ペプチドリーム株式会社
(注) 1.第17期より国際会計基準(以下「IFRS」という。)に基づいて連結財務諸表を作成しております。
(注) 1.第17期より連結財務諸表を作成しているため、それ以前については記載しておりません。
2.第17期の諸数値につきましては、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
(注) 1.第14期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益及び自己資本利益率並びに株価収益率については、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。
2.1株当たり当期純利益金額及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額の算定上の基礎となる普通株式の期中平均株式については、株式会社日本カストディ銀行(信託E口)が所有する当社株式を控除対象の自己株式に含めて算出しております。また、1株当たり純資産額の算定においては、期末発行済株式総数から控除する自己株式数に含めて算出しております。
3.従業員数は、就業人数であり、使用人兼務役員は含まれておりません。
4.最高株価及び最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものであります。
5.2019年9月26日開催の第13期定時株主総会決議により、事業年度の末日を6月30日から12月31日に変更いたしました。従って、第14期は2019年7月1日から2019年12月31日の6ヶ月間となっております。
6.第17期より連結財務諸表を作成しているため、第17期の持分法を適用した場合の投資損失、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー及び現金及び現金同等物の期末残高は記載しておりません。
当社は、2006年7月に国立大学法人東京大学駒場リサーチキャンパス内にある東京大学先端科学技術研究センター(国際・産学共同研究センター)にて設立されました。当社は国立大学法人東京大学よりペプチドの創薬プラットフォームシステムであるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を構成するコア特許ポートフォリオの包括的な第三者へのサブライセンス権付き独占実施許諾権を取得し、さらに当社内で技術改良及びノウハウの蓄積を進め、ペプチド創薬のスタンダード技術であるPDPSを確立してまいりました。当社ではこの当社独自のPDPSを活用し、自社あるいはパートナーとの共同研究等を通じて革新的医薬品の研究開発を進めております。また、2022年3月には放射性医薬品事業を実施するPDRファーマ株式会社を子会社化し、創薬開発事業及び放射性医薬品事業の二つのセグメントで事業を実施しております。当社グループでは、「医療のあり方や患者さんの人生に変革をもたらす次世代医薬品の創出」をミッションとして全世界の病気で苦しんでいる方に「ありがとう」と言ってもらえる仕事に取り組んでまいります。
当社設立以後の主な変遷は、以下のとおりです。
当社グループは、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム(*1)であるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社(以下 PDRファーマ)による放射性医薬品事業を実施しております。
当社事業の系統図は、以下のとおりです。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、当社グループのセグメントは創薬開発事業と放射性医薬品事業の2つのセグメントになります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑥連結財務諸表注記 5.セグメント情報」をご参照ください。
<事業系統図> ※当社見解に基づく/当社作成

(注) 当社の各種売上金の詳細については後述「(3) 当社のビジネスモデルについて」に記載のとおりであります。
創薬開発事業において当社は、特殊環状ペプチド(*2)を基にした医薬品開発を中核とした事業を展開しております。「特殊環状ペプチド」とは、当社の造語であり、生体内タンパク質を構成する20種類のL体のアミノ酸だけではなく、天然には存在しないD体のアミノ酸やN-メチルアミノ酸等の特殊なアミノ酸(非天然アミノ酸、*3)を含んだ特殊なペプチドを環状構造にしたものです。当社では、創薬に適していると考えられるこの特殊環状ペプチドから医薬品を創製することを主たる事業としております。当社は、PDPSを活用しターゲット(標的分子)に対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを短期間でスクリーニング(*4)し、得られた化合物の最適化を行い臨床試験に進めるための体制を整備しております。
当社の創薬開発事業における事業概要は、以下のとおりであります。(A)創薬共同研究開発:当社と製薬企業との間で創薬共同研究開発契約に基づき製薬企業の興味のあるターゲットに対する共同研究開発を実施します。当社では、PDPSを活用して多様性のある特殊環状ペプチドライブラリーを作製し、ターゲットに対して高い結合能を持つ特殊環状ペプチドを製薬企業に提供します。その後製薬企業が提供した特殊環状ペプチドの創薬開発を進め、当社は契約一時金に加え製薬企業の創薬開発・販売の進捗に応じて、マイルストーンフィーやロイヤルティー等の対価を受領することができます。(B)PDPS技術ライセンス:製薬企業からのPDPSを当該製薬企業内で実施したいとの要望に応じ、当社では研究開発コラボレーションの一環として、PDPS技術の非独占的な実施許諾(技術ライセンス契約、*5)を行っております。実施許諾契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受け取ることになるほか、PDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物について設定されたマイルストーンフィー及び上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受け取ることができます。(C)戦略的提携による自社パイプラインの拡充(戦略的提携/自社創薬):当社は、自社で設定したターゲットに対する医薬品候補化合物に関するプログラムを複数有しており、これらの研究開発を進めています。また、世界中の特別な技術を有する製薬企業やバイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的提携を実施し、自社又は共同での研究開発を推進しております。
放射性医薬品事業における事業概要は、PDRファーマを通じて国内において放射性医薬品等の研究・開発・製造・販売を行っております。現在、PDRファーマでは放射性診断薬として、22品目のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)製剤と、2品目のPET(Positron Emission Tomography)製剤、及び8品目(3製品カテゴリー)の放射性治療薬を販売しております。また、放射性診断薬の画像読影の支援を目的とした画像解析ソフトウェアの開発・提供も行っております。
一般的にペプチド(*6)とは、2個~50個の天然アミノ酸がペプチド(アミド)結合によりつながった化合物の総称です。生体内の様々な場所で多種類のペプチドが造られており、それらはホルモンや各種伝達物質として生体維持(筋肉の弛緩、血管の拡張、胃酸の分泌、自律神経の制御等)にとって不可欠なものとして働いており、古くから研究対象とされております。“ペプチド医薬品”としては、1980年代にインスリンが遺伝子組み換え技術により大腸菌もしくは酵母から製造され、糖尿病治療に使用され始め、その後も、心不全治療薬や前立腺癌治療薬としてペプチド医薬品が承認され使用されております。
一方で、19世紀には植物等から単離・精製されたアルカロイド類の中から、分子量が500以下の小さな“低分子医薬品”が使用され始め、1899年に現在でも使用され続けている消炎鎮痛薬アスピリンが市販されました。その後も多くの低分子医薬品が様々な形で研究開発され、一時期は医薬品市場全体の9割近くを占め、現在においても約5割を占める医薬品カテゴリーとなっております。
また“抗体医薬品”は1980年ころから技術革新が急速に進み、1990年代にいくつかの大型新薬が上市され、爆発的に医薬品市場を開拓してまいりました。2020年代に入って、抗体医薬品は医薬品市場全体の2割強を占めるまで成長しております。
低分子医薬品と抗体医薬品は、多くの項目(活性・特異性、体内動態、血液脳関門BBB通過の可能性、経口投与への可能性、細胞内ターゲットへの可能性、製造コスト等)で顕著な違いがあり、それぞれの優れた特徴が活かせる疾患領域への開発が進められております。
一方、2000年以降は分子量が低分子医薬品より大きく、抗体医薬品より小さいペプチド医薬品と核酸医薬品が“中分子医薬品”と定義され、様々な技術革新と共に多くの製品が上市され始め、次世代創薬の中心的存在になるものと考えられております。古典的ペプチド医薬品は、低分子・抗体と同じターゲットタンパク質に結合することを想定した場合、2つのモダリティと比較して活性・特異性などに大きな優位性はなく、さらに体内動態や経口投与の可能性が無いなどの弱点も存在します。一方で、古典的ペプチド医薬品が有する数多くの弱点を克服可能とする“ペプチド医薬品”を創製できれば、低分子医薬品では狙うことが困難なターゲットタンパク質への創薬が可能となり、さらに抗体医薬品でしか狙うことが出来なかったターゲットタンパク質に対して、より小さな“ペプチド医薬品”により、抗体医薬品では不可能な経口投与薬開発の可能性も生まれます。
そのような次世代型のペプチド医薬品として、当社では“環状ペプチド・特殊環状ペプチド”に注目しております。一般に、20残基以内のアミノ酸がリング状に連なった“環状ペプチド”は、同じ残基を有する“鎖状”のペプチドと比較して、構造のフレキシビリティーが低減されることで、活性や特異性が向上するだけでなく、生体内安定性が著しく高く、優れた体内動態を示すことが分かっています。さらに天然に存在するアミノ酸20種類だけでなく、その光学異性体や側鎖修飾を施した“非天然型アミノ酸”を組み込むことで、医薬品研究開発で必要となるあらゆる物性調整が可能となります。
特殊環状ペプチドは低分子医薬品、抗体医薬品と比較して素晴らしい特性があると当社では考えております。例えば、低分子医薬品は分子量が相対的に小さく細胞内標的を含めターゲットの多様性が優位点である一方、ターゲットに対する結合力や特異性が劣り、ターゲット以外の分子に結合してしまうことなどにより副作用を引き起こしてしまうリスクが相対的に高いことが問題点となります。
