の変更がある場合、複雑化する法規制への対応の遅れや、それにより当社グループが事業機会を逸する可能性や、当社グループの事業運営、社会的信用及び経営成績等に影響を与える可能性があります。また、近時、企業と人権問題に関する活発な議論がなされていますが、当社グループが人権に関する法令に関して適切に対応できない場合、当社グループのブランドに影響を与える可能性があります。
当社グループの事業に適用される法令等には、主として以下のものがあります。
HRテクノロジー事業
HRテクノロジー事業は、米国の「Communications Decency Act」、「California Consumer Privacy Act(2023年に効力が発生する「California Privacy Rights Act」による改正部分を含む)」、「Telephone Consumer Protection Act」、「Wiretap Act」、「Stored Communications Act」、「Fair Credit Reporting Act」、EUの「欧州連合一般データ保護規則」、「デジタルサービス法」、「デジタル市場法」、日本の「個人情報の保護に関する法律」や「職業安定法」等の適用を受け、又は受ける可能性があります。また、EUにおいてAI規則案が公表され、米国においても「AI権利章典」の草案が発表されています。これらの法令が施行・改正された場合や法令に関する行政解釈又は司法解釈が変更された場合、また、かかる変更を受けて実務の運用が変更された場合、HRテクノロジー事業の事業内容に制約が生じ、又は当該法令の改正への対応に時間やリソースを要する結果、当社グループの事業運営や経営成績等に影響を与える可能性があります。特に、「デジタルサービス法」については、Indeedがオンラインプラットフォーム(online platforms)に該当する結果、ユーザーに表示されるオンライン広告の透明性を確保すること等の同法に基づく義務が課されます。また、EUでのユーザー数の増加により、更に重い義務が課される超巨大オンラインプラットフォームに指定された場合には、当社グループの事業運営や経営成績等に影響を与える可能性があります。
更に、個人情報を取り扱う企業に対して新たにデータセキュリティ及びデータプライバシーに関する義務を課す様々な新法や法案の提案が行われており、かかる新法が当社グループの事業に影響を与える可能性があります。加えて、立法機関は、Indeedが提供するサーチエンジンのようなデジタル・マーケットプレイスを有する企業を調査研究しており、かかるマーケットプレイスにおいて自己のプロダクトを販売する企業に制約を課す可能性があります。
また、現在、HRテクノロジー事業に適用のある法令以外にも、テクノロジー分野における法令の整備は十分に進んでおらず、欧州や米国においてはテクノロジー分野に関する規制を強化する動きもあり、将来、HRテクノロジー事業に適用される法令が新たに制定され、規制が強化される可能性もあります。例えば、個人ユーザーの行動履歴情報を収集・分析し、広告に反映することを規制する法規制が新たに制定された場合、HRテクノロジー事業を従来どおりに遂行することができなくなり、HRテクノロジー事業の事業運営や経営成績等に影響を与える可能性があります。
マッチング&ソリューション事業
マッチング&ソリューション事業においては、個人ユーザー及び企業クライアントの情報を取り扱っており、「個人情報の保護に関する法律」等の各国の個人情報保護法制の適用を受けます。
また、販促領域においては、企業や店舗で必要な会計・決済等の機能に関するクライアントの経営・業務効率を改善するサービスとして、Airペイを提供していますが、当該サービスについては、「割賦販売法」の適用を受けています。
人材領域における日本での人材紹介事業は、「職業安定法」に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を受けて行っている事業です。当該事業についても、一定の要件を満たさない場合には許可の取消し、業務停止命令又は業務改善命令の対象となる可能性があり、また、関係諸法令の改正により、当社グループが受領する手数料に変更が生じる場合があります。
人材派遣事業
人材派遣事業における国内派遣領域については、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に基づき、労働者派遣事業として厚生労働大臣の許可を取得して行っています。
また、人材派遣事業の海外派遣領域は、事業展開する各国・地域の規制に従い業務を遂行しています。一例として米国では、派遣事業に関する連邦法の他、州法により規制が行われています。
日本及び海外における人材派遣事業において、当社グループによる法令違反等が発生した場合又は派遣事業者の欠格事由に該当する場合には、許可の取消し、業務停止命令又は業務改善命令等の対象となる可能性があります。
また、日本における労働関連法令の改正により、コンプライアンスに係る多額の費用が発生するとともに、規制違反のリスクが高まる可能性があります。
⑬ 訴訟等によるリスク
当社グループは、その事業活動の遂行過程において、個人ユーザー、企業クライアント及び競合他社その他の関係者から、当社グループが提供するサービスの不備、派遣社員も含む労働者の労務管理、個人情報及び機密情報の漏洩若しくは特許又はその他の知的財産の侵害又は当社グループのプラットフォームにおける個人ユーザーの不適切な投稿やクライアントによる違法出品若しくは虚偽誇大広告等に関する訴訟その他の法的手続を提起され、また当局による捜査や処分等の対象となり、これらの法的手続に関連して多額の費用を支出し、また、事業活動に支障をきたすおそれがあります。
係る法的手続は長期且つ多額となることがあり、また結果の予測が困難となる場合があり、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの社会的信用及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑭ 当社グループのブランド・社会的信用に関するリスク
当社グループの事業活動において、当社グループのブランドは重要な影響力を有していると認識しています。当社グループの提供サービスに不備がある場合、当社グループの情報セキュリティに問題が生じた場合、当社グループのブランドの価値の維持及び強化のための投資が十分でない場合、競合他社がより競争力のあるブランドを確立した場合に加え、当社グループに不利なメディア報道があった場合、更にはインターネットやSNSで根拠の乏しい風説が流布された場合等に、当該内容が真実か否かにかかわらず、当社グループのブランドの価値が毀損される可能性があります。