抗体医薬品は、低分子医薬品に比べて分子量が非常に大きいため、細胞外ターゲットしか対象にできず、その多様性は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れていることが優位点と考えられます。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットに対応できないこと、経口投与ができないこと、生体内で免疫反応を惹起してしまう(生体が異物と判断してしまう)リスクが相対的に高いこと等の問題点が存在します。
低分子医薬品や抗体医薬品に比べて、特殊環状ペプチドは、分子量で評価すると低分子医薬品よりやや大きい程度であることや、前述の物質的な特性から、従来の低分子医薬品や抗体医薬品の問題点を低減しながら、同時に双方の優位点を実現できる可能性があります。
環状ペプチドの医薬品は過去20年で約20種類以上が上市されていますが、そのターゲット領域は内分泌や心血管に関する疾患や抗生物質等が中心であり、ほとんどは天然(体内のホルモンや菌類・動物・植物由来)の環状ペプチドを最適化したもの、もしくは最適化の過程で非天然アミノ酸を使用しているものです。当社は、そのようなベースとなるペプチドが存在しないターゲットに対してもペプチドの薬を開発することができることが強みであり、これにより一気にペプチド創薬の可能性が広がると考えております。
当社は設立以来、継続して研究開発機能を拡張してまいりました。設立当初はPDPSによるヒット化合物の取得にフォーカスしておりましたが、タンパク質の調整、ペプチド合成/精製/QC、メディシナルケミストリー、In silicoモデリング及びインフォマティクス、タンパク質と化合物の共結晶化とその立体構造解析、薬物動態等の前臨床研究のほとんどの部分を自社で行える体制を構築いたしました。これにより従来と比べ多くのプロジェクトを同時進行させることができるようになり、それぞれの創薬共同研究開発パートナーが求める高いレベルでの研究開発作業が行えるようになりました。
<当社の研究開発機能> ※当社見解に基づく/当社作成>

さらにPDPSの自動化プラットフォームを構築したことにより、手作業で行っていた時と比較して飛躍的に作業の効率化が図れました。特にヒットペプチド探索の際に、多種多様な条件(ターゲットタンパク質の種類、温度、アミノ酸の種類等々)を一度に、しかも正確に実施することが容易になり、結果として確実に種々のヒットペプチドを見出すことができます。直近では、自社での臨床開発の実施まで視野に入れたin-houseプログラムの開発のため、研究と開発をつなぐトランスレーショナルリサーチ機能も強化しております。
PDPSは当社独自のペプチド創薬技術であり、以下のような特長を持つことから特殊環状ペプチドのヒット化合物を早く、高い成功確率で見出すことができるという利点がございます。
PDPSの3つの特長
1. 数兆種類以上の特殊環状ペプチドのライブラリーへのアクセスが可能
PDPSを用いて数兆種類以上という非常に高い多様性を持つ特殊環状ペプチドのライブラリーを作製することが可能です。PDPSの特徴は、ランダムDNAライブラリーを用いた無細胞系転写/翻訳システムであるという点と、ペプチドの構成要素であるアミノ酸として天然アミノ酸だけでなく非天然アミノ酸も組み込めるという点です。ペプチドはそれぞれ対応したmRNA/CDAタグによりバーコード化されており、迅速に配列を同定することができます。
2. 高い確率でのターゲット結合
ペプチドライブラリーを用いて、目的とする生体内のターゲットに対するスクリーニング、目的外のターゲットに対するカウンタースクリーニングが実施され、高い結合性と選択性を持つヒットペプチドを取得します。ペプチドに付加された「バーコード」により、セレクションサイクルを何回も実施することでヒットペプチドを増幅し、その配列を迅速に同定することが可能です。PDPSはペプチドの最適化やヒット化合物の評価にも使うことができ、創薬のプロセスを飛躍的に加速することができます。
3. 進化し続けるプラットフォーム
当社では常にPDPSの技術の改善・向上を行っています。ペプチドの構成要素であるアミノ酸の種類を増やすことでより高い多様性を持たせたことや、自動化プロセスを開発したことでより安定的な結果が得られるようになったことなどが挙げられます。さらに高品質なペプチドライブラリーの設計を行うためのin silico解析システムの開発を行う等、当社は常にペプチド創薬の最先端の技術を産み出しています。

c. PDPSを起点とした3つの創薬アプローチ
当社では上述のPDPSによりターゲットタンパク質に対して高い結合性・特異性を有する特殊環状ペプチド(ヒット化合物)を同定した後、大きく分けて3つの創薬アプローチ(①ペプチド医薬品/低分子医薬品、②ペプチド薬物複合体(PDC:Peptide Drug Conjugate、*8)医薬品、③多機能ペプチド複合体(MPC:Multi-functional Peptide Conjugate、*9)医薬品による創薬研究開発を行っております。

1. ペプチド医薬品/低分子医薬品
取得したヒットペプチドを出発点に、医薬品として求められる各種要件(生物活性、選択性、投与形態に沿った製剤、体内薬物動態等)を最適化し、ペプチド医薬品候補化合物へ仕上げるのが当社の基本的なアプローチとなります。その最適化においては、タンパク質X線結晶構造解析(*10)やクライオ電子顕微鏡などを用いてペプチドとターゲットタンパク質の複合体の立体構造解析を行い、抗体と同程度の生物活性や選択性を付与するのに最適な非天然型アミノ酸の組み込みや薬物動態のコントロールを行います。最近の研究により、以前には困難と言われていた経口投与可能な特殊環状ペプチドの創製も可能であることがわかってきました。また、特殊環状ペプチドの経口投与化が難しい場合でも、得られた複合体の立体構造情報を基にin silicoモデリングや計算化学的手法等も活用し低分子化することで、経口剤としての開発も可能になります。
2. PDC医薬品
①(ペプチド医薬品/低分子医薬品)とは異なり、取得したターゲットタンパク質に対して高い結合性・特異性を有するペプチドに薬効を求めず、薬効を有する各種ペイロード(放射性核種、核酸、低分子、毒性化合物等)を、目的の組織/細胞に選択的に送達させる(=キャリアーペプチド)というコンセプトの医薬品です。この場合、キャリアーペプチドには高い結合性・特異性及び体内動態の調整が求められ、ペプチドはそれらの調整が容易なことがわかっています。PDC医薬品は薬効成分であるペイロードを直接体内に入れた場合に、1)目的の組織/細胞に届く前に代謝・排泄を受けやすい、2)目的の組織/細胞以外に届くと毒性発現する等の様々な理由から、何かしらのキャリアーを必要としているケースなどが考えられます。同様のコンセプトで抗体をキャリアーとして用い、毒性化合物等を選択的に送達する抗体薬物複合体(ADC:Antibody Drug Conjugate)が先行して複数開発・承認されていますが、ペプチドをキャリアーとすることでPDCならではの特性(体内動態のコントロールが容易、免疫原性の低減が図れる、ペイロードの種類を問わず複合体化・製造が比較的容易である等)を有しており、注目されている次世代の創薬アプローチです。
当社では、RI-PDC、核酸PDC、Cytotoxic-PDCなど各種ペイロードに対するPDC医薬品を開発しております。
3. MPC医薬品
複数の異なるターゲットタンパク質(異なるメカニズム)に対して、それぞれ薬効が異なるペプチド同士を結合し、複数の薬効を1分子(1つの薬剤)で表現する医薬品となります。化学合成的に複数の異なるペプチドを結合し複合体を得る手法は既に開発されており、多種多様なMPC医薬品を容易に展開することが可能となっております。これにより、複数の医薬品をそれぞれ開発し、それらを合わせて投与するカクテル療法などを適用することに対してハードルが高かった治療分野において、1剤で複数の薬効を有するMPC医薬品を置き換えることが可能となります。同様のコンセプトに二重特異性抗体(bispecific抗体)や多重特異的抗体があり、近年はがんやがん免疫の分野での研究開発競争が激化しています。
当社は先端研究開発型製薬企業であり、知的財産権の開発、維持、発展は重要な経営課題と認識しております。
次の図は、当社の特許ポートフォリオ(*11)の概念図です。この図のように当社の特許ポートフォリオは、フレキシザイム技術開発に関わる特許をコアにして、周囲を取り囲むように関連する複数の特許・発明で固めることにより、特許(技術)が単独のものとして孤立することなく、特許ポートフォリオを同心円状に強化することが可能になりました。概念図中「ライブラリー特許」とあるのは、各種、特殊環状ペプチドライブラリーを作成する技術等を含み、これらにより特殊環状ペプチドの可能性を拡大するとともにポートフォリオを強化することができます。ライブラリーの発明は、今後、研究開発の進展によりさらに増加させていくことが可能と考えております。
概念図中「ノウハウ特許」とあるのは、特定の機能を持った特殊環状ペプチドをスクリーニングする技術ノウハウであり、各種機能を持ちうる特殊環状ペプチドを特定の機能に絞り込み、スクリーニングの段階で選別することが可能になりました。
概念図中「物質特許」とあるのは、研究途上で発見された特殊環状ペプチドの物質特許(発明)であります。当社の通常の共同研究活動では、特殊環状ペプチドの物質特許(発明)は、創薬開発権利金の支払いと引き換えに、クライアントに対し提供されます。
ライブラリー特許(発明)、ノウハウ特許(発明)、物質特許(発明)に関しては随時権利化(出願)を進めております。
<当社の特許ポートフォリオの概念図> ※当社見解に基づく/当社作成

PDPSの基盤技術となる特許・発明の詳細は次の表のとおりです。
<当社の特許ポートフォリオ>
(注) 上図の「特許」には特許登録されているものと出願中のものがあります。
事業概要に記載のとおり、当社は創薬共同研究開発、PDPS技術ライセンス、戦略的提携/自社創薬、放射性医薬品の研究・開発・製造・販売という複数のビジネスモデルを組み合わせることにより、リスクを分散し成功確率を高めるとともに創薬開発の早期から売上を生み出すことができると考えております。
各ビジネスモデルの収益源は下図のとおりです。
<当社における各ビジネスモデルの収益源>

創薬共同研究開発契約は、クライアントからターゲットを受領し、そのターゲットごとにプロジェクトを設定し、順調に研究開発が進み一定のクライテリアを達成した場合「マイルストーンフィー」を受領する設計になっております。さらに、最終的に製品が上市された場合は製品売上金額に対して、一定の料率を乗じて得られる額を「売上ロイヤルティー」として受領する権利を有しております。
PDPS技術ライセンスにおいては、クライアントにPDPS技術の非独占的な実施許諾を行い、その対価として「技術ライセンス料(契約一時金)」を受領します。さらにクライアントがPDPSを用いることで創製された医薬品候補化合物についてあらかじめ設定された「マイルストーンフィー」及び上市後の売上高に応じた「売上ロイヤルティー」を受け取ることができます。
戦略的提携/自社創薬は自社又は自社と戦略的提携先と共同で研究開発活動を実施し、臨床開発及び事業化のために製薬企業等にライセンスを行うことを目指します。
創薬開発事業における典型的な収益項目の例を下表に示します。
<当社における一般的な研究開発の流れと各ステップで発生する可能性のある収益項目>
一方、放射性医薬品事業においては国内で販売している放射性医薬品の製品売上を主たるものとし、業務受託によるサービスフィーも受領しております。他社へのライセンスアウト製品が将来上市した際にはマイルストーンフィー・売上ロイヤルティーを受領する権利を有しております。
<用語解説>
(注) 有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。
2022年12月31日現在
(注) 1.従業員数は、契約社員を含む就業人員であります。
2.前連結会計年度末に比べ従業員数が428名増加しておりますが、これは主に業容の拡大に伴う採用の増加及びPDRファーマ株式会社を連結子会社としたことによるものであります。
2022年12月31日現在
(注) 1.従業員数は、契約社員を含む就業人員であります。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。
(1) 経営方針
当社グループでは、「医療のあり方や患者さんの人生に変革をもたらす次世代医薬品の創出」をグループ全体のミッションとして掲げております。当社の独自技術である世界最先端の創薬プラットフォームシステムPDPS(Peptide Discovery Platform System)を基盤に、革新的医薬品の研究開発を先導するとともに、放射性医薬品領域におけるPDRファーマの有する専門性を融合することで人々の健康と医療の発展に貢献し、全世界の病気で苦しんでいる方に「ありがとう」と言ってもらえる仕事に取り組んでまいります。
(2) 経営戦略等
創薬開発事業における当社独自のPDPSを活用した3つの事業戦略:①創薬共同研究開発契約、②PDPS技術ライセンス、③戦略的提携/自社創薬の拡充を進めてまいりました。現在は、非臨床ステージにおける自社ケイパビリティ拡張によって、自社パイプラインの開発を加速させるとともに、より一層、パートナー企業の多様なニーズに応えることができる体制を構築しております。また、医薬品やPDC領域での有望な自社独自ターゲットを含めて、自社の強みを活かせる領域において戦略的、選択的に面の拡大を進めてまいります。特殊環状ペプチドの可能性については、従来の医薬品や診断薬の領域のみならず、広くヘルスケア領域全般で期待が寄せられており、当社ビジネスモデルとフィットの観点から優先順位を付けつつ、その可能性を最大化してまいります。
放射性医薬品事業については、PDRファーマにて放射性医薬品の研究・開発・製造・販売を行っております。ペプチドリームとPDRファーマの技術、ノウハウ及び提携ネットワーク等を融合し、RI-PDC(ペプチド-放射性核種複合体)を含む新たな放射性医薬品の創出、海外からの有望な放射性医薬品の導入等を進め、放射性医薬品事業の拡大を図っております。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、収益性の向上を目指しており、経営指標として売上収益、Core営業利益及びCore営業利益率を重視しております。2023年12月期は売上収益30,000百万円、Core営業利益6,700百万円、売上収益Core営業利益率22.3%を目標としております。
(4) 会社の対処すべき課題
1. 創薬開発事業
当社グループの創薬開発事業においては、①創薬開発パイプラインのステージアップ及び臨床開発入り、②PDCプログラム及びMPCプログラムのさらなる拡大、の2つを戦略フォーカスとしております。
当社は創薬開発に注力しており、前臨床・臨床パイプラインを拡充することが当社の価値向上に重要であると考えております。現在、当社では4件の臨床プログラムが進行しております。2022年4月には、Bristol Myers Squibb(BMS社)との間で進めている次世代PD-L1阻害剤の第1相試験が新たに開始いたしました。当プログラムは、両社が進めているPD-L1のイメージング剤(RI-PDC)と同時に開発が実施されております。BHV-1100(CD38-ARMTM)では、Biohaven社と共同で現在多発性骨髄腫の患者を対象に第1a/1b相臨床試験を実施しております。また、2022年8月には、2022年2月に開始した新型コロナウイルス感染症治療薬候補であるPA-001プログラムでは、国内での臨床研究において安全性・薬物動態に関する良好な結果が確認されております。臨床プログラムをさらに拡大するためには、当社の前臨床段階のパイプラインから新たな臨床/開発候補化合物を選定することが重要と考えております。2022年5月にAmolyt社は成長ホルモン受容体拮抗薬のプログラムの開発候補化合物について研究成果を発表しました。Amolyt社は当プログラムの2023年上期中の臨床入りを計画しております。2022年12月に当社はRayzeBio社と共同開発を行っているRI-PDCプログラムの1つにおいて開発候補化合物を選定したことを発表いたしました。今後、当プログラムの臨床開発を進めていく計画です。また、リード化合物-GLP安全性試験ステージのプログラム数が対前年同期比で7個増加し、現在25個のプログラムが進められております。これらのプログラムの中から新たな臨床候補化合物の選定を進めていきたいと考えております。また今後は、新たなプログラム数の拡大は最小限としつつ、研究後期プログラムのステージアップ加速にリソースを重点的に配分していくことを計画しております。
前臨床段階パイプラインの臨床入りを加速していくことに加え、PDCプログラム及びMPCプログラムを自社開発及び提携を通じて推進していくことも重要と考えております。全世界的に当該領域への関心が高まっていることから、この戦略フォーカスにより当社のさらなる成長が見込めると考えております。2022年12月には、新たに2つのPDCプログラムの共同研究及びライセンス契約締結を発表いたしました。これまでの核酸PDCやRI-PDCに加えて、新たに細胞傷害性ペイロードとの組み合わせによるPDCプログラムを開始し、PDCアプローチの幅が着々と拡大しつつあります。これらの提携は、短期的な企業価値向上に資するとともに中長期的な成長にも貢献するものと期待しております。さらに、放射性医薬品事業とのシナジーを最大化するため、当社は複数のRI-PDCプログラムの前臨床試験を実施し、早期の臨床入りに向けた取り組みを進めております。
当社の創薬開発事業では、下表の中期目標達成に向けて各種取組みを進めております。これらの目標達成に向けて、当社は前臨床プログラムを拡大し推進するための継続的な取組みとリソース投入を行っております。戦略的提携パートナーや共同研究開発パートナーとの連携により臨床入りを加速するとともに、当社のプログラムに関心を持つパートナー候補先との新たな提携を構築してまいります。また、こうした取組みを支える高い専門性をもつ人財についても積極的な採用を継続してまいります。当社は、こうした取組みを通じて「Drug Discovery Powerhouse」としての立ち位置を強固なものとし、グローバルな創薬エコシステムの中心的ハブであり続けることが重要と考えております。
※1 PDRファーマのパイプラインは含みません
※2 治療薬以外の製品、及び診断薬は含みません
また、今後の5年間で「Drug Discovery Powerhouse」としての基盤をしっかりと確立していくため、以下の5つの重点目標に向けた取組みを推進してまいります。
①ペプチド創薬におけるエコシステム&パートナーネットワークの発展拡大をリードし、その中心的ハブとしての当社の役割を継続的に拡大
②「世界で最も広く活用される創薬基盤技術」として、当社独自のペプチド創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)のライセンス先を継続的に拡大
③安全安心でかつ多様性を尊重し合う職場環境の中、すべての社員が新たなチャレンジへの機会を与えられ、その能力を最大限発揮できる「最高の場」を実現
④機動性の高い経営体制を推進するとともに、規範遵守や執行の監督機能とのバランス、及び社内外ステークホルダーとの継続的対話による透明性の高い経営を実現
⑤社会全体の持続的成長に向けて事業活動の効率化を促進し、水や廃棄物の環境負荷を最小化するとともに、2026年までに自社事業活動の「カーボンニュートラル」を実現
2. 放射性医薬品事業
当社グループの放射性医薬品事業においては、①既存製品の価値最大化、②今後成長が期待される中枢神経領域での事業拡大、③がん領域を中心に中長期的な成長を牽引する新たな放射性治療薬の開発、の3つを戦略フォーカスとしております。
既存のSPECT製品では、効能追加や剤形追加、及び診断支援ソフトウェアの機能強化等による価値最大化を進めてまいります。2022年11月には、Lilly社との間でアルツハイマー型認知症のPET診断薬であるflortaucipir(18F)に関する日本における共同開発契約の締結を発表いたしました。既存の脳内アミロイドβプラーク可視化を行うPET診断薬であるアミヴィッド®静注に加えて、脳内の異常蓄積タウタンパク質による神経原線維変化(NFTs)を可視化するPET診断薬であるflortaucipir(18F)は、アルツハイマー領域のPET診断の2大分野とも言われており、両製品を有することで、認知症の恐れがある患者さんの病態把握に有用な情報を患者さんならびに医療関係者に提供することが可能となります。また、放射性医薬品事業において今後中枢神経領域での事業範囲を拡大していく上でも重要な布石になるものと考えております。
中長期では、がん領域を中心とする新たな放射性治療薬の開発が成長を牽引していくものと考えております。当社グループは、日本国内で放射性医薬品を開発・製造・販売するためのインフラや専門性、新規の放射性治療薬を創製・開発する技術や専門性、さらにこれまでに構築してきた強力なグローバルネットワークを活用し、継続的に開発パイプラインや製品ポートフォリオを拡大していくビジネスモデルを構築しております。これまでは、放射性医薬品市場は製品間の差別化要素が大きくないとされる診断薬が市場の多くを占めていたこともあり、同質製品間でのシェア争奪競争が中心でした。新たな放射性医薬品の時代に入り、特に治療薬を中心に有効性等の製品力による市場競争が中心になってくるものと考えております。当社グループは、革新的治療薬・診断薬の開発を積極的に進めていくことで、当該分野における医療の進歩に大きく貢献し、国内放射性医薬品No.1企業を目指してまいります。