更に、当社グループの従業員による不正行為、当社グループの雇用環境に関する従業員又は派遣社員からのクレーム、当社グループへの訴訟の提起等によっても、当社グループのブランドの価値が毀損されることがあります。更に、当社グループの事業においてテクノロジーやデータの重要性は高まる傾向にあり、当社グループのサービスにおいて使用されるAI等のアルゴリズムや、当社グループ又は他社によるデータの運用が予期せぬ結果を招き、当社グループのブランドの価値が毀損される可能性があります。
また、当社グループ自身による行為だけでなく、当社グループの個人ユーザー及び企業クライアントによって、特に当社グループの提供するオンラインプラットフォームにおいて、不適切な投稿、求人を装ったフィッシング詐欺等、第三者の知的財産権、名誉、プライバシーその他の権利等を侵害する行為及び詐欺その他の法令違反行為が行われた場合、当該行為者だけでなく、当社グループもサービスの提供者として責任を問われ、当社グループに対して損害賠償請求訴訟が提起され、又は当社グループのブランドの価値が著しく毀損される可能性があります。
更に、第三者が無断で当社グループのサービスと同一又は類似の名称を使用してサービスを行った場合にも、当社グループのブランドの価値が毀損される可能性があります。このようにして当社グループのブランドの価値が毀損された場合、個人ユーザーや企業クライアントによる当社グループのサービスの利用が減少すること等によって、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑮ 外部事業者への依存に関するリスク
当社グループのHRテクノロジー事業及びマッチング&ソリューション事業における一部のサービスでは、主にインターネット上でのユーザー獲得において、グローバルに事業展開する巨大企業が提供する検索エンジンサービスを活用しており、今後、当該検索エンジン運営者による検索に関するアルゴリズムの変更又は競合他社の動向等によって、検索結果の表示が当社グループにとって有利に働かない状況が生じる可能性があります。このような場合には、当社グループが運営するインターネットサイトにおけるユーザー獲得の効率が低下し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、当社グループのサービスを提供するためのアプリケーションを、グローバルに事業展開する大手テクノロジー企業やプラットフォーム運営事業者を通じてユーザーに提供しており、更に、当社グループの一部のサービスについては、当社グループの企業クライアントへの営業活動等に関し、外部の販売代理店を利用しており、また、当社グループのオペレーションにおいては、外部事業者の提供するデータセンターやデータサーバー、クレジットカード会社等の決済処理サービスを利用しています。
しかし、これらの外部事業者において、サービス提供を中断・中止する場合やネットワークの質が低下する場合、これらの外部事業者との関係が終了又は悪化する場合、これらの外部事業者による個人ユーザーや企業クライアントに関するデータの保護が十分でない場合、使用料・手数料の値上げその他当社グループに追加的な費用が発生する場合には、当社グループの事業に影響を及ぼし、営業力が減退する等、当社グループの事業の縮小又は中断、個人ユーザーや企業クライアントの喪失又は減少、競合他社へのノウハウの流出、新たな競合他社の参入等に繋がる可能性があります。
更に、当社グループが事業の一部を委託する外部事業者等に対するモニタリングが不十分であることにより、外部事業者における労務問題その他の法令違反等に対して適時適切に対応できなかった場合には、当社グループの社会的信用を毀損し、又はクライアントとの関係を悪化させ経営成績等に影響を与える可能性があります。
また、当社グループの提供するオンライン上のサービスについては、インターネットサービスプロバイダーや通信事業者等の外部事業者に依存しています。これらの事業者が、ネットワークインフラやクッキー等の利用を制限する措置を講じる場合や、当社グループの事業が展開されている法域で政府がインターネットへのアクセスを制限する場合には、当社グループの個人ユーザー及び企業クライアントが減少し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑯ 広告・マーケティング活動に関するリスク
当社グループは、成長戦略の一環として、新規又は既存のサービスの認知度の維持・向上や、個人ユーザー及び企業クライアントの拡大を目的として、広告・マーケティング活動を積極的に行っています。
特にインターネットユーザーの多くは、検索サイトやスマートデバイス(スマートフォンやタブレット端末等)におけるアプリケーション等を利用して必要な情報を入手しているため、特に当社グループのHRテクノロジー事業やマッチング&ソリューション事業においては、各サービスのユーザー獲得効率は、検索エンジンの表示結果やスマートデバイスのアプリケーションの利用状況等に大きく影響されます。人材派遣事業においても、特に労働者が不足している市場では、派遣労働者の登録者数増加のためのマーケティング活動の成否が重要です。
また、当社グループにとってより有利な検索結果を表示させるために検索エンジン運営者に手数料を支払うこととなる可能性や、テレビ・オンラインでの広告宣伝費等、当社グループが個人ユーザーや企業クライアントとの接点を多く確保するために要する費用が将来更に増加する可能性、係る広告宣伝費の増加が当社グループの事業拡大に有効に機能しない可能性もあります。
⑰ 自然災害、感染症の伝染及び有事に関するリスク
地震、台風及び津波等の自然災害、火災、停電、感染症の伝染並びに違法なサイバー攻撃、戦争及びテロ攻撃等が発生した場合、当社グループのサービスや業務に従事する従業員、業務委託先の従業員、派遣社員が大量に罹災・罹患することや、各国政府における非常事態宣言や外出禁止等の措置に伴う業務の制限、地震等による当社設備の損壊等により、当社グループのサービス提供、その他事業運営に影響が生じ、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
特に、これらの自然災害又は有事等により、当社グループのITシステムに障害等が生じた場合や、データサーバーが機能不全に陥る場合、インターネット関連サービスの提供が困難となり、当社グループの個人ユーザー及び企業クライアントの満足度が低下し、当社グループの事業運営、社会的信用及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらの影響が広範囲にわたる場合には、復旧に相当の時間及び費用を要する可能性があり、また障害が発生した期間やその後において正常なサービスの提供に支障が生じる可能性があります。
また、大規模な自然災害等が発生した場合、当社グループの企業クライアントの事業の中断や休止等並びに個人ユーザーのライフイベント活動の休止や日常消費活動の縮小等の二次的影響が生じ、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑱ 資産の減損等に関するリスク
当社グループは、買収に伴い発生するのれんや無形資産を含む資産を連結財政状態計算書に計上していますが、急激な景況の悪化や事業環境、競合状況の変化、法規制の変更、当社の事業戦略の変更、資産の処分、当社グループの戦略の変更、金利上昇等により当該のれんや無形資産等の資産の価値が下落した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
当社グループが買収した又は今後買収する子会社の中には、スタートアップ等事業の収益化が実現していない段階にあり、成長投資の成果が発現し投資に見合うキャッシュ・フローが生じるまでには一定期間を要するものも含まれるため、当該買収に伴い発生するのれんや無形資産等について、当社の連結損益計算書において減損損失が計上される可能性があります。同様に、当社グループが主として投資目的から非支配株主として保有する関連会社株式についても、当該関連会社の業績によっては、当社の連結損益計算書において減損損失が計上される可能性があります。
また、当社グループは、長期的・持続的に成長するために、業務提携等、事業戦略上取引関係等の維持・強化の必要性があると考えられる上場会社を含む相手企業の株式を政策保有株式として保有しています。当社グループは、原則として保有するすべての株式を公正価値で評価しており、当該株式の公正価値が著しく下落した場合、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。
⑲ 税務に関するリスク
当社グループは、日本をはじめ、事業を展開している各法域において、法人税をはじめとした各種の税制の対象となっています。当社グループの連結ベースでの課税額や実効税率は、これらの法域でその年度に適用される税制、繰延税金資産や負債の評価方法、課税所得の額とその関連法域毎の配分状況等の影響を受けます。
これらの法域での政治経済状況等により税制関連法令の改正や解釈変更が実施された場合に、課税額や実効税率が上昇し、また各国における税制の相違により当社グループが求められる対応が複雑となり、これに対応するためのコストが増加する等、当社グループの財政状態及び業績に影響が及ぶリスクがあります。例えば、経済協力開発機構(OECD)は、税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトに取り組んでおり、これが実施されれば、当社が事業を行っている多くの国において納税義務決定に係る既存の枠組みが様々な点で変更される可能性があります。現在多国籍企業グループが獲得した利益のうち超過利益の一定割合を事業実態が認められる市場国に再配分する制度や世界共通の法人税の最低税率を定める制度の議論が進行していますが、このような枠組みにより当社の納税義務が変更された場合、当社グループの財政状態及び業績に影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループは、グローバルに事業を展開しており、適用される各国の移転価格税制等の国際税務リスクについて細心の注意を払っていますが、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。
更に、当社グループは、定期・不定期に関連税務当局による税務調査の対象となっており、それらの時期や結果の予測は困難です。
これらの税務上のリスクが発現した場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑳ 為替変動リスク
当社グループの海外事業の取引は、主に米ドル、ユーロ及び豪ドル等の外貨建てで行われており、近年は外貨建ての取引が占める割合が増加しています。当社グループの連結財務諸表及び四半期連結財務諸表では、海外子会社の現地通貨建ての資産及び負債を各四半期末日の直物為替レートにより、収益及び費用は、取引日の直物為替レート又はそれに近似するレートにより日本円に換算しています。
これらの要因により、当社グループの連結財務諸表及び四半期連結財務諸表は、為替レートの変動による影響にさらされており、為替レートの変動は、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループでは為替変動リスクを軽減するため、通貨スワップや為替予約等のデリバティブ契約を締結することがありますが、為替リスクを完全に回避できる保証はなく、為替変動によっては当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
更に、為替変動により当社グループが事業を営む国・地域におけるマクロ経済環境が悪化する場合や、当社グループによる海外事業の買収・提携等に係るコストが増加する場合等には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
当社グループの事業資金及び投資資金の一部は、金融機関からの借入や社債の発行等により調達しています。このため、景気の後退、金融市場の悪化、金利の上昇、当社グループの信用力の低下や格付けの引き下げ、業績及び事業環境の悪化等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達を行えない可能性があります。
また、金融機関からの借入や社債等には各種コベナンツが規定されている場合もあり、当社グループの業績、財政状態又は信用力の悪化等の要因でいずれかのコベナンツへの抵触が不可避な場合には、これらの条項に基づき残存する債務の一括返済を求められる可能性や、金利及び手数料率の引上げや新たな担保権の設定を求められる可能性があります。