当該事業は、2022年3月にPDRファーマが当社グループに参画する以前は継続的に赤字が続いていたこともあり、初年度となる2022年12月期では、継続赤字からの脱却と成長性の高いビジネスモデルへの転換を戦略フォーカスとして実行してまいりました。次の5年間は「投資期」と位置づけ、既存製品の価値最大化やPET新製品による一次成長を実現するとともに、収益増分は中長期的な成長最大化に向けて治療薬開発や設備/人財などへの再投資に回していくことが重要と考えております。また6年目以降は「収穫期」と位置づけ、治療薬新製品による二次成長とともに、当社グループの独自性でもあるパイプライン拡充モデルによるシナジーの本格的な具現化を進めていきたいと考えております。

当社グループ全体の中長期プランでは、短期的には300億円の連結売上収益を達成し、中長期的には1,000億円規模のグループ売上収益を目指してまいります。現行の経営体制に移行した2018年度以降、当初の4年間は共同研究開発プログラム数の拡大を軸に、安定的な成長を実現しながらも100億円超の売上収益の達成に必要な足場づくりを着々と進めてまいりました。今後は、化合物のライセンス収入や研究後期プログラムの進捗に伴う臨床/承認マイルストーン収入、売上ロイヤルティなど、創薬開発パイプラインからのより直接的な収益貢献によって成長を加速していくことが重要と考えております。また、当社がこれまで注力してきたPDCプログラムに関して、放射性医薬品事業(PDRファーマ)とのシナジー最大化も重要な成長の柱になっていくものと考えております。

当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。
なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もございます。
当社のリスク管理体制は以下のとおりです。

詳細については、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b リスク管理体制」をご参照ください。
経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは下記のとおりであります。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しております。
<主要な事業等のリスク一覧> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成
<主要な事業等のリスクマップ> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成

当社グループの特殊ペプチドは、タンパク質の合成に利用される20種類のL体のアミノ酸のみならず、特殊アミノ酸と呼ばれるD体のアミノ酸やNメチルアミノ酸等を含んでいます。この性質により、当社グループは多様性のある特殊ペプチドのライブラリーを作製することができ、その中からターゲットタンパクに対して強い結合力・特異性を有し、高い生体内安定性を保ち、細胞膜透過性をも有する特殊ペプチドを創製することができます。
このような特質から、当社グループの特殊ペプチドは、新たな医薬品候補物質として期待されており、製薬会社との契約に結びついております。
当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)が稼働を開始したのは、2010年であります。医薬品は基礎研究から製造販売承認等を取得するまでに、通常、多大な開発費用と10年以上の長い年月を必要とします。当社グループのPDPSを活用して創製された特殊ペプチドからこれまでに新薬が承認された実績はございません。(ただし、体内のホルモンや菌類・動物・植物由来等の天然の環状ペプチドを基に医薬品が開発され、販売されている実績はございます。たとえば、1983年にスイスのSandoz社から発売された免疫抑制剤「Sandimmun(サンディミュン)」は、ノルウェー南部のハルダンゲル高原の土壌から発見された真菌が産生していた特殊な構造のペプチド(シクロスポリン)から作られています。)
将来において、当社グループの特殊ペプチドによる新薬開発実績が生み出せなかった場合や当社グループの特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)は、特殊ペプチドを医薬品候補物質として運用するために必要となる一連の技術((A)特殊ペプチドを創製し、(B)低分子医薬及び抗体医薬を超える多様性を持ったライブラリーを構築し、(C)高速でスクリーニングを行う技術。)を組み込んでおり、この(A)から(C)のいずれの技術をとってみても、同じくペプチドを医薬品候補物質として扱っている他社の技術と比べ、優位性を保っているものと考えております。
しかしながら、技術は日々進歩するものであり、当社グループの特許技術に抵触しない技術をもって当社グループPDPSを上回る技術が開発されることも考えられます。
当社グループとしては、PDPSを継続的に発展させるため、研究開発を積極的に実施し、PDPSに必要な知的財産権の確保に努めていく方針でありますが、当社グループPDPSを上回る技術が開発された場合には、当社グループの競争優位性が低下する結果、当社グループの希望する条件でクライアントとの間で契約を締結することができなくなる可能性が増加するなど、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループは、従来、特殊ペプチド医薬に特化して事業を展開しておりました。そのため、当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)により創製される特殊ペプチドは、新規性・進歩性を有するオリジナリティの高いものであり、容易に代替技術が生まれて当社グループの存在価値が危ぶまれるような事態になることは想定し難いと考えておりますが、特殊ペプチドに対する製薬企業の評価が変化した場合や当社グループの特殊ペプチド創薬技術がクライアントの医薬品開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
近時は特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることがわかっており、PDPSの応用範囲が以前に比べて大幅に拡がっております。そのため、特殊ペプチドに特化していた事業内容が変わりつつあり、特殊ペプチドをベースとしてPDPSを創薬研究開発の基盤として当業界に広めていき、特殊ペプチドのみならず低分子医薬の開発にも活用していこうという展開を試みています。こうした、低分子医薬の開発に貢献できない事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループの共同研究開発契約先の製薬会社は、それぞれ独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社グループはその研究開発について提案を受けて推進していくことになりますが、まれに各製薬企業間で創薬開発ターゲットが競合してしまうことがございます。競合が生じた際は、当社グループが各製薬企業との間に立って差配することによって、トラブルを未然に防止しており、現在までにトラブルが生じた事例はございません。
しかし、今後、その調整が困難になる事態が生じた場合、当社グループは新たな共同研究開発契約や新たなターゲットタンパクが獲得できないなど、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
創薬開発事業の共同研究開発契約に係る売上カテゴリーは、原則として(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)に始まり順次、(B)研究開発支援金、(C)追加研究開発支援金、(D)創薬開発権利金、(E)非臨床・臨床開発マイルストーンフィー、(F)売上ロイヤルティー、(G)販売マイルストーンフィーで構成されております。
(A)契約一時金(テクノロジカルアクセスフィー)、(B)研究開発支援金及び(C)追加研究開発支援金は当社グループの事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(B)及び(C)について、クライアントの方針転換等の影響を受けてプロジェクトが終了し、それ以降の収益が計上できないことがございます。また、(A)は、相対的に(B)及び(C)よりも額が大きく、一度に売上が計上されるため、当社グループの経営成績は(A)の計上に少なからず影響を受けることになります。(D)創薬開発権利金や(E)各種マイルストーンフィーに至っては、クライアントにおける業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社グループでのコントロールは極めて困難な売上カテゴリーです。
そのため、当社グループの計画に対してクライアントにおける研究開発の進捗が遅れた場合やクライアントの研究開発方針に変更等があった場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループは、事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手側が侵害したと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性がございます。
本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、今後、当社グループと第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、その場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
さらに、これまでのところ当社グループが製薬企業と共同研究開発した特殊ペプチド医薬品が上市にまで至った事例は未だございませんが、今後、万一、当社グループが共同研究開発に携わった医薬品において健康被害が引き起こされた場合には、そのネガティブなイメージにより、当社グループ及び当社グループの創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)に対する信頼性に悪影響が生じ、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループの事業展開上、重要と思われる契約が、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合又は契約の相手方の経営方針が変更された場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
なお、共同研究開発契約に係る金員(当社グループから見たときは売上に該当)は、原則として当社グループが前金として受領しており、これらの金員について当社グループは契約が中途終了する場合でも返還義務を負っておりません。その反面、共同研究開発契約先は、契約の解除について任意(自由)に実行することができる契約内容となっております。
当社グループアライアンス事業における収益は、ほとんどが共同研究開発契約先(クライアント)からのものでありますが、今後、これらのクライアントとの間で新たな標的分子に係る共同研究開発が開始されない場合や、共同研究開発の結果がクライアントの要求水準を満たせない場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
また、当社グループがライセンスアウトしたリード化合物は、クライアントが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社グループの事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社グループは、ライセンスアウト後もクライアントをサポートいたしますが、臨床試験及び承認申請はクライアントが主体となって実施するものであり、当社グループでコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社グループの予期しない事由により遅滞することや、臨床試験及び承認申請が断念される等の可能性がございます。
さらに、製造販売承認後の販売計画はクライアントに依存しており、クライアントの経営方針や販売計画の変更、経営環境の悪化等により販売計画を達成できない等の可能性がございます。
そのほか、医薬品の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、クライアントにおいて組織再編が実施されることや、競合他社を買収する(競合他社から買収される)ことなど、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性がございます。こうした大規模な企業組織再編が当社グループのクライアントに生じた場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループでは、特殊ペプチドの特性を活かした自社パイプライン(自社創薬)の研究開発を進めております。
現在のところ、開発の方向性としては、特殊ペプチドを医薬品として活用するアプローチと特殊ペプチドの持つ優れた選択性を活かして他の薬剤を誘導するPDC(Peptide Drug Conjugate)薬剤を開発するアプローチをとっております。また、特殊ペプチドを探索マーカーとして活用することによって、低分子医薬の開発につなげることができることから、自社パイプラインにおいても低分子医薬品の開発に着手しております。
自社パイプラインについては、研究開発が順調に進展し、臨床試験まで当社グループの負担で実施する場合には、多額の開発費用を要する状態になる可能性がございます。また、自社パイプラインの研究開発が順調に進展しない場合には、将来の事業化のオプションを一部失う可能性がございます。
当社グループは、競争力の強化及び事業分野の拡大等のため、他社の事業部門の譲受け、他社の買収、他社との業務提携、合弁会社の設立、他社への投資等の戦略的提携など(以下「戦略的提携等」といいます。)を行うことがございます。こうした戦略的提携等については、パートナー企業との思惑に相違が生じて提携・統合が円滑に進まない可能性や当初期待していた効果が得られない可能性、投資した金額の全部又は一部が回収できない可能性等がございます。また、パートナー企業が当社グループの利益に反する決定を行う可能性があり、パートナー企業が事業戦略を変更した場合など、当社グループは戦略的提携等の関係を維持することが困難になる可能性もあり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループは事業において様々な発明及び特許権を実施しておりますが、これらは当社グループ、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学により登録済みになっているものと審査中のものがございます。
しかしながら、出願中の発明すべてについて特許査定がなされるとは限りません。また、特許権を設定登録した場合でも、特許異議申立制度により請求項が無効化される可能性がございます。また、特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求されるなど特許権に係る法的な紛争が生じ、当社グループが実施する権利に何らかの悪影響が生じる可能性がございます。また、当社グループが実施する特許権を上回る優れた技術の出現により、当社グループが有する特許権に含まれる技術が陳腐化する可能性がございます。こうした事態が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
その他、当社グループは、国立大学法人東京大学又はニューヨーク州立大学が出願人である発明又は特許権に関して、契約により第三者サブライセンス権付き独占実施・許諾権を獲得しておりますが、当該契約の内容が変更される場合や、期間満了や解除等により契約が終了した場合等にも、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループの役職員等が創出した職務発明について特許を受ける権利を取得したときは、当社グループは、当該職務発明の発明者である役職員等に対し、特許法に定める「相当の利益」を支払うことになります。当社グループでは、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、役職員等への周知及び運用を強化しております。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の利益の支払請求等の問題が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断をされることがございます。開発を延長した場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金が回収できなくなることになります。
医薬品は、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性がございます。これら予期せぬ副作用が発現した場合、信用力の失墜、訴訟の提起等により、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品医療機器等法」)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。
現在のところ、当社グループのパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後、各国の薬事法等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。
そのため、自社のパイプラインについて上記の規制をクリアするための体制整備が求められることになります。また、各国の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社グループの生み出す特殊ペプチドにとって有利又は不利に働くことや、さらなる体制の整備・変更を求められる可能性が考えられます。
こうした規制への対応が当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。
地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等の損害が発生した場合、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性がございます。また、製品の一部は当社グループの工場において独自の技術により製造しており、商品及び原材料の一部は、特定の取引先にその供給を依存しております。このため、何らかの理由により製造活動や仕入れが遅延又は停止した場合、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性がございます。
医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在しています。将来、開発したいずれかの医薬品が健康障害を引き起こし、又は臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事象が発見された場合、当社グループは製造物責任を負うこととなり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
また、製造物責任賠償請求がなされることによるネガティブなイメージにより、当社グループ及び当社グループの医薬品に対する信頼に悪影響が生じ、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。当社グループでは、これまでのところ自社で臨床試験を実施したことがなく、早期に開発候補化合物をクライアントに導出する方針を採用しております。そのため、当社グループは薬価戦略についてはクライアントに依存しており、日本及びその他各国政府の薬価政策の影響を間接的に受ける立場にあります。当社グループの開発候補化合物が上市された場合において、当該医薬品にとってネガティブな薬価改定やその他の医療保険制度の改定があった場合は、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループは、創薬基盤技術の深化、創薬研究開発の進展を図るには、研究開発分野における専門的な知識・技能をもった優秀な人材の確保が必要であると考えております。
当社グループの想定した人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材の社外流出が生じた場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループは、役員及び従業員に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社グループ株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性がございます。本書提出日現在、権利行使が可能な状態にある新株予約権による潜在株式数はございません。
当社グループは配当による株主様への利益還元も重要な経営課題だと認識しております。
当社グループは、将来においても安定的な収益の獲得が可能であり、かつ、研究開発資金を賄うに十分な利益が確保できる場合には、将来の研究開発活動等に備えるための内部留保充実の必要性等を総合的に勘案した上で、利益配当についても検討してまいります。
当社グループの事業は、クライアントである製薬企業からターゲットタンパクの情報を預かる立場にあります。そのため、当社グループは、当社グループの従業員との間において顧客情報を含む会社の情報に係る誓約書を徴求し、会社情報の漏えいの未然防止に努めております。
しかしながら、万一顧客の情報を含む会社の情報が外部に漏えいした場合は、当社グループの信用低下を招き、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性がございます。