これらの要因により、当社グループが今後資金調達を望ましい条件で実行できない場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
当社グループは、目標とする経営指標の見込みや財務方針等を掲げる場合がありますが、係る経営指標の見込みや財務方針等は、新型コロナウイルス感染症の影響を含む経済状況の変化、経営環境、個人ユーザーの嗜好の変化、企業クライアントのニーズの変化、他社との競合、技術革新の動向、法規制の変更及び為替変動等に係る多くの前提に基づいて作成されています。
また、変化が極めて速く不確実性の高い事業環境において、将来の業績や市場環境の正確な予測及びこれに基づく有効な戦略の策定は極めて困難であるため、当社グループの予測やそれに対応する各種の施策が有効であるとの保証はなく、当社グループがこれらの経営指標の見込みや財務方針等を達成できない可能性があります。
当社の株価は、過去において急激に変動したことがあり、今後も、本「事業等のリスク」に記載の各リスクの発現をはじめとして、当社グループの業績、業績予想、配当等の株主還元策に関連する変化、更には外部メディアによる報道、当社株式の需給関係に相応の影響を与え得る当社株式の売却若しくはその懸念、外部アナリストによる評価の発表や変更、当社グループが属する各業界の環境、経済・金融・政治環境の変化等による株式市場の広範な価格下落、株価指数への当社株式の追加や除外、テクノロジー業界における株価動向や、当社グループ及び競合他社による新サービス・技術革新・買収・提携、資金調達等に関する公表等、当社グループが予想・制御できないものも含んだ様々な要因によって、株価が急激に変動する可能性があります。
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績等の分析

(注) 「調整額」調整後の数値を記載しているため、各セグメントの金額合計と一致していません。
当連結会計年度の売上収益は3兆4,295億円(前連結会計年度比19.4%増)となりました。主にHRテクノロジー事業、マッチング&ソリューション事業、人材派遣事業すべてで売上収益が増加しました。為替によるプラス影響2,867億円を控除した売上収益は前連結会計年度比9.4%増となりました。
当連結会計年度の営業利益は3,443億円(前連結会計年度比9.1%減)となりました。これは主に、HRテクノロジー事業においてセグメント従業員の約15%にあたる2,400名程度の人員削減に伴う費用176億円、オフィス統合に伴う使用権資産及び有形固定資産の減損損失139億円、マッチング&ソリューション事業においてソフトウエアを中心とした減損損失93億円、人材派遣事業においてソフトウエアを中心とした減損損失33億円及びのれんの減損損失44億円を計上したことによるものです。
当連結会計年度の税引前利益は3,677億円(前連結会計年度比3.9%減)となりました。
当連結会計年度の当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益はそれぞれ2,716億円(前連結会計年度比8.8%減)、2,697億円(前連結会計年度比9.1%減)となりました。
当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは、HRテクノロジー事業及びマッチング&ソリューション事業において長期戦略の実現に向けた投資を実施したことから、15.9%(前連結会計年度は17.8%)、調整後EBITDAは5,450億円(前連結会計年度比6.5%増)、調整後EPSは199.35円(前連結会計年度比5.5%増)となりました。
なお、当連結会計年度より、調整後EBITDAと調整後EPSの調整項目をそれぞれ変更しました。調整後EBITDAの調整項目に株式報酬費用を加算し、調整後EPSの調整項目から企業結合に伴い生じた無形資産の償却費を除外しています。これに伴い、本事業報告における調整後EBITDA及び調整後EPSはすべて新計算式を適用しています。
当連結会計年度の研究開発費は1,689億円となりました。主な内訳は、新プロダクトの開発や新しいテクノロジーを活用した既存プロダクトの改善に係るエンジニア及びテクノロジー開発担当者の人件費であり、その大半はHRテクノロジー事業に関連するものです。
重要な会計方針、見積り及び仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。
連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については主に「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しています。重要な見積り及び仮定については主に「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、会計上の見積り及び仮定」に記載しています。なお、のれんの減損テストで用いた主要な仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 のれん及び無形資産」に記載しています。
また、見積り及び仮定は、過去の実績や、合理的だと考えられる様々な要因に基づく経営者の最善の判断に基づいています。しかし、これらの見積り及び仮定には不確実性が存在するため、翌期以降の連結財務諸表において認識する金額と異なる場合があります。
HRテクノロジー事業

当連結会計年度の売上収益は29.6%増の1兆1,161億円、米ドルベース売上収益(注)は7.7%増となりました。上半期には世界的に強い採用需要が継続したことで、Indeed及びGlassdoorが提供する求人広告を中心とした採用ソリューションサービスに対する需要が増加しましたが、下半期には世界的に採用需要の平準化が進み、労働市場の需給の乖離が緩和しました。
当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは30.7%となり、前連結会計年度の37.5%から低下しました。調整後EBITDAは5.9%増の3,423億円となりました。経営戦略の1つであるSimplify Hiringの実現に向け、上半期に積極的な新しい商品やテクノロジーの開発に関わる人材の採用活動を実施したものの、事業環境の変化に鑑み、下半期には採用の一時停止、広告宣伝費をはじめとする費用の大幅な削減を実施しました。
マッチング&ソリューション事業

(注) 「その他/消去」調整後の数値を記載しているため、各セグメントの金額合計と一致していません。