近年、サイバー攻撃はこれまで以上に技術が高度化し、攻撃手法も多様化・巧妙化しております。このような状況を踏まえ、当社グループはサイバーセキュリティに関するリスクを最重要リスクの一つと認識し、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策を実施し、その管理には万全を期しております。
しかしながら、これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃やそれに伴う深刻なシステム障害等により実質的に当社グループ事業が中断する等、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループのクライアントには海外の製薬企業が含まれていることから、売上収益の一部が外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。したがって、為替相場が変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことになります。当社グループでは短期的な為替変動に対応するため、適宜為替予約を用いて影響の最小化に努めております。
当社グループは、事業活動や研究開発活動に必要な設備及び機能が本社・研究所に集中しており、在宅勤務等へのシフトによって本社研究所以外の場所で継続できる業務が一部のオフィス業務に限定されます。感染症対策としてオフィス内の衛生管理の強化や「密な接触機会」の回避を図る取り組みを継続して実施すること等により、社員及びすべての関係取引先、並びにそのご家族の皆様の感染リスク軽減に引き続き努めておりますが、指定感染症等が発生し、本社・研究所の一時閉鎖等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループの研究開発の過程等で使用する化学物質の中には、人体や環境に悪影響を与える物質が含まれております。当社グループは、研究開発活動で使用する環境汚染物質のモニタリングを実施しておりますが、万が一、汚染物質による人への暴露、土壌汚染、大気汚染、水質汚染等が発生した場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また当社グループは、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。周辺には多摩川が流れており、気候変動に伴う洪水や津波などの水害等の自然災害が発生し、当社グループ設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達しています。今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの経営成績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループの借入金には財務制限条項が付されています。業績の悪化等により当該借入金の期限前弁済義務が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、一部の投資先に対して、債務保証を行っておりますが、将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループは投資先のモニタリングをするとともに、必要な施策を実施し、リスク低減に努めております。
当社グループでは、共同研究開発を加速させる目的で投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損処理を行うこととなった場合には、投資有価証券評価損の計上により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループは、企業買収等を通じて獲得したのれん及び無形資産を計上しております。これらの資産については計画と実績の乖離等により価値が下落した場合には減損損失の計上等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がございます。
当社グループや当社グループの関係者、当社グループの取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道、アナリストレポートやインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社グループの社会的信用に影響を与える可能性がございます。当社グループや当社グループの関係者、当社グループの取引先等に対して否定的な風説・風評が流布した場合には、そのネガティブなイメージにより、当社グループに対する信頼性に悪影響が生じ、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。
※当社グループは当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値をIFRSに組み替えて比較分析を行っております。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日)において、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した創薬開発事業、及び当社の100%子会社であるPDRファーマ株式会社による放射性医薬品事業を実施しております。
当事業年度において、創薬開発事業においては、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した3つの事業戦略:①創薬共同研究開発契約、②PDPS技術ライセンス、③戦略的提携/自社創薬の拡充を進めてまいりました。
1つ目の事業戦略であるPDPSを活用した国内外の製薬企業との創薬共同研究開発契約については、2022年4月に、Bristol-Myers Squibb社との創薬共同研究開発で見出された医薬品候補化合物について新たな第1相臨床試験が開始されました(ISRCTN17572332,登録番号:QSC203717)。当社はこれまでBristol-Myers Squibb社との創薬共同研究開発においてPD-L1阻害ペプチドを同定し、Bristol-Myers Squibb社は当該ペプチド(BMS-986189)の第1相臨床試験を2016年12月に完了しておりました。新たな第1相臨床試験では、当該ペプチドから派生した薬剤の健常人ボランティアに対する安全性と忍容性の検証を目的としています。
また、2022年5月23日に、Genentech社とc-METアゴニストプログラムに関する創薬共同研究開発契約を締結いたしました。本プログラムは、当社の関連会社であるペプチグロース株式会社との間で進めてきた、細胞治療・再生医療領域における細胞培養の培地成分として使用される成長因子を代替するペプチドの共同開発から見出されたもので、当社はこの代替ペプチドの医薬品用途での開発・販売権を有しています。今回の提携により、Genentech社から契約一時金を受領し、また今後、開発の進捗状況に応じたマイルストーンフィーや製品化後の売上金額に応じたロイヤルティーを受け取る可能性があります。
2022年12月に当社は、Merck&Co.,Inc.,Rahway,N.J.,U.S.A.(「Merck社」)との間で、PDCの創製・開発に関する複数の創薬ターゲットに対する共同研究開発及びライセンス契約を締結いたしました。本契約に基づき、当社はPDPSを用いて同定されたペプチド候補化合物を、Merck社が興味を持つターゲットに対するPDCとして提供することとなります。Merck社は、細胞傷害性ペイロードと結合するペプチド候補化合物について独占的使用権を取得し、本取組みから創製されるPDC製品の開発の全てを担います。本契約において、当社はMerck社から契約一時金を受領いたしました(金額非開示)。また、今後開発、承認、販売マイルストーンフィーとして総額で最大21億ドルを受け取る可能性があります。当社は上記に加え製品化後の売上高に応じたロイヤルティーを受領する権利を有します。なお、Merck社とは2015年4月に複数ターゲットに対する創薬共同研究開発契約を締結しております。
2022年12月に当社は、Eli Lilly and Company(「Lilly社」)との間で、新規PDCに関する共同研究及びライセンス契約を締結いたしました。本契約において、当社はPDPSを活用し、目的とする細胞・組織にペイロードを送達するためLilly社が選定した複数のターゲットに対し、高い結合性を有する特殊環状ペプチドを同定します。当社がペプチドの創製・最適化を、Lilly社がペイロードの創製・最適化を実施いたします。本契約において、当社はLilly社から契約一時金を受領いたしました(金額非開示)。また、今後開発、承認、販売マイルストーンフィーとして総額で最大12.35億ドルを受け取る可能性があります。当社は上記に加え製品化後の売上高に応じたロイヤルティーを受領する権利を有します。なお、Lilly社とは2013年12月に創薬共同研究開発契約を締結しております。
2つ目の事業戦略であるPDPSの技術ライセンスについては、2022年12月31日現在、11社;Bristol-Myers Squibb社(2013年)、Novartis社(2015年)、Eli Lilly社(2016年)、Genentech社(2016年)、塩野義製薬株式会社(2017年)、Merck社(2018年)、ミラバイオロジクス株式会社(2018年)、大鵬薬品工業株式会社(2020年)、Janssen社(2020年)、小野薬品工業株式会社(2021年)、富士レビオ株式会社(2022年)との間で非独占的技術ライセンス契約を締結しております。同事業においては、各ライセンス先企業から技術ライセンス料とともに開発プログラムの進捗ごとのマイルストーンフィーが当社に支払われます。なお、マイルストーンを達成するまでの間は、ライセンス先企業での研究内容や進捗について当社に知らされることはございません。また、当社はPDPSの技術ライセンス契約に関心をもつ複数の企業との交渉を継続的に進めております。
2022年9月29日に、当社はH.U.グループホールディングス株式会社の連結子会社である富士レビオ・ホールディングス株式会社(以下「富士レビオHD」)との間で、PDPSの自動化プラットフォームを用いた運用に関して、臨床検査薬開発用途における非独占的ライセンス許諾契約を締結いたしました。体外での使用が前提となる臨床検査薬開発に特化したPDPSの技術ライセンスは今回が初めてとなります。臨床検査薬は、抗原抗体反応等を活用し、検体中の微量な疾患マーカーや細菌・ウイルス等の検出が可能であることから各種診断に活用されています。臨床検査薬で使用される抗体をペプチドに代替することで、多様なターゲットの検出が可能になり様々な新規バイオマーカーの開発・実用化が期待できるとともに、より安定した品質かつ常温でのサプライチェーン構築が可能になる等、様々な利点をもつ次世代製品を開発できる可能性があります。富士レビオHDは、臨床検査薬企業として初めてPDPSを活用し、主にがんを対象とした革新的なバイオマーカーの実用化に取組み、同社が持つ免疫検査システムにおける新たな検査項目の開発を行います。また、自社プラットフォーム向けのみならず、CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)事業を通じて大手グローバル臨床検査薬メーカー等のパートナー企業へ供給する製品のラインアップ拡大も目指します。本契約の締結に伴い、当社は技術ライセンス料(契約一時金)を受領し、PDPSを用いることで創製された臨床検査薬について上市後の売上高に応じたロイヤルティーを受領する可能性があります。なお、これら技術ライセンス料等は当社の売上収益として計上されますが、その金額については、富士レビオHDとの契約に基づき非開示とさせていただきます。また、これまでの技術ライセンス契約と同様に、PDCは本技術ライセンス契約に含まれておりません。
3つ目の事業戦略は、世界中の高い技術力を有する創薬企業・バイオベンチャー企業及びアカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)の推進・拡充を図ることが狙いです。同事業においては、これらのプログラムを少なくともリード化合物/臨床候補化合物の選定完了まで、場合によっては第1相臨床試験あるいは第2相臨床試験完了まで自社開発又は戦略的パートナーとの共同開発を進めることにより、通常の開発候補品よりも収益性の高い条件で大手製薬企業にライセンスアウト(導出)することを目標にしております。当社では、PDPS技術を用いて同定したヒット化合物を起点に、①特殊ペプチド医薬品、②低分子医薬品、③ペプチド-薬物複合体(PDC医薬品)、④多機能ペプチド複合体(MPC医薬品)の4つのカテゴリーの医薬品開発を進めていくために必要な能力の拡充を進めております。同事業では、戦略的パートナーの独自の技術・ノウハウと当社の技術を組み合わせることでより高い価値のプログラムが生み出されることに加え、開発費用を両社で負担することにより、開発に成功した場合には、多くの場合従来の創薬共同研究開発プログラムと比べてより高い比率で当社に収益が分配されます。また、自社創薬についても、複数の創薬プログラムが進行しており、今後、臨床開発に向けた新たな進捗の報告ができるものと考えております。
当社は、がん治療のため放射性核種と結合させRI-PDCを開発するにあたり、様々な重要ながん特異的ターゲットに結合するペプチド候補化合物を同定し最適化する活動に重点を置いております。2022年にPDRファーマ株式会社の事業を取得したことにより、有望な候補化合物をin vivoバイオイメージング研究に迅速に移行することが可能となりました。当社は2023年に1つ以上の開発候補化合物を同定することを目標に複数のプログラムの優先順位付けを行っております。今後は、これらのRI-PDCプログラムの日本における権利を保持しつつ、興味を持った製薬企業に対して日本以外の権利を導出する方針です。また、これらのがんをターゲットとしたペプチドを、既存の様々なパートナーや新規パートナーとの共同研究開発により他のペイロードで活用する点についても積極的に検討を進めております。2つ目の重点領域は多機能ペプチド複合体(MPC)の創薬開発です。当社では、MPCが二重特異性抗体をはじめとする他の多機能分子より優れたモダリティーである可能性があると考えております。がん特異的ターゲットに結合するペプチドと組み合わせることが可能なT細胞・NK細胞に結合する新規ペプチドの同定に注力しており、これまでにないT細胞・NK細胞Engagerを創製することで新たな治療の選択肢が増えることを期待しております。また、当社ではT細胞やNK細胞のEngagerに加えて、IL17をはじめとする様々な炎症誘発性サイトカインに対する選択的な候補化合物を有しております。複数の炎症誘発性経路を同時に阻害することがより良い治療戦略となる可能性を示す臨床エビデンスが増えつつあることから、様々な化合物をMPCとして組み合わせた開発の可能性を積極的に検討しております。
放射性医薬品事業においては、2022年3月28日に、当社は、富士フイルム富山化学株式会社から放射性医薬品事業を吸収分割により承継する新会社(PDRファーマ株式会社)の全株式を取得いたしました。現在、PDRファーマでは放射性診断薬として、22品目のSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)製剤と、2品目のPET(Positron Emission Tomography)製剤、及び8品目(3製品カテゴリー)の放射性治療薬を販売しております。また、放射性診断薬の画像読影の支援を目的とした画像解析ソフトウェアの開発・提供も行っております。
以上の結果、当連結会計年度における創薬開発事業の経営成績については、売上収益15,406,109千円(前年同期比5,983,895千円増加)、セグメント利益9,179,911千円(前年同期比5,086,789千円増加)、放射性医薬品事業の経営成績については、売上収益11,446,321千円、セグメント利益235,908千円となり、当社グループ全体としては売上収益は26,852,430千円(前年同期比17,430,216千円増加)、Core営業利益9,637,433千円(前年同期比5,544,311千円増加)、営業利益8,980,196千円(前年同期比4,913,949千円増加)、税引前利益6,653,325千円(前年同期比2,849,560千円増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益7,554,358千円(前年同期比4,981,126千円増加)となりました。
当社グループは、IFRS業績に加えて、会社の経常的な収益性を示す指標として非経常的な項目をNon-Core調整として除外したCoreベースの業績を開示しています。当該Coreベースの業績は、IFRS業績から当社グループが定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。
Core営業利益は営業利益から企業買収に係る会計処理の影響及び買収関連費用、有形固定資産、無形資産及びのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益、非経常的かつ多額の損益、個別製品又は開発品導入による無形資産の償却費を控除して算出しております。
なお、Core営業利益から営業利益への調整は以下のとおりです。
(単位:千円)
当社は第4四半期連結会計期間において1,978,850千円の金融費用を計上いたしました。2022年3月に実施したPDRファーマ株式会社の株式取得に際し、2024年4月30日までに脳内アミロイドβプラーク可視化を行うPET診断薬であるアミヴィッド®の軽度認知障害(MCI)への適用拡大が日本国内で承認された場合、4,000,000千円の追加支払いが発生する旨の条件付対価が設定されておりました。昨今、認知症領域における治療薬の開発状況が大きく進展したことに伴い、関連する診断薬であるアミヴィッド®の適用拡大承認の可能性が高まったことから、第4四半期連結会計期間において将来の支払予定額の50%相当分について公正価値評価額を引き当てることが合理的と判断いたしました。なお、2022年3月22日の当社開示資料において条件付対価として最大6,000,000千円の追加支払いが発生する可能性があると記載いたしましたが、現時点での追加支払いの最大額は4,000,000千円と見込んでおります。
また、当社は当連結会計年度末においてPDRファーマ株式会社における繰延税金資産を計上いたしました。その結果、法人所得税費用が2,625,227千円減少し、当連結会計期間における法人所得税費用は△901,033千円となりました。PDRファーマ株式会社が当社グループに参画する以前は当該事業の赤字が続いていたこともあり、事業取得当初から繰延税金資産を計上するのは適切ではないとの判断でしたが、当連結会計年度において当該事業が黒字化したこと、また第4四半期連結会計期間においてPDRファーマ株式会社が新たに策定した中長期事業計画に基づく再評価の結果、繰延税金資産の回収可能性が高まったことから繰延税金資産を計上することが合理的と判断いたしました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度の生産実績を示すと、以下のとおりです。
(注)金額は、販売価格によっております。
当社グループの創薬開発事業及び放射性医薬品事業は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(注)顧客との共同研究開発契約においては秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。
当連結会計年度の総資産は63,865,200千円となり、前連結会計年度末と比べて36,830,604千円増加しました。その主な要因は、現金及び現金同等物が6,498,864千円減少したものの、営業債権及びその他の債権が15,778,049千円増加、有形固定資産が11,688,263千円増加したこと等によるものです。資産の増加には、PDRファーマ株式会社の新規連結による増加が含まれております。
負債は31,823,734千円となり、前連結会計年度末と比べて30,139,388千円増加しました。その主な要因は、借入金が21,048,451千円増加したこと等によるものです。負債の増加には、PDRファーマ株式会社の新規連結による増加が含まれております。
資本は32,041,465千円となり、前連結会計年度末と比べて6,691,215千円増加しました。その主な要因は、当期利益により利益剰余金が7,554,358千円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ6,498,864千円減少し、5,247,665千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益6,653,325千円の計上等があったものの、営業債権及びその他の債権の増加額11,286,614千円の計上等により、82,929千円の支出(前年同期は6,654,708千円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の取得による支出23,460,335千円等により、27,377,217千円の支出(前年同期比25,093,766千円の支出増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入22,400,000千円等により、20,789,451千円の収入(前年同期比20,723,383千円の収入増加)となりました。
財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金は、手許資金を中心としながら必要に応じて借入による資金調達を行っております。