当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度比15.5%増の7,606億円となりました。
販促領域の売上収益は前連結会計年度比13.9%増となりました。これは合計で同領域の売上収益の50%以上を占める住宅及び美容分野が堅調であったこと、また住宅、美容、旅行、結婚、飲食、すべての分野において前連結会計年度比で増収となったことによるものです。
人材領域では、日本国内における採用活動の回復傾向が続き、売上収益は前連結会計年度比19.3%増となりました。飲食業や販売業の求人広告割合が高いアルバイトやパート向け求人広告サービスは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けた前連結会計年度と比較して採用需要が回復し、増収となりました。
人材紹介サービスにおいては、一部の企業クライアントで採用に慎重になっている傾向が見られましたが、当該サービスを活用する多くの業種で人材需要の高まりが見られ前連結会計年度比増収となりました。
当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは、14.4%と前連結会計年度比で減少し、調整後EBITDAは6.8%増の1,098億円となりました。将来の成長を見据えた戦略的なマーケティング活動やSaaS分野への投資を積極的に実施しました。
Air ビジネスツールズを中心としたSaaSでは、Airペイを中心にアカウント獲得が進み、2023年3月末時点でAirペイのアカウント数は前年同期末比40.2%増の約39.4万件、そのうちAir ビジネスツールズの他のソリューションを併用しているアカウント数は約22.6万件となりました。
人材派遣事業

(注) 欧州、米国、豪州の各売上収益は、欧州、米国及び豪州における子会社の所在地で分解しています。
当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度比15.0%増の1兆5,852億円となり、為替によるプラス影響を控除した場合の売上収益は前連結会計年度比7.8%増となりました。
日本の売上収益は、人材派遣需要が引き続き増加したことで稼働人数が前年同期の水準を上回ったことにより、前連結会計年度比で13.1%増となりました。
欧州、米国及び豪州においては、前連結会計年度比で売上収益は16.5%増、また為替によるプラス影響を控除した場合の売上収益は前連結会計年度比3.7%増となりました。これは主に人材派遣需要が引き続き増加したことによるものですが、2022年3月期に存在した新型コロナウイルス感染症に関連する需要は減少しました。また、不透明な経済環境の見通しにより、当第4四半期から人材派遣需要全体も成長鈍化の傾向が見られはじめました。
当連結会計年度の調整後EBITDAマージンは6.5%となり、前連結会計年度の6.8%から減少したものの、調整後EBITDAは9.6%増の1,022億円となりました。
日本においては、派遣スタッフ募集費の増加によりコストが上昇したことで、調整後EBITDAマージンは昨年と比較して減少し、8.2%となりました。欧州、米国及び豪州においては、調整後EBITDAマージンは5.2%となりました。
各セグメントに帰属する地域別のれん金額
当連結会計年度末の各セグメントに帰属するのれんの帳簿価額は以下のとおりです。人材派遣事業では、豪州において44億円の、のれんの減損損失を計上しました。
基本方針
当社は、企業価値向上に繋がる戦略的投資への機動的な対応と円滑な事業活動に必要な流動性の確保のため、資金調達が必要な際には適切な格付及び財務の健全性を維持しつつ、グローバルな金融市場からの負債による資金調達を活用することを基本方針としています。
自己資本は、適切な資本効率を維持しつつ、成長投資の機会等に対して機動的に対応できる財務基盤を整えること及び事業活動や資産のリスクと比較して十分な水準を維持します。
資金使途
運転資金、法人税の支払い、各セグメントにおけるM&A及び資産取得等による外部資源の獲得や設備投資、借入の返済及び利息の支払い、配当金の支払い、自己株式の取得等に資金を充当しています。
資金調達
運転資金及び投資資金については、営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を充当することを基本としていますが、資金需要及び金利動向等の調達環境並びに既存の有利子負債の返済及び償還時期等を考慮の上、調達規模及び調達手段を適宜判断して外部資金調達を実施する場合があります。
外部資金調達を行う運転資金のうち、原則として、短期の運転資金については、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパー又はその組み合わせにより調達することとしています。中長期の運転資金については、金融機関からの借入、社債又はその組み合わせにより調達することとしています。なお、当社は、機動的な資金調達を可能とするため、2,000億円(当連結会計年度末における未使用枠2,000億円)を上限とする社債の発行登録を行っています。
また、当社は、流動性を確保し、運転資金の効率的な調達を行うため金融機関4社と当座貸越契約を締結しています。なお、当連結会計年度末における当座貸越極度額の合計は1,130億円であり、当該契約に基づく借入実行残高はありません。加えて、当社は総額2,000億円のコミットメントライン契約を締結しています。当連結会計年度末において、当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。これらにより、当社は事業環境の大きな変化の際にも十分な流動性が確保できると考えています。
当連結会計年度末の有利子負債の帳簿価額・期日別残高は以下のとおりであり、期日別残高は利息支払額を含んだ割引前のキャッシュ・フローを記載しています。
格付
当社は、格付機関から長期格付を取得しています。当連結会計年度末における格付は、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱:A、ムーディーズ・ジャパン㈱:A3、㈱格付投資情報センター(R&I):AA、及び㈱日本格付研究所:AA+でした。また、当社は、R&Iから短期格付:a-1+を取得しています。
キャッシュマネジメント
当社は、当社グループ全体の資金効率を最大化するため、法制度上許容され、且つ経済合理性が認められることを前提として、主にキャッシュマネジメントシステムを通じた当社グループ内での資金貸借の実施を外部借入よりも優先しています。
当社は、当社及び財務統括子会社にすべての通貨のキャッシュマネジメントを集約することで、当社グループが保有する現金及び現金同等物の機動性を確保しています。
資金運用
資金運用は、投機目的で行わず、元本が保証され、安全且つ確実で効率の高い金融商品のみで行うこととしています。
政策保有株式に関する方針等
当社は、原則として政策保有株式を縮減していくことを方針としています。当社が保有する政策保有株式について、個別銘柄ごとに経済的価値と資本コストの見合いを定量的に検証するとともに、戦略的な関係性・重要性や、環境、社会及びガバナンス(ESG)等の定性的な観点を総合的に勘案し、保有の適否を検証しています。取締役会にて年1回精査し、これらの観点に合致しないと判断された株式は縮減する方針としています。
当社及び当社の次に貸借対照表計上額が大きい㈱リクルートが保有する政策保有株式の状況は以下のとおりです。その合計額は、2023年3月末において864億円で、連結資本合計の5.3%です。
流動資産は、2022年10月17日開催の取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出があったものの、主に営業キャッシュ・フローの増加に加え、51job, Inc.の非公開化取引に関する契約に基づく株式の一部の譲渡により現金を受領したことに伴い、現金及び現金同等物が増加したことにより、前連結会計年度末と比べ2,832億円増となりました。
当連結会計年度末における当座貸越極度額の合計は1,130億円であり、当該契約に基づく借入実行残高はありません。加えて、当連結会計年度末時点における2021年3月31日に締結した総額2,000億円のコミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。
なお、当社は2,000億円(当連結会計年度末における未使用枠2,000億円)を上限とする社債の発行登録を行っています。
現金及び現金同等物、有利子負債及びその差額のネットキャッシュは以下のとおりです。
当連結会計年度末時点における現金及び現金同等物の金額は8,773億円、社債及び借入金を含み、リース負債を含まない有利子負債の金額は352億円、この差額のネットキャッシュは8,420億円です。ネットキャッシュの金額は、前年度末と比べ2,331億円増となりました。
⑤ 連結キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比で2,078億円増加し8,773億円となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績及び受注実績
当社グループが提供するサービスの性質上、生産実績及び受注実績の記載に馴染まないため、省略しています。
② 販売実績
本項目「(1) 経営成績等の分析」に記載のとおりです。
5 【経営上の重要な契約等】
適用される法令等を踏まえて作成した当社基準に照らして検討した結果、該当事項はありません。
2 【主要な設備の状況】
(1) 提出会社
純粋持株会社であり、主要な設備はありません。
(2) 国内子会社
2023年3月31日現在
(注1) 帳簿価額のうち「その他」は、工具、器具及び備品等の合計です。
(注2) 従業員数欄の[外書]は、臨時従業員の年間平均雇用人員です。
(3) 在外子会社
2023年3月31日現在
(注1) 帳簿価額のうち「その他」は、工具、器具及び備品等の合計です。
(注2) 表に記載されている数値は、RGF OHR USA, INC.及びその子会社等並びにIndeed Ireland Operations Limited及びその子会社等の金額を含めた合計額です。
(注3) 表に記載されている数値は、RGF Staffing B.V.、RGF Staffing France SAS、RGF Staffing Germany GmbH、RGF Staffing the Netherlands B.V.及びUnique NV他55社の金額を含めた合計額です。
(注4) 従業員数欄の[外書]は、臨時従業員の年間平均雇用人員です。
(注5) HRテクノロジー事業傘下の子会社が2023年3月に発表した人員の削減は、2024年3月期に反映されます。
① 【株式の総数】
② 【発行済株式】
(注1) 単元株式数は100株です。
(注2) 提出日現在の発行数には、2023年6月1日からこの有価証券報告書提出日までの新株予約権の行使により発行された株式数は、含まれていません。
① 【ストックオプション制度の内容】
当社は、ストックオプション制度を採用しています。当該制度は、会社法に基づき、新株予約権を発行する方法によるものです。(注1)
本報告書提出日現在において決議しているストックオプションの付与対象者の区分及び人数
(注1) 2021年6月17日に開催された当社の定時株主総会にて、取締役(社外取締役を除く。)に対する報酬等として年額14億円以内の報酬内(1年間に付与する新株予約権の総数上限18,000個、新株予約権の目的となる株式数は1個当たり100株の予定。)でストックオプションとして、新株予約権を発行することについて決議しています。
(注2) 新株予約権を割り当てる日において、既に執行役員を退任している者1名についても、2015年3月期業績連動報酬としての株式報酬型ストックオプションとして付与しているため、執行役員に含めて記載しています。
当事業年度末及び提出日の前月末現在における新株予約権等の状況
・2013年6月20日定時株主総会及び2013年7月31日取締役会決議
(株式報酬型ストックオプション(2013年8月31日発行))
・2014年6月26日定時株主総会及び2014年11月13日取締役会決議
(株式報酬型ストックオプション(2014年12月26日発行))
・2015年8月10日取締役会決議
(株式報酬型ストックオプション(2015年9月25日発行))
(注1) 新株予約権1個につき目的となる株式数(以下「付与株式数」)は、以下のとおりとする。
2013年・2014年決議分:3,000株
2015年決議分:300株
なお、当社が、当社普通株式につき、株式分割(当社普通株式の株式無償割当てを含む。以下、株式分割の記載につき同じ。)又は株式併合を行う場合、付与株式数を次の算式により調整し、調整の結果生じる1株未満の端数については、これを切捨てるものとする。