主な資金需要につきましては、運転資金として製造原価、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金として、研究開発のための設備投資等があります。
有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。
当社グループの重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 、 3 重要な会計方針 及び 4 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおりであります。
当事業年度の期首時点においては、連結財務諸表を作成していなかったことから、当社の個別財務諸表における売上高13,000,000千円以上、営業利益6,500,000千円以上、売上高営業利益率50.0%を目標としておりましたが、売上高15,406,109千円、営業利益9,097,835千円、売上高営業利益率59.1%となり、目標を上回る結果となりました。引き続きこれらの指標について、向上できるよう努めてまいります。
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、次のとおりであります。
当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度の要約連結財務諸表については、記載しておりません。
なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
前事業年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
該当事項はありません。
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
新規取得により1社増加しております。
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は以下のとおりであります。
前事業年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「38.初度適用」をご参照ください。
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
(のれんの償却)
日本基準では、のれんをその効果が発現すると見積もられる期間にわたり均等償却しておりますが、IFRSでは、のれんの償却は行われず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が253,587千円減少しております。
日本基準では、企業結合に係る株式売買契約における条件付対価について、契約で定めた条件が確定した時点で、追加支払額を取得原価から増加させ、同額ののれんの金額を増加させますが、IFRSでは、条件付対価の公正価値を見積もり、取得後の公正価値の変動額については純損益として処理することが要求されます。この影響により、IFRSでは日本基準に比べ非流動負債のその他の金融負債が1,978,850千円、金融費用が1,978,850千円増加しております。
非上場株式について、日本基準では、原則として取得原価で計上しておりますが、IFRSでは、公正価値で測定しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べ非流動資産のその他の金融資産が1,242,352千円増加し、投資有価証券評価損が1,156,998千円減少しております。
(注) 上記契約の対価として一定料率のロイヤルティーを支払っております。
(1) 提出会社
2022年12月31日現在
(注) 現在休止中の主要な設備はありません。
①PDRファーマ株式会社
(注) 現在休止中の主要な設備はありません。
(注)提出日現在発行数には、2023年3月1日からこの有価証券報告書提出日までの新株予約権の行使により発行された株式数は、含まれておりません。
第8回新株予約権(2021年11月18日取締役会決議)
※ 当事業年度の末日(2022年12月31日)における内容を記載しております。なお、提出日の前月末(2023年2月28日)現在において、これらの事項に変更はありません。
(注) 1. 新株予約権1個当たりの目的となる株式の数(以下「付与株式数」という。)は、当社普通株式100株であります。
当社が株式分割又は株式併合を行う場合には、新株予約権の目的たる株式の数は次の算式により調整されるものとします。ただし、この調整は、当該時点で権利行使をしていない本新株予約権の目的たる株数についてのみ行われ、調整の結果1株未満の端数が生じた場合はこれを切り捨てるものとします。
また、当社が株式の無償割当を行う場合、他社と吸収合併若しくは新設合併を行う場合、当社が他社との株式交換若しくは株式移転を行う場合、又は、当社が吸収分割若しくは新設分割を行う場合、当社は未行使の新株予約権の目的たる株式の数について合理的に必要と認める調整を行うことができるものとします。
2. 本新株予約権の割当日後、当社が株式分割又は株式併合を行う場合、次の算式により行使価額を調整し、調整による1円未満の端数は切り上げるものとします。
また、本新株予約権の割当日後、当社が当社普通株式につき時価を下回る価額で新株の発行又は自己株式の処分を行う場合(新株予約権の行使に基づく新株の発行及び自己株式の処分並びに株式交換による自己株式の移転の場合を除く。)、次の算式により行使価額を調整し、調整による1円未満の端数は切り上げるものとします。
なお、上記算式において「既発行株式数」とは、当社普通株式に係る発行済株式総数から当社普通株式に係る自己株式数を控除した数とし、また、当社普通株式に係る自己株式の処分を行う場合には、「新規発行株式数」を「処分する自己株式数」に読み替えるものとします。
さらに、上記のほか、本新株予約権の割当日後、当社が他社と合併する場合、会社分割を行う場合、その他これらの場合に準じて行使価額の調整を必要とする場合には、当社は、合理的な範囲で適切に行使価額の調整を行うことができるものとします。
3. 新株予約権の行使の条件
(1)2022年12月期から2026年12月期までの事業年度において、EBITDAの累計額が、下記(a)又は(b)に定める水準を超過した場合、それぞれに定められている割合(以下、「行使可能割合」という。)を上限として、これ以降本新株予約権を行使することができる。
(a) EBITDAの累計額が450億円を超過した場合:行使可能割合 割り当てられた本新株予約権の50%
(b) EBITDAの累計額が500億円を超過した場合:行使可能割合 割り当てられた本新株予約権の100%
なお、上記におけるEBITDAは当社の損益計算書(連結損益計算書を作成している場合には連結損益計算書)に記載された税引前当期純利益に支払利息及びM&A関連費用を加算し、キャッシュ・フロー計算書(連結キャッシュ・フロー計算書を作成している場合には連結キャッシュ・フロー計算書)に記載された減価償却費、のれん償却費、減損損失を加算した額をいう。加えて、当該損益計算書に本新株予約権に係る株式報酬費用が計上されている場合には、これによる影響を排除した株式報酬費用控除前EBITDAをもって判定するものとする。
(2)本新株予約権1個未満の行使を行うことはできないものとする。
4. 組織再編成行為に伴う新株予約権の交付に関する事項
当社が、合併(当社が合併により消滅する場合に限る。)、吸収分割、新設分割、株式交換又は株式移転(以上を総称して以下「組織再編行為」という。)を行う場合において、組織再編行為の効力発生日に新株予約権者に対し、それぞれの場合につき、会社法第236条第1項第8号イからホまでに掲げる株式会社(以下「再編対象会社」という。)の新株予約権を以下の条件に基づきそれぞれ交付することとします。ただし、以下の条件に沿って再編対象会社の新株予約権を交付する旨を、吸収合併契約、新設合併契約、吸収分割契約、新設分割計画、株式交換契約又は株式移転計画において定めた場合に限るものとします。
(1) 交付する再編対象会社の新株予約権の数
新株予約権者が保有する本新株予約権の数と同一の数をそれぞれ交付します。
(2) 新株予約権の目的となる再編対象会社の株式の種類
再編対象会社の普通株式とします。
(3) 新株予約権の目的となる再編対象会社の株式の数
組織再編行為の条件を勘案の上、上記(注)1に準じて決定します。
(4) 新株予約権の行使に際して出資される財産の価額
交付される各新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は、組織再編行為の条件等を勘案の上、上記(注)2で定められる行使価額を調整して得られる再編後の行使価額に、上記(注)4(3)に従って決定される当該新株予約権の目的となる再編対象会社の株式の数を乗じた額とします。
(5) 新株予約権を行使することができる期間
交付される新株予約権を行使することが出来る期間は、新株予約権の行使期間の初日と組織再編行為の効力発生日のうち、いずれか遅い日から行使期間の末日までとします。
(6) 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項
上表の「新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価格及び資本組入額(円)」に準じて決定します。
(7) 譲渡による新株予約権の取得の制限
譲渡による取得の制限については、再編対象会社の取締役会の決議による承認を要するものとします。
(8) その他新株予約権の行使の条件
上記(注)3に準じて決定します。
(9) 新株予約権の取得事由及び条件
(a)当社が消滅会社となる合併契約、当社が分割会社となる会社分割についての分割契約若しくは分割計画、又は当社が完全子会社となる株式交換契約若しくは株式移転計画について株主総会の承認(株主総会の承認を要しない場合には取締役会決議)がなされた場合は、当社は、当社取締役会が別途定める日の到来をもって、本新株予約権の全部を無償で取得することができます。
(b)新株予約権者が権利行使をする前に、上記(注)3に定める規定により本新株予約権の行使ができなくなった場合は、当社は新株予約権を無償で取得することができます。
(c)新株予約権者が本新株予約権の全部又は一部の放棄を申し出た場合は、当社はこれを無償で取得することができます。
(10) その他の条件については、再編対象会社の条件に準じて決定します。
該当事項はありません。
(注) 新株予約権の行使によるものであります。
2022年12月31日現在
(注)自己株式247株は、「個人その他」の所有者区分に含まれております。
2022年12月31日現在
(注)1. 上記の所有株式数のうち、信託業務に係る株式数は次のとおりであります。
2. 持株比率は自己株式(247株)を控除して計算しております。なお、自己株式の数には、株式給付信託の信託財産として、株式会社日本カストディ銀行(信託E口)が保有する当社株式179,200株は含まれておりません。