また、上記のほか、付与株式数の調整を必要とするやむを得ない事由が生じたときは、当社は取締役会の決議により合理的な範囲で付与株式数の調整を行うことができる。
(注2) 当社が、以下に定める組織再編行為をする場合、組織再編行為の効力発生の時点において残存する新株予約権(以下「残存新株予約権」)を有する新株予約権者に対し、会社法第236条第1項第8号イ、ニ又はホに掲げる株式会社(以下、本注記において「再編対象会社」と総称する。)の新株予約権を、次の条件にて交付するものとする。この場合においては、残存新株予約権は消滅するものとする。但し、次の条件に沿って再編対象会社の新株予約権を交付する旨を、吸収合併契約、新設合併契約、株式交換契約又は株式移転計画において定めた場合に限るものとする。
※組織再編行為
- 合併(合併により当社が消滅する場合に限る。)
- 株式交換(当社が完全子会社となる場合に限る。)
- 株式移転(当社が完全子会社となる場合に限る。)
・交付する再編対象会社の新株予約権の数
残存新株予約権の新株予約権者が保有する残存新株予約権の数と同一の数を交付する。
・新株予約権の目的である再編対象会社の株式の種類
再編対象会社の普通株式とする。
・新株予約権の目的である再編対象会社の株式の数
組織再編行為の条件等を勘案の上、目的である株式数につき合理的な調整がなされた数(以下「承継後株式数」)とする。但し、調整により生じる1株未満の端数は切捨てる。
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額
新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は、当該各新株予約権を行使することにより交付を受けることができる株式1株当たりの払込金額を1円とし、これに付与株式数を乗じた金額とする。
・新株予約権を行使することができる期間
上表「新株予約権の行使期間」に定める新株予約権を行使することができる期間の開始日と組織再編行為の効力発生日のいずれか遅い日から、「新株予約権の行使期間」に定める新株予約権を行使することができる期間の満了日までとする。
・新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項
下記により決定する。
(a) 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金の額は、会社計算規則第17条第1項に従い算出される資本金等増加限度額の2分の1の金額とし、計算の結果生じる1円未満の端数は、これを切り上げるものとする。
(b) 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本準備金の額は、上記(a)に記載の資本金等増加限度額から上記(a)に定める増加する資本金の額を減じた額とする。
・譲渡による新株予約権の取得の制限
譲渡による新株予約権の取得については、再編対象会社の承認を要する。
・新株予約権の取得条項
新株予約権の目的である株式の内容として当社が株主総会の決議によってその全部を取得することについて定めを設ける定款変更承認の議案、当社が消滅会社となる合併契約承認の議案、又は当社が完全子会社となる株式交換契約もしくは株式移転計画承認の議案が当社株主総会決議により承認された場合(株主総会決議が不要な場合は、当社取締役会決議により承認された場合)は、当社取締役会が別途定める日に、当社は無償で新株予約権を取得することができる。
・新株予約権の行使条件
上表「新株予約権の行使の条件」に準じて決定する。
・新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に1株に満たない端数が生じた場合
これを切捨てる。
(注3) 当社は2014年7月31日付で株式1株につき10株の株式分割を行っています。これにより2013年決議分については「新株予約権の目的となる株式の数」及び「新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の価格及び資本組入額」が調整されています。なお、2014年決議分の当初付与株式数は、当該株式分割による調整後の数です。
(注4) 当社は2017年7月1日付で株式1株につき3株の株式分割を行っています。これにより「新株予約権の目的となる株式の数」及び「新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額」が調整されています。
・2019年7月16日取締役会決議
(ストックオプション(2019年7月31日発行))
・2020年7月8日取締役会決議
(ストックオプション(2020年7月27日発行)
・2021年7月14日取締役会決議
(ストックオプション(2021年7月29日発行)
・2022年7月8日取締役会決議
(ストックオプション(2022年7月25日発行)
(注1) 新株予約権1個につき目的となる株式数(以下「付与株式数」)は、100株とする。
なお、当社が、新株予約権を割り当てる日(以下「割当日」)後、当社普通株式について株式分割(当社普通株式の株式無償割当てを含む。以下、株式分割の記載につき同じ。)又は株式併合を行う場合、次の算式により付与株式数を調整し、調整の結果生じる1株未満の端数については、これを切捨てるものとする。
調整後付与株式数=調整前付与株式数×株式分割・株式併合の比率
また、割当日後、当社が合併又は会社分割を行う場合その他これらの場合に準じて付与株式数の調整を必要とするやむを得ない事由が生じたときは、当社は、合理的な範囲で付与株式数の調整を行うことができるものとする。
(注2) 当社が、以下に定める組織再編行為をする場合、組織再編行為の効力発生の時点において残存する新株予約権(以下「残存新株予約権」)を有する新株予約権者に対し、会社法第236条第1項第8号イないしホに掲げる株式会社(以下、本注記において「再編対象会社」と総称する。)の新株予約権を、以下の条件にて交付するものとする。この場合においては、残存新株予約権は消滅するものとする。
※組織再編行為
- 合併(合併により当社が消滅する場合に限る。)
- 吸収分割(当社が分割会社となる場合に限る。)
- 新設分割
- 株式交換(当社が完全子会社となる場合に限る。)
- 株式移転
但し、以下の条件に沿って再編対象会社の新株予約権を交付する旨を、吸収合併契約、新設合併契約、吸収分割契約、新設分割計画、株式交換契約又は株式移転計画において定めた場合に限るものとする。
・交付する再編対象会社の新株予約権の数
新株予約権者が保有する残存新株予約権の数と同一の数を交付する。
・新株予約権の目的である再編対象会社の株式の種類
再編対象会社の普通株式とする。
・新株予約権の目的である再編対象会社の株式の数
組織再編行為の条件等を勘案の上、上記(注1)に準じて決定する。
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額
交付される各新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は、組織再編行為の条件等を勘案の上、新株予約権の行使に際して出資される財産の株式1株当たりの価額(以下「行使価額」)を調整して得られる組織再編後の行使価額に、上記「新株予約権の目的である再編対象会社の株式の数」に従って決定される当該新株予約権の目的である再編対象会社の株式の数を乗じた額とする。
・新株予約権を行使することができる期間
上表「新株予約権の行使期間」に定める新株予約権を行使することができる期間の開始日と組織再編行為の効力発生日のいずれか遅い日から、上表「新株予約権の行使期間」に定める新株予約権を行使することができる期間の末日までとする。
・新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項
下記により決定する。
(a) 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金の額は、会社計算規則第17条第1項に従い算出される資本金等増加限度額の2分の1の金額とし、計算の結果生じる1円未満の端数は、これを切り上げるものとする。
(b) 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本準備金の額は、上記(a)に記載の資本金等増加限度額から上記(a)に定める増加する資本金の額を減じた額とする。
・譲渡による新株予約権の取得の制限
譲渡による新株予約権の取得については、再編対象会社の承認を要する。
・新株予約権の行使条件
上表「新株予約権の行使の条件」に準じて決定する。
・新株予約権の取得に関する事項
新株予約権者が権利行使をする前に、上表「新株予約権の行使の条件」の定め又は新株予約権割当契約の定めにより新株予約権を行使することができなくなった場合は、当社は、取締役会が別途定める日をもって、当該新株予約権を無償で取得することができる。
・新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に1株に満たない端数が生じた場合
これを切捨てる。
② 【ライツプランの内容】
該当事項はありません。
(4) 【発行済株式総数、資本金等の推移】
(注) 2019年6月19日開催の定時株主総会決議に基づき、資本準備金の額を6,716百万円減少し、その全部を資本金に組み入れ、あわせて、その他資本剰余金の額を23,283百万円減少して資本金に組み入れたことによるものです。
(5) 【所有者別状況】
2023年3月31日現在
(注) 自己株式49,041,017株は「個人その他」に490,410単元、「単元未満株式の状況」に17株含まれています。
(6) 【大株主の状況】
2023年3月31日現在
(注1) 自己株式(49,041,017株)には、役員報酬BIP信託により当該信託が保有する株式(1,883,815株)、並びに株式付与ESOP信託に係る信託口が保有する株式(65,919,972株)は含まれていません。
(注2) 2020年5月11日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書において、三井住友トラスト・アセットマネジメント㈱並びにその共同保有者である日興アセットマネジメント㈱が2020年4月30日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日時点における実質所有株式数の確認ができませんので、上記大株主の状況では考慮していません。なお、当該報告書の内容は以下のとおりです。
(注3) 2020年7月21日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書の変更報告書において、野村證券㈱並びにその共同保有者であるNOMURA INTERNATIONAL PLC及び野村アセットマネジメント㈱が2020年7月15日現在で以下の株式 を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日時点における実質所有株式数の確認ができませんので、上記大株主の状況では考慮していません。 なお、当該報告書の内容は以下のとおりです。
(注4) 2022年8月4日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書の変更報告書において、ブラックロック・ジャパン㈱並びにその共同保有者であるBlackRock Advisers, LLC、BlackRock Investment Management LLC、BlackRock (Netherlands) BV、BlackRock Fund Managers Limited、BlackRock Asset Management Ireland Limited、BlackRock Fund Advisors、BlackRock Institutional Trust Company, N.A.及びBlackRock Investment Management (UK) Limitedが2022年7月29日現在で以下の株式を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日時点における実質所有株式数の確認ができませんので、上記大株主の状況では考慮していません。なお、当該報告書の内容は以下のとおりです。
(注5) 2022年9月26日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書において、Capital Research and Management Company並びにその共同保有者であるキャピタル・インターナショナル㈱が2022年9月15日現在で以下の株式 を所有している旨が記載されているものの、当社として2023年3月31日時点における実質所有株式数の確認ができませんので、上記大株主の状況では考慮していません。なお、当該報告書の内容は以下のとおりです。